FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

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呼応

そんなこんなで与えられた部屋に戻る。

 

 

「……」

 

 

ベッドの淵に腰掛ける。

単純に、特にすることもない。

招集がかかるまでは休め、との指示だったのだが。

 

 

「どうしたのです、マスター?」

 

 

ぴったりと寄り添うようにベッドに腰掛け、身を寄せてくるジャンヌに問いかけられる。

 

 

「いや…何でもないが」

「そう」

 

 

戻ってからずっとこんな感じである。

俺は別にいいのだが、ジャンヌは楽しいのだろうか。

疑問は絶えない。

とはいえ、ずっとこのまま、というのも。

そう思い。

 

 

「…ジャンヌ。一つ…聞いてもいいか?」

「何です?」

 

 

少し、会話をしようと思い話しかけると、ジャンヌは興味を持ってくれたかこちらに視線を移す。

 

 

「…ジャンヌの元のマスターは、どんな感じだったんだ?」

 

 

そう、問いかけるとジャンヌは目を閉じる。

回想に耽っているのだろうか。

 

 

「……全部を説明しきるのは難しいけれど、ただ一つ言えるのは、酷い人、ですかね」

「そうなのか」

「えぇ。マスターでありながら、サーヴァントを守るために自らを犠牲にして……私を、置いていって……!」

 

 

となりで寄り添っているジャンヌが縋りつくように腕に抱き着いてくる。

思い出して辛くなっているのか、肩を震わせているのが見て分かる。

 

 

「すまない…辛いことを、思い出させたか」

「っ…マスター…!」

 

 

震えて縋り付いてくるジャンヌに、今の俺がしてやれることは多分ない。

楽しい思い出もあったろうに、恐らく一番新しい記憶、強く刻まれた記憶が出てしまったのだろう。

 

 

「ここに、いて…私の傍に、いて。私を……置いて、いかないで…」

 

 

ジャンヌの寝言で似たような言葉を聞いた気がする。

ジャンヌが俺を守ることを優先してくれているのは、この想いによるものなのだろう。

どうにかしてやりたくても、どうにもできない。

これはきっと、ジャンヌ自身が乗り越えなくてはならないものだ。

俺に出来ることは、ない。

 

 

「……」

 

 

本当にないだろうか。

ジャンヌが今考えているであろうマスターと再会させるまでの間は、俺がマスターとして。

そう決めたにも拘らず、何も出来ない。

それでいいのか、と自問自答する。

 

 

「…嫌なら、振り払え」

「マスター…?」

 

 

ジャンヌが呼び掛けてくるが、それに答えず、俺は空いている方の手をジャンヌの背に回す。

そしてそのまま、触れる程度の優しさでジャンヌの背に手をやる。

 

 

「ん……」

 

 

こちらの意図を汲み取ったか、けれどジャンヌは抵抗せず、一層こちらに縋りつく。

そのまま、傍から見れば抱きしめあうような体勢になる。

 

 

「…」

 

 

ジャンヌ自身は、決して弱くない。

戦いの強さだけでなく、心の強さも。

それは、冬木で藤丸に対し激を飛ばした様子を見れば分かる。

戦いの強さに限らず、周りの士気を高める統率力すら持っているのだろう。

けれど、そんなジャンヌに、癒えるかどうか分からないほどの心の傷を負わせたのは誰かと言われれば、言うまでもない。

 

 

「…俺には、こうしてやる事しか出来ないが」

 

 

だとすれば、その傷を癒してやれるのも、ただ一人。

そしてそれは、マスターとはいえ俺にも出来ない。

けれど、願わくば、少しでも、ジャンヌの心の傷の癒しになるのなら。

そう、考えていると。

 

 

「……っ」

 

 

突然、視界に靄がかかるように。

視界が、暗転していく。

 

 

「っ…マスター…どうし…!?」

 

 

ジャンヌの声も、どこか遠くなっていき、そのまま倒れそうになる。

けれど、体に衝撃が来なかったのは、運よくベッドの方に倒れたのか、それとも、ジャンヌが支えてくれたのか。

いずれにせよ、痛みを感じずに、意識が遠のくのを感じる。

 

 

 

―……視界は、闇。

 

―…見回して、どちらが前で、どちらが後ろなのかすら、分からないほどに、何も見えない。

 

―…ただ、何故だろうか。

 

―…進むべき方向だけは、こちらだと、分かる。

 

―……声が、聞こえる。

 

 

『…っ!…!!……』

 

 

―…誰かの、悲痛なほどの声。

 

―…聞いているだけで辛くなる、必死すぎる、聞き覚えのある、声。

 

―…何を、言っているのか、聞き取れない。

 

―…けれど、どうか、そんな悲しさを出さずに。

 

―…俺は、ここで終わるけれど。

 

―…どうか、お前には、未来を見届けてほしい。

 

―…俺の代わりに、どうか。

 

 

―……ジャンヌ・ダルク・オルタ。

 

 

―…歩き出す。

 

―…一面が闇なのは、本当に闇なのか、視力を失っているからなのか。

 

―…もう、これ以上は一緒にいれば、足枷になってしまうから。

 

―…どうか、未来を……

 

 

 

―……すたー、マスター!」

「っ!?」

 

 

突然、聞こえてくる声がはっきりして、目を開く。

開いた眼は、部屋の明かりをしっかりと認識している。

今の、闇は一体。

…いや、恐らくあれはきっと。

 

 

「大丈夫なの、マスター?この指、何本に見える?」

 

 

目の前で手を開き、目の前で振ってくる。

振られたら本数が分かりづらいのだが、ジャンヌも混乱の中にあったのだろう、敢えて指摘はしない。

それよりも。

 

 

「……ジャンヌ」

「ん…?」

 

 

混乱しっぱなしのジャンヌを先程のように抱きしめ、落ち着かせる。

 

 

「…大丈夫だ。それよりも……辛い思いを、させたんだな」

 

 

まるで自分のことのように流れ込んできた記憶。

ジャンヌが言う、元のマスターの記憶だろう。

 

 

「え……」

「僅かだが、思い出した…というべきなのか。暗闇の中で…お前に背を向けたまま、離れていく記憶」

「……なんで、それ…」

 

 

俺が視た光景がジャンヌの記憶と重なったのか、驚きで声が震えていた。

そして、その直後。

 

 

「っ!」

 

 

両腕でこちらを、まるで捕まえるかのように抱きしめてくる。

ジャンヌの力はそこそこ強い事は分かっていたとはいえ、やや加減を忘れているのか、少し痛い。

 

 

「あぁ…マスター…マスターちゃん……!!」

 

 

とはいえ、今感じている以上の痛みをジャンヌに与えてしまった事を考えると、抗議もできない。

 

 

「……今ならわかる。ただ、守りたかっただけ…だった。ジャンヌを」

「っ…それは貴方のする事じゃない。サーヴァントである、私がすることなの…私だって、貴方を守りたかった!」

「改めて…辛い思いをさせて、すまなかったな」

 

 

改めて謝罪の言葉を伝えると、ジャンヌの腕の力が強まる。

少し痛みが増す。

 

 

「…許さない。私から、貴方という世界を奪ったマスターちゃんを絶対に許さない」

「……」

「だから私は、貴方という私の世界を守るために、戦うわ」

 

 

言い切ると、ジャンヌは顔を上げ、こちらに視線を合わせ、顔を寄せる。

口元に、温かい感触。

触れる程度のそれが何か分からないほど、鈍感になったつもりはない。

何より、不意打ちだったせいで視界いっぱいにジャンヌの顔が映った瞬間をなかったことには、流石にできない。

 

 

「精々忘れないことね。マスターちゃんは竜の魔女である私の寵愛を受け取った。何があろうと…もう私から離れることは、絶対に許さない。たとえ貴方が離れても、私は貴方を地獄の果てであっても追いかけるわ」

「……」

 

 

先程のそれに恥ずかしさがあったのか、頬を僅かに赤く染めながらはっきりとそう言ってくるジャンヌ。

俺はただ、その言葉に。

 

 

「…約束して。たとえ私達を分かつ運命があったとしても、傍にいるって」

 

 

縋るようなジャンヌの言葉に。

 

 

「……あぁ」

 

 

一言、返事を返す。

その言葉にジャンヌは満足したのか、笑みを浮かべながら、再度。

 

 

「ん…」

 

 

誓いの証として、再度、互いの顔を寄せた。

二人がより深く結ばれる(意味深)な話とか見たいですか?

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