FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

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休息/独白 - I

所長とかいう女がマスターちゃんからの部屋から出て行った後。

 

 

「全く…」

 

 

私は扉を見て一つ溜息。

溜息を吐いたら少し落ち着いた。

振り返ると、マスターちゃんは寝ている。

 

 

「……貴方は無茶しないでちょうだい」

 

 

戦場ではないのだから、病み上がりの体で無茶する理由などない。

むしろ、療養すべき時なのだから寝ればいいのに。

少しだけ可笑しくなり、彼を見る。

多少の声でも起きないあたり、熟睡しているのだろう。

仰向けになって眠っているマスターちゃんを見て、私は。

 

 

「あ……」

 

 

思い出してしまった。

ベッドに眠る、マスターちゃんの姿を。

冷たくなってしまった彼に縋る、自分の姿を。

 

 

「ぁ…」

 

 

胸元を抑える。

サーヴァントのはずなのに、まるで人のように心臓の鼓動が喧しく聞こえる。

この感情は、覚えている。

思い出したくもなかった、あの時の感情。

もう二度と戻ることのない温もりに縋っていた、あの時の。

あの時と今は違うと頭では分かっているのに、私の中の感情が暴れて、止まらない。

私は感情に任せ、彼に手を伸ばし。

 

 

「っ…!」

 

 

すぐに手を引っ込めた。

彼に触れるのが、怖かった。

あの時のように、冷たいのではないか。

どれだけ縋っても、もう名前すら呼んでくれないのではないか。

 

 

「…」

 

 

彼に触れることで、またあの時のような絶望に突き落とされてしまうのではないか。

その可能性をたたきつけられることを、私は恐れていた。

彼に、触れたい。

触れて、彼の熱を感じたい。

けれど、触れるのが、怖い。

触れることで、絶望の底に叩き落されるのが、怖い。

 

 

「っ……」

 

 

自らの怖さを抑えつけ、彼の頬に触れる。

彼の頬は、温かい。

少しだけ、安心する。

その手に感じる彼の体温の熱に、自分の体は冷えているのかと思うくらいに冷たかった。

この冷たさに耐えきれなかった私は。

 

 

「…マスターちゃん」

 

 

返事が来ないと分かっていても。

それが我儘だとしても。

私は。

 

 

「悪いけど…無断でベッド、入らせてもらうわよ。返事がないから、仕方ないですね?」

 

 

我ながら、勝手な言い訳ではあるが。

小声になりながら、布団を捲り、彼の隣に横になり、布団を被った。

そのまま、くっついてみる。

温かい。

あの時のような、冷たさなんてなかった。

よかった。

それだけで、震えは止まる。

たったこれだけの事で、怖さなんてなくなってしまう。

 

 

「ん…」

 

 

寄り添うだけで、ただ身を寄せるだけでいい。

それだけで、この微睡に堕ちていきたくなる。

 

 

「……」

 

 

少しだけ、思い返す。

あの、所長とやらについて。

ここに戻ってくる前、彼と過ごしていたときは、あの存在を知らなかった。

以前はこの頃からマスターちゃんに召喚されて共にいたわけではなかった。

冬木、という場所は初めてだった。

だから、何かが変わったのかは分からない。

ひょっとしたら前も助けてはいたが、別のタイミングで消滅していただけで、何も変わっていないのかもしれない。

それは、ここにいる誰に聞いても分からないだろう。

けれど、どうでもいい。

 

 

「…ん」

 

 

どうでもいいのだ。

何故なら、マスターちゃんは確かに、ここにいる。

ここにいて、生きてくれている。

彼が生きていてさえくれれば、それ以外のことなど、どうでもいい。

他の奴らは、人理とやらを守るために動いているようだけど、私はマスターちゃんを守るだけだ。

人理は、マスターちゃんを受け入れなかった。

なら、私は人理のためになど動かない。

彼を受け入れないもの。

彼に仇なすもの。

彼を討とうとするもの。

その全てを、私の炎は焼き尽くす。

全人類が彼を討とうとするなら、私の炎は全人類を焼き尽くすまで収まらない。

世界が彼を排除しようとするなら、世界を焼き尽くすまで収まらない。

それが今の、復讐者たる私の存在意義。

彼のためになるのなら、私は。

 

 

「…」

 

 

私は、何だってやる。

これが理由で、もしマスターちゃんが私を討つと決めたのなら、私は喜んで討たれる。

私の全ては、貴方の為に。

貴方の前に立ちはだかるものは、なんであろうと私の炎が焼き尽くす。

貴方がこの温もりをくれるのなら、それだけで、私は何だってできる。

それが、どれだけ狂ったことであったとしても。

貴方が望んだことであれば、何だって。

 

 

ここに来る前に、私は彼を愛していると、言ったことを思い出す。

けれど、これはそんなに奇麗な感情ではない。

私だって一応は女である以上、そういうものが全く分からないわけじゃない。

彼に喚ばれるまでは、ほとんど興味はなかったが。

今となっては、何をするにもマスターちゃんのことばかり考えている。

戦いのときも、敵を倒すことは当然だが、彼が無事かどうかは常に考えている。

それは、愛というのだろうか。

あの、自称姉なら、答えが分かるのだろうか。

私に愛なんて感情は、あの自称姉が復讐に捕らわれるほどに似合わないけど。

それでもきっと、私は。

 

 

「…ん」

 

 

少しだけ、彼の体を抱きしめる。

あまり強いと、起こしてしまうかもしれない。

このくらいなら、大丈夫だろうか。

大丈夫であってほしい。

こんなにも男に縋るような姿は恥ずかしくてたまったものじゃない。

けれど、それほどまでに、私は彼を、愛している。

誰かが、それは愛とは言わないと否定したとしても、構わない。

なぜなら、それは私が一番分かっているから。

だからこそ私は、彼が未来に進んでいけるように、力を使う。

それに私の全てを捧げる。

絶対に、あの結末にはさせない。

 

 

…どんな方法を使っても、結末を変える。

 

 

―そのために私は今、ここにいるのです。

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