FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
その後。
「なんであんたまでここにいんのよ」
ジャンヌが不機嫌さを隠そうともせずに言う。
言葉の相手は、召喚したばかりのモルガン。
場所は、俺に割り当てられた部屋。
「彼は私の夫なのです。夫婦が共に過ごすのは当然のことですが」
「それはあんたが勝手に言ってるだけでしょ」
言い争いをするジャンヌとモルガン。
ここは俺の部屋で、そもそも一人部屋。
ベッドは一人用しかない。
「…サーヴァントにも部屋の割り当てができるそうだが、自分用の部屋はなくていいのか?」
どうあれ、自分のプライベートな空間くらい欲しくならないものだろうか。
まして、女性であれば猶更。
そう思い、気遣ったつもりだったのだが。
「…マスターちゃんは、私と一緒は嫌なの?」
「……」
それに、悲しげな表情で聞き返してくるジャンヌに何も言えない。
決して感情豊かに表情を変えるタイプではなさそうだが、最近はよく分かるようになってきた。
ジャンヌとの事をいくらか思い出したから、だろうか。
思い出した、という表現が正しいかどうかはさておき。
「別に、嫌ではないが」
「…なら、その質問はもうしないようにしなさい。泣くわよ、私が」
「あ、はい」
脅しなのか何なのか。
とりあえず返事を返すが、微妙に頭に疑問は残る。
「……呼び方は、モルガン陛下、とか」
「貴方は自分の妻を陛下と呼ぶのですか?変わっていますね」
女王、とか言っていたから様、とか陛下、とかつけないと、と思ったのだが、どうやら呼び捨てにしろと言っているようなので。
「…では、モルガン」
「はい」
呼び捨てにしたら普通に返事をしてくれたので、どうやらそれでいいらしい。
「モルガンは、部屋割りについては?」
「妻が夫と一緒の部屋で過ごさない理由が?」
部屋割りについて尋ねれば、そう返される。
言っていることは分からないでもないのだが、問題はいつ夫婦になったのか、である。
「…真面目に考えるのはやめなさい。頭バーサーカーなんだから、まともに考えてたらやってられないわよ」
「お前が言うか、反転聖女……我が夫よ、今すぐこの女との契約を破棄すべきでは?」
「焼き尽くされたいのかしら?」
「お前が?私を?…それが出来ると思っているのなら、お前の方がよほど頭バーサーカーであろう」
「…何ですって?」
また始まりそうである。
とはいえ、ある程度は弁えているのか、口論以上のことはしそうにないので、それ以上は何もしないことにした。
「……」
とにもかくにも、どうやら三人で過ごすことになりそうなので、説得は諦めることにする。
とりあえず二人から視線を外し、部屋を見回す。
部屋の広さは三人では決して広くこそないが、狭くもない。
うまく使えば使えないほどではないだろう。
ただ、そもそも一人用想定なので、様々なものが一人分しかない。
後で所長あたりに相談して家具を調達する必要があるだろう。
「…少し、出てくる」
早い方がいいと思い、立ち上がり、部屋の出口に向かおうとすると。
「そう」
「出陣…というわけではなさそうですが」
ジャンヌもモルガンも言い争いをやめ、付き従うようについてくる。
「…少し出るだけだ。一人でも構わないんだが」
何か問題が生じることを懸念しているのだろうか。
レイシフトしているわけでもなし、大したことはないと思うのだが。
「何もない。何故そう言い切れるのです?」
ジャンヌに言われ、反論できなかった。
いや、まぁ出来ない事は出来ないが。
「……それに、私も、この糞女王も貴方の魔力を頼りにこうして現界しているのです。離れすぎると魔力切れで消滅の危険があるので離れようがないのですよ」
「そうなのか」
魔力に関してよく分からないが、そういうものか。
「それに関してはそこの魔女かっこ笑いの言う通りです。その理由もあるから同室を訴えているのですよ」
理解できましたか、とモルガンに言われる。
互いの呼び方については何も触れないことにする。
藪を突いて蛇を出す必要はあるまい。
「ところで、何処に向かっているのです?」
「……管制室だ。別の部屋になると思っていたから気にしていなかったが、同じ部屋なら入用なものもあるだろう」
まして、女性相手では。
むしろ、部屋を変えるべきとすら思っている。
倫理的に。
「…ふと思ったが、藤丸も同じ状況なのか?」
「さぁ?」
疑問に感じることをジャンヌに尋ねるが、返ってきたのは答えではなかった。
溜息交じりなあたり、本当に興味がないのだろう。
「…モルガンは」
「どうでもいいことです」
モルガンに尋ねても、こちらもまた興味がなさそうだった。
話を打ち切ってまでそう答えてくるあたり、興味がないを通り越している気もする。
「…一応、聞いておくが。二人とも…藤丸については」
どう思っているのか、と聞こうとすると。
「私は嫌いです」
「…不本意だが、同じですね」
ジャンヌもモルガンもはっきり言う。
「マスターちゃんがあれを仲間だと思っているから私は手を出さないだけ。貴方に何かあれば、私の炎はあれを燃やし尽くします」
ジャンヌの視線はどこを見ているのかは分からないが、どこかを見ながら言う。
その視線は、冬木で敵と対峙しているときの雰囲気に近い気がする。
「…竜の魔女」
「何よ」
「その時は私の分も残しておきなさい。生まれてきた事を後悔させてやりましょう」
「仕方ないわね…」
なんでそこで意見が合うのか。
少しだけ、人理修復に不安を感じるメンバーな気がした。
………
……
…
そんなこんなで。
「…とりあえずだけど。カルデアの電力をサーヴァントの魔力維持に回すこともできるのだけど?」
オルガマリー所長に事情を話したところ、溜息交じりにそんな提案をもらう。
そうすれば、さっきジャンヌが言っていた魔力の問題は解決し、カルデア内で離れて行動ができる、ということであろう。
現に藤丸はその方法をとっているとか。
「…不要、というより、願い下げだわ。私の中に、マスターちゃん以外の魔力を入れるとか、吐き気がする」
しかし、ジャンヌは拒否。
「竜の魔女と同意見ですね。私は夫である彼の物…夫以外の魔力など不純物にすぎない」
モルガンもほぼ同じ。
「……私が言うのもあれかもしれないけど」
二人の意見を聞いた所長がこちらに向き直り。
「…重すぎない?」
何が重いかは、言うまでもなく分かっている。
分かった上で。
「……」
無言の肯定を返す。
「とりあえず、備品の件については承知しました。すぐに手配します」
「…助かる」
「いいのよ。その代わり、動いてもらうときは相応の働きを期待しますから」
オルガマリー所長に苦笑で見送られ、管制室を後にすることにした。
「…あぁ、それと」
「?」
何かを思い出したのか、声を掛けられ、振り返り所長のほうを見る。
「…ジャンヌとは、魔力供給したって聞いたけど」
「……まぁ」
その話題か。
「おそらく明日には特異点の事で呼び出すから、モルガンとするなら、今日中に済ませておいて」
「……」
「…言っておくけど、茶化しているわけではないわよ。これによって魔力の供給効率が上がるから、サーヴァントを維持する魔力の面でマスターの負担が減るの」
まぁ、それは分かったのだが、そう気軽に出来るものではないだろうと思う。
それを分かっているからか、所長も命令としてではなく、するなら、という仮定の形で言ってきたのだろう。
「見たところジャンヌもモルガンもかなり力のあるサーヴァントだから、維持するのには相応の魔力が必要だから、魔力供給をするのは悪いことではないわ」
「…いや、言っていることは分かるのだが」
所長の言葉にモルガンを見る。
如何にせよ、これには相手方の同意が重要だろう。
そう思ったのだが。
「私は…構いません。我が夫が私を受け入れてくれるのなら、いつでも」
モルガンはそんな感じだった。
軽く視線を逸らされた当たり、言わんとすることは分かっているようだが。
「…まぁ、二人で決めなさい。それと魔力供給については注意点があります」
「?」
何のことかと所長を見ると、所長は知らないのかと言わんばかりの溜息。
「…ジャンヌ。説明してなかったの?」
「えぇ、不要かと思いまして」
「必要でしょう。いい…魔力供給は確かに最高効率で魔力を供給できるけど、一度行うと定期的に行わない限り、いずれサーヴァントが不調をきたすわ」
…つまり?
「…それ以上は言いません。さ、部屋に戻りなさい」
それ以上は、所長も教えてくれなかった。
…とりあえず、次、召喚する機会があるときは悩むことがないよう、男性サーヴァントを召喚した方が良いのだろうか。
…そう、思わずにはいられなかった。
魔力供給についてはオリジナル設定込みですが悪しからず。
次回から新章予定です。