FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
翌日、管制室。
所長に依頼されていた、特異点で起こった内容の報告。
その為にこの場所を訪れていた。
こちらの傍にはジャンヌと、検査を終えたモルガンも控えており、時折報告に補足を入れてくれるので助かっている。
尚、検査の結果、モルガンの方は特に問題はなかったとのことで、一安心だった。
……そんな折。
「私は反対だわ。そんな事をマスターがする必要はないし、そのために私達がいるの」
「…ジャンヌと同意見だ我が夫。何故わざわざ自らの身を危険に晒す」
ある事を所長に提案、あるいは頼んだところ、二人に反対される。
何を提案したのかというと。
「…自分の身を守るための術を学びたい…ね」
所長が溜息交じりに言う。
オルレアンに向かって少ししてから、ずっと考えていたことだった。
マスターとはいえ、サーヴァントである二人に守られて、それだけで本当にいいのか、と。
そのことを相談しただけなのだが、サーヴァント二人に反対された次第である。
「…私は反対はしないわ」
しかし、所長は反対しなかった。
二人の圧が凄いのが分かるが、所長は毅然としていた。
「ジャンヌとモルガンの言いたいことも分からないではない。けど、マスター自身が自分の身を守る事が出来れば、貴女達がいざという時に戦いに集中できるのも事実」
現にそれが理由で、彼が傷つくこともあったわけでしょう。
そう言われ、ジャンヌもモルガンも口を紡ぐ。
不本意とはいえ、俺が傷を負い、戦いに支障をきたした事実は変わらない。
「っ……分かったわ」
それを分かってか、ジャンヌが本当に渋々といった様子で納得する。
「…但し、訓練をする時は私も同伴させてもらうわ。少しでも無理がありそうなら、すぐに止めるから」
そう言うジャンヌの目は、反論は許さない、とばかりに真剣だった。
戦うことに関してはジャンヌやモルガンの方が圧倒的に優れていることはすぐに分かる。
だからこそ、それに反論はしなかった。
「…なら、シミュレータを使用しましょう」
そこでなら、建物とかを気にせずに修練も出来るでしょう。
問題はなさそうなので、所長の言葉に同意する。
「…行きましょう。私が直々に教えられることは教えるわ」
「いや、ジャンヌかモルガンに頼めば…」
流石に、所長の手間をかけさせるわけには、と思ったのだが、帰ってきたのは溜息。
「貴方ね…ジャンヌやモルガンはサーヴァントよ。対して貴方、武術の心得の一つもあるの?」
「…いや」
「その状態で彼女たちに教えを請うてみなさい。貴方の技量でついていけるわけないでしょう」
言われてみればご尤もである。
スポーツに詳しいわけではないが、言ってしまえば始めたばかりの初心者がプロ並みの指導を受けるのと同じということ。
ついていけるはずもない。
「それにあくまで彼女たちはサーヴァント。マスターとしての戦い方は別にあるのだから、それを教わらなければ意味がないでしょう」
マスターとしての戦い方。
それを学ぶ必要があるというのなら。
「…よろしく頼む。オルガマリー所長」
「えぇ」
一朝一夕で身につくものではないにしても、出来ることをする。
今の俺にはきっと、それしか出来ない。
「私からも。ジャンヌ、そしてモルガン」
そんな事を考えていたら、所長はジャンヌ達を見て。
「信じてもらえないかもしれないし、それでもいい…けれど今回は、私が彼の修練に付き合う。そして、彼には絶対に無理はさせない…約束する」
「……それを信じないとしてもか?」
決意表明のように所長は言うが、モルガンが反論する。
けれど、所長は折れず。
「えぇ。もし私がこの約束を反故にすると、私が彼を傷つけると思ったのなら…いつでもいいわ。私の首を落としなさい」
そう、宣言する。
それは所長なりの決意、なのかもしれない。
それを聞いて。
「…いいわ、その言葉…努々忘れないことね」
ジャンヌは敵と戦う時のような、威圧するような不敵な笑みを浮かべながら、所長を見返す。
ふと見れば。
「っ…」
所長は僅かに震えているように見える。
特殊な事情があるとはいえ、所長は人である。
サーヴァントとして強大な力を持つジャンヌやモルガンに睨まれれば恐怖に震えるのも無理はない。
素人ながら、俺が同じ立場でもそうなるだろう。
「…所長」
「大丈夫よ…安心なさい。すぐには無理でも…いずれ必ず、貴方を一人前のマスターにして見せるから」
「……あぁ、よろしく頼む」
気遣うつもりで声をかけたが、大丈夫というのなら、それ以上はお節介になってしまうだろう。
そう思い、それ以上は何も言わなかった。
「……さ、行きましょう」
こうして、修練の為に所長先導の下で、シミュレータに向かうこととなった。