FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

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接敵 - I

何かに吸い込まれるような感覚。

レイシフトだろうか。

冬木に着いた時と同じような感覚であったが、何となく以前より安定している感覚。

 

 

「……」

 

 

やがて、その感覚が落ち着き、足元が安定した頃に目を開ける。

そこは、見渡す限りの草原。

 

 

「…ここは」

 

 

以前ジャンヌに対する事を思い出した中に、僅かながらその場所の記憶があった。

その記憶が正しければ、もしくはその記憶と同じだというのであれば、ここは。

 

 

「…フランスよ」

「……そうか」

 

 

ジャンヌに話しかけられ、短く返す。

記憶通りだったので特に驚くこともなかった。

 

 

「…そうか、お前には馴染みのある場所か、ジャンヌ・ダルク」

「私をその名前で呼ぶな」

 

 

皮肉気味なモルガンにジャンヌは嫌そうな表情を浮かべて返す。

まぁ、そこまで険悪な雰囲気で内容で何よりだが。

 

 

「…藤丸はどうした?」

 

 

近くには俺達しかいない。

同時にレイシフトを行っていたと思ったが、違う場所にいるのだろうか。

ひょっとしたらジャンヌかモルガンは見ているかと思ったのだが。

 

 

「私は見ていませんね……ま、どうでもいいですが」

 

 

ジャンヌはそう答え、モルガンも頷く。

 

 

「我が夫。あれを心配する程の優しさは美徳でもありますが、あっちにもサーヴァントがいるのです。向こうは向こうでやりようがあるはず…それでどうにかできないのなら、所詮その程度だと思うべきです」

 

 

モルガンが言うこともわかるし、そればかり言っていられないというのもわかる。

こちらはこちらで動かなければなるまい。

 

 

「…分かった。こちらはこちらで動くしかないか」

 

 

とはいえ、そこまでこのあたりの地理に詳しいわけではない。

 

 

「とりあえず現地の人に話を聞くべきだろうが…ジャンヌ、案内頼めるか」

「えぇ。まぁ私でしょうね」

 

 

俺の言葉にジャンヌは答えながら、剣を抜く。

ほぼ同時に、モルガンも杖を構える。

 

 

「…その前に、やる事ができましたが」

 

 

その視線は俺…というよりは、その更に後ろを見ている。

振り返れば、地元の兵…だろうか。

剣や槍やらを構えている。

 

 

「…て、敵襲!」

 

 

兵士は何人かとはいえ、こちらの戦力である二人よりは多い。

 

 

「…下がっていなさい、我が夫…この程度、私一人で十分です」

 

 

向かってくる兵士に、優雅さすら抱かせるほどに前に出るモルガン。

その様子に、ジャンヌは剣を構えつつも、前には出ずに様子を見ていた。

見れば、兵士は十人近く見て取れる。

 

 

「……烏合の衆が。その汚い足で我が玉座に足を踏み入れるなど」

 

 

そう、告げると上空に青空を隠さんばかりの何か。

雲のようで、雲ではない。

けれど、日の光を遮る何かがこちらと兵士の間を覆うように空に広がる。

 

 

「これは愚かなお前たちに対するせめてもの慈悲。(こうべ)を垂れよ」

 

 

雲の中で、まるで雷のような何かが轟く。

魔女たるモルガンの、力。

その力によるものか、モルガンのいる場所に玉座のようなものすら見える。

 

 

「…恐怖もない、希望もない中で……ただ、罪人のように死ぬがいい」

 

 

そう言い切った瞬間、雷のようなそれは弾けるように地面に向かって何本も落ちる。

自然の現象のようで、それはこちらに相対する兵士たちを討とうとするように落ちていく。

 

 

「何人も……通るに能わず!」

 

 

雷による砂塵が晴れ、青空が戻ると、そこには一人残らず地に伏す兵士たち。

 

 

「ぅ…」

「ば、化けもの……!」

 

 

見るからに戦意喪失をしているのがわかる。

これなら話が聞けるだろうか。

 

 

「マスターちゃん、ちょっと…」

 

 

それが、不用意だったか。

あるいは、兵士というものを見誤っていたか。

ジャンヌの静止を聞きながら、兵士の一人に近づき。

 

 

「すまない、少し話を…」

「う、うわああぁぁぁ!!!」

「っ!」

 

 

声をかけると、兵士は飛び退くように下がりながら、落とした剣でこちらを牽制するように構える。

敵意はなかったのだろう。

切っ先はこちらに届くことはなかったのだが。

 

 

「…!」

 

 

俺の隣を、何かが物凄い勢いで駆け抜けた。

それに気づくとほぼ同時に。

 

 

「ぎゃあああぁぁ!!?」

 

 

牽制をかけてきた兵士に砂塵が起こる。

砂塵が晴れれば。

 

 

「……今、何をしました?」

 

 

地に仰向けに付した兵士の胸元を片足で踏みつけながらしゃがむ様に兵士を睨み、持っていた剣は兵士の頬を掠める位置で、地面を突き刺している。

 

 

「ひ、ぃ…じゃ、ジャンヌ・ダルク……!?」

「……今、誰に何をしたのかと聞いているんです」

 

 

一方の兵士は、自分に向けられる殺意を感じ取ったのか、あるいは目の前のジャンヌの姿に驚いているのか。

恐怖で何かを言うこともできないようだった。

 

 

「…安心なさい。殺しはしません」

「ぁ…」

「殺しは…ですが」

 

 

ジャンヌが言葉を切ると、ジャンヌは空いている方の手で。

 

 

「ぐぎゃっ…!」

 

 

兵士の頬に裏拳を放つ。

兵士が気絶したのを見届け、ジャンヌは兵士から離れ、こちらに戻る。

 

 

「……手緩(てぬる)いな」

「ふん」

 

 

モルガンの煽りにジャンヌは何も返さずに兵士から離れる。

そうしてこちらに戻り。

 

 

「…私は別に殺してもよかったけど、マスターちゃんはそれを望まないでしょう?」

「あぁ……話を聞きたいのもあったからな」

「だから、殺さない。けど…明らかにマスターちゃんに危害を加える相手には、誰であろうと許さない」

 

 

覚えておけ、と言わんばかりのジャンヌの視線に頷く。

そこだけは譲れない、と言わんばかり。

俺はそんなジャンヌの頭に手を置き、軽く撫でる。

 

 

「…なら、そういう危険な目に遭わないようにするしかないな」

「そうしなさい」

 

 

くすぐったそうにするジャンヌを可愛らしく思いながらも手を離す。

 

 

「…我が夫よ」

「モルガン」

「私はジャンヌよりお前との付き合いは短い。だが、お前に対する想いについては負けているつもりはない」

 

 

照れでもなく、真っすぐにそう言われ、逆にこっちが恥ずかしくなる。

 

 

「だからこそ、覚えておきなさい。私はバーサーカー…お前にもしものことがあれば、その時はきっと、私を抑えきることができなくなる」

「……あぁ、ありがとう」

「礼を言われることではありません。私はお前の妻、なのですから」

 

 

モルガンは、どこまで知っているのだろう。

いずれにしても、話し方から、本気で言っているのだということは分かるからこそ。

 

 

「…そうか」

 

 

返事をしながら、考える。

 

 

「…」

 

 

いざ、自分に何かが起こりそうな時に、自分の身を守ることを優先できるだろうか。

もし、彼女らの身に何かが起こりそうな時に、自分を守ることを優先できるだろうか。

 

 

…少なくとも、それができずにジャンヌを傷つけてしまった、俺に、出来るのだろうか。

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