FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
その頃、カルデアにて。
「通信が出来ないってどういうこと!?究明急いで!」
管制室は荒れていた。
原因は簡単に言うと、通信のトラブルであった。
オルガマリー所長が周りに指示を飛ばし、原因究明を急いでいた。
「通信が繋がったのが藤丸だけ…」
オルレアンへのレイシフト後、冬木のときと同様に通信を開こうとした。
存在証明はできており、二人は正常に現地に辿り着いていることは確認できているのだが、何故か藤丸しか通信に応答しなかった。
更に運が悪いことに、二人はレイシフトした先の座標が大きくズレており、簡単に言えば離れ離れになっていたのだ。
「…」
頭を抱えながら焦る所長。
二人とも強力なサーヴァントを従えており、今回レイシフトしたオルレアンはそこまで改変がひどくない、はず。
そう簡単に最悪の事態に陥るとは考えにくい。
とはいえ、それはあくまで希望的観測。
上に立つ者である以上、最悪を想定した上でのリスク管理は絶対。
「とりあえず、藤丸には彼との合流を最優先に考えるように伝えた。あとは…」
所長は頭を悩ます。
最初のレイシフトでいきなり想定外の事態。
前途多難と言わざるを得ない状況とはいえ、乗り切らなければならない。
全ては人理保障のため。
「…」
ふと、所長は視線を上げ、時計に目をやり。
「……時間ね。AチームはCチームと交代、休憩を取りなさい。BチームはCチームに事情を説明の上で引き続き彼との通信を開けない障害の調査にあたりなさい」
そう、指示を出す所長に対し。
「承知しました!」
手を動かさずに作業を続けながら返事をするBチームに。
「所長、この状況で休憩と言われても…!」
状況が状況だけに休憩することを躊躇うAチームだったが、所長は彼らを睨み。
「いいから休憩に入りなさい。チームの作業効率が落ちてきているのに気づいていないの?」
「それは…」
「…休憩の後にはまたしっかり働いてもらいます。いいですね?」
「は、はい…」
そのやり取りの後、Aチームが部屋を後にし、残ったBチームにCチームが加わる。
「…所長、この通信障害の件なのですが、休憩しながら考えたのですが」
「休憩中は作業のことは考えるなと指示したはずだけど?」
「あ」
休憩から戻ったスタッフの言葉に溜息を吐く所長。
「……次から気をつけなさい。それで、何?」
「はい。彼らは座標は補足できており、通信が繋がらない以外の異常が一切ありません…不自然なほどに」
「そうね、それが?」
「…そうなると、何者かが意図的にこちらからの通信を遮断しているのでは、と」
「………」
スタッフの言葉に、所長は顎に手をやり考える。
「…貴方は、どう考えてる?その、何者かについて」
「はぁ…現地で敵対している勢力、とかでしょうか」
「……そうね、まぁ妥当かしら」
報告が以上ということでスタッフを作業に戻らせる。
実際、スタッフの推測は妥当な線だとはいえる。
ただ、この時、浮かんだのは別の可能性。
「……まさか、ね」
レイシフト直後からの通信不調。
直後に敵と対峙したのなら、可能性としてはありうる。
しかし、危険を避けられるよう、事前に座標は十分に調査を行った。
その可能性は低い。
そして、仮にそうであったとしても、ジャンヌ・オルタという強力なサーヴァントを従えている彼がそうそう敵の手に落ちるとも考えづらい。
召喚直後でどれほどの力を持つかは未知数だがモルガンというサーヴァントすらいる。
「…」
そして、懸念すべきはもう一つ。
二人がレイシフトした後の座標である。
通信が繋がった藤丸の近くに、彼はいなかった。
そう、本人から報告を受けている。
だとすると、レイシフト直後の座標はかなり離れていたことになる。
…それが、ありえない。
そもそも、レイシフト後の座標はほぼ同位置を指定したのだ。
座標計算に生じる誤差があったとしても、互いが確認できないほど離れるはずがないのだ。
レイシフト時を狙って、座標を書き換えない限りは。
もしそんなことができるとしたら、ここにいるスタッフか、あるいは。
「…あのサーヴァント達が…?」
考えてみれば、ジャンヌ・オルタは彼を守るということに意識が強く向いていた。
一方で、カルデアや、藤丸に対しては敵対心のようなものを抱いていた。
冬木での振る舞いはそう見て取れる。
初対面である彼女らが何故そのような感情を持っているのかは知らない。
ただ、少なくともいい感情は持ち合わせていないという事だけは分かる。
ジャンヌ・オルタかモルガンのいずれかが魔術に長けている場合、その程度の妨害工作は可能だろう。
むしろ、その場合は彼女らがこの妨害を行っている可能性が高いとすら感じる。
「彼女たちは、一体…」
何を知っているのか。
あるいは、カルデアの何を警戒しているのか。
それが分からなければ、彼女達と、あるいはそのマスターである彼と、協力関係を築くことは出来ない。
「……まぁ、今はそれどころでもない、か」
推測で考えを進めても、現時点では確証を得ることはない。
ならば、今はできることをするしかない。
「通信障害だけでなく、藤丸のサポートも怠らないように!」
今は、特異点の修正に全力を。