FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

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出発

休憩をとってから幾許か。

日付が変わるほどは休んでいないと思うが、実際どうかは分からない。

横の席に座ったジャンヌを見るが、目を閉じており、何かを考えているのだろうか。

いくらマスターとサーヴァントとはいえ、全てが筒抜けになるわけもなく、ジャンヌが何を考えているかまでは分からない。

あるいは単純に休んでいるだけか。

いずれにせよ、ここまで戦いで苦労を掛けている手前、休息の邪魔をする気はなかった。

 

 

「……」

 

 

改めて、彼女のことを考える。

ジャンヌ・ダルク・オルタ。

確かにあの時。

FGOのアプリを起動した時、推しとして彼女を登録した。

しかし、それくらいだ。

それは縁といえるだろうか。

 

 

―もし彼女が君の召喚に応じたというなら、君とそこにいる彼女の間に何かしらの縁があったことになる…

 

 

ドクターの言葉を思い出す。

あの時の登録は、こちらからの一方的なもの。

縁なんてものとは程遠い。

しかし、実際にジャンヌは召喚に応じてくれている。

 

 

それだけならいざ知らず、俺とそれ以外に対する対応に差がありすぎる気がする。

先のサーヴァントとの戦いにおいても、俺を守ることを優先してくれたのは分かる。

やり方がどうあれ、敵サーヴァントの排除に全力を注いでくれたことも。

しかし、他に対する関心があまりに薄い。

まして俺は魔術の素養なんぞあるはずのない存在。

所長の言うように、より素養のあるマスターに従った方が十全に力を発揮できるのではと思う。

 

 

しかし、ジャンヌはその提案を一蹴した。

俺以外と契約する気はない、とも言っていた。

何がジャンヌにそこまでさせるのか。

今の俺には分からない。

 

 

「…」

 

 

何だかんだ、疲れていたのだろうか。

ここで眠るのは、危険だと分かっているのに。

学校机が懐かしく感じ、そのまま眠気に抗うことはできずに…

 

 

 

………

 

……

 

 

 

 

『…全く、やっと寝ましたか。この馬鹿マスターちゃんは』

 

…この声は、ジャンヌ。

 

頭に、僅かに暖かい感触。

 

手のひらの、感覚。

 

『毎度毎度無茶して。少しはこっちの身にもなりなさいっての…』

 

軽く小突かれる。

 

けれど、意識が覚醒するほどでもなく、ただその感覚に揺られている。

 

『……ま、あんたの事は絶対守るわ。それだけのものを、私は貰ったから』

 

髪を梳くジャンヌの指の感覚を感じる。

 

何をもらったのだろう、とは思う。

 

とはいえ、それはきっと、ジャンヌだけのものだから。

 

何にせよ、ジャンヌがそれを大事にしてくれるのなら、それでいいと思う。

 

『マスターちゃんがいなくなったら、それは私にとっては人理の崩壊も同じ。だから私は、貴方(世界)を守るのです』

 

そこまでのものなのか。

 

『……愛しています、マスター。だからどうか、いつかの別れの時までは…いえ、たとえ別れの時が来ても、貴方を追うことを、どうか許してください』

 

 

 

 

……

 

………

 

 

 

…今のは、夢、だろうか。

俺が、ジャンヌに対して抱いた夢だというなら、妙に痛々しい気がする。

いずれにせよ、先程のは夢であることは間違いなさそうだ。

というのも。

 

 

「……」

 

 

ジャンヌを見る。

相変わらず頬杖をついて、目を閉じているが眠っているのだろうか。

案外起きているのかもしれないが、それを見分けるほどの目は生憎持ち合わせていない。

邪魔をする気はないのだが。

とはいっても、こちらの視線に気づいたのか。

 

 

「…マスター?」

 

 

目を開き、こちらを見てくる。

 

 

「…すまない。起こす気はなかったんだが」

「構いません。どうせ寝ていませんから」

 

 

それならいいのだが。

 

 

「…それで?どうかしたのですか、マスター?」

「別にどうもしないが…」

「……」

 

 

じっと見つめられる。

ジャンヌの金色の瞳は、続きを促しているようで。

大したことでもなかったので言うつもりはなかったのだが、こうなってしまえば。

 

 

「…夢を見ただけだ」

 

 

溜息を吐きながら言う。

こうなればこちらが折れるしかないと思ったからだ。

 

 

「そう。いい夢だった?」

「まぁ…な」

 

 

ジャンヌが出てきた、とは言わないが。

何故なら、単純に恥ずかしいだろうと。

まして、最後にあんなことを言われる夢など、本人相手に言えるものか。

妙に現実味こそあったが、夢は夢。

 

 

「ねぇマスター。その夢って…」

 

 

更に聞いてこようとするジャンヌ。

しかし。

 

 

「…やっと見つけたわ。そろそろ出発するから準備なさい」

 

 

所長が教室の入り口から顔を出し、会話は中断される。

ジャンヌもさすがに水を差されたからか、それ以上の追及はしてこない。

 

 

「…ジャンヌ」

「えぇ…分かっています」

 

 

立ち上がり、声をかければ、ジャンヌも立ち上がる。

まずは、この特異点を修復する。

色々なことを考えるのは、その後だ。

 

 

「…行きますよ、マスター」

 

 

ジャンヌが前に行くが、こちらが動かないのを気にしてか、振り返って声をかけてくる。

そんなジャンヌに。

 

 

「…マスター?」

「マスターちゃん、とは呼ばないのか?」

 

 

うっかり、そんな風に言ってしまったのは失敗だったか。

夢と現実を混同する気はなかったのだが。

何を言っているのだろう、という顔をされると思ったが。

 

 

「っ…!」

 

 

驚いたように見てくるジャンヌ。

下手したら泣き出しそうな表情にすら見える。

そんな表情をされては冗談だ、とも言い辛くなってくる。

 

 

「なんで、それ…」

「…すまない。さっき見た夢と混同して」

 

 

尋ねてくるジャンヌに、謝罪でしか返せなかったが、理由を言い切る前に。

 

 

「…それは、夢じゃない」

 

 

ジャンヌに、否定された。

何かを言い返そうとしたが、言い返す前にジャンヌは近寄ってきて。

 

 

「んっ…!」

 

 

襟元を引き寄せられ、口元に温かい感触を感じる。

触れる程度のほんの一瞬。

今までそれをしたことは一度もなかったが、だからといってそれが分からないとは言えない。

 

 

「……ジャンヌ」

「突然、だったわよね、ごめんなさい……けど、無理」

 

 

我慢、できない。

それだけ言って、また近づいてくる。

互いの顔が、近い。

 

 

…けれど、何故だろうか。

 

…たった一度、いや、二度だけのはずなのに、それ以上にジャンヌとは触れ合っていたような。

 

 

…そんな感覚が、拭えなかった。




マスター「ジャンヌ」(密着中)
邪ンヌ「…マスター」(密着中)

オルガマリー「…いったい私は何を見せられてるのよ(赤面」
キャスター「おーおー、お熱いこって」

立香「所長遅いねー」
マシュ「なにかあったのでは…!(焦」
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