FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

20 / 70
役割

その後、荒れた街中を進み続け。

 

 

「はっ!」

 

 

マシュは盾を操り。

 

 

「ふん!」

 

 

キャスターは自らが得意とする魔術で。

 

 

「ふっ!」

 

 

ジャンヌは自らの剣、あるいは炎を用いて敵を薙ぎ払いながら進んでいく。

キャスターという戦力が一人増えただけでも、道中の安心感は段違いであった。

そんな中、所長、藤丸と俺はただサーヴァントの戦う姿を後ろで見ていることしかできない。

 

 

「はっ!」

 

 

…訂正。

所長は魔術の心得があり、サーヴァント程ではないにせよ、戦いに参加できていた。

つまり、何もできていないのは藤丸と俺のみ。

 

 

「…ねぇ」

「?」

「私達…これでいいのかな」

 

 

藤丸に問いかけられる。

質問の意図は分からなくはない。

同じ立場である以上、どうしても考えることである。

皆は戦っているのに、自分たちは守られているだけ。

 

 

「…言いたいことは分かる」

「うん…」

「だが、今の俺たちに何が出来る。魔術の心得すらない、俺達に」

 

 

疑問をぶつけると、藤丸は肩を震わせる。

 

 

「っ…でも、このままじゃ私……」

「……」

 

 

はぐれる前の藤丸を思い出す。

悲鳴一つ聞くだけで、それを疑いもせず助けに駆け出すくらいである。

良心の呵責のようなものもあるのだろう。

それについては、俺にないわけでもない。

 

 

「…今の俺達には、戦いにおいて出来る事はないだろう」

「だよね。私なんかじゃ…」

 

 

落ち込む藤丸。

 

 

「話は最後まで聞け」

「う…」

「俺は、戦いでは、と言った。戦い以外では……あるんじゃないのか。マシュにしてやれる事が」

 

 

聞けば、藤丸は考える。

 

 

「私が…出来る事、か」

「……」

 

 

とはいえ、そう簡単に見つかることでもないだろう。

俺だって、ジャンヌに対して出来ることがあるかと言われれば、正直分かっていない。

だからこそ。

 

 

「…ゆっくり探せばいいんじゃないのか」

 

 

そう、考えを伝える。

戦いについても、これから色々な事を学べば出来る事は(おの)ずと増えるだろう。

 

 

「そう、だね。頑張ってみる」

「そうか…というより、だ」

「?」

「…お前、俺が同期だということを忘れたか」

「あ」

 

 

誰かに相談したかった気持ちは分からんでもないが。

それはどうなのだろうと思う。

 

 

「あ、あはは…だよねー。ごめんごめん」

「……まぁいいが」

「うん、ありがと。ちょっと、考えてみるよ」

「そうか」

 

 

やがて、見ている先で戦闘が終わったのか、少しばかり静かになる。

その様子を見計らってか。

 

 

「…ありがとね。できそうな事、やってみる!」

 

 

なんて言いながら、マシュに駆け寄っていく。

上手くいけばいいが。

そんなことを考えていると、入れ替わるようにジャンヌが近づいてきて。

 

 

「何か話してたのかしら?」

「あぁ…大したことでもないがな」

 

 

藤丸の名誉のために、黙っておいても構わないだろう。

というより、後の事を考えると、藤丸が一人前のマスターになる必要があるだろう。

 

 

「へぇ…」

 

 

言いながら、ジャンヌは藤丸の方を見る。

追うように見れば、藤丸がマシュといろいろ話しているのが見える。

その内容まではよく聞こえないが、会話は弾んでいるようだ。

それを見つめるジャンヌの横顔が見えるが、表情については感情が見えない。

そこまで興味がないのだろうか。

 

 

「……ま、どうでもいいわ」

 

 

興味がないようだ。

ジャンヌは藤丸達から視線を外し、こちらに向き直り。

 

 

「…ん」

 

 

こちらに手を伸ばしてくる。

一瞬考えるが、先程のジャンヌの言葉を思い出す。

 

 

―だからどうか、この手を、離さないで。

 

 

それを思い出し。

 

 

「…これでいいのか?」

 

 

尋ねながら、手を伸ばすと、ジャンヌは軽く笑みを浮かべながら。

 

 

「少しは分かってきたみたいですね…私の事」

 

 

こちらの手を握り、更に距離を詰めてくる。

ただ手を繋ぐだけでは飽き足らずか、ジャンヌの指がこちらの指に絡むように握られ、ぴったりと隣にいる。

……これは漫画とかでたまに見る、恋人繋ぎとかいうやつでは。

マスターとサーヴァント、とはいえ女性がこうも近くにいるのには慣れていないので気恥ずかしいものはあるが、拒絶する気は起きなかった。

 

 

「…近いな」

「まだ遠いと思いますけど」

 

 

なんとか一言絞り出すが、あっさりと流される。

これより近いってどれだけなのだろうか。

ふと、ジャンヌの方を見れば。

 

 

「…何か?」

 

 

その横顔だけは見える。

とはいえ、彼女の髪に隠れて目線や表情は窺えないが、頬は赤く染まっているように見える。

もともと白い肌であるせいか、妙にそれが目立つ。

 

 

「恥ずかしいならやらなければいいだろうに…」

「っ…何の話ですかね。全く…炎が燃え盛っているせいで熱くて困ります」

 

 

宝具で相手を焼き尽くすサーヴァントが何を言っているのだろう、とは思うが、そこを突っ込むのも野暮かもしれない。

そう思い、話題を変える。

 

 

「敵は片付いたか…」

「えぇ。辺りに気配を感じませんし…凡そは問題ないかと」

 

 

油断は大敵ですが、とジャンヌは続ける。

そんな会話をしていると

 

 

「…二人とも。向こうに大きい建物があるでしょ。あっちで少し休むわよ」

 

 

所長がそんな風に声をかけてくる。

 

 

「サーヴァントはともかく、マスターの貴方は人間なのだから、休めるときに休みなさい」

「…了解」

 

 

所長はそれだけ告げ、前に歩いていく。

 

 

「……行くか」

「えぇ」

 

 

ついていくように歩き出すが、ジャンヌは手を放す気はなさそうだった。

 

 

「……」

「………?」

「…このままか?」

「何か問題が?」

 

 

問題は…なくは、ない……のか。

あえて言うなら気恥ずかしいくらいだが、見た感じジャンヌも同じ気がする。

ここで手を放す理由がない…いや、ないか?

というより、強く握られているわけではないが、放す気はないという感じのジャンヌの手の感触を感じ。

 

 

「…行くか」

「えぇ」

 

 

そのままついて行くしかなかった。

 

 

…これは、マスターの務めか?

 

 

その疑問には、誰も答えない。




Q.なぜマスターは邪ンヌのことをジャンヌと呼ぶの?ややこしくない?
A.この時点ではルーラージャンヌ(姉)のことを知らないからです。出てきたら変わるかも。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。