FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
レイシフト先とはいっても、時の流れは現実と変わらない。
やがて、夜が訪れる。
「…今日はここまでかしらね」
ジャンヌが立ち止まる。
「マスターちゃんもそれでいいわね?」
ジャンヌは尋ねてこそくれるが、有無を言わさない雰囲気でもある。
まぁ、暗い中の行動が危険なことくらいは想像がつくので、反論する気はないが。
「…異論はないが、ここでか?」
辺りを見回す。
周りは木々が並ぶ、山道のような場所。
周りから見つかりづらいかもしれないが、それは逆も言える。
つまり、狙われていることに気付きづらい。
「そこは私に任せなさい、我が夫よ」
その意を汲んでか、モルガンが答えてくれる。
魔術に長けたモルガンであれば、何か出来ることがあるのだろう。
流石にそこまでは俺には分からないが。
「…頼んだ」
俺の言葉にモルガンは頷き、こちらに背を向ける。
魔術を発動させたのかどうかは分からないが、集中しているようなので声をかけずにいようと思う。
とりあえず近場に見つけた、大きめの岩にとりあえず腰掛ける。
「…ふぅ」
何だかんだで疲れていたのか、一つ溜息。
「やっぱり、疲れてたのね」
ジャンヌが隣に腰掛ける。
腰掛けた岩はそこまで小さくなく、二人程度なら多少間が空いても問題ない大きさだったが、ぴったりと密着してきているが、これについて突っ込むのは野暮だろう。
肩に頭を乗せ、もたれかかってくるジャンヌを支える。
とはいっても、ジャンヌは軽く、意識せずとも十分に支えられている。
「…そう見えたか」
「私がどれだけ貴方を見てたと思ってるのよ」
ジャンヌの中の半分以上の記憶は、
「……?」
宙を見上げていると、軽く腕を引っ張られるような感覚。
引っ張られた方を見ると、ジャンヌが腕を抱きしめていた。
考えている事が伝わっているのか、いないのか。
そこまでは分からないが、考えない方がいいのかもしれない。
多少なりとも、ジャンヌと共に在ったマスターの記憶があるからこそ、なんとなく察しはつく。
正しいかどうかは分からないが。
「……」
今、ジャンヌの中で渦巻いている感情は、不安、なのだろう。
実際に別れた場所についてはよく分からないが、暗い場所で、ジャンヌを送り出した。
懇願するように拒否したくても、マスターの強制力で無理やりに。
ジャンヌのため、と言われれば、きっとそうなのだろうし、納得はいく。
同じ状況であれば、可能であれば、俺もそうしただろう。
しかし。
「マスター…」
こうして、求められること自体は悪い気はしない、というよりむしろ嬉しさすらある。
しかし、思い出すのは冬木でのジャンヌ。
もともとは、あれがジャンヌの素なのでは、と思う。
復讐者、という自らを受け入れながらも確固たる信念を持ち、自らの力で道を切り拓く力を持った女性。
しかし、今ここにいるジャンヌはどうだろうか。
「……」
それが失われた、とまでは思わない。
思わないが、あまりに俺を気にかけすぎていないだろうか。
冬木にせよ、このオルレアンにせよ、多少なりの危険は覚悟の上ではある。
だが、僅かな危険が及ぶことにすら過剰に反応しているように。
「…いなく、ならないで……」
恐らく無意識のジャンヌの言葉。
きっと、今何を言ったところで、ジャンヌの不安は拭えないだろう。
そしてきっと、ジャンヌは今後、ずっとこの不安に苛まれ続けてしまうのかもしれない。
それほどまでに深い傷を負わせてしまった。
そんな俺が今出来ることは、マスターとしてジャンヌの傍に在ること。
「…俺は、ここにいる」
少なくとも、ジャンヌの傷が癒える、その時までは。
少なくとも、ジャンヌが共にいてくれる間は。
「ん……」
眠っているのか、あまり反応がない。
今後について話したいこともあったが、起こすのも忍びない。
とりあえず、その話題は少し後に取っておこう。
そう、思った。