FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
モルガンの言う客に会うために、彼女に従い移動する。
「マスターちゃんは前に出ないで」
それは私の役割。
そうジャンヌに言い切られ、二人の女性の後ろについて歩く。
いくらマスターとサーヴァントとはいえ、少しばかり情けなさを感じつつも従う。
「…あれか」
俺が姿を確認できた頃にはジャンヌ達も姿を確認したのか、警戒を強めている。
人影は、一人。
「……む?」
それは向こうも同じなのか、こちらに振り返ってくる。
その姿は、なんとなく知っていた。
ここに来る前にネットで調べているときに、ジャンヌに関連する部分も調べていたから。
その姿は。
「あら、ジルじゃない」
一番繋がりの深いジャンヌが反応し、声をかける。
「っ…おぉ、おぉ!ジャンヌ!」
呼ばれた方…ジルもまたジャンヌの姿を見て声を上げる。
その声色は、歓喜のようなものが混じっているようにも感じるが、さて。
そんな感じで様子をうかがっていると、ジルはこちらに視線を移し。
「っ!?」
突然、号泣。
いや、何故に。
「……ジル?」
流石にジャンヌも困惑。
当事者がこれなので、モルガンも流石に様子を見ることしかできなかったのだが。
「失礼、取り乱しました……再会できたのですね、ジャンヌ」
「……えぇ。もう二度と、手放すつもりはないわ」
涙を流しながらも微笑ましくジャンヌを見る姿は、子を見守る親のようでもあり。
「……ジャンヌのマスター殿」
「あ、あぁ…」
「こうしてジャンヌと共に在る姿を再び拝見できたことに感謝を」
言いながら、軽く会釈。
そして、こちらに再度向き直り、真剣な瞳で。
「…そして、願わくば従者たる私に代わり、御身在る限り、ジャンヌのお傍に」
「……あぁ」
ジルの懇願するような言葉に、頷く。
誰に頼まれるでもなく。
「俺に出来ることなど、たかが知れているだろうが…出来る限りのことはするつもりだ」
そう答えると、ジルは満足そうに頷く。
「…二つほど、訂正するわ」
「ジャンヌ?」
ジャンヌは言いながら、俺の横に並ぶように少し下がり。
「まず一つ。従者としてではなく……伴侶として、よ」
「…爆弾発言」
「嫌なの?」
「そういうわけじゃなく…な」
気恥ずかしいだけなのだと察してほしい。
まぁ、女性にここまで言わせて男の俺が狼狽えるのも格好がつかないが。
「…それともう一つ」
ジャンヌが俺の手を握る。
強く握られているが、痛くはない。
「マスターが在る限り、じゃないわ。たとえ死が私達を分かつというのなら、私は死後の世界までであろうとマスターを追いかけて、共に在り続ける」
もう二度と、何があっても手放さない。
そう、ジャンヌは言う。
所長が言っていた、重い、という言葉の意味が少しわかった。
傍から見れば、確かに重いのだろう。
よく、それが原因で破局、なんて話を聞く気もする。
しかし。
「覚悟なさい。魔女に魅入られたものの末路よ」
「……そうか」
恥ずかしいのかこちらを見ずに少し早口なジャンヌに微笑ましさすら感じてしまう。
そんなジャンヌと一緒にいられるのなら、なんて。
今まで色恋沙汰には縁がなかったので、その大変さなんて想像もできないが、それでも。
「…そうだな」
共に在り続ける、というジャンヌの言葉に応えるように、少しだけ手を握り返す。
冬木、そしてオルレアンであれだけの力を振るってきたことが嘘のように感じられるほど華奢に感じられて、力の入れ具合を間違えたら大変なことになりそうで、あまり力を入れられなかった。
それでも、こちらの意思が伝わるように意思を込めて。
「……ん」
多少なりとも伝わったのか、ジャンヌも少しだけ握り返してくれた。
「…マスター」
「どうした?」
「キスしたい」
「……後でな」
モルガンとジルもいるし。
ジルは凄く微笑ましげに笑顔で、モルガンは恨めしそうに見ている。
そんな中でそれはさすがに。
ジャンヌは少しだけ不満げだったが。
「……それで、だ」
とりあえず、本題に戻す必要があるだろう。
ジルがここに姿を現した理由。
ジャンヌに会いに来た、というのも理由としては十分だろう。
けれど、それで本当に全部なのか、という部分については確認の必要がある。
「ジル、だったか」
「はい」
「…改めて聞かせてもらえるか、ここに来た目的」
尋ねるとジルは頷き、語りだす。
話してくれたのは、特異点について、そして現在のオルレアンについて。
ジルは少し前にオルレアンに着いており、内情をある程度把握していたのか、詳しく話してくれた。
色々とあったようだが、要約すると。
「オルレアンを現在占拠しているのは、聖女…ジャンヌ・ダルク、か」
どういう存在なのかまでは分からないが、見た目はジャンヌに似ているのだろうか。
「……」
ちら、とジャンヌを見れば嫌悪を隠そうともしない表情。
…余計なことを考えるのはよそう。
「…となると、原因がそこにあるかどうかはどうあれ、特異点修復にあたってはそのジャンヌ・ダルクに会うのが最優先になるか」
「でしょうな」
それだけならいい。
いいのだが。
「一筋縄ではいかない可能性があるな」
モルガンが、そう意見する。
「それは、私がいるから、かしら?」
「違う。以前、情報収集のために兵士を痛めつけたことがあったろう」
「あぁ…」
いかなる理由であれ、オルレアンの兵士に敵対したという事実。
この事実がある以上。
「…ジャンヌ・ダルク本人はどうあれ、周りがこちらに敵対してくる可能性がある、か」
言ってしまえば、オルレアンそのものを敵に回す恐れ、ということ。
そして更に厄介なのが。
「藤丸が、ジャンヌ・ダルクの側についている…か」
そうなると、敵対する可能性は大いにある。
実際はどう転ぶかは分からないが、現時点ではさながら。
「聖女がいる街に殴り込んで破滅をもたらそうとしている…とでも思われそうだな」
自嘲に似た笑みが零れる。
特異点修復だの人理修正だのと謳っておきながら、さながら世界を滅ぼす悪役のような立ち振る舞い。
「そうなったのは…私のせいだわ」
「ジャンヌ?」
ジャンヌの言葉に反応する。
さっきまでのような覇気がないことに疑問を感じる。
「……マスターを守る。この気持ちに嘘はないけど…どう足掻いても、私は『悪』なのよ。だから『善』である者に対しては敵対をする」
罪悪感から黙り込んでしまうジャンヌだったが。
「…確かに、大衆的に見ればこちらが悪なのだろうな」
そのくらいの状況判断はつく。
とはいえ。
「だが…そこまで重要か?」
「…はい?」
「上手い言い方は分からないが…こちらも特異点修復で動いている以上、悪ではないと思うのだが」
それに、何より。
「…たとえ俺が悪だと後ろ指をさされても、共にいてくれるのだろう?」
「それは、もちろん」
「なら、悪だろうが何だろうが構うまい」
「マスター…」
「……そんな些細なことで悩むな」
軽く頭を撫でてやる。
くすぐったそうに目を細める様子を見ながら、ふと。
「女性の髪に触れるのはマナー違反か?」
「…マスターが私に触れるのは問題ありませんが」
「ふ…」
いつもの調子のようなので、この話はここまでにして。
「…ジャンヌ・ダルクはともかくとして、問題は藤丸か」
「何か問題が?」
モルガンの問いかけに頷く。
「藤丸もマスターで、サーヴァントがいる。兵士のようにはいかないのではないか?」
話し合いに応じてくれれば楽なのだが。
そう、零すと。
「話し合いなどせずとも、捻じ伏せてしまえばいいでしょう」
「…それに関しては同意だわ」
モルガンが力業な提案をし、ジャンヌが同意する。
サーヴァント同士の戦いは冬木で1か2回の経験しかない。
藤丸も同じといえば同じだろうが。
「……いや、違うか」
多少困難であっても、特異点修復のためにジャンヌ・ダルクに会う以上は多少の困難は免れない。
だというのなら。
「ジャンヌ、モルガン」
改めて自らのサーヴァントに向き直る。
彼女らも見返してくる。
「…これからオルレアンに向かい、ジャンヌ・ダルクの下に向かう。もし途中で障害がある場合は、強行突破も視野に入れる」
問題ないか、と問いかける。
すると。
「承知」
「問題ありません」
二人は同意する。
こうして、方針は決まった。
たとえ、藤丸が敵対することになったとしても。
…俺は二人と共に、自分の進むべき道に向かう。