FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
翌朝。
とはいっても、明るさがそれほど変わらない部屋。
――ジャンヌの、マスターであった彼の部屋。
「……」
今日もまた、何をするでもなく、彼の手を握る。
彼がその鼓動を止めてから、もう何日経っているだろうか。
そんなある日。
「…オルタ」
来客。
彼女をオルタと呼ぶ相手は、そう多くない。
その中でもこの声の主は、ジャンヌ・オルタにとってはあまり心地よいものではなく。
「どうしました、聖女様?ありがたいお説教なら間に合ってますけど」
悪態をつくオルタ。
声の主は、彼女のオリジナルたる救国の聖女、ジャンヌ・ダルク。
「…いいえ、間に合っていません。貴女には言わなければならないことがあります」
「何を」
「いつまで、そうしているつもりなんですか」
ジャンヌの言葉に、オルタは鬱陶しげな表情を浮かべる。
「あーはいはい。腑抜けてるって言いたいんでしょ。わざわざ聖女様に言われなくても分かってます」
「っ…だったら!」
適当に返そうとしたら帰ってきた声が予想以上に大きく、オルタは一瞬怯む。
けれどジャンヌはそれに構わず。
「だったらどうして、前に進もうとしないんですか。マスターだって、こんなことを望んだわけじゃないでしょう!」
「んなこと、あんたに言われなくても分かってるわよ!!」
喝を入れるように言えば、オルタからは更に強く言い返される。
「分かってるわよ、あいつが私に何を望んだかなんて…」
「だったら…」
「…けど、分かんないの。なんで、未来があったあいつが立ち止まって、未来がない私が前に行くのか…その意味が」
その答えはベッドで冷たく眠り続ける彼のみが知るのかもしれないが。
「……復讐者が許されないのなら、復讐者を従えていたマスターが許されないのも道理」
「…?」
「以前、マスターが言っていた言葉です。だからこそ、復讐者が……貴女が許されるために自分が犠牲になってもいいと」
そう、言っていました、とジャンヌは続ける。
「この先、オルタの力はきっと必要になるから、それを守らなければならない…と」
つまりは、自らを犠牲にして、サーヴァントを守った、ということなのだろう。
彼にとっては。
けれど、彼のサーヴァントであった彼女らにとっては。
「……馬鹿ね」
「そこに関しては同意です」
後先を考えないという意味で、二人は意見が揃う。
「…あんたと意見が揃うとか気持ち悪いんでやめてもらえます?」
「仕方ありませんよ。事実なんですから」
「ちっ…」
舌打ちをしながら、オルタは立ち上がり。
「……悪いけど、あのマスターにはうまく言っておいて」
「どちらへ?」
「この流れで言わなきゃわかんないの?頭に蛆でも沸きましたか?」
ジャンヌの問いに悪態で返すオルタ。
その表情は、ジャンヌがよく知る不敵な笑み。
「いいえ、分かりますよ。まるで妹のような貴女の考えること、ですから」
「妹じゃない。勝手に血縁関係にするなっての」
漆黒の衣を纏ったオルタの姿に、ジャンヌはくす、と笑みを浮かべる。
「必ず、連れ戻してくださいね。私達の、マスターを」
「当然。あの馬鹿を連れ戻して一発ぶん殴らないと気が済まないわ…全く」
「私の分も、とっておいてくださいね」
「…あんたみたいなゴリラが殴ったらあいつ死ぬんじゃないかしらね?」
「大丈夫です」
「あ?」
「致命傷で済ませますから」
「……」
ジャンヌの言葉に、オルタは顔を一瞬引きつらせる。
「…冗談ですよ?」
「冗談に聞こえんわ」
武器と、旗を手にオルタは歩き出す。
「…じゃあね」
「オルタ」
歩き出すオルタにジャンヌは。
「負けないでくださいね」
「ふん」
当然、と言わんばかりに。
けれど明らかな返事はせずに、オルタは歩き出した。
次回から本編です。