FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

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夜語 - IV

マスターの腕を抱きしめて、身を寄せて、目を閉じる。

 

 

「……」

 

 

隣にいるマスターに、身を寄せたかった。

別に、何かあったわけではない。

ただ、不安を覚えてしまった。

宙を見上げるマスターを見て、私は言いようのない不安を覚えてしまった。

本当は、尋ねたかった。

 

 

―何を、見ているの。

 

 

大したことではないのかもしれない。

疲れから、ただぼんやり眺めていただけかもしれない。

そうかもしれないし、私がそう信じたいだけかもしれない。

聞けばよかったのだろう。

だけど、聞かなかった。

聞くのが、怖かった。

どこかに、行ってしまうのではないか。

私を置いて、どこかへ。

 

 

…あの時のように。

 

 

抱きしめている彼の腕から感じる温かさは、彼がここにいることを感じさせてくれる。

けれど、全身で彼の温もりを感じ、魔力供給の形とはいえ、契りを交わした今となっては。

足りない。

もっと、マスターの温もりが欲しい。

彼の腕から感じる温かさは、風に吹かれて消えてしまうのではないかと思えるほどに。

服や鎧ですら、マスターと私の間を分断する障害のように感じてしまう。

それほどまでに、私は貪欲にマスターを求めてしまっている。

 

 

「っ…」

 

 

もっと、マスターと触れ合いたい。

契りを交わした時のように、何の障害もなく、全身でマスターの熱を感じたい。

けれど、今はそんな事は出来ないから、せめて。

 

 

「…いなく、ならないで……」

 

 

私を置いて、どこにも、いかないで。

傍にいさせて。

それだけで、私は私でいられるから。

少しだけ、腕の力を強める。

痛くないだろうかと心配になるが、力を弱められない。

マスターを、離したくない。

傍に、いてほしい。

そんな、単純で、我儘で。

 

 

―きっと、重い女だと、思われてしまうだろう。

 

―それでもいい。

 

―あるいは、精神的に弱いと思われてしまうだろうか。

 

―それでもいい。

 

―あるいは、病んでいると、思われるだろうか。

 

―それでもいい。

 

 

何でもいい。

マスターになら、どう思われてもいい。

ここに、いてくれるなら。

私と一緒に、いてくれるなら。

この温もりを、くれるのなら。

それだけで、私は私でいられるから。

 

 

――俺は、ここにいる。

 

 

マスターの言葉が耳に入る。

 

 

「ん……」

 

 

確かに、ここにいてくれている。

とはいえ、マスターを信じないわけではないけれど、不安は消えない。

 

 

…あの時のように、いつかは私の為に自分を犠牲にしてしまうかもしれない。

 

 

きっと、マスターと共に在る限り、この不安は決して無くならない。

けれど、マスターと共にいなければ、今度こそ私の心は壊れてしまう。

だから、私はマスターと共に、在り続ける。

決して消えない不安を抱えたまま、共に。

それでいい。

不安を抱えているということは、マスターが傍にいるということだから。

それだけでいい。

だからこそ、私は。

 

 

「……」

 

 

彼の腕に身を寄せ、彼の肩に頭を乗せてみる。

少しだけ、温かさが強くなる。

…全然、足らないが、今は仕方ない。

いつか、失ってしまうかもしれないという、不安。

これが、私が私である限り。

あるいは、私がマスターと在る限り、決して無くならないというのなら。

 

 

…私は、不安であり続けるために、戦い続ける。

 

…貴方の傍で、ずっと、一緒に。

 

 

だから、なんて烏滸がましい事を言うつもりはないけれど。

どうか、私が貴方を求め(愛し)ても、受け入れてくれますか。

 

 

―マスターも私のことを、求め(愛し)てくれますか。

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