FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

45 / 70
夜語 - I

レイシフト先とはいっても、時の流れは現実と変わらない。

やがて、夜が訪れる。

 

 

「…今日はここまでかしらね」

 

 

ジャンヌが立ち止まる。

 

 

「マスターちゃんもそれでいいわね?」

 

 

ジャンヌは尋ねてこそくれるが、有無を言わさない雰囲気でもある。

まぁ、暗い中の行動が危険なことくらいは想像がつくので、反論する気はないが。

 

 

「…異論はないが、ここでか?」

 

 

辺りを見回す。

周りは木々が並ぶ、山道のような場所。

周りから見つかりづらいかもしれないが、それは逆も言える。

つまり、狙われていることに気付きづらい。

 

 

「そこは私に任せなさい、我が夫よ」

 

 

その意を汲んでか、モルガンが答えてくれる。

魔術に長けたモルガンであれば、何か出来ることがあるのだろう。

流石にそこまでは俺には分からないが。

 

 

「…頼んだ」

 

 

俺の言葉にモルガンは頷き、こちらに背を向ける。

魔術を発動させたのかどうかは分からないが、集中しているようなので声をかけずにいようと思う。

とりあえず近場に見つけた、大きめの岩にとりあえず腰掛ける。

 

 

「…ふぅ」

 

 

何だかんだで疲れていたのか、一つ溜息。

 

 

「やっぱり、疲れてたのね」

 

 

ジャンヌが隣に腰掛ける。

腰掛けた岩はそこまで小さくなく、二人程度なら多少間が空いても問題ない大きさだったが、ぴったりと密着してきているが、これについて突っ込むのは野暮だろう。

肩に頭を乗せ、もたれかかってくるジャンヌを支える。

とはいっても、ジャンヌは軽く、意識せずとも十分に支えられている。

 

 

「…そう見えたか」

「私がどれだけ貴方を見てたと思ってるのよ」

 

 

ジャンヌの中の半分以上の記憶は、()()()ではないとは思うのだが、そういうものだろうか。

 

 

「……?」

 

 

宙を見上げていると、軽く腕を引っ張られるような感覚。

引っ張られた方を見ると、ジャンヌが腕を抱きしめていた。

考えている事が伝わっているのか、いないのか。

そこまでは分からないが、考えない方がいいのかもしれない。

多少なりとも、ジャンヌと共に在ったマスターの記憶があるからこそ、なんとなく察しはつく。

正しいかどうかは分からないが。

 

 

「……」

 

 

今、ジャンヌの中で渦巻いている感情は、不安、なのだろう。

実際に別れた場所についてはよく分からないが、暗い場所で、ジャンヌを送り出した。

懇願するように拒否したくても、マスターの強制力で無理やりに。

ジャンヌのため、と言われれば、きっとそうなのだろうし、納得はいく。

同じ状況であれば、可能であれば、俺もそうしただろう。

しかし。

 

 

「マスター…」

 

 

こうして、求められること自体は悪い気はしない、というよりむしろ嬉しさすらある。

しかし、思い出すのは冬木でのジャンヌ。

もともとは、あれがジャンヌの素なのでは、と思う。

復讐者、という自らを受け入れながらも確固たる信念を持ち、自らの力で道を切り拓く力を持った女性。

しかし、今ここにいるジャンヌはどうだろうか。

 

 

「……」

 

 

それが失われた、とまでは思わない。

思わないが、あまりに俺を気にかけすぎていないだろうか。

冬木にせよ、このオルレアンにせよ、多少なりの危険は覚悟の上ではある。

だが、僅かな危険が及ぶことにすら過剰に反応しているように。

 

 

「…いなく、ならないで……」

 

 

恐らく無意識のジャンヌの言葉。

きっと、今何を言ったところで、ジャンヌの不安は拭えないだろう。

そしてきっと、ジャンヌは今後、ずっとこの不安に苛まれ続けてしまうのかもしれない。

それほどまでに深い傷を負わせてしまった。

そんな俺が今出来ることは、マスターとしてジャンヌの傍に在ること。

 

 

「…俺は、ここにいる」

 

 

少なくとも、ジャンヌの傷が癒える、その時までは。

少なくとも、ジャンヌが共にいてくれる間は。

 

 

「ん……」

 

 

眠っているのか、あまり反応がない。

今後について話したいこともあったが、起こすのも忍びない。

とりあえず、その話題は少し後に取っておこう。

そう、思った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。