FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
少しして。
「……」
先ほど気絶した兵士一人を、ジャンヌとモルガンは捕虜のように拘束した。
他にも兵はいたが、他は兵士の様子を見て、兵士一人を残し撤退した。
個人を助けるよりも、一人でも多く生存させることを選んだと見える。
「ぅ…」
兵士が目を覚ます。
「目を覚ましましたか」
その様子にジャンヌが気付き。
「ひぃ!?…じゃ、ジャンヌ・ダルク…!」
仰向けになっている兵士の右頬すれすれに自らが持つ旗の柄を突き刺す。
モルガンは俺の傍に控える形になっている。
相手方がジャンヌのことを知っているようなので、ジャンヌが対応したほうがよいだろう、となった。
「安心なさい、聞きたいことがあるだけです。ちゃんと答えれば、殺しはしませんよ」
「わ、わかった、答えるから…殺さ、ないで……!」
ジャンヌのやり方なのか、醸し出す雰囲気が威圧的だからなのかは分からないが、兵士は何度も頷く。
声に明らかに脅えが混ざっている兵士の様子を見るに、嘘を吐かれる心配はまぁ、ないだろう。
………
……
…
ジャンヌと、加勢したモルガンが行った話し合いにより、いくらか現状について情報を得ることができた。
その後、兵士は解放した事で、ここからはいなくなっている。
俺はそこまで歴史学に精通しているわけではないが、それでも明らかにおかしい点がある。
「…処刑されたはずのジャンヌ・ダルクの復活、か」
さすがにジャンヌ・ダルクという歴史に名を残す人物がいて、火刑に処されたことは知っている。
とはいえ、偉人とはいえ人である。
火刑に処されれば復活するなど、ありえない。
それに。
「ジャンヌでないジャンヌ…か」
「えぇ、所詮私は
あの兵士はジャンヌの事をジャンヌ・ダルクと呼んでこそいたが、よく見ると別人だと言っていた。
装具の色に限らず髪の色に至るまで。
ジャンヌが言うオルタという存在を詳しく知っているわけでこそないが、あまりいい意味ではない気もしている。
だからどう、というつもりもないが。
「…ちなみに、あの兵士が言っていたジャンヌ・ダルクに心当たりはあるのか?」
「えぇ、ありますとも。想像するのも嫌になる程にですが」
表情からは想像するのも嫌になる、という風には見えないが、本人が言うならそうなのだろう。
それを変につついて藪から蛇を出す趣味もない。
「…何にせよ、特異点の修正を目的を果たす上では、ジャンヌ・ダルクとの接触は避けられまい」
であれば、ジャンヌ・ダルクへの接触及び、場合によっては特異点修正のために討つ必要が出てくることが考えられる。
とりあえず当面の目的はそこになるだろう。
考えるべきは、もう一つ。
「藤丸については、何も分からず…か」
兵士に話を聞く際に、その事も併せて聞いたが、これについては兵士も知らず。
どうしたものだろうか。
それに関しては。
「別に必要ないのでは?」
「私も同意見です、我が夫。見つかればよし、見つからずとも別に不要でしょう」
二人は全く無関心だった。
それが何故なのかは彼女らの個人的な感情もあるだろうと思い、聞いていない。
とはいっても、多少は関心を持ってもらえるといいなとは思うが。
「…むしろ、どこかで死んでいれば後々面倒がなさそうですが」
「それに関しては同意見ね」
この敵意じみたなにかはどうにかしてほしい気もする。
そんなことを考える俺の意を汲んでか。
「心配せずとも、私達からあいつに手を下しはしないわよ…あっちが余計なことをしなければね」
ジャンヌはそう告げる。
最後に付け加えた一言がなければ安心できるのだが。
「…それはそれとして、カルデアから連絡はないのか」
「おそらく向こうと通信しているのでは?」
藤丸の方にはカルデアの事情に通じているであろうマシュがいる。
可能性は高いだろうと思う。
「…特異点修復に際して、ジャンヌ・ダルクとの接触になることは間違いないだろうが、案内はジャンヌ…頼む」
「えぇ、分かりました。場所も心当たりはありますからご心配なく」
それが主目的になることは間違いない。
その事を踏まえ、今後の方針を考える。
「当面はジャンヌ・ダルクとの接触を目的としつつ、道中で藤丸との合流、およびカルデアとの情報交換を行いながら特異点の修復を目指す、といったところでどうだ」
「えぇ、わかりました」
「我が夫の意のままに」
方針を提案すると、二人は同意してくれた。
返事に頷き、前を向き、歩き出す。
「マスターちゃん」
「?」
「私達はサーヴァント…道具なのです。何かをするのに私達に同意を求める必要はありません」
ジャンヌにそう言われ、少し考える。
「…マスターとサーヴァントの関係についてはそうかもしれないが、俺は二人を道具と思うつもりはない」
強い力を持った存在であるとはいえ、こうして意思を疎通できる時点で道具とは思えない。
「烏滸がましいかもしれないが、道具というよりは共に戦ってくれる仲間という認識だし、今後もそうありたいと思っている」
身の程を知れと言われたらそれまでだが。
「マスターがどうあるべきかというのもあるのかもしれんが、正直それはどうでもいい。俺は俺なりに…だ」
「…全く」
俺の言葉にモルガンが溜息交じりに反応する。
「考えが甘いですよ、我が夫…その考えではいつか我らに寝首をかかれるでしょうね」
モルガンなりの警告のつもりなのだろう。
信頼と油断は違う、ということか。
そう思ったからこそ。
「そうするつもりなのか?」
そう尋ねると、きょとんとした感じで見返してきて。
少しして。
「…くく」
おかしそうに笑うモルガン。
口元に手を当てて笑う様子は、高貴な雰囲気も相まって優雅にすら見える。
「なるほど…我が夫は、どこまでいっても我が夫だ」
「…そりゃそうでしょ、私達のマスターちゃんだもの」
「……?」
二人で何か納得して、笑いあっているが、何がおかしいのかはわからないが。
「…何か変なこと言ったか?」
「いいえ。我が夫は気にすることはない」
「そうね…マスターちゃんはマスターちゃんのままでいなさい。今の貴方のままで在り続ける限り、私はずっと、傍にいるから」
尋ねた問いに対する答えを返してくれる二人の表情は、笑顔だったが、どこかカッコよさも感じさせる。
どう伝えればいいか、言い方が分からないが、素敵な笑顔だと、ただ純粋に、そう思った。