FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
翌日。
「ん…」
ぼんやりと、目を覚ます。
ふと脇を見れば、ジャンヌはまだ寝ていた。
こうしてみると、サーヴァントとして強大な力を持っているなんて、とても見えない。
普通の女性のように見える。
そんなジャンヌに苦笑しながら、起こさないようにそっと身を起こすと。
「…起きたか、我が夫」
「モルガン」
いつからそこにいたのか、モルガンが椅子に腰掛けていた。
読んでいたのであろう本が彼女の片手にあり、目の前の机にはマグカップが置かれていた。
振り返るモルガンの所作は、それだけで品があるようで、それが彼女の格を表現しているようにも見える。
「…おはよう」
「えぇ…おはようございます」
静かな朝。
まだ覚醒しきっていない頭で挨拶をすれば、笑顔で返してくれる。
どこか不敵な感じに見えても、これがモルガンなりの優しい笑みなのだろうと、何となくだが分かった。
「ん…」
まだ眠っているジャンヌを起こさないようにそっと布団を出る。
ジャンヌに布団を掛け直して。
「っ~……」
軽く伸びをする。
そうして、今日はどうしようか、なんて考え始めていると。
「…我が夫、起きてすぐに考え事では気が滅入るというもの。勤勉さは評価しますが、落ち着くことも重要ですよ」
「……そうか。というより、よく分かるな」
「我が夫のことですから」
椅子に座りながら、そんな言葉を交わす。
すると、魔術だろうか、何もないところに突然マグカップが現れ。
「……どうぞ」
同じく何もないところから現れたティーポットで温かい飲み物が注がれる。
色的に紅茶だろうか。
「……ん」
案の定だった。
あまり詳しくはないが、高いものな気もする。
「…紅茶ですが、いかがです?口に合えばよいですが」
「問題ない…それよりも、女王陛下に茶を淹れてもらうというのも贅沢の極みというか」
何というか。
そんなことを考えていると、クス、と可笑しそうに笑うモルガン。
「何を言うのです。確かに私は女王だが、同時に妻でもある…夫に尽くすのは当然では?」
「…そういうものか」
「少なくとも、私にとっては」
モルガンの言葉を聞きながら、紅茶を貰う。
束の間になるかもしれないが、静かに過ごすのも悪くない。
「…家庭を持ったら、いい奥さんになりそうだな」
サーヴァントでなければ、きっと幸せな生を送れたのではないだろうかと思うほどに。
そんな俺の言葉にモルガンはふ、と笑みを浮かべながら。
「ならば、式はいつにしましょうか。私は今からでも構いませんが」
「っ……だ、誰のだ?」
「随分と他人事だな、我が夫?…あぁ、城を建てましょうか。大きいほどいいですね」
爆弾発言に驚きながらモルガンを見れば、ほんの少し頬を赤く染めながらも笑みを崩さない。
その表情にある種の確信。
「…からかってるな?」
「さて、何のことやら…」
自らのマグカップを口に運び、あからさまに誤魔化すモルガンに今度はこっちが苦笑する。
少し心臓に悪いが、こんなやり取りも悪くない。
そんなことを考えていると。
「…抜け駆けとは、なかなかいい度胸ですね、女王様?」
「ようやく起きたか…魔女は朝に弱いと見える」
「ふん」
空いている椅子に腰かけるジャンヌ。
モルガンはそれがわかっていたのか、ジャンヌの行動を咎めることもなく。
「精々これでも飲んで目を覚ますがいい」
俺がしてもらったのと同じ方法で、ジャンヌにお茶を用意するモルガン。
「ん…」
どこか素直になり切れないのか、何も言わずにティーカップを手に取り、そのまま口をつけると。
「!?…熱っつ!」
カップを置き、肩を震わせてうつむくジャンヌ。
そんなに熱かっただろうか。
疑問に思い、モルガンを見れば肩を震わせている。
これは、まぁ…あれか。
「…いきなり飲んだら熱いに決まっているだろう」
「いやこれどう見てもわざとでしょうが!」
ジャンヌが指さしたマグカップを見れば、マグカップに入ったお茶が沸騰していた。
カップに触れれば気付くだろうが、取っ手を持つと気付きにくいだろう。
「ふ…」
肩を震わせ、笑いを堪えるモルガンに文句を言うジャンヌの構図。
不謹慎とは思いつつも、こんな平和な光景は続いて欲しいと思う。
そんな、朝の一幕だった。