FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
現状について、聞いた限りでは。
『つまりあなたはここで起きた聖杯戦争で呼ばれたサーヴァントであり、唯一の生存者…なのですね』
「負けてない、という意味では、だけどな」
ドクターと青年…改め、キャスターとの会話。
しかし、聞くところによれば。
聖杯戦争が終わったと思いきや街は一夜で燃え、サーヴァント以外は全滅。
そしてそのサーヴァントについても。
「戦争を再開するかの如く、暴れだした…か」
セイバーが特に動きが激しく、別のサーヴァントを倒しては汚染され、セイバーと共に暴れだした、とのこと。
ちなみに、先ほどジャンヌが倒したのはランサーだそうだ。
他にも、キャスターが倒したサーヴァントもいるようで。
『ということは、残ったサーヴァントを倒しさえすれば…』
「聖杯戦争は終わる」
ドクターの言葉にキャスターが続ける。
当面のところは、それを目的に動くのだろうか。
「そうなれば、この特異点が終わる可能性も高いわね」
所長がそう続ける。
だとすればこちらの方針も確定だろう。
「ジャンヌ」
「えぇ。承知しました、マスター」
ジャンヌに確認すると、異論がないのか同意してくれた。
「ところで、セイバーの居場所は分かっているの?」
所長が尋ねる。
話を聞く限りでは、主犯というべき存在はセイバーだろうと考えれば、セイバーの居場所を尋ねるのは自然である。
そして、キャスターもそれを分かっていたのか。
「…あぁ。奴はこの街の中心で…守ってやがるのさ」
―汚染された、大聖杯を。
キャスターは遠くを見ながら、そう、呟くように告げた。
「おそらくセイバーにアーチャーが従っている。そっちは俺が何とかする…あいつとはもう一度はっきり決着をつけなきゃならねぇからな」
「協力…してくれるってこと?」
決意を固めるキャスターに藤丸が尋ねると、キャスターは人の好い感じの笑みになり。
「おうよ。だから安心しな、俺がいれば百人力だろ?」
なんて笑いながら藤丸の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「ああぁぁぁ…」
何かを言いたげな藤丸だが、頭を揺さぶられて言葉になっていない。
「それはつまり、協力してくれるってことでいいのかしら」
「あぁ」
「こちらの事情も知らないのに?」
「構わないさ」
自分の時代以外には深く関わらず、あくまで兵器として協力する。
「それがサーヴァント…か」
「そういうことさ。ま、俺は…ってだけだけどな」
そんな会話を交わす。
それはまぁいいと思うし、もう少し聞きたいことがないわけでもないのだが、それよりも。
「…キャスター」
「あん?」
「そろそろ、放してやったらどうだ?」
「…ん?」
もはや無意識だったのか、こちらが指さした先を見ると。
「ああぁぁあぁぁ…世界が、世界がまわりゅ……」
いつの間にか撫でる力が強くなったのか、揺さぶられすぎて意識朦朧となる藤丸の姿があった。
「おっと、わりぃわりぃ。撫で心地がよくてつい、な」
「あふ…っ」
ぱっと手を離すと、ふらっとよろめく藤丸。
「マスター!」
そんな藤丸を慌てて支えるマシュ。
一見非力そうにこそ見えるが、サーヴァントとして力を得たからなのか、あっさりと支える。
「大丈夫ですか?」
「ありがと、マシュ。へーきへーき」
マシュの心配にえへへ、と笑いながら返す藤丸。
その後すぐに自力で立ち上がっているのを見る限り、本当に問題はなさそうだ。
「何やってんのよ…」
状況を鑑みているからか、呆れ半分、ふざけに対する怒り半分な感じで所長が吐き捨てるように言う。
そんなこんなで。
『あはは…いいじゃないですか。真剣さも重要ですが、合間の息抜きというのも重要ですよ』
「…えぇそうね。さすが、普段から息抜きばかりの人は言うことが違うわね」
『うぐ…』
「無駄口叩いてる暇があるなら、マスター候補生の救出手段の模索でもしてなさい」
『りょ、了解しましたぁー…』
その言葉を最後にドクターの映像が霧散する。
どうやら通信を切ったようだ。
「…まぁいいわ、どうせ、この街の間だけだし、我慢しましょう」
こちらが気に入らないのか、あるいは別のマスター候補に対する期待が大きいのか。
「向こうもそうだけど、戻ったらそのサーヴァントとの契約は解除してもらうつもりよ。優秀なマスター候補は戻ればいるのだから、そちらと組ませます」
こちらを見て所長は言う。
ジャンヌは確かに、先の戦いぶりから力のあるサーヴァントといえるだろう、と素人目には思う。
だとすれば、契約するマスターがより優秀なら、よりジャンヌの力を引き出せるのだろう。
「…分かり『冗談』」
上司の指示で、拒否する理由が思い当たらなかったので了承しようとしたが、ジャンヌは被せるように拒否する。
「私は彼以外のマスターと契約する気はありません。契約が解除されるのなら、私は座に帰るか、あるいは…」
「…ジャンヌ」
きっぱりと拒否をするジャンヌに声をかける。
すると、ジャンヌは少しムッとした感じで。
「マスターもマスターです。そう簡単に契約解除などに応じないように。私と正式に契約を交わしたマスターだという自覚を持ってもらいたいのですが」
「あ、あぁ」
詰め寄ってくるジャンヌ。
他に対する警戒心はどこへやら、距離が近い。
「…あまり深くは介入しないとか、あのキャスターは言っていた気がするんだが」
「それはあのキャスターのやり方でしょう。私は私です」
近づいてきたジャンヌに真っ直ぐに視線を向けられ、僅かに気恥ずかしくなり、視線を逸らそうとするが。
「…目を逸らさないで」
言われ、両手で頬を押さえられ、顔を動かすことすら許さず。
「先程も言ったかもしれませんが、私は私のやり方で、貴方を守るためにここにいるのです。そのためなら、私は人理すら、世界すら壊す」
「……」
傍から聞けば、危険な思想であることは間違いない。
人を見る目があるなんて言うつもりは全くない。
それでも、ジャンヌが本気で言っているのだろうという、理由のない確信。
そんな感情を向けてくれるジャンヌには、相応の何かで応えたいと、単純に思う。
だからこそ、他の誰もがジャンヌを危険だと、敵だと見なしたとしても。
少なくとも、俺は。
「…なら俺は、お前のマスターとして、お前と共に歩むと約束しよう」
ジャンヌが人理に仇なし、世界を壊すサーヴァントとならないように。
共に歩み、導くのはマスターである俺の役目になるのだろう。
「共に歩むことを、受け入れてくれるか。ジャンヌ・ダルク・オルタ」
「えぇ。私の全ては…マスター、貴方と共に」
問いかければ、ジャンヌは笑みを浮かべて答えてくれた。
その笑みはいつもの皮肉な笑みではなく、
ジャンヌと、握手を交わす。
「…だからどうか、この手を、離さないで」
時折見せる、彼女の弱さのようなもの。
僅かだが、手が震えている。
俺には、なぜ震えているかはわからないが。
「分かった」
そう、一言だけ返す。
たとえどのような形での別れが訪れるとしても。
きっと、この手を離してはいけないと、そう思う。
―それは、誓い。
―共に歩むと決めた、他の誰でもない、俺自身の。
ストーリーに沿った話を書きたいと思っても、オリジナル展開のほうが筆が進んでしまう件。
のんびり進むので気長に待ってくださいまし。