FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

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邂逅 - I

翌朝。

 

 

「ん…」

 

 

ぼんやりと、目を覚ます。

もし夢が視れたなら、多少なりともいい夢になっただろうか。

目を覚ましたのは、森の中。

 

 

「…起きたか」

 

 

声をかけてきたのは、スカした女王様。

 

 

「…えぇ、声をかけてきたのがあんたじゃなければいい目覚めだったけど」

 

 

そう、あんたじゃなく、マスターなら。

言いながら、ふと昨夜のことを思い出す。

思い出して、少し恥ずかしさが蘇る。

何をしていたかをぼんやり思い出しながら。

 

 

「…!」

 

 

違和感に、気づく。

傍にいたはずの、マスターが、いない。

その事実が、私を一気に覚醒させる。

 

 

「っ…マスター!?」

 

 

辺りを見回す。

いない。

どこにも、いない。

立ち上がって、呼びかけるように声を出すが、姿はない。

 

 

「ちょっとあんた…マスターは…!」

 

 

モルガンに問いかけるが、溜息一つ。

 

 

「落ち着け。我が夫なら…」

 

 

なんで、こいつは。

仮にも夫呼びしている相手がいなくなったのにこうも落ち着いて…!

 

 

「っ…!」

「おい、待て…!」

 

 

モルガンの制止を振り切り、私は駆け出す。

もう二度と失いたくないと、そう思ったのに。

そう、自分に誓ったのに…!

 

 

「っマスター…!」

 

 

どこへ行ったの、マスター。

お願い。

私を、置いていかないで。

私を、一人にしないで。

何とか強がってきたけど、もう、無理。

あんなのは。

マスターがいない孤独はもう、耐えられない……!

 

 

「っ…マスタぁー!」

 

 

私らしくない大声が出たような気がするけれど、どうでもいい。

後で喉が痛くなるかもしれない。

サーヴァントだからそんな事はないかもしれない。

どっちでもいい。

どっちでもいいから、お願い。

マスター…!

 

 

「……ジャンヌ?どうした、何が…」

 

 

私の声が届いたのか、木の陰からマスターが顔を出す。

私は振り返り、どこかきょとんとした様子のマスターを見る。

よかった。

マスターが、いた。

 

 

「っ…」

 

 

私は一度立ち止まり、漸く見つけたマスターの下に歩く。

ただ、マスターに向かってまっすぐ歩き、私はそのまま。

 

 

「ん…」

 

 

ただ、マスターにしがみつくように抱き着いた。

もう、放さない。

 

 

「…何かあったのか?」

 

 

突然呼びかけたせいで、何かあったと思ったのだろうか。

 

 

「うっさいわよ馬鹿マスター…なんで私を置いていくの」

「…いや、寝ていたからだが」

「だったら起こしていいわよ」

 

 

しどろもどろになるマスター。

言い訳なんか聞いてやらない。

 

 

「…一人は、もう…嫌なのよ」

 

 

マスターが傍にいないのは、それだけでもう、私にとっては耐えられるものじゃない。

まだ炎で焼かれるほうがマシだとすら思う。

 

 

「すまなかった…ジャンヌ」

「ん…」

 

 

恐る恐るな感じとはいえ、抱きしめてくれたから、今回だけは許そう。

だけど、もう少しだけこのままで。

 

 

「…」

 

 

やっぱり、私はきっと、弱くなった。

こんなことではいけないとは思う。

けれどその反面、そんな自分を、これでいいと、受け入れている自分がいる。

自分で自分を笑いそうになる。

そんなことを考えていると。

 

 

「…やれやれ」

 

 

背後から聞こえる、聞き覚えのあるスカした声。

あえてそちらは見ずに、マスターを抱きしめる力を少し強める。

 

 

「聞く気はないか。まぁいいが…私がここで何をしていたか忘れたのかお前は」

 

 

そういえば昨日、魔術で辺りを防護する結界を張っていた。

そうなると。

 

 

「…まさか」

「……何を思ったか大体想像はつくが、そうだ。我が夫がここにいることは分かっていたし、おまえにも伝えようとした」

 

 

だがお前は、私の言葉を聞かずに制止を振り切った。

そこまで言われ、私は顔が熱くなる。

つまりは私の早とちり。

 

 

「…我が夫の事となると、こうも周りが見えなくなるか」

「うっさいわ」

 

 

溜息交じりに小突かれるが、反論できない。

マスターに抱きしめられたまま、動けない自分が恥ずかしくもあるが、自業自得もあるし、マスターの抱擁があるのでそれ以上は何もしないことにした。

 

 

「この状況で我が夫から離れないとはな」

「文句あるの?」

「…逆に聞くが、ないと思うか?」

 

 

そりゃあるでしょうね。

聞いてやる義理もないけど。

 

 

「それについては後で問い詰めるとして、だ」

 

 

一つ吐いた溜息を皮切りに、真剣な顔になるモルガン。

その顔を私は知っている。

 

 

「……どうやら、客が来たようだ」

 

 

休憩の、終わりが来た、ということだ。

 

 

「…敵?」

「さて。いずれにせよ潰せば問題はないだろうが」

「それもそうね」

 

 

マスターはきっと変な顔をしているかもしれない。

まぁ、抱きついてるから見えないけれど。

 

 

「……なら、休憩はここまでか」

「そうね」

 

 

マスターの言葉に同意する。

 

 

「…ジャンヌ」

「む……」

 

 

とりあえず離れなければ準備のしようはない。

分かってはいる。

わかってはいるのだけれど。

 

 

「…マスター」

「?」

「一回だけでいいから。少しでいいから……抱きしめて」

 

 

温もりが、欲しくて。

つい、そう言葉にする。

すると、マスターは何も言わず。

 

 

「ん…」

 

 

抱きしめてくれた。

思わず声が漏れるが、このくらいは仕方ないだろう。

そう自分を納得させる。

 

 

………

……

 

 

「…そろそろいいか?」

「ん…えぇ」

 

 

マスターの温もりが離れる。

もう終わりなのかと寂しくなるけれど、まぁ仕方がない、か。

 

 

「…行きましょうか」

「ようやく調子が戻ったか」

「ふん」

 

 

この身に残る温もりが、私に力を与えてくれるよう。

 

 

「…とりあえず、モルガンが言う客とやらに会いに行くか」

 

 

マスターの言葉に、私もモルガンも同意する。

さぁ、客人に会いに行きましょうか。




おまけ

ジャンヌ「……」
モルガン「…不満そうだな」
ジャンヌ「そりゃそうよ。高々30秒くらいじゃ…」
モルガン「単位が違う」
ジャンヌ「…?」
モルガン「30『分』だ」
ジャンヌ「…嘘でしょ?」
モルガン「…」
ジャンヌ「何か言いなさいよ」
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