FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
そうして、引っ張られてきた先は、カルデアで割り当てられた自室。
とりあえずベッドに腰掛ける。
「…休まなくていいの?」
頭に付けたサークレットを外し、机に置きながら隣に腰掛けるジャンヌ。
「今回は、そこまでの疲れはないからな」
「そう…」
そんなちょっとした会話を交わす。
「…?」
こちらの胸元に縋るように、ジャンヌが身を寄せてくる。
さっきまでの様子はどこへやら、どこか不安げなジャンヌの様子に、どうしたのだろうと不安になる。
「…マスター」
か細い声で呼びかけてくるジャンヌに、何も言わず、次の言葉を待つ。
「守れなくて…ごめんなさい」
「…それはもういい」
「けど…」
やはりか、と思う。
これまでで二つの特異点を共に戦ってきた中で、分かってきたこともある。
ジャンヌは気高く、強い女性だと思う。
戦い方を見ていても、そう思う。
「…あの時確かに死にかけたかもしれないが、今、ここにいる」
女性に軽々しく触れるわけには、とは思いつつも、今のこの状態があまりにも弱々しく見えて、何かをしてやりたいと思ってしまう。
これが正しいのかはわからないが、これ以外の方法が分からなかった。
今まで彼女はおろか女友達すらまともにいなかったのに、どうすればいいかの最適解などあるわけもない。
「ん…」
抵抗されなかったあたり、正解だったのだろうか。
だとしてもその手に力を入れられないのは、自分の自信のなさの表れかもしれないが。
「もう、謝るな」
「けど、私…」
よほど、堪えてしまったのかもしれない。
結局は、俺の不注意だったというのに。
「…自分ではわからないが、一度俺は死にかけたのだろう」
きっとそれは、あの時のこと。
何も分からずに進み続けた、あの暗闇の中。
しかし、それでも。
「だが、どうしてか…あの時、俺は、声を聴いた」
「声…?」
「…あぁ」
こちらを必死に呼びかける、声。
その声を聴いたから。
「その声…ジャンヌの声が、俺を呼び戻してくれた。ジャンヌが呼び掛けてくれたから、戻ってこれた」
だから、ジャンヌ。
守れなかったんじゃない。
「……ジャンヌが呼び戻してくれたから、ここに戻ってこれた」
「私が…?」
「そうだ」
自覚はないかもしれないが。
誰が何と言おうと、俺はそう思っている。
「ん…」
ほんの少しだけ震えた声で、ジャンヌが頷く。
「…私でも、守れたのね」
「あぁ…有難う、ジャンヌ」
「ん…」
少しでも安心してくれればいいのだが、と思う。
尤も、安心させるための方便、ではなく事実ではあるのだが。
「…ねぇ、マスター」
「何だ?」
「私は結局、奪うことしかできないサーヴァントよ…それは多分、これからも変わらない」
だけど、とジャンヌは続ける。
「…それでも、私はもっと強くなる。強くなって…もう二度と、貴方という存在を失わないために」
「あぁ」
「誓う、なんて言葉は虫唾が走るけれど。それでも…マスターは私が絶対、守ってみせるから」
表情は見えない。
けれど、きっといい表情をしているだろう。
そんな確信があった。
「…だから、マスター」
こちらを呼びながら、ジャンヌが顔を上げ、こちらに目を合わせる。
思った通り。
いつも通り、凛々しくも美しいジャンヌが、そこにいた。
「私の傍を…離れないで。ずっと…傍に、私と共にいて。マスターが一緒にいてくれるなら…私はどこまでも強くなれるから」
「…あぁ」
もう十分に強いと思うが、ジャンヌの誓いに水を差すほど野暮ではないつもりではある。
だから、それ以上は何も言わない。
それ以上の、言葉はいらない、とも言うだろう。
「…ところで」
少ししてから、少しだけ不機嫌な表情に変わるジャンヌ。
「…どうした」
「こういう時は、強く抱きしめてくれるものじゃないかしら」
どうすべきか考えていたことだったのだが。
「…そういうものか?」
「世間一般は知らないけど、少なくとも私はそう」
「そうか」
少しだけ、抱きしめる腕の力を強める。
「…それに、世間一般なんて知る必要ないんじゃない?私がいるんだから」
「それもそうか」
「そうよ」
さも当然、とばかりに返事をするジャンヌ。
「私がマスターの傍を離れる理由がないのだから、マスターが傍にいてくれるのなら…ね」
恥ずかしげもなく言ってくれる。
…とは思ったが。
「…少し、顔赤くないか?」
「……そういうことは、気づいても言わないものよ」
ふい、と顔を背けられる。
なんというか、難しい。
けれど、腕の中にいるジャンヌが可愛らしく見えて。
「そうか…」
思わず、笑みが零れた。