FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

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暗闇 - I

ぼんやりと、目を開く。

 

 

「……」

 

 

そこは、何処だっただろうか。

見覚えのない場所。

それ以前に、周りがよく見えない、闇。

分かることといえば、壁伝いに幾つか配置された青い炎の松明。

その明かりが照らす下り階段が、壁伝いに螺旋状に続いていることだけは分かる。

 

 

「俺は…」

 

 

さっきまで、何をしていただろうか。

……何も、思い出せない。

何も。

 

 

―自分が、今まで何をしていたのか。

 

―どこから、ここに来たのか。

 

―何をしようとしていたのか。

 

 

「ちっ…」

 

 

舌打ちをしながら、頭を抱える。

何も、分からない。

ただ一つ、分かるのは。

 

 

「…行くか」

 

 

この先へ。

この階段が続く先へ。

闇の奥底へ、向かわなければならない。

それだけは、ぼんやりと覚えていた。

 

 

「……」

 

 

独り、歩き出す。

…今まで、誰かが一緒にいなかっただろうか。

分からない。

周りに、誰もいないのなら、独りだったのだろう。

独りであろうとなかろうと、やることが分かっているのなら。

 

 

「…」

 

 

ただ、進むだけ。

何も、迷う必要など、ないのだ。

 

 

「……」

 

 

歩き出す。

地面の材質のせいか、部屋の形のせいか、あるいはその両方か。

カツ、カツという足音が妙に響く。

最初の青い灯の場所に着く。

別に何があるわけでもない。

目的地までの中継地点でしかない。

次の青い灯のところまでは少し距離がある。

その間の足元は見えないが、壁伝いに行けばいいのだろうか。

 

 

「…?」

 

 

もし、足を踏み外せば、■があるのだろう。

だが、そこに行きたいのであれば、俺はそこまで()()()()いいのではないのか?

なぜ俺は、わざわざ時間をかけて、歩いて降りようとしているのか。

余計な時間をかける理由もないのなら、いっそ。

 

 

「っ……」

 

 

頭ではそう思っていても、一歩が踏み出せない。

今一度、灯を(しるべ)に、歩き出す。

その先にある、■に向けて。

何かに後ろ髪を引かれながらも、歩き出すことしか、出来ない。

 

 

「…」

 

 

歩き始めてから、どれ位経っただろうか。

数分、あるいは数十分、あるいは数時間。

時間の感覚を喪いながら、ただ歩き続ける。

辿っている灯は、何個目のものだろう。

どれくらい、下ってきたのだろう。

 

 

…すると。

 

 

「……?」

 

 

次の灯が、不自然に揺らめく。

目の前で揺らめくそれは、異形の何かに形を変える。

怪物、と表現するのが正しいだろうか。

美しさすら感じる青い炎から生まれた、奇形の怪物。

 

 

「っ…」

 

 

距離を取らなければ。

けれど、引き返せない。

引き返す道が、分からない。

 

 

「…」

 

 

かといって、俺には目の前の障害を打ち払う術などない。

ここまでか、と思っていると。

 

 

「…そいつに手を出そうとしたな?」

 

 

どこからか吹き荒れる風が、怪物を直撃。

その威力に太刀打ちできなかったのか、怪物はあっさりと霧散した。

 

 

「なら、堕ちる準備はオッケーってことだよね?」

 

 

この静かな場には似つかわしくないほどの明るい、女性の声。

吹き荒れる風を放ったのは、彼女だろうか。

姿は青い灯で辛うじて輪郭がとらえられるが、フードを被っているのか、顔は見えない。

 

 

「……敵、か?」

 

 

少し距離を取りながら尋ねる。

すると。

 

 

「あー…覚えてない、かぁ。まぁそりゃそっか…」

「…?」

 

 

一人納得したように独り言を言う女性に、警戒が解けないでいると。

 

 

「…んー、大丈夫だよ。アテシは敵じゃない」

「信用しろと?」

「してほしいけど、無理って話かぁ…どうしよっかな」

 

 

考えているのだろうか、んー、と唸りながら。

 

 

「だったら、アテシが前歩いてあげるよ。だったら背後からは何もないでしょ?」

「まぁ…」

「じゃ、暫くの間よろしくね、マスター?」

「マスター…?」

 

 

マスター、とは何だろうか。

俺の名前、だろうか。

…そういえば、自分の名前は何だっただろう。

俺の隣には、本当に誰も、いなかったのだろうか。

 

 

「っ…」

 

 

頭を抱える。

何かを思い出そうとしている。

けれど、頭のどこかでそれを思い出すのを邪魔するかのように痛みが走る。

 

 

「…よく考えて、思い出しなよ。アテシはマスターと共に在るけど、こんなところでの終わりなんて認めない…マスターがちゃんと戻れるまで、アテシがついててあげるからさ」

 

 

まだ、この先に進むのは早いよ。

頭の痛みに蹲る俺を見下ろしながら、女性はそう、少し冷たい声で告げた。

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