FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

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決断 - II

現状について、聞いた限りでは。

 

 

『つまりあなたはここで起きた聖杯戦争で呼ばれたサーヴァントであり、唯一の生存者…なのですね』

「負けてない、という意味では、だけどな」

 

 

ドクターと青年…改め、キャスターとの会話。

しかし、聞くところによれば。

聖杯戦争が終わったと思いきや街は一夜で燃え、サーヴァント以外は全滅。

そしてそのサーヴァントについても。

 

 

「戦争を再開するかの如く、暴れだした…か」

 

 

セイバーが特に動きが激しく、別のサーヴァントを倒しては汚染され、セイバーと共に暴れだした、とのこと。

ちなみに、先ほどジャンヌが倒したのはランサーだそうだ。

他にも、キャスターが倒したサーヴァントもいるようで。

 

 

『ということは、残ったサーヴァントを倒しさえすれば…』

「聖杯戦争は終わる」

 

 

ドクターの言葉にキャスターが続ける。

当面のところは、それを目的に動くのだろうか。

 

 

「そうなれば、この特異点が終わる可能性も高いわね」

 

 

所長がそう続ける。

だとすればこちらの方針も確定だろう。

 

 

「ジャンヌ」

「えぇ。承知しました、マスター」

 

 

ジャンヌに確認すると、異論がないのか同意してくれた。

 

 

「ところで、セイバーの居場所は分かっているの?」

 

 

所長が尋ねる。

話を聞く限りでは、主犯というべき存在はセイバーだろうと考えれば、セイバーの居場所を尋ねるのは自然である。

そして、キャスターもそれを分かっていたのか。

 

 

「…あぁ。奴はこの街の中心で…守ってやがるのさ」

 

 

―汚染された、大聖杯を。

 

 

キャスターは遠くを見ながら、そう、呟くように告げた。

 

 

「おそらくセイバーにアーチャーが従っている。そっちは俺が何とかする…あいつとはもう一度はっきり決着をつけなきゃならねぇからな」

「協力…してくれるってこと?」

 

 

決意を固めるキャスターに藤丸が尋ねると、キャスターは人の好い感じの笑みになり。

 

 

「おうよ。だから安心しな、俺がいれば百人力だろ?」

 

 

なんて笑いながら藤丸の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

 

 

「ああぁぁぁ…」

 

 

何かを言いたげな藤丸だが、頭を揺さぶられて言葉になっていない。

 

 

「それはつまり、協力してくれるってことでいいのかしら」

「あぁ」

「こちらの事情も知らないのに?」

「構わないさ」

 

 

自分の時代以外には深く関わらず、あくまで兵器として協力する。

 

 

「それがサーヴァント…か」

「そういうことさ。ま、俺は…ってだけだけどな」

 

 

そんな会話を交わす。

それはまぁいいと思うし、もう少し聞きたいことがないわけでもないのだが、それよりも。

 

 

「…キャスター」

「あん?」

「そろそろ、放してやったらどうだ?」

「…ん?」

 

 

もはや無意識だったのか、こちらが指さした先を見ると。

 

 

「ああぁぁあぁぁ…世界が、世界がまわりゅ……」

 

 

いつの間にか撫でる力が強くなったのか、揺さぶられすぎて意識朦朧となる藤丸の姿があった。

 

 

「おっと、わりぃわりぃ。撫で心地がよくてつい、な」

「あふ…っ」

 

 

ぱっと手を離すと、ふらっとよろめく藤丸。

 

 

「マスター!」

 

 

そんな藤丸を慌てて支えるマシュ。

一見非力そうにこそ見えるが、サーヴァントとして力を得たからなのか、あっさりと支える。

 

 

「大丈夫ですか?」

「ありがと、マシュ。へーきへーき」

 

 

マシュの心配にえへへ、と笑いながら返す藤丸。

その後すぐに自力で立ち上がっているのを見る限り、本当に問題はなさそうだ。

 

 

「何やってんのよ…」

 

 

状況を鑑みているからか、呆れ半分、ふざけに対する怒り半分な感じで所長が吐き捨てるように言う。

そんなこんなで。

 

 

『あはは…いいじゃないですか。真剣さも重要ですが、合間の息抜きというのも重要ですよ』

「…えぇそうね。さすが、普段から息抜きばかりの人は言うことが違うわね」

『うぐ…』

「無駄口叩いてる暇があるなら、マスター候補生の救出手段の模索でもしてなさい」

『りょ、了解しましたぁー…』

 

 

その言葉を最後にドクターの映像が霧散する。

どうやら通信を切ったようだ。

 

 

「…まぁいいわ、どうせ、この街の間だけだし、我慢しましょう」

 

 

こちらが気に入らないのか、あるいは別のマスター候補に対する期待が大きいのか。

 

 

「向こうもそうだけど、戻ったらそのサーヴァントとの契約は解除してもらうつもりよ。優秀なマスター候補は戻ればいるのだから、そちらと組ませます」

 

 

こちらを見て所長は言う。

ジャンヌは確かに、先の戦いぶりから力のあるサーヴァントといえるだろう、と素人目には思う。

だとすれば、契約するマスターがより優秀なら、よりジャンヌの力を引き出せるのだろう。

 

 

「…分かり『冗談』」

 

 

上司の指示で、拒否する理由が思い当たらなかったので了承しようとしたが、ジャンヌは被せるように拒否する。

 

 

「私は彼以外のマスターと契約する気はありません。契約が解除されるのなら、私は座に帰るか、あるいは…」

「…ジャンヌ」

 

 

きっぱりと拒否をするジャンヌに声をかける。

すると、ジャンヌは少しムッとした感じで。

 

 

「マスターもマスターです。そう簡単に契約解除などに応じないように。私と正式に契約を交わしたマスターだという自覚を持ってもらいたいのですが」

「あ、あぁ」

 

 

詰め寄ってくるジャンヌ。

他に対する警戒心はどこへやら、距離が近い。

 

 

「…あまり深くは介入しないとか、あのキャスターは言っていた気がするんだが」

「それはあのキャスターのやり方でしょう。私は私です」

 

 

近づいてきたジャンヌに真っ直ぐに視線を向けられ、僅かに気恥ずかしくなり、視線を逸らそうとするが。

 

 

「…目を逸らさないで」

 

 

言われ、両手で頬を押さえられ、顔を動かすことすら許さず。

 

 

「先程も言ったかもしれませんが、私は私のやり方で、貴方を守るためにここにいるのです。そのためなら、私は人理すら、世界すら壊す」

「……」

 

 

傍から聞けば、危険な思想であることは間違いない。

人を見る目があるなんて言うつもりは全くない。

それでも、ジャンヌが本気で言っているのだろうという、理由のない確信。

そんな感情を向けてくれるジャンヌには、相応の何かで応えたいと、単純に思う。

だからこそ、他の誰もがジャンヌを危険だと、敵だと見なしたとしても。

少なくとも、俺は。

 

 

「…なら俺は、お前のマスターとして、お前と共に歩むと約束しよう」

 

 

ジャンヌが人理に仇なし、世界を壊すサーヴァントとならないように。

共に歩み、導くのはマスターである俺の役目になるのだろう。

 

 

「共に歩むことを、受け入れてくれるか。ジャンヌ・ダルク・オルタ」

「えぇ。私の全ては…マスター、貴方と共に」

 

 

問いかければ、ジャンヌは笑みを浮かべて答えてくれた。

その笑みはいつもの皮肉な笑みではなく、未来(さき)に希望を持つような、それでも不敵さを残した、彼女らしい笑みだった。

ジャンヌと、握手を交わす。

 

 

「…だからどうか、この手を、離さないで」

 

 

時折見せる、彼女の弱さのようなもの。

僅かだが、手が震えている。

俺には、なぜ震えているかはわからないが。

 

 

「分かった」

 

 

そう、一言だけ返す。

たとえどのような形での別れが訪れるとしても。

きっと、この手を離してはいけないと、そう思う。

 

 

―それは、誓い。

 

 

―共に歩むと決めた、他の誰でもない、俺自身の。




ストーリーに沿った話を書きたいと思っても、オリジナル展開のほうが筆が進んでしまう件。

のんびり進むので気長に待ってくださいまし。
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