FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
そんな朝の一幕の後。
「…集まったわね」
所長の呼び出しにより、俺と藤丸は管制室に。
傍らには各々のサーヴァント達も控えている。
呼び出しの要件はというと。
「英霊召喚を行ってもらおうと考えていたのよ」
とのこと。
また例の石を使うのかと思ったが、所長の手元には金色のチケットのようなものが5枚程度。
そんな俺の視線及び疑問の感情を読み取ったのかは分からないが。
「…これは呼符と呼ばれるものよ。これを使えば一枚で召喚可能なの」
というわけで、と所長が俺と藤丸にチケット…改め呼符を渡してくる。
俺には2枚、藤丸には3枚。
配分の理由については。
「まず、不測の事態とはいえ二人が対峙した際、彼が勝ち、藤丸は負けている。であれば藤丸の方が戦力を増強すべきと考えたのよ」
異論はあるかしら、と問われ、俺は否定を返す。
藤丸も同様に否定し、所長の配分で確定する。
「…なら、今回は貴方から」
と、藤丸に先を促される。
「…いいのか?」
「うん。この前は私が先だったからね」
「……今度は、あまり重いサーヴァントを呼ばないでちょうだい。胃がもたないから」
所長に釘を刺されるが、それは俺のせいなのだろうか。
そんなことを考えながら少し前に出て、所長から受け取ったチケットを一枚かざすと、石を使った時と同じように光が迸る。
「っ…」
行っている事が事だから仕方ないのだろうが、目を開けていられないほどの衝撃はどうにかならないだろうか。
その奔流が落ち着く頃、目を開き、前を見れば。
「……」
白い装束を纏い、腰に刀を携えた女性。
やがて落ち着いたのか、目を開き、こちらを見てくる。
自然と、目が合う。
「っ…!」
そして、泣き出す。
「!?」
こちらとしては訳が分からず慌てるしかないのだが。
どうすべきかと周りに視線を向けていると。
「っ…マスター…!」
とん、とこちらに身を預けてくる。
刀を持っている割には、軽い。
ジャンヌのように目立った防具を着けていないからだろうか。
「やっと、会えた…もう、会えないかと……思って…!」
ただ問題なのは、なぜか感情が爆発している女性。
名前も分からなければ、落ち着いてくれなければ話のしようもない。
結局のところ、泣きじゃくる彼女が落ち着くのを待つしかなかった。
………
……
…
少し間を置いて。
「……うん、少し、取り乱した」
目尻を僅かに赤く腫らしながら、落ち着いた口調でそう話す女性。
少しとは。
ただそれに突っ込むのも野暮なので、それ以上は言わない。
「…改めて、セイバー…ではないのね今回も。訂正……アサシン、河上彦斎。貴方の為に、私はこの剣を振るいましょう」
「あぁ…よろしく頼む」
「ん。それと……一つだけ」
一瞬言葉を切り。
「…私は必ず、貴方の命を脅かす障害という障害を斬り伏せる。もしそれを成すことができなければ、その時は自ら命を絶つ。この身の霊核を砕き、私という存在を…斬り伏せる」
そう、少し虚ろな目で、なおかつこちらを見てそう決意するように言う。
霊核。
詳しい事はわからないが、核という以上、それを砕きでもすれば、どうなるかは想像に難くない。
つまりは、そういうことなのだろうと思う。
「…だから、まずは」
そのまま、視線を少しずらし、自らの手を刀へ。
鋭い眼光が捉える、その視線の先には。
「…え?」
藤丸。
だがそう気づいた時には、金属同士が勢いよく擦れる音。
見れば、女性…彦斎と、そんな彼女にいち早く反応したのか、アルトリアが鍔迫り合いを行っていた。
「っ…いきなり、何なのです…!」
ジャンヌも相当速いと思っていたが、彦斎はそれ以上だということはすぐに察した。
少なくとも速さにおいては、並どころではない。
必死に止めるアルトリアに。
「…知れたこと。マスターの命を脅かす最大の障害を斬ろうとしただけ」
「何を…!」
彦斎の刀に比べ、アルトリアの剣の方が質量があるように見えること、また攻め込めないことを見ると単純な力の面ではアルトリアに分があるようにも見える。
彦斎もそれを察してか、あるいは本気ではなかったのか、一歩下がり。
「……」
刀を納める。
それを見てアルトリアも警戒をしつつも剣を退く。
「…あー…彦斎、でいいのか?」
「…ん」
「藤丸は敵じゃない。あまり敵意を向けないでもらいたいのだが」
そう懇願すると、彦斎はこちらをじっと見て、一つ溜息を吐く。
「……分かった。今は何もしない」
「あぁ」
「けど…あれを信用はしない。少しでもマスターに害をなすことを認めたら、私は必ず斬る。これは私の存在意義…ここは譲らない」
「…分かった」
とりあえずは一段落なのだが、油断ならぬ状況なのは変わらないようだった。
ふと、所長の方を見れば。
「…」
頭を抱え、大きく溜息を一つ吐いたあと、こちらを睨む。
そういうのを召喚するなと言ったわよね?
視線がそう言っている。
けれど、それは俺のせいなのだろうか。
「…それと、マスター」
声を掛けられ、視線を彦斎に戻す。
すると、距離を詰められ、また抱きしめられる。
どうにも女性に抱き着かれると変な緊張をしてしまう。
「…私の全てを、マスターに捧げる。だから、とは言わないけど……マスターが、欲しい」
「お、おい…」
ぐい、と詰め寄るようにその身を押し付けてくる。
その勢いの強さに、単純に押し負けそうになるが、何とか押さえようとする。
「…マスターは、こういうのは…嫌い?」
「っ…」
混乱はしているが、嫌だとも言えず。
現に嫌というわけでもないので言い返せない。
「……嫌な聞き方した」
ごめん、と謝られるが、離れる気配はない。
むしろ、縋りついて服を掴んでくる手の力が少し強くなっている。
「けど、手放したくない…失いたくないから」
細かい事は分からないが、この物言いから察するに、ジャンヌ達と同じものを抱えさせてしまったのだろう。
だとすれば、ここまでさせている原因はこちらにあるわけで。
「…そうか」
そう、返すことしかできなかった。
それはそうと。
「…」
ジャンヌ達のマスターは一体どれだけ女誑しだったのだろう、なんて考えてしまう。
彼女らの元々の気質もあるのかもしれないが、彦斎を含め、こちらで召喚したサーヴァントはいくらなんでもマスターに依存しすぎている気がする。
藤丸とそのサーヴァントの関係という比較対象があるからこそ気付けたのだが、一度ジャンヌあたりに、以前のマスターについて聞いてみよう。
そう、思った。
「…もう一回か」
手元にはもう一枚の呼符。
所長ではないが、もう少し普通の関係を築けるサーヴァントが来てくれるといいなと思いながら、もう一度の召喚に臨むことにした。