FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
休憩場所として見つかったのは、学校の校舎だったであろう建物。
いくらかの敵こそいたが、それほど数も多くなく、私を含め、サーヴァントが排除することで事なきを得ている。
そんな中で、各々が思い思いに休息をとっているらしい。
「……」
校舎内は広い。
そのこともあってか、皆が一か所に集まっているというわけでもない。
そんな中で、もともとは教室であったであろう一室。
もともとは青空が見える普通の教室であったのだろうが、空はどす黒い雲で街は燃え、窓ガラスは割れている。
机や椅子といった備品は半分以上が瓦礫と化しているような荒れ果てた状態。
…あの時とは、教室の雰囲気こそ似ているが、空の感じは似ても似つかない。
「…ねぇ」
「?」
「マスターがいた学校も、こんな感じ?」
「…まぁ」
いくら私の記憶と同じマスターとはいっても、彼は彼。
そこは弁えているつもりであるし、服装も
いろいろと違う部分はある。
「…そう」
ぼんやりと、思考に耽る。
私が、造られた世界の中とはいえ、学生として過ごしていた、あの非日常を。
「……」
なんとなく頬杖をついて、目を閉じる。
外から差す日の光に当てられ、眠くなりながら、耳に入るのは黒板に文字を書く音。
教壇に立つ教師の声のみが響く室内。
退屈に感じる授業を聞きながら、どうしていたっけ。
少なくとも、授業をまともには聞いていなかったと思う。
……聞くフリくらいは、していただろうけども。
「…」
それでも、仮初の学生生活は、悪いものでもなかった。
退屈な授業を聞いて、休み時間はマスターと話したり。
放課後はたまにではあったけど、マスターと一緒に帰ったり。
我ながら、マスターの事ばかり。
―もう、その時の私は、そんな感じだったのかもしれない。
―マスターが未来を歩んでいければいい、と思っていた。
―けれど、叶うのであれば、共に歩んでいきたい、と。
目を開き、ぼんやりと黒板を見る。
煤で焦げ、斜めに傾いてしまい、教壇は見る影もない。
―ここは、あの時の学園ではない。
「……」
ちら、と横目でマスターを見る。
マスターはマスターなりに疲れていたのか、がたがたになってしまった机に突っ伏していた。
そんなマスターを見て、私は何となく笑みが零れる。
別に、眠っているマスターがおかしいとか、そういうことではない。
マスターが、生きて、傍にいるという事実が、ただ、嬉しかった。
「…」
視線を前に戻し、私もマスターに
こうして、そんな思い出に耽ると、嫌が応にも思い出してしまうのが、彼との別れ。
―闇の中に彼一人を残し、自分は戻った、あの時の事。
私にとっては、それは最悪の結末。
マスターにとっては、どうだったのだろう。
……どうであったとしても、あの結末は、私が許せないし、許さない。
「…っ」
瞼の裏に浮かぶのは、彼を喪ってからの日々。
彼ではないとはいえ、マスターはいた。
彼と共に過ごした時と同じ、戦いの日々に戻った。
ただ、戻っただけのはず。
だったのに。
マスターと一緒にいた時のような、立ち上がる気力というか、そういったものが出なかった。
任務を終えれば、冷たくなってしまった彼に寄り添う事しかできない。
私は、彼を救えなかった。
私は、私を救えなかった。
けれどそれでも、試練を乗り越えたのだから、あのまま進めば、人理は修復できたのかもしれない。
……彼のいない、人理を。
そうして全てが終わって、私は役目を終えたサーヴァントとして消える。
きっとそれこそが、正しい結末なのだろう。
…だけど、私はそれを認めない。
私はどうなってもいい。
けれど、マスターが生きられない結末など、絶対に認めない。
それこそが世界の、人理の意志だというのなら、それを壊してでも、私はマスターを守る。
―たとえこの世界の全てがマスターを殺そうとするのなら。
―私はマスターの傍で、最後まで抗ってみせましょう。
―それでたとえ世界が焼却される結末になって、世界が私たち二人だけになってしまったとしても、私は…
「………必ず、守りますから」
守るなんて、柄ではないけれど。
それこそが、今私がここにいる意味。
「……」
だからこそ、私は。
藤丸立香という存在を
彼女だけではない。
あの時、彼を喪ったとき、それが必要な犠牲だと諦めた者達を、私は許せない。
とはいえ、手にかけるつもりはない。
今はまだ、敵ではないから。
だとしても、いざという時にどういう決断をするかを知っているからこそ、信頼はしない。
…とはいえ、このままいけば、きっと同じ結末を辿ってしまう。
何かを変えていかなければ、私の目的は決して達成されないだろう。
どうすればいいのか、なんて分からないけれど。
それはこれから、探していく。
マスターと共に。
「…ん」
マスターに視線を向けながら、不思議なものだ、と思う。
自分が、どれだけ歪んだことをしようとしているのかという自覚があるのに。
ただ、マスターが傍にいる。
それだけで、満たされた気持ちになる。
―それだけで、私は自分の信じる道を進もうと、思う事ができるのだから。