Fate/Gotcha liner   作:アカハナさん

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第二十三話 Wは目覚める/ライダー集合

「いやー、逃げて正解だったね~」

 

 冬木大橋、逃げ去ったクロトーは、いまだ人でにぎわうその場を、ふわりふわりと飛んでいた。

 乗っているのは、彼女がどこからか呼び出す専用のエアロバイク、マシン・ブルームスターである。

 

 空を飛びながら、クロトーはここまでを回想する。

 作戦は成功、しかし与えられた使命をこなすのは失敗。

 それどころか、相手に情報を与えすぎて、結局逃げる羽目になった。

 これは、帰ったら大目玉どころじゃすまなそうだ。なので、ほとぼりが冷めるまで、ここで待つ。

 

 しかし、この逃げる能力は役に立つものだ。そうクロトーは、木乃美は小さく笑う。

 

 タランチュラ・オルフェノクとしての能力。特殊な薬液と作り出す糸人形を、まるで自分の分身のように動かす能力。吸血能力も併せ持つこの能力は、敵を欺くのに非常に有用だった。

 カードとレイズのことは少々問題だったが、複製機体を作り、自分は身を隠し、戦闘が必要な場面ではレイズを分体に護衛させることで事足りた。

 そのおかげで、血を収集する作戦は成功、ライダー二号、カレイドライナーからの攻撃をも逃れることができた。

 

「フフフ、いやぁほんとありがたい……あなたもそう思うでしょ? サガーク」

「◎×△……!」

 

 放たれる言葉は古代ファンガイア語。

 クロトーの手には、銀色の蛇の頭のようなベルトがあった。それこそは木乃美が結から奪った王の鎧を管理する者、サガークであった。サガークは拘束から逃れようともがく。そしてクロトーをにらみつけ、指に思いっきりかみついた。

 

「いたっ⁉」

『反抗心がすさまじいな』

 

 感心するようにレイズキバットが言うが。当の本人、サガークはいたって真面目に、甲高い鳴き声を上げている。

 

「も、もう……懐かないなこの子……」

『当たり前ではないか?』

 

 無理やり奪ったのだから、それはそうだ。

 仕方ないと木乃美は言って、サガークを投げ出して。そろそろ帰ろうと、ブルームスターのエンジンをかけた。魔術+科学による、どっかのアニメにありそうな魔導エンジンを搭載したブルームスターが、奇妙な排気音を鳴らし始める。

 

「よーし早くうごけー。ほんとこれエンジンかかるの遅いんだから」

『設計ミスではないか? ……うん?』

 

 と、レイズは空に輝く月を見上げる。

 今日は満月から少し欠けているのだが……その中央に、何か見慣れない影が見えた。

 

『あれは……っ、木乃美!』

「はい? どうし……うわっとぉ⁉」

 

 空からドカン、と何かが降り落ちた。隕石かと間違えるほど質量と速度を伴ったそれは、大橋のほうに着地し、火花を散らして道路をこすった。

 それは、一輪のバイクだった。乗っているのは、黒い帽子をかぶった青年と緑髪の青年で。

 

「ようやく見つけたぜ、犯人さんよぉ!」

「……むう。バレてたか、左さん」

 

 まさか、この短期間でバレてしまうとは。

 やはり二号ライダーに存在がバレていたのはまずかったな、と、クロトーは舌を打つ。

 

「それで、追ってきたわけねー。てか、どうやって空から……」

「それは企業秘密ってな。ともかく、空を飛ぶのは、魔女だけの専売特許じゃないんだぜ、お嬢さん」

 

 専用機、ハードボイルダーをコンと叩く翔太郎。

 実際には、このマシンにかなり無理をさせて、ここまで来たのだが。

 

 マシン・ハードボイルダーは、かつてWの支援者だったシュラウドが独自に作り上げた、支援マシンの第三号だ。幾つかの換装形態を持ち、Wの足となるこのマシンには、スタートダッシュモードと呼ばれる姿が存在する。

 本来直線距離を超速で走り抜けることに特化したこの形態の、使い捨てのユニットを空中機動用に転用。ハードタービュラーに変わり、風都からこの冬木湾岸まで飛んできたのだった。事実、着地したハードボイルダーの周囲には、ダッシュブーストユニットの残骸が散らばっていた。

 

「はあ。でも、たった二人……いや、たった一人でどうする気?」

「一人ではない。僕たちは二人で一人……それに」

 

 フィリップは、橋の向こう……クロトーの後方を本で指す。

 やってくるのは巨大な戦車、リボルギャリー。停車したリボルギャリーはハッチを開く。中からは白いバイクと、それにまたがる仮面ライダー二号、そして彼についてきた小山油井……否、登結がいた。

 

「多勢に無勢かぁ。ちょーっとずるくない?」

「隠れてちまちま姑息なことしてたやつに、言われたくはねえな」

 

 言いながら、翔太郎は前に出る。

 

「で、クロトー……いや、清原木乃美さんって、言ったほうがいいか? あんたが、一連の吸血鬼事件の犯人で間違いないな?」

「……あらら? 何か証拠でもあるの?」

 

 そう聞くと、翔太郎は懐から袋に閉じた機械の部品を出した。

 複数の動力源の宝石と、蝙蝠のような羽状の機械。キバット型のメカニカルモンスターだ。

 

「こいつは、犯行現場に落ちていた機械の残骸だ。メカニカルモンスターのな。キバット族を模して、吸血する機能がついていた」

 

 吸血機能搭載型のメカニカル・キバット。その牙部分には、これが発見された箇所で殺害された被害者のものと、同じ成分の血痕が指摘された。このモンスターが、人間の血を吸っていたという明らかな証拠だった。

 

「メカニカルを使えるのは3WAくらいのものだ。一般のファンガイアは、こんなもの作らないからな。だから犯人が分からなかったんだが……さっき、死んだはずのあんたが、生きていたってことが分かった。さらに幾つものメカニカル・キバットを操っていたのも、隼人さんと結ちゃんが見ていた。どうだ、これで証拠は全部だ」

 

 十分すぎるほどに十分だ。

 まあ、最後のほうは自分から明かしたようなものだが。そのほうが、面白いかと思って。

 

「そっかー……しかもこれ、あの子たちにもばれてるんだよねぇ。たはー、もうちょっとうまくやればよかったなー」

「……」

 

 笑う彼女は、くるくる回って。

 それから、言った。

 

「じゃ、しょうがない。ここで全員始末しないとね」

「っ、フィリップ! 先輩!」

「ああ」「おう!」

 

 クロトーの攻撃が迫る。

 翔太郎は素早くジョーカーメモリを取り出す。それに合わせるように、腰のベルトに、緑色のメモリが出現した。

 サイクロンメモリ。フィリップの所持する三種のソウルメモリの一つだ。現れたそれをベルトに押し込み、ついでジョーカーメモリを、自分から見て左側にセットする。

 そして、ベルトを開き「変身!」

 

『サイクロンジョーカー!』

 

 変則的に、変身。

 クロトーの攻撃が、風によってそれていく。

 晴れる炎の中から現れるのは、黒と緑の左右のボディがきらめく、赤い瞳の仮面ライダー。

 

「「仮面ライダーダブル……さあ、お前の罪を数えろ!」」

「数える罪なんて、ないけどっ?」

 

 言いながら、彼女は虚空に三つのボトルを浮かべた。

 ペットボトルの中には、金色に輝く液体が入っている。それらに、左手にはめた指輪をかざし、彼女は告げた。

 

「万物は、これなる一者の改造として、生まれ行く」

 

 瞬間、三つの黄金は人の形に変化した。

 泥人形のような、ゆらめき動く、顔のない完全な人型。

 それらに取り出した二枚のカードと、一本のガイアメモリを装填する。

 

『テラー!』

「……テラーだと⁉」

 

 フィリップが驚き、叫ぶ。

 カードのほうを取り込んだ人形は、仮面ライダーを。そしてメモリを取り込んだ個体は……巨大な板状の頭を持つ、黄金色の怪人となった。

 

「よーしいけー! 黄金テラー・ドーパント、アンド偽ファイズ、偽X!」

 

 偽物のXライダー、そしてファイズライダー。

 黄金テラー・ドーパント。ならびに、奴がその体から生み出した、黄金のテラードラゴン。

 一気に四体もの怪物が、この冬木大橋に並び立った。

 こだまする悲鳴は、その怪物たちを見た誰かの悲鳴だった。人々や車が、一目散に走り去っていく。

 

「さすがに数が多いな……結!」

「はい」

「クロトーからサガークを奪い返すんだ。俺がサポートする!」

「わかりました!」

 

 結が先行する。

 その後ろを、二号ライダーがひた走る。

 翔太郎とフィリップが合体変身した仮面ライダーダブルもまた、テラードラゴンを止めるべく動き出す。ダブルはフィリップの精神が翔太郎の肉体に融合する形の合体変身であるため、変身後はフィリップが無防備となる、が。

 

「フィリップの体を頼むぜ、エクストリーム!」

 

 どこからともなく飛来したエクストリームメモリがフィリップの体をデータ化し吸収。

 安全な状態で確保するや、すぐさまリボルギャリーに格納される。

 ダブルはそれを確認したのち、テラードーパントへと殴り掛かった。

 テラードーパントはその攻撃をかわし、受け流しつつ、テラードラゴンとの連携を図る。

 テラードラゴンはすさまじい速度とその巨体をもってライダーたちに迫る。

 

「何つーデカブツだ!」

「しかし、どうやってあのテラードラゴンを呼び出しているんだ……!」

 

 ダブルは延髄蹴りを放ちながら、敵を牽制。

 結を妨害しようと迫るテラーの前に立ちふさがる。

 

『サイクロンメタル!』

「勝負だ……おおらぁ!」

 

 サイクロンメタルとなったことで出現したメタルシャフトを操り、テラードラゴンを受け止める。

 が、しかし。

 

「なっ……うおお⁉」

「っ、受け止められない⁉ これは……」

 

 黄金に輝いたテラードラゴンは、なんとダブルをすり抜けた。

 電撃をまとうようにうねる体でもって、ダブルの体をすり抜けながら結を襲ったのだ。

 

「うあ……⁉」

 

 結の体を、テラードラゴンが()()()()()

 結は思わず、ドラゴンを構成する成分を口に含み。

 しょっぱい、と思った。

 

「もご……ぷえ」

 

 何とか解放され、えずく結。

 その彼女に偽ファイズが切りかかるが、ダブルがそれを阻止する。

 その間、結は先ほど感じた味を、ダブルに伝えた。

 

「フィリップさん……今の、しょっぱかった、です……」

「しょっぱい? 塩で……いや、海水でできているのか? だとすれば」

 

 ダブルは攻撃に転じながら、メタルシャフトにサイクロンメモリを装填。

 発動したマキシマムドライブで、ファイズに強烈な旋風をお見舞いする!

 

「「メタルツイスター!」」

 

 旋風とともにメタルシャフトの連続打撃をたたきつける。

 しかし偽ファイズは攻撃をさばきながら、その旋風から逃れた。

 

「ちっ……」

「翔太郎。あのテラードラゴンと、このゴルドライダーたちの正体がわかったかもしれない」

 

 突然そう告げたフィリップは、再び結に迫ったテラードラゴンを捌きながら、その推理を告げた。

 

「かつて、バダンという組織が存在した。バダンは、地球に生命をもたらした大首領JUDOを信奉し、彼のために、彼の従者たる竜を蘇らせようとしていた」

「竜? それって、前に隼人さんから聞いたやつだな」

「ああ。その竜は、海水やプラズマエネルギーなど、様々な()()()()()()()()()()を媒介に実体化する、云わば形のない生命体だったようだ。SOLUのようにね」

 

 SOLUとはかつて仮面ライダーフォーゼが出会った、地球外生命体のことだ。巨大なアメーバ状の存在で、自身の細胞を自由自在に組み替え、変身する能力を有している。

 そしてこのバダンの竜もまた、SOLUと形は異なれど、地球外の生命体なのだ。そしてこの竜は、人間に絶望的なまでの恐怖を与えることができる。これは竜にその力があるのではなく、人間が竜に対してそのような恐怖を抱くのだ。

 これを、バダンシンドロームという。

 

「テラードラゴンは、園咲琉兵衛にしか召喚ことができない。しかし、テラーメモリには元から、恐怖の根源たる力を宿している。それが竜だ。琉兵衛はその適合率の高さによって完全な実態として竜を呼び出していた。今回あの、黄金テラーが呼んでいる竜は、かつてのそれとはまったく異なる」

 

 そう、あの竜は、かつてのバダンの竜と同等の存在。

 

「おそらく、海水にエネルギーを通し、あのような姿で実体化しているのだろう。黄金の姿なのは、その体に満ちているエネルギーが、黄金テラーからの供給によるものだから、と言ったところだろうか」

「いや、推理力半端ないねあなた……」

 

 若干引きながらクロトーが言う。

 

「ということは、どうやら当たっているのかな?」

「全部正解なんだけど……地球の本棚、恐るべしだね」

 

 言いながら、アグレッシブファイヤーで攻撃。

 しかし二号ライダーがその炎を、ライダーチョップで打ち崩す。

 その隙に、持ち直した結が走り、ジャコーダーロッドを振りかざした。

 攻撃を受け止め、すばやく返すクロトー。発動するはフリーレンブリザード。

 結はジャコーダーを手から離し、その姿を変え、さらなる攻撃を放つ。変わりし姿は結の本性、黒色のバットファンガイア。

 

「それがノワールバットかぁ。ようやく見せてくれたね」

「うるさいっ!」

 

 掌底とともに放たれるエネルギー波が、クロトーを吹き飛ばす。

 その隙にジャコーダーを取り、斬撃。踊り狂うジャコーダービュートがクロトーの全身を切り裂いた。

 

「っ、いったぁ⁉」

「サガークを、返しなさい! 木乃美!」

 

 ノワールバットファンガイアとなった結は、そう叫びながらクロトーへと走る。

 クロトーのスペックでは、いくらウィッチメモリの力を引き出そうと、ノワールバットにはかなわない。

 クロトーは懐からサガークを取り出した。

 

「っ⁉」

「人質……は性に合わないからやらないけど。そのジャコーダー、頂くよ!」

 

 クロトーの手がジャコーダーへと伸びる。

 ノワールバットはとっさに手を引くが、間に合わない。クロトーの手に、ジャコーダーの柄が握られた。

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

「うわ、っと、おおお⁉」

「わ、ちょっ、ぶつかるー⁉」

 

 ジャコーダーを奪おうとしたクロトーに、何者かが横から突っ込んだ。彼女の体は見事に吹っ飛んで、橋の上を転がる。その手からジャコーダーと、サガークが落ちた。

 

「あたたた……」

「も、もう……タカラ君、危険運転だよ今の……」

 

 目を回してそう言うのはイリヤ。そして前の席に乗って、彼女を連れていたのはガッチャード=宝だった。

 すでに魔法少女衣装に切り替わっているイリヤは、ぴょいと地面に降りて。と同時に、誰かが彼女らの後ろに降り立った。青い魔法少女衣装を纏った、美遊だった。

 

「……ねえ、なにこの状況」

「正直、わたくしにもわかっていませんわ」

 

 美遊が連れてきたのは凛とルヴィア。クロトーは立ち上がりつつ、彼女らを見て。

 

「ああ、もう……今日厄日じゃん……」

 

 小さく舌を打った。

 結はその手にサガークと、ジャコーダーを取り戻した。二つをしっかりと抱きしめ、ライダーたちのほうに駆け寄る。

 

「あの、君たちは……?」

「あ、えーっと」

 

 そしてイリヤたちのほうを見て、不思議そうな顔をした。

 イリヤは何か言おうと思ったのだが、混乱させそうで、良い言葉をなかなか選べなかった。

 変わりに、宝が言葉を告げる。

 

「カレイドライナーです。こっちのピンクのかわいい子はルビー。で、こっちの青いきれいな子がサファイア。で、僕はガッチャードです。あとそっちの赤ツインテと金ドリルさんはサポーターです」

「ねえ宝、私たちの紹介だけ雑じゃないかしら?」「気のせいです」

「突然宝石じゃなくなったね……」

 

 フィリップが興味深そうに告げる。

 宝は「開発元が違うというか」と濁しつつ。

 

「ともかく、一緒に戦いましょう! いいですよね、二号さん!」

「おう。子供は寝る時間なんだが……まあ、数が増えりゃ、百人力だからな!」

 

 二号もまた、並び立つ。

 結はそんな彼らを見て、そしてサガークを見て。

 

「行くよ、サガーク。久しぶりに」

「@〇◎!」

 

 サガークはその言葉に、うれしそうに目を細めた。

 そのまま、八本の赤い足を延ばして、結の腰に巻き付ける。結もまた、ジャコーダーを顔の前で掲げ、目を閉じ……祈って。

 そして、その先端を、サガークの側面に突き刺した。

 

〇×△(ヘンシン)

 

 古代ファンガイア語とともに述べられる、変身の声音。

 瞬間、結の体を銀色の液体が覆いつくし、それが一瞬にして純白の鎧に変わった。

 怪人態の顔を覆うように白い仮面がまとわれ、青い複眼がギラリと輝く。

 

 それこそは、原初の王の鎧をまといし、王の鎧を守護せし者。

 

 仮面ライダーサガ。

 

「王に代わって……今度こそ。私があなたを断罪します。木乃美」

 

「……面白い。やってみなよ!」

 

 クロトーが吠える。

 その瞬間、二体のゴルドライダーとテラードーパント。そしてテラードラゴンが、一斉にライダーたちを襲った。

 

 ♦

 

 テラードラゴンはエネルギーの塊だ。

 それをルビーたち魔法使いの礼装は、本能で感じ取っていた。

 だから。

 

『イリヤさん! あの竜に攻撃を! あれは私たちにしか倒せません!』

「オッケー、ルビー。それじゃ、全力の……砲射(フォイア)!」

 

 ルビーからほとばしる魔力の本流。

 テラードラゴンは一瞬ひるむがそれでもなお突き進む。

 テラードラゴンの体は先ほど見た時よりも幾分か大きくなっている。

 

 冬木大橋の下部からは大量の海水と淡水が渦巻いており、それがまるでヤマタノオロチのようにテラードラゴンへと殺到しているのだ。その力で、ドラゴンを取り巻くエネルギーは膨張し、ドンドンと巨大化していっている。

 

「イリヤ、美遊、宝! あのドラゴンが敵の戦力の要よ! 積極的に叩きなさい!」

「た、叩いてるよ! ルビー、もっと威力上げられない⁉」

『むう、しかしあの質量を一気に吹き飛ばすとなると……そうだ! セイバーのカードを使いましょう!』

 

 イリヤは攻撃を避けながらうなづき、カードホルダーからセイバーを抜いた。そのままルビーにかざす。

 

『では!』「低位限定展開(ロウインクルード)!」

 

 ルビーがまばゆい光を放つ。

 そこに迫るテラードラゴン。

 しかしドラゴンの体は、巻き起こった突風によって吹き飛ばされた。

 イリヤの手の中には、緑と青の光が渦巻いていた。

 

「これは……風?」『ふむふむなるほど。どうやらこれは、聖剣を守る風のようです!』

 

 風となったルビーが告げる。

 

『その名も風王結界(インビジブルエア)。剣を守る、不可視の風の剣ですね! これならば、長い間出しておけるかと!』

「ようし……じゃあ、行くよ!」

 

 空中を蹴り、ドラゴンに迫る。

 ドラゴンとのすれ違いざまに一閃。風の斬撃がドラゴンを切り裂くや、その体を構成する水が舞い散った。まるで血のしぶきのように。

 ドラゴンの体が、少し縮んだ。

 

「やった!」

「……そうか。風で水を散らしているんだ」

 

 風王結界の風は、ルビー本体を覆いその屈折率を変えている。故に不可視、魔術の中に潜む科学による妙技であった。

 そしてその風は、単純なエネルギーであるため、同じエネルギー体であるテラードラゴンに強い効果を持つのだ。

 

「だったら、僕たちも属性攻撃で行こう。ガッチャ、美遊」

「でも、私はともかく……宝は、何かあるの?」

「もちろん! それじゃ……ゴリラセンセイ、バーニングネロ!」

 

 その呼びかけに応じ、二枚のカードがホルダーから飛び出す。

 

「ゴリ!」「バ・バーニング!」

『ほいほい! ゴリラセンセイ、バーニングネロ!』

「変身!」『ガッチャーンコ!』

 

 矢印上のエネルギーが渦巻き、二枚のカードの幻影がガッチャードを覆う。

 ライダケミドールを炎が覆いつくし、深紅の仮面ライダーへと変える。

 その姿が、ガッチャード・バーニングゴリラだった!

 

『バーニングゴリラー!』

「よ、ほっ、はあっと!」

 

 変身するや、素早く鉄骨をつかみ、飛び移りながら空中に躍り出る。

 

「ほんとにゴリラみたい……」

 

 キラキラした目で美遊が言う。

 彼女もまた空へ飛び出し、イリヤの隣に躍り出る。

 

「イリヤ、少し離れて」

「うん、わかった」

 

 美遊は服のポケットから、複数の宝石を取り出し、投げた。

 そこにサファイアからの速射(シュート)を放ち、属性をまとった魔力砲を放つ。

 ルヴィアから教わった、魔力を込めただけの、宝石を用いた攻撃方法だった。

 

 使ったのは、地属性を込めたトパーズ。

 相手は水属性のテラードラゴン、属性上、土の攻撃は効果が薄いが……

 

「宝!」「任せろ!」

 

 敵の動きを止めるには十分だ。

 ガッチャードは鉄筋を、脚部のホットダンパーによって足場にしつつ敵に接近。胸を自らの両腕装甲で叩きながら、空中を突進する。

 

「ライダァー! パァンチッ!」

 

 テラードラゴンの水の胴体に、炎の拳が炸裂した。爆音とともに、テラードラゴンが悲鳴を上げる。

 

「おおー、やったー! でも、なんで火属性で水属性が苦しむんだろ?」

『この場の属性が四大元素だからかもしれません、イリヤ様』

「四大元素?」

 

 聞いたことがある言葉だ。だが詳細は知らない。

 

「四大元素は、火水風地の四属性から世界が成り立つという考え方。魔術の世界では、インドの五大に次いで主流な属性なんだって」

 

 美遊は説明を続ける。

 

「その中で、火と水は相関関係にある。どちらが片方に強い、弱いじゃなく、どちらも弱点同士。だから、攻撃側の火が、水の防御側を苦しめたの」

「な、なるほど……?」

『……これは例によってわかっていませんね』

 

 ともかく、火が水を打ち崩すこともあるということだ。

 ガッチャードは素早く鉄筋を渡り、打撃を繰り返しテラードラゴンを苦しめる。

 テラードラゴンはテラードーパントの指示によって橋から離れ、無数の青い水流を放ち攻撃。ガッチャードは攻撃を防ぐも、殺到した水流の槍を防ぎきれず、鉄橋にたたきつけられた。

 まばゆい光を放って、変身が解除される。

 

「タカラ君⁉」

「っ、う……あと、お願い……!」

「……わかった!」

 

 二人の魔法少女が、空中を蹴り螺旋を描く。

 光子となった二つの翼が、それぞれに色とりどりの光を放ちテラードラゴンを迎撃。ドラゴンの体から水が舞い散るも、奴は身をよじりつつ魔力砲の波をかいくぐるのだ。

 それどころか、ガッチャードが与えたダメージも回復しつつあるらしい。

 水の供給はいまだ止まらず、イリヤと美遊二人分の全力攻撃でも、上回る回復を見せていく。

 

「っ、どうしたら……」

 

 一方、変身が解除された宝へと、テラードーパントが迫っていた。

 その寸前でダブルが止めに入り、ヒートメタルとなって攻撃を繰り出す。

 炎をまとったメタルシャフトは、テラーの肉体を幾度も貫くのだが、その身は即座に再生しダブルを追い詰めていた。

 

「テラードラゴンの召喚で力は落ちていても、素体の再生能力は落ちていないか。翔太郎、一気に吹き飛ばしたほうがよさそうだ」

「おう……じゃあこいつだ!」

 

 テラーの掌底をはじき、メタルメモリをトリガーメモリと交換。

 瞬間、銀色の体が青く染まり、メタルシャフトに代わってトリガーマグナムがダブルの手中に収まった。

 

『ヒートトリガー!』

 

 高出力の攻撃形態ヒートトリガー。

 トリガーマグナムから放たれる弾丸は高威力の砲弾となってテラードーパントの体を突き破る。

 ゴロゴロと転がる敵を前に、マグナムのスロットにトリガーメモリを装填。マキシマムドライブの音声が響き渡った。

 

「「トリガーエクスプロージョン!」」

 

 紅蓮の炎が、テラードーパントの体を焼き尽くす。

 攻撃の寸前で立ち上がったテラーであったが、衝撃波を放って防御をすることしかできなかった。

 それもほんの一瞬。トリガーエクスプロージョンのパワーは均衡を打ち破り、テラーの体を完全に焼き尽くし、吹き飛ばした。

 

「……すごい」

『おおー。こいつが、ダブルのパワーかいな……!』

 

 宝もガッチャも、その戦いぶりと実力に、感嘆の声を漏らす。

 

「ちょっ、見るんならこっちも見なさいよ⁉」

 

 どっかからツインテさんの暴言が聞こえる。

 暴言じゃないか、でもすごい怒声だ。

 その凛は、文字通り懐から宝石をいくつか取り出し、まとめて偽Xに投げつけた。

 

「__Anfang(セット)!」

Call(目覚めよ)

 

 同時に向けられる二つの言霊。凛とルヴィア、二人から放たれた調べはそれぞれが放った宝石を爆裂させ、周囲に魔力の炎と土砂を巻き起こす。

 しかし、ゴルドXはライドルを回転させ。

 

「ライドル・ロングポール」

「たく、またぁ⁉ ちょっと宝、こいつなんなの⁉ あのぐにゃぐにゃ曲がる杖意味わかんないんだけど⁉」

「それはライドルです! Xライダーの深海探査用生体装備で、深海の水圧にも耐える強度とロープのようにしなる柔軟性、そして鉄筋をもたやすく切り裂く鋭さを、切り替えて使うことができます!」

「なんですのそのチート武装は⁉」

 

 そのチート武器を鋭い形態ライドルホイップへと変換し、地面を切り裂き凛たちに迫るX。

 凛は大慌てで宝石を取り出すが「あれ?」

 

「どうしたのです?」

「あ、いや、宝石が……あ、ないわこれ」

 

 一個しかなかった。

 赤いやつ。それも指先にちょこんと乗るくらいの。

 

「え、凛さんほかの宝石は……」

「え? え……あ、待って底尽きたかも」

 

 Xライダーが攻撃を再開した。

 

「何やってますの⁉ 宝石魔術師が宝石の準備を怠るだなんて⁉」

「それじゃ弾丸の入ってない銃と一緒ですよ凛さん……」

「だまらっしゃい外野ぁ!」

 

 それは自分が一番わかってるわともうそこらへんの折れた鉄筋を強化して殴りに行く凛。

 やけくそである。宝石以外もちゃんと習得しててよかったとも思ったらしい。

 なお、強化魔術をかけた鉄筋は見事に三枚におろされた。

 

「うわ、っとととぉ⁉」

「あなたもう少しマシな戦い方できませんの⁉」

「ない、わよ⁉」

 

 宝はそれを見て、ようやく癒えた体を持ち上げた。

 ガッチャードライバーを構え、ベルトに再びカードをセット。そして呼び出したエクスガッチャリバーを合体させ、エクスカリバーのカードを装填、変身する。

 

「変身!」

『ガッチャーンコ』『エーックス!』

『スチームホッパー!』『クロス! エクスカリバー! スーパー!』

 

 青く輝く騎士王の姿、クロスエクスカリバーだ。

 ワイルドモードへと転じるや、彼は凛の手の中に納まる。

 

「凛さん! もうこれでトドメさしてください!」

「……わかった! じゃ行くわよ!」

 

 凛の回路の出力ならば、クロスエクスカリバーの力を扱うには十分だ。

 だが、あの時とは異なりサファイアが合体していないため、凛への魔力供給はない。ので。

 

「一気に!」

「ぶった切って!」

「トドメにするわっ!」

 

 ワイルドモードによる斬撃がゴルドXの体をバラバラに引き裂いていく。

 一応攻撃を受け止めたりはしているのだが、鬼気迫る表情の凛には通じず一瞬でみじん切りにされた。

 

「……やっぱ金色にデコっただけだと弱いな」

 

 二号ライダーが偽ファイズを投げながらそうつぶやいた。

 さしものルヴィアもドン引きであった。

 

「……というかその形態、私の……」

 

 美遊がガッチャに通信を入れ、そんなことを言ってくる。

 みればそちらは、テラードーパントが敗れたことでドラゴンが制御を失い、不可思議な行動ばかりを繰り返しているようだった。

 吠えたり、突進したり。水の供給そのものは止まっていないようで、やはり膨張し続けている。

 

「っ……ねえルビー! このドラゴン、なんで消えないの⁉」

『メモリから独立して、完全な魔力のエネルギー体になっているようですね~! 限定展開で吹き飛ばしましょう!』

「う、うん! わかった!」

 

 セイバーを再び、今度は通常の限定展開で発動する。

 ルビーの体が黄金の聖剣に変化した。

 

「なら! 美遊!」

「うん。来て、宝!」

 

 凛がガッチャードを手放し、飛んだガッチャードの柄を美遊が握る。

 ガッチャードライバーにサファイアが合体し、魔力を供給開始。美遊とイリヤ、二人のその手に、無限に連なるエネルギーが宿った。

 

「よーっし! 行くよ!」

「ええ! 勝利を掴み取る七色の剣(エクスカリバー・カレイドスコープ)!」

 

 交差した金と青の剣から光がほとばしり、閃光の螺旋がテラードラゴンを焼き尽くす。

 全てを水で構成されたその肉体は一瞬にして蒸発し、煙となって消え果てた。

 唯一残ったテラーメモリも、攻撃に耐えきれずに粉砕され、塵すらも残さず消え去った。

 

「よし……!」

「やっぱ使えるよ、この合体攻撃!」

 

 以前と異なり他のカードの宝具は発動しなかったが、それでも十分な破壊力。

 空中を切り裂くほどのすさまじい光の渦だった。

 

 これで残る敵は、偽物のファイズだけだ。

 

「美遊、イリヤちゃん。僕が二号と一緒に、ファイズと戦う。だから、二人は結さんたちのほうお願い!」

「わかった、無理しないで」「よし、それじゃあ」

 

 ガッチャードはエクスガッチャリバーとドライバーを分離させ、スチームホッパーへ転身。

 イリヤと美遊と、それぞれ別の方向へと離れていく。

 

「二号さん!」

「おう、来たか!」

 

 ゴルドファイズと戦う二号ライダー。

 ルヴィアが宝石を弾丸として放ち、二号をサポートしている。凛さんの強化鉄骨投げは全く効いていなかった。

 その横で、ゴルドXだった黄金の泉が動き出し……再び実態を持った。

 

「んな⁉」

 

 上半身だけを実体化させゴルドXは攻撃を再開。

 凛にむかって溶けかけのライドルを振るう。ガッチャードがそれを防ぎつつ、ライドルとエクスガッチャリバーを交錯させた。

 

「こんの……溶けかけのくせになんてパワーしてるんだ……⁉」

「ガッチャード、そいつ投げろ!」

「は、はい!」

 

 言われるがまま、ライドルを弾いて敵に接近、装甲のあたりを無理やりつかんで、思いっきり投げる。ライダー二号もファイズをつかみ、Xライダーにぶつけた。

 

「よし、ナイスだガッチャード! こっからは任せとけ!」

 

 言うが早いか、再び接近。ファイズとXライダーをまとめて投げ飛ばす。

 渦を巻く風とともに、偽ライダーたちは空へと舞った。あれは、ライダーきりもみシュートだ!

 そこから、さらに跳躍し三度敵へと接近する二号ライダー。

 今度は一塊になった敵をつかみ、そして。

 

「飛べ! ライダーキックだ!」

「っ! わかりました!」

 

 ガッチャードはベルトを操作。風と共に舞い散った大気中の魔力を吸収しながら跳躍した。

 二号は背負い投げの要領で、一気に敵を投げ飛ばした!

 

「大車輪っ、投げぇッ!」

「ライダー、キィック!」

 

 弧を描きながら投げられた黄金の塊に、ガッチャードはキックをぶつける。

 火花と紫電が舞い散り、一瞬の拮抗の末に、二つの黄金は貫かれた。

 カードが露出する。

 偽物たちはその実態を保てなくなり、跡形もなく爆発四散した。

 

「よし、やったなガッチャード!」

「あ、ありがとうございます、二号さん」

 

 着地した後、そうほめてくる二号に、照れくさそうに宝は返す。

 

「さんはいらねえよ、そこは呼び捨てだ。と、まだ敵は残ってるんだったな」

 

 そう。残る敵は大将首のクロトー。

 その彼女は、サガの放つジャコーダービュートの猛攻をかいくぐりながら、炎の攻撃を放ち、イリヤたちをもまとめて吹き飛ばしていた。

 

「あつっ⁉ なにこれあつい⁉」

「魔力の炎……! イリヤ、ダブルの後ろに!」

「人使いが荒いなぁ!」

『サイクロンメタル!』

 

 再びの登場サイクロンメタル。

 疾風を纏うメタルシャフトが、クロトーのアグレッシブファイヤーを防いでいく。

 ならばと、技を切り替えクロトーは叫ぶ。

 

「『ボルテックサンダー!』」

 

 黄金色の稲妻が、ダブルに迫った。しかしその電撃はダブルを焼き尽くす直前に、地面へとそれた。

 サガが電撃を代わりにジャコーダーで受け、地面に流したのだ。

 鉄橋に電撃が響き、サガはジャコーダーを橋から引き抜いた。

 

「たくっ、数が多いんだから……」

『ウィッチメモリでは数を相手にするときついな。キバで行くか?』

「いや、極力使いたくないかな、それ……可愛くないし」

 

 ならばと、彼女は懐から一つのアイテムを取り出す。

 銀色のデバイスだ。

 

「ガイアメモリ強化アダプター⁉」

 

 フィリップが驚き声を上げた。

 クロトーはメモリにアダプターをセットする。ウィッチメモリが火花を散らし、その名を叫ぶ。

 

『ウィッチ・アップグレード!』

「アクセルみたくは……いかない、か! でも、これで!」

 

 ウィッチメモリがアップグレードし、進化した。

 黄金の輝きがウィッチステッキを満たし、その形状を変形。

 細長い錫杖のように変形した杖の先を、ライダーたちに向ける。

 

「このまま……吹き飛べ!」

 

『ウィッチ・マキシマムドライブ』

『ヘルズゲート・ブラスター』

 

 三大属性の技を組み合わせた漆黒のエネルギーが、ライダーたちに迫りくる。

 その攻撃が橋ごとすべてを穿つその前に。

 

「イリヤ!」

「うん!」

 

 イリヤと美遊が前に出た。二人の構えたステッキが魔力を受け止め、拮抗する。

 美遊の構えるサファイアに、小さなひびが広がった。

 

「サファイア⁉」

『大丈夫です! 宝様、皆様、トドメを!』

「オッケー……!」

 

 再びエクスをガッチャに合体、ユーフォーエックスを装填してスーパーガッチャードへと変身。

 二人の後ろで空中へと飛び、素早く構え。そしてベルトから魔力を放出しながら、ムーンサルトによって弧を描き、必殺の一撃を打ち放つ!

 

「ライッダァァー! 月面(げつめぇーん)キィーック!!!」

 

 月光を浴びながら放たれる一撃が、クロトーの腕を貫いた。

 ステッキが地に落ち、必殺技が消滅する。

 しかしまだ、クロトーは倒れていない。

 

「っ、浅かった……!」

「あ、あっぶなぁ……でも、このままっ、ああ⁉」

 

 逃走を図ったクロトーの全身に赤い糸と銀の糸が巻き付き、拘束。

 そのまま空中へ持ち上げる。

 

『ルナメタル!』

「縛れ、ジャコーダービュート!」

 

 縛り上げられ身動きの取れないクロトーは、脱出を図るが身動きさえできない。

 その時、クロトーは、夜空に赤い光を見た。

 

「先輩!」

「今です……隼人さん!」

「おう!」

 

 仮面ライダー二号の全身が赤い光に包まれる。

 ライダー放電によってため込んだ電気エネルギーだ。その力が足先に集中し、二号はベルト背部から空気を噴出、そのまま前転の体勢をとるや、さらにキックへと移行。

 矢じりのごとく敵を貫く、必殺の一撃を打ち放った!

 

「ライダアァー! 赤電(しゃくでぇーん!)回転(かいてん)キィーックッ!!!!!」

 

 赤熱化した二号ライダーの必殺キックが、クロトーの体を貫いた。

 装甲の下の白い皮膚がはげ、青い炎と混じりながら、舞い散る。

 二号の着地と同時に、二つの鞭による捕縛から解放されたクロトーの体は、地面にたたきつけられた。

 

「あは、は……ダーメだった、かぁ……」

 

 青い炎に包まれながら、クロトーの体が消えていく。すでにメモリはくだけた。スカルのカードを露出したレイズキバットもまた、赤い火花を散らしながら、地に伏せた。

 

「……木乃美」

 

 変身を解き、結が木乃美の前に立つ。

 木乃美はかすかに笑って。

 

「できるなら、あなたに、たおされたかったけど……」

「……もういい、喋らないで」

「……やさしいんだか、こわいんだか。でも、ま、いいか……どうせ」

 

 大きく笑って、体を投げ出して。

 木乃美は、醜悪な笑みを浮かべて、言った。

 

「また、あえるし?」

 

 結は思わず目を剥く。木乃美の姿は、すでにそこにはなかったが。

 純粋な彼女の悪意を、結は肌に感じ取っていた。

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