FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
オルレアンへのレイシフトを行う前日。
マスターが寝た後の部屋の中で。
「…モルガン」
「どうした」
暗い部屋の中、マスターを起こさないよう、モルガンに話しかける。
話題は無論、明日のレイシフトについて。
「あんた、確か魔術はそこそこ出来るわよね」
「…少なくともお前よりは出来るだろうが、それがどうした」
「言い方が引っかかるけど、まぁいいわ」
私は、モルガンに考えていることを伝える。
何があっても、カルデアという組織を信用することは出来ないこと。
その根底にある、マスターを見殺しにした、私が通ってきた未来。
マスターが喪われ、それを受け入れて先に進み始めたカルデア。
モルガンも全く知らないわけではないだろうが、改めてその話をする。
「…彼はカルデアを信じて戦い続けた。けど、彼を犠牲にしてもなお、藤丸というマスターの存在を以て、良しとして進み続けた」
「このカルデアこそが、我が夫を死に追いやったと。そういうことか」
「えぇ。誰がどう言おうと、私はそう思っている」
だからこそ。
「…だからこそ、私はカルデアという組織を信用しない。絶対に、赦しはしない」
「今すぐではないにしても、いずれ犠牲になる未来が来る…か」
モルガンは目を閉じる。
何かを、
私には分からないが。
「…ふん」
モルガンは目を開き、一つ息を吐く。
その目に、感情が宿っているようには見えない。
それは、暗いからか、別の理由か。
視線だけで人を殺せるというのなら、今のモルガンのような視線かもしれないと、少しだけ背筋が震える。
「進むべきでない未来。そう進んでしまうのは、そもそもの前提が誤っているから…か」
一人で何かを納得したように、嗤うモルガン。
「…いいだろう。私とて、我が夫のためにここにいるのだ。カルデアの事など、知ったことではないからな」
「そ…ありがと」
「それで、どうするつもりだ」
モルガンの問いに、私は考えていた事を告げる。
全ては、世界からマスターを守るための、作戦。
「…レイシフト後は、カルデアからの通信を受けることになるだろうけど、それを遮断する」
マスターを、あいつらの思い通りにはさせない。
サーヴァントは、マスターを守るための存在。
「…くく」
世界?
――そんなもの、どうでもいい。
人理の保障?
――マスターの存在を排除しようとする人理など、崩壊してしまえばいい。
特異点の修復?
――特異点ですべきことは聞いた。あとは私達なりにやってみせよう。
白紙化?
――一度白紙に戻してやり直すくらいの方がいいのではないか?
「…」
全ては、マスターが奪われる未来の回避の為。
その為ならば、私は何だってする。
「まるで、世界を敵に回した悪役のようだな、竜の魔女…ジャンヌ・ダルク・オルタ」
モルガンに、嗤いながら言われる。
悪役?上等じゃない。
「…全くもって正当評価ね、モルガン。私はマスターの為に、世界を敵に回すわ」
「やはり、バーサーカーの適性があるな、お前は」
私も、モルガンも、正義の味方になんて、なれはしないだろう。
少なくとも私は、そんなことはとっくに受け入れている。
「えぇ…狂っているでしょうね、私は。あんたはそれを笑うのかしら?」
「まさか。お前が狂っているのなら、私とて、とうに狂っている」
「…所詮、世界に仇なす者どうし、ってとこかしら?」
世界を救うことに意義を感じていない私たちにとっては、それでも全く問題はないのだが。
「けどまぁ、悪なら悪らしく、私達なりのやり方で、マスターちゃんを守ることにしましょう」
「実にいい提案だ。ゆくゆくは、我が夫を蔑ろにした者が、その罰を受けることになるだろうがな」
「それは、実に楽しみね」
二人、嗤う。
その表情は、見る人が見ればきっと、悪という存在が浮かべる笑みだろう。
けれど、それは何とも、私達らしい。
「…じゃ、おやすみ。私はマスターに抱かれて寝るわ」
「私もそうするとしよう。ではな」
私とモルガンの間に寝ているマスターに身を寄せ、温もりを感じながら目を閉じる。
サーヴァントは夢を見ない。
夢もなければ、未来への希望もない。
けれど、その日は確かに、やがて訪れるであろう未来に、期待をしながら、胸を躍らせた。