FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
立香と、彼女に与するサーヴァント達。
セイバー、アルトリア。
ランサー、クー・フーリン。
そして、シールダー、マシュ。
「……」
彼女らの前に立ちはだかるは、
無言の対峙。
その無言を打ち破るのは。
「…戦わないと、通してくれないんだね」
藤丸立香。
彼女からすれば、モルガンやジャンヌ・オルタのマスターである彼は仲間だと。
そう思っていたし、今も思っている。
「…我が夫は、この場を私に任せた。それがお前の思う正義であれ、悪であれ、その意に従うのは道理だろう」
「……うん」
モルガンの言葉に、立香は頷く。
「…マスター」
まだ悩む様子の立香に声をかけるのは、アルトリア。
「相手は、本気です。戦いは避けられないでしょう」
「…うん」
「ですが」
アルトリアは自身のマスターに目を向け。
「…相手がどれだけ強大であろうとも、貴女には私が…いえ、私達がいる」
「……うん」
「我が剣は、ただ敵を打ち滅ぼすのみに
「私の、道……」
だから、どうか。
「…教えてください、我がマスター。この戦いの先に、どのような道を進む事を、望んでいるのですか?」
「私は……」
アルトリアの問いに、立香は目を閉じ。
「…私は」
目を開く。
その目は決意と共に、モルガンを見据えており。
「…私は、皆と、力を合わせて。この特異点を修復して、胸を張って、カルデアに戻りたい」
その望みは。
「……ふん。状況をまともに鑑みることも出来ない上に、なんとも愚かな……身の程というものを、刻み込んでやろう」
モルガンにとっては一笑に付す程度の、甘い考えにしか過ぎない。
「っ……」
自分が未熟であるが故。
そう思われても仕方ない。
誰にそう思われようと、歯を食いしばってでも、進むしかない。
立香は、そう考えていた。
「……黙りなさい。我がマスターへの侮辱、それ以上は許しませんよ」
その考えを打ち消すように、アルトリアが声を上げる。
「ほう…?」
「…我がマスターの望みは、我が望み。その望みを侮辱する権利など、誰にもない。もしこれ以上我がマスターを貶めるのであれば、我が聖剣の裁きを受けてもらう!」
「アルトリア…」
立香は彼女を見る。
剣を構える後ろ姿は、マスターである彼女にとって、あまりに眩しく見える。
「…貴女が望む道は間違っていない。だからどうか、立ち上がって…前を見るのです。下を見ていても、何もありませんよ?」
「そうだぜ、マスター?」
アルトリアに同調するのは、クー・フーリン。
出で立ちこそ少し違うが、人柄は冬木で出会ったキャスターと似ている。
「マスターの望みは、戦場を知る奴にとっちゃ、あっちの言う通り、甘いんだろうさ」
でもな、と彼を続ける。
「それでいいんだよ。そんなマスターだから、あいつも、俺も召喚に応じて、こうしてマスターの為に武器を振るうんだ。だからな、マスター?」
―今のままで、いい。今のままで、強くなれ。
そう、言いながらクー・フーリンはマスターの頭を撫でる。
その撫で方は、冬木のそれとよく似ていた。
「…行きましょう、マスター!」
「マシュ……」
マシュの問いかけに、立香は頷く。
その笑顔の中には、確かな決意の意思が含まれているように見える。
「…行こう、皆!勝って…前に進もう!」
「「「了解!」」」
立香の号令に三人が応える。
「…ふん」
そんな一行を嘲笑うかのようなモルガン。
「…参ります!」
アルトリアが先陣を切り。
「こっちからも行くぜ!」
クー・フーリンも続く。
マシュは持っている武器が盾ということもあり、マスターを守るように構える。
「…ほう」
剣と槍。
間合いの違う武器を、軽やか、という表現が正しい様子で躱すモルガン。
多少なりは攻撃を受けつつも、上手く受け流す。
「ちぃ…ちょこまかと!」
クー・フーリンが焦れるように攻撃を続け、徐々に頭に血が上っていったか。
「…っランサー、待て!前に出すぎては…!」
「……あ?」
適度な間合いをとっていたアルトリアに呼びかけられ、反応する中で自分の立ち位置に気づき。
「まず…!」
離れすぎた事に気づき距離を開けようとする。
しかし。
「…逃がすものか」
モルガンが魔術で生成した攻撃が、クー・フーリンに狙いを定める。
それに反応したのは。
「っ…危ない!」
マシュが、その攻撃を盾で受けきる。
「…わり、助かったわ」
「いえ…大丈夫でしたか?」
「おかげさまで、な」
マシュが盾を構え、アルトリアとクー・フーリンも彼女に並ぶように立つ。
「……あの程度とはいえ、私の魔術を防ぎきるか。それは見事…だが」
モルガンは武器を持たない方の手を見やり、そして目を閉じる。
そして、その手を握りこむ。
「…内側からなら、どうだろうな」
握りこんだモルガンの手元に魔力が収束するが、すぐに消失する。
何をしたのか、警戒していると。
「……え?」
消失したはずの魔力が、マシュの体内を突き破るように爆発する。
何が起こったのか、マシュ本人ですら気づかず。
――きょとんとした表情を浮かべながら、血を吐きながら、その場に倒れこんだ。
「っ…マシュ!」
立香が声をかけるがマシュは応えきれず、手放した盾が床に叩きつけられ、大きな金属音を立てる。
「ます、た……」
その様子に。
「てめぇ……自分が何したかわかってんのか!」
クー・フーリンが怒りに任せて突撃する。
けれど、モルガンはあくまで平静に。
「何を…か。簡単だ。敵を倒しただけだが?」
今、お前がしようとしているようにな。
そう、言いながら槍をあしらいつつ。
「……それはそうと」
軽くクー・フーリンから離れるモルガン。
「全く学習がないな」
再度、魔術による攻撃。
しかし、今度は動じるどころか。
「…そう思うか?」
にやり、と笑みを浮かべる。
「今だ、セイバー!」
「…!」
クー・フーリンの言葉に視線をずらすモルガン。
その先には、アルトリアが自らの聖剣を構える姿。
「っ…受けるがいい!」
言いながら、神聖さすら感じる魔力を纏った件を振り下ろすアルトリア。
「
振り下ろした、魔力の奔流。
それは、アルトリアの全力を込めたともいえるであろう、宝具の力。
その力が、モルガンに直撃する。
「やった…!」
立香は嬉しそうに言う。
あれだけの攻撃が直撃したのであれば、普通であれば立っていることすらやっとであろう攻撃。
それは、間違いではない。
―そう。
――
攻撃の砂塵が晴れた先には。
「…終わったか?」
まるで、乱れた衣服を正すかのように、自らの肩を払うように叩くモルガン。
立つこと、どころかダメージを受けた様子すら見受けられない。
「見た目は派手だが、それだけだな…その程度で聖剣の使い手?……笑わせてくれる」
嗤いながら、モルガンは構える。
すぐ、モルガンは皆を見据え。
「…所詮、聖剣なぞこの程度ということ……遊びは終わりだ。落ちろ…!」
今度はモルガンの力が収束する。
「やべ…!」
アルトリア、クー・フーリンが構える。
その場所は、建物内廊下であり、決して広い場所ではない。
それでもせめて、マスターを守るように。
「…
モルガンの宝具が炸裂し、アルトリア、クー・フーリンを巻き込むように展開する。
その勢いは二人を巻き込むだけにとどまらず、立香とマシュにすら届きそうな勢いだったが。
「っさせません、マスターだけは…!」
マシュが満身創痍で立ち上がり。
「くうぅっ!!!」
「マシュ!」
モルガンの宝具を、盾で防ぐ。
とはいえ、ただでさえ負担が多いだけでなく、満身創痍な彼女には負担が大きすぎる。
それでも。
「…守り切る、か」
アルトリア、クー・フーリンは膝をついて、何とか持ちこたえる。
もう一撃でも受ければどうなっていたかは分からない。
マシュも満身創痍でこそあるが、デミ・サーヴァントとして身体能力を向上しているから耐えきれている、というところだった。
「……」
一方で、あれだけの攻撃を受けてなお、膝をつく様子すらないモルガン。
その差は、圧倒的だった。
『…退きなさい、藤丸』
「所長…?」
通信越しに見ていた所長が、立香に指示を出す。
その指示に、自らのサーヴァントの状態を見た立香は逆らうつもりはなかった。
その様子を見ていたモルガンは。
「…賢明ですね」
それだけ呟くように言うが、警戒を解くことはない。
『……聞いていいかしら、モルガン』
落ち着いたところを見計らうように、所長が通信越しに声をかける。
「何か」
『貴女が…いえ、貴女達がマスターである彼を大事にしていることは分かった。けれど、改めて聞かせてほしいの』
カルデアが、一体彼に何をしたのか。
「…答える義理が?」
『っ…』
その問いに対しても、突き放すモルガン。
「私も…聞きたい」
緊迫した雰囲気を破ったのは、立香だった。
不安げで、けれど確かな意思でモルガンを見返す。
「私は、どうしてあの人のサーヴァント二人に敵意を向けられてるのか、分からない。だけど…出来ることなら、一緒に戦いたいから」
だから。
「…だから、教えてほしいの。私は、彼に…何をしてしまったのか」
「……」
立香の懇願するような問いかけに、モルガンは冷たい視線を投げるのみ。
見る者が見れば、恐怖すら抱きかねない、感情のない視線。
「……知って、どうするつもりだ?」
「え?」
「知ったところで、現実は変わらない。お前が、カルデアが我が夫にしたことがなくなるわけではない…ならば、私がお前たちに対する考えを改めることもない」
何も変わらないのなら、知る意味があるのか。
モルガンは、そう問いかける。
「私ですらそうなのだ…ジャンヌに至っては、交渉の余地すらないだろうがな」
「……」
モルガンの言葉に黙り込むその様子は、さながら悪事を咎められ、けれどどう謝ったらいいか分からずに口を噤む子供のようで。
誰も言葉を発しない。
「…マスター」
傷つきながらも、強い視線を向けるアルトリア。
戦えずとも、彼女の強い意志は、潰えない。
彼女は立香に、何を伝えただろうか。
「……うん」
信じる道を、前を見て進めと、彼女は言った。
彼女のマスターであるからこそ、前を向かなければならない。
それがたとえ、大きな壁であろうとも。
「…モルガン、さん」
立香の呼びかけに、モルガンは答えない。
「貴女の言う通り、知っても、変えられないかもしれない。だけど…知らなくちゃ、変えようとすることもできない。だから…お願い」
話を、聞かせてください。
そう、懇願する。
その懇願に。
「……」
モルガンは背を向け、ただの一度も立香に視線を向けることなく、歩き出す。
その先は、彼女のマスターとジャンヌが向かった方向。
必死の訴えすら退けられた立香は。
「っ…」
「マスター…」
マシュの心配する呼びかけに応じることすらできずに。
――今度こそ、視線を下に向けてしまった。
戦闘描写難しい…
最近実装された、マスターが〇んだら〇ぬと公言している、愛が重そうな彼女を出すのはありでしょうか?
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あり(ネタバレ可)
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あり(ネタバレ不可)
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なし