FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
どの程度時間が経っただろうか。
……ォウ…?…キュ……キュウ…?
「……?」
左の頬を温かい物が伝う感覚。
まるで、舐められているかのような。
「ぅ……?」
眠っていたわけでもないので不思議ではあるが、まるで寝起きのように徐々に意識が覚醒していく。
そうして見えるのは、白い壁、白い床、無機質な光を放つ天井。
軽く見まわし、壁を背にして、廊下で眠る状態に近かったようだと察する。
「…」
左を見ると、先程、頬を舐めた動物だろうか、白い毛に覆われた、耳が長い兎とも、犬猫の類ともとれるような、不思議な生き物。
ぼんやりとその生き物を見れば、その生き物もじっとこちらを見返してくる。
しかし興味を失ったか。
「…キュウ!」
軽く鳴き、踵を返して走り去ってしまう。
しかし、少し走った後に立ち止まり、こちらを振り返っている。
まるで。
「ついて来い…って?」
そう、言っているかのように。
もちろん、相手は小動物。
どれだけ知性が高かったとしても、意思疎通ができるとは思っていない。
つまりは、ついていくのが正解かどうかも分からない。
しかし、ずっとここにいるわけにもいかない。
そう思い。
「っ…と」
膝に手をやり、それを支えに立ち上がる。
どれだけここで寝ていたのか、少しだけ腰が痛いが、それ以外は問題なさそうだった。
立ち上がり、少しだけ身嗜みを整えて、小動物の方へと歩き出す。
「キュウ!」
こちらが歩き出したのを見てか、度々こちらの様子をうかがいながら、再度走り出す小動物を追いかけ始めた。
………
……
…
そうして暫く追いかけた先で。
「…?」
小動物は、閉じた扉をカリカリと引っかき始める。
どうやら、ここに入りたいのだろう。
とはいっても。
「…どうしろと」
人の部屋を開けていいのか。
そう問いかけるように、小動物を見るが。
「フォウ?」
小首を傾げられる。
何故開けないのか、と言わんばかりに。
もしそうなら、それはそうだろうと言い返したいところだが、相手は動物。
問答が通用する相手ではない。
ならば仕方ない、折衷案。
――コン、コン。
ノック。
まぁ無難なところだろうとは思う。
すると。
「はーい」
人いるし。
開けちゃダメじゃん。
「入ってまーす」
トイレか。
尚ダメだろ。
そう、小動物とにらめっこをしていると、徐にドアが開く。
「って、うえええぇぇぇ!?」
「!?」
中から、一人の白衣を纏った男性。
「ここは空き部屋だ、ボクのサボり場だぞ!?誰のことわりがあって…!」
何か突っ込みどころ満載な主張をしながらこちらの顔を見て。
「…どちら様?」
「……」
聞く順番が逆では。
…そんなこんなで、いろいろと説明をもらいながら、こちらの事情も説明をして。
「…そうすると、君が最後の一般枠の候補なのかな」
「……さっきも言った通り、申し込みをしていないはずなのですが」
「そこなんだよねぇ。けれどカルデアの認証を通過してるから、ちゃんと候補として登録されているようだしね」
うーん、と顎に指をやって宙を見上げて悩む男性、改めDr.ロマン。
本名はロマニ・アーキマンというらしいが、皆からはDr.ロマンと呼ばれているそうなのでこっちもそれに倣う。
「…まぁ、とりあえず考えても分からなそうだし、今は置いておこう。君がマスター候補であることに変わりはない。それで十分だ」
これからよろしく、と笑顔で手を差し出されたので、こちらも手を出し、握手をする。
「ちなみに…ボクがここでサボっていたことは他言無用で頼むよ?」
「……はぁ」
言いながら、少し手を強く握られる。
くれぐれも頼むよ?と言わんばかりの強さだった。
「……それと、キミの場合はこれからが問題かな」
先程までの笑顔とは打って変わって、真剣な表情になり。
「君、所長の説明会に出ていないだろう?」
「……」
「少々厳しい人だからね。暫くは不真面目の烙印を押されて、目をつけられてしまうかもしれないね」
けれど、考えてもどうにもならないと悟ったのか。
「…ま、頑張ってやってくれ。それなりに功績を挙げれば認めてくれるさ、きっと」
親指を立てて、後は頑張れ!と言わんばかりだった。
とはいえ、そう言われても何をどうすればいいのかわからない手前、協力者は欲しかったので。
「……そうか。なら仕方ない…真面目に働きながら、医療部門のトップの不真面目についても報告をしなくては」
「うええぇぇ!?そ、そりゃないよキミ!?」
泣きついてくるDr.ロマンに笑顔を返し。
「いい協力関係が築けることを、期待してますよ。Dr.ロマン?」
「なかなか強かだね、君…」
再度、握手を交わす。
今度は、協力者として。