FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
やがて。
「…間もなく、ドクターが指定したポイントに着きます」
前を行くマシュが振り返り、そう告げる。
しかし、歩き出さずにその場で周りを見るマシュ。
「しかし…見渡す限り炎の海、というべきでしょうか。資料にあるフユキという街とは全然違いますね」
「…もともと違う街というよりは、炎の海に変えた原因が何かある、と考えるべきだと思うが。例えば災害だが…」
「私が見た資料ではそのような災害の記録はなかったと思いますが…」
そんなマシュと考察をしていると。
――キャアーー!!
どこからか女性の悲鳴と思えるものが。
「マシュ!今のって…!」
「っどう聞いても女性の悲鳴です。急ぎましょう!」
藤丸が反応し、マシュが答えながら走り出す。
「あ、おい…!」
二人は予想以上に足が速く、更には突然の事に反応が遅れ、取り残されてしまった。
………
……
…
「ちっ…」
どうしたものか。
先程のように襲われた場合、今の自分はまさに丸腰状態。
まず殺されてしまうだろう。
かといって、サーヴァントとの契約なんて、そう簡単なものではないだろう。
「……?」
ふと、足元を見る。
この炎に塗れた大地で、不自然に虹色に光る石が落ちていた。
これはあれか、ガチャで使うやつ。
名前は忘れたが、恐らくそうだろう。
尤も一つで意味があるかどうかが謎だし、そもそも召喚なんてどうしたらいいのやら。
「…後で藤丸に渡すか」
あいつならうまく使えるのだろう。
そう思い、手を触れた刹那。
「っ!?」
突然、石は眩く光りだし、辺りに魔法陣のようなものが展開される。
やがて、光は柱のように大きく立ち上がり、衝撃で軽く吹き飛ばされ、その場によろめく。
それでも何とか踏みとどまり、衝撃を腕でガードしながらその中心に目をやると、ぼんやりと人影が浮かぶ。
その人影がはっきりしたものになるにつれ、衝撃も弱まり、それに合わせて自分も腕を下ろす。
……やがて、人影はこちらに近づき、腰に携えた剣を抜き。
「…サーヴァント、アヴェンジャー。召喚に応じ参上しました」
その切っ先を、こちらの鼻先数ミリの場所に突き付けながら、そう告げてくる。
「どうしました、その顔は?」
そう、どこか楽しそうに告げる彼女の顔は、見覚えがあった。
ジャンヌ・ダルク・オルタ。
尤も、見覚えがあったのは事前に下調べをしていたからなのだが。
固まっているこちらの反応に満足したのか、剣の主は切っ先を放し、こちらに近づきながら。
「……さぁ、契約書で………え…っ!?」
懐から出した契約書だろうか、それをこちらに渡すためか近づいてきたところで、言葉を不自然に切りながら。
「嘘……!」
カラン、と金属音を響かせながらその場に剣を落とし、声を震わせていた。
「…っ………!」
距離が近くなっていたからか、小さい声で呟く声が耳に入り。
「……何故、俺の名前を…?」
名乗っただろうか?
いや、名乗っていない。
だとすれば偶然、あるいは召喚の時に名前が伝わるのだろうか。
そんな事を考えていると。
「っ…!」
こちらに軽く体当たりするくらいの勢いで、縋るように抱き着いてくる。
「……お、おい…」
「やっと…やっと、会えた……私の、マスター…!」
思考停止。
女性相手に握手を求められても断るレベルだというのに、これで平静を保てるわけもなく。
かといって引き剥がすこともできず、固まって声をかけることしかできない。
しかし、そんなこちらの動揺など気付いていないかのようで。
「この巡り会わせには…これに限ってだけは、神に感謝すべき……いえ、またあの苦痛を私に与えようという事なのでしょう」
こちらに顔を埋めたまま、そんな風に喋りだすジャンヌ。
彼女の頭を飾るサークレットが少しだけ痛い。
「…いいでしょう。私に地獄を見せようというのなら、私は…二度とあの悲劇を繰り返さないよう、抗って見せましょう。今度こそ…私は……!」
何か一人で納得しているようだが、どういうことなのか状況が全く分からない。
持ってきた契約書とやらがジャンヌの足の下になってるし。
いいのか、これ。
…というか、いつまでこの状態なのだろう。
………
……
…
それから数分。
「……改めて、自己紹介するわ。サーヴァント、アヴェンジャー。名前は…知ってたみたいだけれど?」
「え、あ、あぁ…ジャンヌ・ダルク・オルタ…だって事くらいは」
「…構わないわ。改めて宜しく、マスター」
「あ、あぁ………マスター?」
まぁ召喚をしたのだからそうなのだろうと察してはいたのだが。
「貴方が召喚し、私というサーヴァントがそれに応じた。だからマスターだということです」
大丈夫か、と言わんばかりの口調のジャンヌに、空返事であぁ、と返す。
「…この契約の下で、私は貴方の剣となり、いかなる道も切り開くと、約束しましょう」
膝をつき、そう宣言する彼女の姿は、まるで、忠誠を誓う騎士のようで。
けれど、そんな振る舞いなど知らず、どう返すべきかよくわからなかった部分もあり。
「……よろしく、ジャンヌ」
無難にそう返すときょとんとした顔で見返され、すぐにどこか強気な笑みに代わり。
「えぇ…よろしく、マスター」
そう、返事を返してくれた。
「……」
「……」
その後、二人固まる。
その静寂を打ち破ったのは。
「…それで、これからどうするのかしら?」
「……俺が決めるのか?」
「当然です。貴方はマスターで、私はマスターの魔力の供給を受ける代わりに、命に従い、マスターを護るサーヴァント。であるのなら、私が貴方の決定に従うのが道理というもの」
尤も、それがあまりに無茶なものであれば意見くらいしますけど。
それだけ言い、そこで言葉を止める。
こちらの言葉を待っている、のだろう。
ならば。
「…ここに来る前に一緒にここに来たマスターとはぐれた。まずはそっちと合流をしたいと思う。道中を頼む」
「承知しました。マスター」
こちらの言葉に、ジャンヌは特に反論もなかった。
こうして、初めて契約を交わしたサーヴァントと共に、燃え盛る街を歩きだした。