FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

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夜語 - II

そんな感じでジャンヌの重みを感じながら休んでいると。

 

 

「…眠ったか」

 

 

作業が終わったのか、モルガンがこちらに歩いてくる。

女王、というだけあって所作に荘厳さがある。

 

 

「…世話をかけたな、モルガン」

「そう思うのなら、後で二人の時間を所望します。構いませんね?」

「今じゃなくてもいいのか?」

 

 

問いかけると、モルガンは傍らのジャンヌに視線を移し。

 

 

「お前たちの時間を邪魔するほど、私とて野暮ではない」

 

 

モルガンの言葉に、ジャンヌを見る。

表情こそ伺えないが、肩が上下しているのを見ると、落ち着いて眠っているのか。

 

 

「…それに、我が夫を喪ってからの様子を多少なりとも見ていたからな。とても邪魔する気は起きん」

「そんなに、酷かったのか?」

 

 

モルガンが優しい目でジャンヌを見ることが珍しく感じ、尋ねる。

辛い思いをしたのだろうという事は知っているが、想像の範疇を超えられない。

だからこそ、尋ねて知るしかない。

 

 

「……そういう事であれば、我が夫。目を閉じなさい」

「モルガン?」

「お前に()()ましょう。ジャンヌがどんな思いをして、今に至るのか」

「…そんな事が出来るのか」

「我が夫の望みならば。それに…」

 

 

モルガンは一度言葉を切り、こちらを見て。

 

 

「我が夫…これを見てよく覚えなさい。遺された者がどれだけ辛い思いをするのかを」

 

 

そして、このような事を二度としないように。

そう、釘を刺される。

 

 

「…さぁ、目を閉じなさい」

 

 

目を閉じると、モルガンの魔術か、意識がぼんやりしていく。

 

 

 

………

……

 

 

 

―声が、聞こえる。

 

 

『う、ぅ…』

 

 

―聞きなれた、声。

 

―ベッドで眠る誰かに縋り付き、涙を流す、今となっては馴染みある女性。

 

―ジャンヌ・ダルク・オルタ。

 

 

『マスター…ますたぁ……っ!』

 

 

―なんで。

 

―どうして。

 

―その言葉だけをひたすらに繰り返す。

 

 

「…」

 

 

―縋りついているのは、かつてのマスター。

 

―ジャンヌが愛し、守ろうとした人。

 

 

『…ジャンヌさん。そろそろ部屋を…』

 

 

―スタッフだろうか、一人の人物が入ってくる。

 

―大方、部屋の片付けだろう。

 

―亡き者のためにいつまでも部屋一つを使うわけにはいかないだろうから。

 

―しかし。

 

 

『っ!』

 

『うわっ!?』

 

 

―亡骸に触れようとしたスタッフに、威嚇のつもりか、ジャンヌは炎を放つ。

 

―戦闘経験が浅いスタッフは思わず飛び退く。

 

 

『私のマスターに触るな…!マスターは死んでない、眠っているだけ!』

 

『いや、しかし…』

 

『っ…お願いだから、彼を…奪わないで……!』

 

 

―ジャンヌは泣きながら懇願する。

 

―その様子に、スタッフも部屋を出る。

 

 

『お願い、目を覚まして……!』

 

 

―あまりに、痛々しい姿に、眼を背けたくなる。

 

 

『私が素直じゃなかったから?貴方に反抗的だったから?』

 

 

―それでも、俺は目を背けてはならない。

 

 

『全部謝るから…!素直になるから、ちゃんと伝えるからぁ……!!』

 

 

―自分が犯した罪から。

 

 

『ごめ…なさいっ……ごめん、なさい…ますたぁ…!』

 

 

―謝らないでほしい。

 

―泣かないでほしい。

 

 

―そんなことすら、今の俺には、できないのだが。

 

 

……

………

 

 

 

そこまでを視て、意識が再度遠のき。

 

 

「っ…!」

「…戻りましたか、我が夫よ」

 

 

はっと目を開けば、そこにはモルガンの姿。

傍らには、静かに寄り添うジャンヌ。

寝ているのか、反応はなかった。

 

 

「今のは…」

「…我が夫が去った後に実際に起こったことです」

「……」

 

 

泣きながら必死に謝るジャンヌの姿が頭からこびりついて離れない。

 

 

「我が夫」

「…モルガン?」

「今のは確かに現実です。だからといって、私は何かを求めるつもりはありませんし、咎めるつもりもありません」

 

 

ただ、と続けるモルガン。

その瞳は、強さを秘めていた。

 

 

「我が夫は良かれと思ったとしても、これほどまでに傷つく者がいるということは、決して忘れてはなりません。いいですね?」

「…分かった」

「結構」

 

 

こちらの返事に納得したのか、頷くモルガン。

その表情からは窺えないが。

 

 

「…モルガン」

「何か」

「俺はお前も…傷つけてしまったか?」

 

 

こちらの問いには、ふ、と笑みを浮かべるのみだったが、その表情はどこか寂しげだった。

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