FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

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決意

そんなこんなで、管制室にて。

 

 

「…まずはマスター二名についてですが、冬木での活躍、見事でした」

 

 

所長が皆の前に立ち、そんな風に切り出す。

管制室で作業するスタッフが大半で、彼らは自分の席から。

俺とジャンヌ、藤丸とマシュは通路部分に立ちながら。

ジャンヌは俺の傍に、マシュは藤丸の傍に控えるように。

 

 

「それと…一度殺されて諦めていた私をまたこうしてここに立たせてくれて、本当にありがとう」

 

 

そんな風に、所長はこちらに向き直って言葉を続ける。

藤丸は何も答えず、こちらを見る。

俺が何かを返すべき、とでもいいたいのだろうか。

スタッフ達を見ても大体がそんなところなのか、反論もなかった。

 

 

「…」

 

 

頭を掻きながら、何を言うか考える。

実際のところ、俺がしたのは。

 

 

「…俺自身が何かをしたわけじゃない。オルガマリー所長がここにいる事を望んだスタッフと、聖杯の力だろう…もし俺に礼を言っているなら、相手を間違えていると思うが」

「それでもよ。貴方が私の背中を押してくれたから、今私はここにいる。勿論、スタッフの皆には感謝していますが、貴方にも同等の感謝を」

「そうか」

 

 

何を言ったところで所長は考えを変えることはないだろうし、強制するつもりもなかったので、それ以上は言わない。

所長の方も、俺の反論がなくなったところで、その話題を打ち切り、向き直る。

 

 

「今後については、私が引き続き、人理修復の任務において指揮を執ります。反対の者がいたら申し出てください」

 

 

所長の問いかけに、申し出る者はいない。

所長自身、部屋を見渡してそれを確認して一つ頷き。

 

 

「ありがとうございます。今後の方針についてですが、先の爆発事故により各員の負担は増えると思いますが、持ち回りを決めて、各自無理のない程度の休憩は必ずとるように」

「…ですが、それでは効率が」

「適度な休憩を挟む方が効率が良いことは過去の研究で実証されています。それにここで無理をして人員を減らす方がかえって負担になりますから、これは所長命令として受け入れてもらいます」

 

 

持ち回りの仕方についての指示が出る。

休憩をとることについては譲る気はなさそうだった。

 

 

「ロマニ」

「…あ、はい!」

「各員の作業シフトについては貴方に一任します。医療スタッフなのだから、彼らに無理を強いることなく、けれど最高効率を発揮できるように体調管理を徹底しなさい」

「分かりました。冷凍保存したマスターについては」

「そちらも貴方に任せます。というよりそちらを一任すべきかしら」

 

 

口元に手を当てて考える所長。

少なくとも、無理してでも何とかしろ、というスタンスではないようだ。

すると。

 

 

「…なら、そっちは私も加わろう」

 

 

後ろ、つまりこの管制室の入り口から入ってきたのは、女性だった。

大きな杖のようなものを持っている。

 

 

「冷凍保存したマスターの救出については、私とロマニの二人体制で。それなら問題ないだろ?」

 

 

こちらに歩いてきて、俺や藤丸の少し前に出たところで所長を見る。

 

 

「…えぇ、そうね。そうしましょう…頼むわよ」

「任せてくれたまえ」

 

 

楽しそうに所長に答える女性はこちらに向き直り。

 

 

「君たちは初めまして、かな。私はレオナルド・ダ・ヴィンチ。気軽にダヴィンチちゃんと呼んでくれたまえよ」

「…レオナルド・ダ・ヴィンチ?」

 

 

女性の自己紹介に、一瞬疑問符が浮かぶ。

ちょっと待て。

レオナルド・ダ・ヴィンチくらいさすがに知っている。

歴史上において芸術家として知られることが多いが、それだけに限らず多方面でその才を発揮した、文字通りの天才。

ただ、史実においては。

 

 

「……男性でなく、女性?」

 

 

こちらの質問に、一瞬きょとんとするも。

 

 

「まぁ、そんな反応にはなるか。だが、私の事を知っていたくらいだ。私が描いた絵のことも知っているだろう?」

「…ひょっとして、モナリザ?」

「正解っ」

 

 

ダヴィンチの問いかけに藤丸が答えると、嬉しそうに返す。

絶世の美女として描かれたモナ・リザ。

その見た目になっている、ということか。

 

 

「…もういいかしら。スタッフの持ち回りに関してはそのように」

 

 

会話が一区切りついたと見てか、所長が言葉を挟む。

けれど、一層真剣な眼差しでこちらを見る所長に、俺も藤丸も改めて向き直る。

 

 

「そして、マスター候補二人には、改めて確認します」

 

 

所長は一度深呼吸をする。

 

 

「マスター二名、そしてマスターが所持するサーヴァントはマシュ、ジャンヌ・ダルク・オルタの二騎。冬木では見事な活躍でしたが、今後の特異点次第では心許ない戦力と言わざるを得ない可能性もある」

「…」

「それでも、貴方達には改めて確認します。マスター両名は、各々が所持するサーヴァントと共に、人類の未来を背負う覚悟はありますか?」

 

 

所長はそこで言葉を切り、こちらを真剣な表情で見る。

 

 

「…私は」

 

 

先に藤丸が言葉を発する。

 

 

「私に何が出来るかは、正直まだ分からない。所長のように魔術ができるわけでも、彼のようにいざという状況で冷静な判断ができるわけでもない。けど…それでも、私に出来ることがあるなら」

 

 

藤丸はそこまで言って、隣にいるマシュを見やる。

それなりに思うところがあったのか、二人は笑顔を交わし。

 

 

「私に出来るのなら、やります。一人では難しくても、マシュと一緒に、支えあって」

「……貴方は、どうかしら?」

 

 

藤丸とマシュの言葉を聞いてか、所長はこちらに向き直る。

人類の未来を背負う覚悟、か。

 

 

「……」

 

 

ジャンヌを見やる。

ジャンヌは何かを答えるでもなく。

 

 

「…私はマスターがどのような意であったとしても、ただ従い、守るだけです」

 

 

それだけ、はっきりと告げる。

まぁ、それはそうか。

 

 

「…冷静な判断なんて言っていたが、俺はそこまで大それたことができるわけではない。冬木ではたまたま上手くいっただけで…今後、この任に参加をして、下手をすれば、余計な心配をかけることもあるだろう。その上で、尋ねたい」

 

 

まずは所長に向き直り。

 

 

「俺がマスターとして覚悟を決める事は、有益であると言い切れるか?」

「…えぇ。少なくとも無益にはならない。冬木での働きを見て、私はそう思います」

 

 

所長の答えを聞いて、ジャンヌに向き直る。

 

 

「…いずれ、マスターが俺でなければ遭わずに済む危険な目に遭わせるかもしれない。それでも…俺と共に来てくれるか?」

「今更ですね。私が貴方というマスターの傍にいる時点で、私はマスターの為にこの力を振るう。それこそが私が存在する意味です」

「そうか」

 

 

二人の言葉を聞いて、改めて所長に向き直り。

 

 

「……なら、俺もジャンヌと共に人理の為に」

 

 

そう、所長に返す。

すると所長は頷き。

 

 

「ありがとう。二人の意思は確かに受け取りました。現時点を以って、両名を正式に人理修復の任を負うマスターとして任命します」

 

 

そう俺と藤丸に告げた後、所長は全員に向き直り。

 

 

「マスター二名が決めてくれた覚悟の下に、私達の運命は今、決まりました。ここにいる皆で、人理が焼却された原因となる歴史を修正し、あるべき姿に戻します。スタッフ一同は調査を行い、人理償却の原因となった歴史の改変の抽出にあたりなさい」

『はい!』

「…ロマニ、およびダヴィンチは他スタッフの健康管理と冷凍保存したマスターの救出を任せます」

「分かりました」

「了解だ」

 

 

所長の指示に、スタッフが一斉に返事をし、作業に当たる。

それで会議は終了に至ったのか、所長がこちらに近づき。

 

 

「マスター二人については特異点を発見次第、動いてもらう事になります。可能な限り無理はさせないようにしますが、不調があるようならすぐに申し出るように」

「はい」

「…承知した」

「結構」

 

 

こちらの返答に満足したか、頷く所長。

 

 

「では、次の任務を通達するまでは休憩とします。貴方達に強いる負担は大きいのだから、休めるうちに休むように」

「はい」

「承知した」

 

 

俺と藤丸の返事を聞き、所長はスタッフ達の元に向かい、話を始める。

どうやら、今時点で出来ることはないらしい。

 

 

「…戻るか」

 

 

向き直り、ジャンヌに声をかけようとした時。

 

 

「…ね」

「?」

 

 

声を掛けられ、声の主、藤丸に向き直る。

 

 

「これから、よろしくね」

 

 

言われ、手を差し出される。

それを見て、彼女が何を言いたいかを察し。

 

 

「あぁ」

 

 

握手をするために手を出すと、握り返してくれた。

 

 

「…じゃ、行こ。マシュ」

「はい…では、また後ほど」

 

 

藤丸は歩き出し、マシュは軽くお辞儀をして藤丸を追いかけていった。

おそらく部屋に戻ったのだろう。

 

 

「ジャンヌ」

「はい」

「…行くか」

 

 

俺の言葉にジャンヌは頷き、こちらも二人、部屋に向かうことにした。

 

 

「…ところで」

「何か?」

「部屋は、どうするんだ?」

 

 

さすがに異性ともなれば別がいいのではと思ったが、ジャンヌに溜息を吐かれる。

 

 

「…あのですね。私はマスターのサーヴァントとして護衛をする立場にあります。近くにいなければ目的を達することはできないと思いますが」

「いいのか?」

「問題ありません。貴方以外の男だったら焼き尽くしますけどね」

 

 

どうやら、暫くは眠れない日々になりそうである。

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