FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

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奇襲 - II

それから、どれくらい経っただろうか。

 

 

「…我が夫。もう状況は打破しました…そろそろ離れたらどうです」

 

 

モルガンの言葉に体の力を抜き、ジャンヌから離れる。

 

 

「あ…」

 

 

名残惜しそうなジャンヌの声を僅かに耳に入れながら、モルガンの目が少しだけ怖かったので離れる。

 

 

「……周りの状況は」

「もう終わっています」

 

 

俺の言葉に、モルガンは食い気味に返す。

そんなことより、と言わんばかりに。

 

 

「…我が夫。ジャンヌだけでなく、私にも何かあってもよいのでは?」

「あ、あぁ…」

 

 

こちらに両腕を広げて何かを求めるモルガンに、何が正解なのか少し考える。

空返事を返しこそしたが、どうすべきか分からなかった。

しかし、両腕を広げられたので。

 

 

「…ありがとう、助かった」

 

 

モルガンを抱きしめ、軽く髪を梳くように撫でる。

洗髪する時の自分の髪と比べて、ジャンヌといいモルガンといい、女性の髪はどうしてこうサラサラなのか。

とはいえ、ずっとこのままというのもどうかと思い、少ししたら離れる。

 

 

「……少し物足りない気もしますが、まぁいいでしょう」

 

 

とりあえず満足をいただけたようなので。

 

 

「…少しいいか」

 

 

ジャンヌとモルガンに声をかける。

 

 

「さっきの奇襲だが……妙じゃないか?」

「妙、とは?」

 

 

違和感を感じた、奇襲。

というのも。

 

 

「ジャンヌは気づいただろうが…あの矢は俺を狙っていたらしい」

「えぇ…あの角度からして間違いないでしょう」

「…なぜ敵は、俺を狙ったのか、だ」

 

 

弓兵が敵将を狙うのはわかる。

俺だけかもしれないが、ゲームなんかで弓兵は可能なら将を狙うなんて戦略はよくとる。

だが、もしそうだとしても。

 

 

「…あの状況では、俺は精々戦える人に守られた一般人という状況に見えたはずだ」

 

 

俺を一番に狙う理由にはならない。

もし、一番に俺を狙うとしたら。

 

 

「……知っていた、ということか」

「あぁ」

 

 

モルガンの言葉に同意する。

 

 

「敵がサーヴァントとマスターというものを知っていたかどうかというのもあるが…少なくとも俺がマスター、あるいは将であることを知っていたということになる」

 

 

あの状況を見て俺を将と判断するのは難しいと思ったからだが。

 

 

「ジャンヌとモルガンに守られていた状況を見て判断したかもしれないが……気になることがもう一つあってな」

「…何かしら」

 

 

ジャンヌに先を促され、言葉を続ける。

 

 

「奇襲を受けた、あの状況だ」

 

 

奇襲の狙いが俺だとした場合。

 

 

「敵は、こちらから攻めづらい状況を意図的に作っていただろう。あの場所で…気配を消していた。ああいったことは指揮官なしで簡単にできるのか?」

「……マスターちゃんは、指揮官がいると?」

「あぁ。しかも…こちらの戦力事情に通じた指揮官が、な」

 

 

そうでなければ、フランスという地に対して利があるジャンヌに優位をとることはまず不可能なはず。

 

 

「…杞憂であればそれに越したことはないが、な」

「ま…警戒するに越したことはない、か」

 

 

俺の言葉にジャンヌが溜息交じりに結論付ける。

 

 

「…ならば我が夫。お前は、こちらの状況を敵に流したものがいると?」

「おそらくな」

「藤丸じゃない?」

 

 

モルガンの言葉に同意すると、ジャンヌが可能性を示唆する。

あまり肯定したくない可能性ではあるが、否定はできないのが辛い。

 

 

「……やはり潰しておくべきでしたか」

「せっかくフランスにいるんだし火刑でよくないかしら」

 

 

なんか物騒な話になっているが。

 

 

「こっちに来たばかりの兵士の可能性もあるが」

「分かってるわよ」

 

 

考えられる可能性を一つ上げておくと、ジャンヌが同意してくれた。

本当、なんだろうかと少しだけ疑う。

 

 

「……それはそうと」

 

 

そんなことを思っていると、今度はジャンヌが話し始める。

その視線はこちらを向いていた。

 

 

「…マスターちゃん、貴方…さっき作戦を立てたとき、自分がどうやって離脱するか考えてなかったわよね?」

「……」

 

 

正直、後ろからついていけばいいと考えていたのだが、安易だったことは否定できないが。

 

 

「考えていなかったわけでは…」

「考えてた、とは言わせないわ。ここまで冷静に状況を見れるのに、走っていけば何とかなるなんて普通は思わないでしょ」

「う…」

 

 

痛いところを突かれる。

どう返すべきか悩んでいると。

 

 

「…?」

 

 

とん、と胸元に軽い重みを感じる。

見れば、ジャンヌが寄り添って胸元に顔を埋めている。

 

 

「…お願いだから、自分を蔑ろにしないで。私はもう…この温もりを喪いたくない」

「……」

 

 

ジャンヌが受けた苦しみ。

それを与えてしまったのは、記憶しかないとはいえ、自分であることは間違いない。

ただ、その苦しみがどれほどのものだったのかは、俺には分からない。

 

 

「…すまない」

「次こんな無茶苦茶な事言い出したら…貴方を私の炎で焼いて、私もその火で死ぬわ。そうすれば死んだ後も一緒でしょ」

 

 

心中というやつか。

所長も言っていたが、傍から見れば重いのかもしれない。

けれど、そんなジャンヌが愛おしく感じられるあたり、自分も重いのかもしれないと、そう思った。

 

 

「二人だけの世界で満足するな。その時は我が夫…私もお前を追いかけるのだと、そう覚えておけ」

「…モルガン」

 

 

背中に重みを感じ、かけられた言葉に軽く返す。

 

 

「……ありがとう」

 

 

形はどうあれ、想ってくれている二人にお礼という形で返す。

しかし。

 

 

「…お礼を言われると、まるでこの先言えなくなるから今のうちに、っていう風に聞こえるからやめて」

 

 

ジャンヌにそんな風に言われ、胸元をポカ、と軽く一発小突かれる。

痛くはないが、あまりの弱々しさに心が痛くなった、という表現が正しい気がした。

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