FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

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崩壊/終焉 - II

レフは更に続ける。

 

 

「…聞いているな、ロマニ?」

『レフ教授…!』

 

 

かつての学友だったよしみとの事で、いくつかの事が伝えられる。

人理が焼却されたこと。

カルデア以外の場所は全て、この場所のように崩壊していること。

消滅をするのは、レフの主の寵愛を失ったからであること。

 

 

「…私の話はこれくらいにしておこう。特異点崩壊まで間もないだろうが…せめて、最後の別れを惜しむがいい」

 

 

レフはそれだけを言い残し、その場から去る。

別れというのは、所長とのこと、なのだろう。

そのくらいは想像は容易につく。

 

 

「…」

 

 

そうして残されたのは、俺、ジャンヌ、藤丸、マシュ、そして所長。

所長は、告げられた真実に少し俯いて。

 

 

「…ロマニ、聞こえているんでしょう?」

『はい』

「今すぐレイシフトを開始して。二人とサーヴァントをすぐに戻しなさい」

 

 

所長としての判断か、冷静にそう告げる。

 

 

「…いいのか?」

 

 

流石に不憫に思い、そう問いかけると所長はキッと鋭い視線をこちらに向ける。

 

 

「いいわけない!嫌に決まってるでしょう!こんなところで死にたくなんてない!」

 

 

突然の感情の吐露に押し黙る。

けれどこちらの驚きなど関係なしに、所長は続ける。

 

 

「分かってるわよ、皆が私を嫌ってたことくらい!あんた達だってそうだろうって思ってる、だけど私は、ただ…!」

 

 

ただ、認めてほしかった。

ただ、嫌わないでほしかった。

ただ、よくやったと、褒めてほしかった。

傍から聞けば、まるで子供のような願い。

けれど、そんなことすら叶わないほどの環境だったのだろう。

 

 

「…でも、仕方ないわ。ここで私は終わるしかない。だけど人理継続のために、貴方達は必要。だったら私は所長として、何としても貴方達を救わなくてはならないわ」

 

 

だけど、私にはもうそれはできないから。

そう、告げる所長の顔は、どこか寂しげでこそあるものの、笑顔だった。

この状況でそう気遣える当たり、本当は思いやりのある人なのだろう。

 

 

「……?」

 

 

ふと、所長の足元で何かが光る。

それは、先程戦ったセイバーの場所にあったもの。

レフが引き寄せた後、ジャンヌの攻撃で落としたのだろうか。

 

 

「聖杯ね。これは貴方達が回収なさい」

 

 

確か聖杯は、願いを叶えるもの、だった気がする。

どこで聞いたかは忘れたが。

 

 

「…」

 

 

それを拾い上げ、俺は。

 

 

「……所長」

「…?」

 

 

所長に渡そうと差し出す。

所長はこちらの行動に疑問符を浮かべ、見返してくる。

 

 

「こいつに願ってみるというのは、どうだ」

「…何言ってるの?私なんかの為にこんな貴重なものを使わないで。人理のために使いなさい」

 

 

よほどの力を秘めたものなのだろうか。

所長は、こちらの提案を一蹴するが。

 

 

「…一つ聞きたいんだが」

「何」

「所長が言う人理の中に、所長自身は含まれていないのか」

 

 

上に立つ者としての務めのつもりなのかもしれないが、見送るのはあまり得意ではない。

 

 

「……それに、だ」

「何よ…」

 

 

その続きを言うのは、俺でも、藤丸でもない。

 

 

「ドクター」

『…君が言いたいこと、何となくわかったよ。あぁ…ここには生き残った他のスタッフがいる。音声は届いてるね?』

「あぁ」

 

 

ドクターの声に次いで聞こえてきたのは。

 

 

『所長!私は嫌ってなんていませんよ!』

『確かにちょっと怖いなって思うこともありましたけど、所長の下で働けて良かったって思ってます!』

『所長がいたからここまでやってこれたんじゃないですか!』

『私なんか、なんて言わないでくださいよぉ!』

 

 

聞こえてくる、様々な声。

あの爆発を何とか逃れたスタッフ達だろう。

その声は、到底嫌っている相手にかかるものではない。

所長を賛辞する声は、止むことなく。

 

 

「…誰が、嫌われていると?」

「っ…貴方、意地が悪いわ」

『それは僕も思う』

 

 

問いかければ、少し上ずった声で悪態をつかれる。

俯いた所長の表情は誰からも見えなかったのかもしれないが、聖杯を手に近くにいたから見えてしまった。

所長の長い髪に隠れた目元に光るもの。

それが何かを言うほど、流石に野暮ではない。

…それはそれとして、ドクターは後で覚えておいてほしい。

 

 

「……所長」

「…ん」

 

 

呼びかけると、所長は手を伸ばし、聖杯を手に取る。

…かと思いきや。

 

 

「…なぜ俺の手を取るので?」

「うっさい。あんたのせいなんだから…ちゃんと責任取りなさい」

 

 

聖杯を持った俺の手を取る。

 

 

「……お願い、私の願いを…叶えて」

 

 

所長の言葉とともに聖杯は輝きだし、同時に。

 

 

「っ地震!?」

「違います、これは…!」

 

 

突如、地震が襲う。

 

 

「マスター!」

 

 

ジャンヌがこちらに近づき、警戒する。

敵こそいないが、地震による揺れが酷い。

 

 

「ドクター、すぐにレイシフトを!」

『もうやってる!だけど、崩壊のほうが早いかもだ!すまない、何とか耐えて…!』

 

 

地面が割れ、体は宙に投げ出される。

 

 

…手に感じる、所長の熱。

 

…自分を抱きかかえる、ジャンヌの腕。

 

 

それらを感じながら、俺は意識を手放した。

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