FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
その後、歩き出し、どれくらい歩いたか、林の中のような場所。
「…特に何もないな」
何もない、というのは異変的な意味である。
ジャンヌとモルガンは二人とも警戒は続けてくれているが、先程兵士に襲われた時のような異変にあたることが、何もない。
あるいは、こちらが気付く前に対処してくれているのか。
強いて言うなら、ジャンヌの案内の下でただ歩いているだけなので、足が疲れるかというくらいである。
「別にいいんじゃない?目的がはっきりしている以上、面倒な手間がなくていいわ」
ジャンヌはこちらに振り返りながらそう返す。
確かにその通りなのだが、それで全てが済むと考えていいかと言われると、どうなのだろうか。
「…これだから力しか能のない魔女は」
「あ?」
モルガンが溜息交じりに言うと、ジャンヌの眉間に青筋が立ったように見える。
やばい、と直感的に思ったのだが。
「…どういう意味よ」
「……本当に、分からないのか?」
「…!」
モルガンの再度の問いかけとほぼ同時に、ジャンヌが警戒を強める。
次の瞬間、ガサ、と音が立ち、流石に俺も気付く。
「…下手に動いちゃだめよ、マスター」
「あぁ」
前をジャンヌに、後ろをモルガンに警戒してもらいながら、ジャンヌからの言葉に返す。
こういう状況では、ちゃん付けをしないんだな、と場違いなことを考える。
この状況でそこまで落ち着いている自分に少し驚きつつも、辺りを見回す。
「……数は、どう思う」
「少なくとも一人ではないでしょう。そして恐らく…囲まれてる」
多勢に無勢。
そんな言葉がよぎる。
「……」
この状況を打破するにはどうするべきかと思案していると。
「っ!」
どこからか飛んでくる矢。
その矛先は。
「させるかっ!」
ジャンヌが落としこそしたが、明らかに俺に向いていた。
一本だけ飛んできたということは、少なくとも一人の弓兵がいる。
一人ならいいが、もし複数いたとしたら。
全員が、こちらを狙ってきたとしたら。
「ちっ…」
辺りを見回す。
けれど、さすがに相手は戦い慣れしているのか、こういった戦いに慣れていない俺にはその気配は、分からない。
冬木の場合は、相手の姿が見やすい状況だったから、殲滅して突破、というのが可能だった。
しかし、今は潜伏されており、下手に動けば奇襲の恐れ。
つまり、ここから動かずに対処しなければならないわけだが、数が掴めない。
「…モルガン」
「どうしました、我が夫?」
ブレないな、と思う。
その辺りはジャンヌと違うところかもしれない。
「恐らく、相手全てを撤退させるのは難しいだろう…だから、この場を離脱するための道を空け、この場を離れることに専念すべきと思うが、どうだ」
数が掴めない原因は、そしてそれを確定するための地理的な条件が悪すぎるから。
そう考え、まずはこの場を離脱することを提案した。
拓けた場所に移動すれば、冬木の時と同じような状況に持ち込めるだろうと考えてのことだった。
「…さっき見せてもらったモルガンの力があれば、それができると思うが」
尋ねるように言えば、モルガンは目を伏せ、けれど口元に笑みを浮かべながら。
「いいでしょう…夫に頼られて応えることが出来なければ妻の名折れ。私に任せるがいい」
「…方向はジャンヌ、任せる。俺は後に続くから、前は任せる」
「ちょっと、貴方自分で走る気?」
「あぁ」
ジャンヌに全力で行かれたら追いつけないだろうから、そこは加減してもらえると助かるが。
「……はぁ」
思い切り溜息を吐かれた。
何か問題ありだったのだろうか。
「マスターちゃん」
「…?」
ジャンヌに手招きをされ、近づく。
やがて手が届くまでの距離まで近づくと。
「ふんっ!」
「っ!?」
突然片手で思い切り抱き寄せられる。
「っモルガン!」
抱き寄せられていることもあり表情は伺えないが、ジャンヌに呼びかけられて、何となく気に入らない表情をしているかもしれないと思う。
「…マスター。しっかり…私を抱きしめてなさい」
「は?」
「振り落とされたくなければ、ね」
よく分からなかったが、最後の一言で何を言いたいのかを察し、そのままジャンヌを抱きしめる。
とはいえ、気恥ずかしかったが。
「…この程度の事、今更躊躇うんじゃないわよ」
それ以上のことだってしたでしょ、と言われ、とりあえず腕の力を強めることで返す。
「…走れ、ジャンヌ!」
モルガンの声と共に、ジャンヌが駆ける。
その速度はジャンヌの全力なのか、それとも加減しているのか。
次元が人のそれをかけ離れており、皆目見当もつかない。
「喋っちゃだめよ、マスターちゃん。舌、噛むから」
ただ、その一言だけを聞き、目を閉じ、それ以上の思考を一旦中断した。