Fate/Gotcha liner   作:アカハナさん

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第八話 突破せよ、キャスター魔道要塞

 深夜零時。河川敷の鏡面界に、仄かに光がともった。

 その異常な現象を察知し、クラスカードの英霊は行動を開始する。

 光は魔法陣より現れ、そしてその中からいくつもの影が飛び出した。

 英霊の生み出した魔法陣はそれを敵と認識し、起動。

 それを見て、影の一つが声を放った。

 

『昨日と同様敵は上空! 攻撃が来る前に一気に飛んじゃいますよ!』

「う、うん!」

 

 イリヤは言われながら飛ぶ準備をしつつ、空を見る。魔法陣の量が明らかに増えていた。前回イリヤたちを仕留めそこなったから、より確実に倒せるように増やしたのだろうか。だが、飛行能力を得たイリヤたちにとって、その数が増えようとも問題ではない。

 

(そういえば、ミユさんは飛べるようになったのかな?)

 

 ちらりと横目で確認すると。ガコンッ! という音とともに、美遊が空中へと飛び出した。

 

「おお、飛んだ……」「というより跳んでない? アレ」

 

 宝が言う。確かに、何か見えない足場を使って、一気に跳躍しているようにも見えた。

 しかし今はそんな考察は置いておこう。『ささーお二人、いざ空へ! 宝さんは変身ですよ!』

 

「了解! イリヤちゃん、先行ってて!」

「うん!」

 

 イリヤを送り出し、宝もまたカードを構える。まずは、ホークスター。続いて、サボニードル!

 

『ホークスター!』「ホォォク!」

『サボニードル!』「サーボ!」

 

「変……いや、スカイ! 変身!」

『いっくでー! ガッチャーンコ!』

 

 二つの力を一つに合わせ、テンションマックスに飛び回る! 緑の翼の、ニードルホーク再び登場!

 

「ヒイィィィィハアァァァ! いっくぜぇぇぇ!」

「サボボボボ!」「ホォォォクスタァァァ!」

 

 ただ落ち着くだけではだめだ。その興奮の波に乗って、一気に最高に、あの強敵を打ち砕く!

 スーパーハイテンションになった宝は、一気に魔法陣の上まで飛び出した。

 すでに戦っているイリヤたちの戦列に参戦しつつ、生み出したガッチャージガンを構える。

 

『さあさあ、この大空こそバトルフィールド! 敵勢力を廃絶し、制空権をわがものとするのです!』

「て、テンション高いねルビー! よーっし、じゃあ!」

 

 早速ケミーカードをリード。カードは昨日一ノ瀬家で接待をしてくれたシルクハットのケミー。

 レベル2ジョブケミー、ドッキリマジーンのカードだ。彼のマジックで、砲射攻撃を複数に分裂、まとめて敵を狙い撃ち、撹乱する。

 キャスターは攻撃を回避しながらもいくつかの弾丸に被弾した。そこへすかさず、宝が銃を構え『ガガガガッチャージ・バスター!』

 

 アニマルレベル2のキャッチュラ、スチームライナー、レベル9トレントのジャングルジャンをまとめてスキャンし攻撃を放つ。煙とともに放たれたのは、高熱を帯びた強靭な粘性の糸だ。ガッチャージガンから伸びたそれはキャスターの体を絡めとる。逃れようとするキャスターを引っ張り、宝は叫ぶ。

 

「今だぜ、ミユ!」

 

 その叫びにこたえ、美遊が接近した。

 

 ここまでは、順調だ。

 凛の提案した作戦通りに事が運んでいる。その作戦とは、小回りの利くイリヤ、不安定な要素はあるものの非常に素早い宝を囮とし、敵に生じた隙を美遊が叩くというもの。

 基本的に挟撃の形で斉射し立ち回りつつ、イリヤに意識を割かせたところで先ほどのガッチャージバスターなどで動きを封じ。

 そこに、三点方向からの一撃殺を叩き込む!

 

「ランサー! 限定……!」

 

 美遊の必殺技が発動する。そうなれば、キャスターは一撃で……そう思った途端だった。

 ふっとガッチャージガンが軽くなり、見るとキャスターの姿がない。抜け出たわけではなかった。

 

「転移だってぇ⁉」

 

 キャスターはすぐ近くへと転移していた。それも、自身の命を狙った美遊の、すぐそばへと。それに気づいた宝は、すぐさま彼女を突き飛ばした。

 

「い、あがあぁあ⁉」

 

 直後、錫杖の一撃がガッチャードを貫き、彼の体を地にたたきつける。

 

「っ、一ノ瀬!」

 

 叫び声を聞きながら、宝は立ち上がる。が、かなり良い一撃をもらってしまったらしい。頭がうまく動かず、体も緩慢とした動きを見せてしまう。

 

「宝! 逃げなさい! 早く!」

 

 凛が叫んだ。わかっている。だが体が……

 そこにいくつもの光の線が並んだ。

 魔法陣の砲撃予測線。これではよけきれ「っ、このぉ!」

 

 美遊が宝の手を取り、上空へと運んだ。瞬間、彼らのいた場所に無数の光の放射がはなたれ、地面を焦がす。

 

「あ、あぶな……って私もあぶなぁい⁉」

「早くこっちに戻ってきなさいな……」

 

 凛は慌てていたらしく、砲撃の届かない橋の下から出てきてしまっていた。案の定砲撃に襲われて逃げ惑う羽目に。

 

「……ありがとな、ミユ」

 

 先ほどの攻撃で少し落ち着いたらしい宝は、そう美遊に礼を言う。美遊は「後にして」とそっけなく告げ、それから空中にとんと立った。

 

「二人ともー!」

『ご無事なようですねー!』

「うん、大丈夫」

「しかし、どうするんだ? 転移まで使えるってなったら、動きを止めるのは難しいぞ」

『そうやなぁ……限定展開してあいつの心臓狙っても、制限時間までに逃げられたら意味あらへんし……』

 

 そこに『少々提案があるのですが』とサファイアが言った。

 その言葉にみんなが、耳を傾ける。サファイアは提案を告げ、みな目を丸くした。

 

『……なんですか、その目は』

「いやぁ……サファイアってあんまりそういう、すごい? 戦い方思いつきそうになかったし……」

『サファイアちゃんも大分とんでもない戦法を思いつくものですねぇ。お姉ちゃん感激です!』

『…………』

 

 サファイアは押し黙り、無言で不満を漏らした。

 

「でも、良さそう。少なくとも、槍で狙うよりは確実性もあるし」

「っし! じゃあ早速決行だ!」

 

 

 

 ♦

 

 

 

「何してるのかしら……」

 

 手を出せない凛は、動きを止めたイリヤたちを見て、そうつぶやいた。

 何か話し合っているようだが、まだ戦う方法をうかがっているというのか?

 いや、流石に素人に作戦まで任せることはできない。なら、呼び戻「遠坂! 動き始めましたわ!」

 

「っ、まだやるっての⁉」

 

 凛は叫びながら上空に目をやり、そして驚いた。排気音をごうごうと鳴らしながら、反射平面の上を走るものがあったのだ。

 金色に黒いラインを走らせたその大型バイクは、レベル7のビークルケミー「ゴルドダッシュ」。

 その上にまたがり、宝が、ガッチャードが空を駆ける!

 

『反射平面を地面代わりにできるて確かにゆうたけどなぁ!』

「いいじゃねーか! 一気に行くぜゴルドダッシュ!」「ダーッシュ!」

 

 ニードルホークのままゴルドダッシュに乗り、ガッチャージガンを放って牽制、キャスターの注意を自分に向ける。キャスターは怒りながらも砲撃を放ち、ゴルドダッシュを狙い撃つ、が。

 

『ゴルドダッシュの本来の最高時速は265km/h。ですが、それは彼の気分次第で向上します。今のような状況であれば……』

 

 その速度は、二倍にまで跳ね上がる! 530km/hの速度となったゴルドダッシュは閃光となって砲撃をかわしていた。そこに、イリヤもまた攻撃を放ち牽制を行う。二点からの攻撃にキャスターは逃げることもせず砲撃を行う。

 転移魔術を使えば、すぐにそのクロスレンジからは逃れられるはずだが、使ってはこない。それはつまり『キャスターさんの転移魔術は、そう連続して使えるものではないようです!』

 

『神代の魔術がどれほどかはわかりませんが、現代における転移は非常に下準備に時間がかかり、その上発動できるのは一回きりです。神代においても、少なくともチャージ時間に類するものがあるのなら、次の使用が可能になる前に……!』

「わかった。イリヤスフィール!」

 

 美遊が彼女にカードを見せる。必槍を放つ、合図。

 イリヤは飛び出し、敵に向けて杖を向けた。取り出したカードをリード!『ケミーライズ!』

 

 しかしそこで、敵が転移した。転移魔術が回復していたのだ。敵はイリヤの真上、そこから今度は魔力砲を放とうと杖を振り上げ「散弾!」

 

 無数の散弾が杖より放たれ、敵の視界を覆った。ちょうど転移をしていたところに食らい、まともによけられず弾丸を受け続ける。

 イリヤがリードしたのはレベル7ジョブケミー、バレットバーン。イリヤの創造した散弾に、より威力を与える役割を担った。

 これにより敵の動きが止まる。

 今が、チャンスだ!

 

「宝君!」

 

 宝は声にこたえ、ゴルドダッシュを動かし、敵に接近する。時速530km以上の速度のそれは、金色の弾丸となる。

 ゴルドダッシュのトルクを上げる。排気音が変わり、タイヤに強烈な魔力の奔流が流れ、その瞬間。

 

「おらああぁぁぁ!」

 

 ゴルドダッシュの体が空中を舞った。ばねのように、本当に空を舞う弾丸となったそれが、動けないキャスターにめがけて高速で突っ込む。

 

『いっけえええええ!!!!』

「ライッダァァァ!」

 

 ガッチャが叫ぶ! 魔力障壁でゴルドダッシュを抑え込むキャスターだが、物理的弾丸と変わったゴルドダッシュは止まらない。最大出力で、最大馬力で、一気に敵を!「ダァァァァッッッシュゥゥゥゥ!!!!」

 

 バキンッ!

 

「ブレェェーーィィクゥゥ!」

 

 すさまじい響きとともに、盾が破れ、体が吹き飛ぶ。敵の外殻は飛んでいない、カードはまだ動く。

 ならば、もう一撃!

 

 カード同士を引き離し、その間と自身のパッションアタノールへと魔力を収束。

 相棒の体からその身を躍らせ、一気に飛び。何物をも置き去りにする速度で、そのまま前回転!

 

「大っ回っ転っ……!」

 

 風と共に、普段以上の魔力が身を包む。

 そして宝は、貯めた力を一気に心臓に、敵のカードめがけて解き放った!

 

「スカァァァイィィ! キィィッック!!!!」

『ニードルホォォク! フィーバァァァ!』

 

 転移するよりも早く。新緑の矢となったガッチャードは、キャスターの体を一撃のうちに貫いた。

 カードが露出、キャスターは黒い血液を一気に噴き出し、光を放ち。

 

 直後、爆発。轟音とともに消し飛んだ。

 

 

 

 ♦

 

 

 彼女は小さな声で、パートナーに独白する。

 

「私は二人みたいに、自在に飛ぶイメージが作れなかった。できたのは、魔力を固めて、透明の足場にすることくらい……それも、応用なのだけど」

 

 美遊の飛行方法は、至極単純。魔力で足場を作り跳躍。身体強化を行い、それを立て続けに行うことではるか高空へと舞うのだ。イリヤたちに言われたこと、そしてキャスターとの初戦で宝が見せた大ジャンプ技、ビッグスカイジャンプ。それらを総合して、その飛び方を作り上げた。

 

『魔力の総合運用で見れば、非常に効率的な飛行法です。この飛び方のおかげで、先ほどの攻撃につなげられたわけですから』

 

 先ほどゴルドダッシュが空へ飛びあがったのは、美遊の飛行法における足場を、敵の魔力指向制御平面で代用、そこに大量の魔力を流すことで本来不可能な大ジャンプを可能としたのだ。

 そこから繋がったライダーブレイクは、キャスターを吹き飛ばし、見事にとどめへとつなげた。

 

「……サファイアはすごいね。私じゃ、制御平面をジャンプ台にするなんて思いつかなかった」

『……いえ。もとはこれは、イリヤ様と宝様の言葉をまとめただけです……美遊様』

「なに?」

 

 サファイアは少し間をおいて、言った。

 

『先日、美遊様はおっしゃいました。カードの回収は全部わたしがやる、と』

 

『私には、あの時の美遊様の真意はわかりません。ですが、カレイドライナーは力を合わせてこそ……。それに宝様も、イリヤ様も、わたしは……信頼に値する方だと思っています』

「うん。……わかってる、わかってるよ、サファイア……でも、私は……」

『美遊様?』

 

 話す二人のもとに、風が舞って、宝とイリヤがそれぞれやってきた。

 

「っしぃ! ガッチャしたぜー! ほーらこのとーり!」

『やったでー! ワイらの勝ちやー!』

 

 ふよふよ飛びながら、声高らかに宣言する。まだニードルホークの興奮剤が抜けきっていないらしい。

 宝の手にはしっかりとキャスターのカードが握られていた。

 

「やったね! ……でも宝君、バイク君を投げ出すのは、ちょっと」

「あ」

 

 そういえばゴルドダッシュから飛び出して、そのまま必殺技を放ったから、回収できていなかった。

 一応ルビーが回収してくれていたようだが。

 ゴルドダッシュはすさまじく怒っていた。「ダーッシュ……」

 

「ご、ごめんなゴルドダッシュ……」「ダーッシュ」

『今度八時間動かしてくれたら許しちゃるってよ』

「ちょ、それ無理!」

 

 興奮剤も抜けきって、完全にいつもの口調でそう叫ぶ宝。しかしそうしないと機嫌は治りそうにないし、仕方ないのか……

 イリヤはそれを見て笑いながら、そろそろ空間も消え始めるかなと思って空を見た。だが、まだ空に亀裂は見えない。

 

「今日は長いね?」

『むぅ、おかしいですね。すでに壊れていてもおかしくない時間なのですが……』

 

 そうルビーがつぶやくと同時に。

 

 

 

 肉を引き裂く音が、響いて。

 

「な、なにっ⁉」

「っ、あれって!」

 

 宝と美遊が音の聞こえたほうを向いて、叫ぶ。河川敷、橋のすぐ近くで。

 二つの人影が倒れていた。あれは……!

 

「凛さん! ルヴィアさん!」

 

 彼女たちのすぐそばには、漆黒の剣士が。

 

 第二の敵が、イリヤたちを見つめていた。

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