FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

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対話

その後、特異点についてはもう少し調査がかかるとのことで休暇が続いていた。

理由の中には俺が突然倒れた件も少なからず含まれていると思っているので、強くは言えない。

そんなある日。

 

 

「…今日はごめんね、急に付き合ってもらっちゃって」

「別に構わない」

 

 

藤丸の誘いがあって、マスター同士の親睦を深めるという名目で食堂でお茶をしていた。

こちらが誘われた、という形なので何が話があるのかと思っていたのだが。

 

 

「…ん、とりあえず…少し、ゆっくりしよ」

「……」

 

 

こんな感じで会話は進まず、特段何をするでもない。

別に構わないのだが、どうにも落ち着かない。

別に嫌ってはいないが、特段親しい間柄というわけでもないというのが最たる理由なのだが。

 

 

「……」

 

 

考えてみれば、カルデアに来てそれほど日が経っているというわけでもない。

むしろ、カルデア以外…特異点にいる時間のほうがむしろ長いだろう。

その状況下で親睦を深めるというのも土台無理がある。

 

 

「…その、迷惑だったかな」

「そんな事はないが」

 

 

やがて、様子を見ながら話しかけてくる藤丸。

なんというか、様子を見ながら話してくる様子に見える。

 

 

「その、ね。謝りたくて」

「…謝る?」

「この前の特異点のこと…私、キミに迷惑かけたよね」

 

 

なるほど。

オルレアンでの事か。

あの時はモルガンが引き受けてくれたおかげでジャンヌと共に先に進むことができたが、あそこで協力できていれば解決は更に容易だっただろう。

それは否定できない。

 

 

「そうだな」

 

 

だから、それを正直に告げる。

今、これを繕うのは、不誠実にも程がある。

 

 

「結果として、こちらの行動が解決に導いたというのなら、対立したのは大局が見えていなかったからと言わざるを得ない」

「っ…うん」

「…だが、少なくともお前は…それを負い目にする必要はないと思うが」

 

 

言うと、藤丸は顔を上げてこちらを見る。

なんで。

藤丸の表情はそう、語っている。

 

 

「…少なくともお前はあれを正義と信じ、そのために戦ったのだろう。それが俺たちが相手だとしても…本気で」

「うん」

「その事で謝るということは、自分が正しいと信じて戦ったこと、それ自体を否定する行為だ」

 

 

だから、謝るな。

俺は、それだけ告げる。

 

 

「…謝らなくていい。ただ逆の立場になったとしても…俺は謝るつもりはない。それだけは言っておく」

「うん」

「だから、藤丸がもし、俺達が間違っていると思うのなら…全力で止めに来い。あの時と同じように」

 

 

実際、フランスでは俺達が特異点の解決に貢献できたわけだが、それを確信して動けていたかは正直微妙である。

俺が信じたのは、自らのサーヴァント。

ジャンヌ達が導いてくれたから解決が出来たし、こうして戻ってこれた。

そういう意味では、俺も反省すべきことは多い。

まぁ…これは心の内にしまっておくことにする。

 

 

「…ありがとね」

「何がだ?」

 

 

礼を言われるようなことをした記憶がない。

むしろ、気にしてない、とでも言っていれば礼を言われるのも分かるのだが。

本気で疑問に感じていると、藤丸は一つ笑みを浮かべ。

 

 

「ん…何でもない。気にしなくていいよ、私が言いたかっただけだから」

「……そうか」

 

 

どこか可笑しそうにいう藤丸だが、少しは緊張が解けているようなので良しとしよう。

 

 

「…それはそれとして、だが」

「ん?」

「……俺はあの後離脱していたわけだが、藤丸はサーヴァントを召喚したのか?」

「え?あぁ…まだだよ」

 

 

藤丸によれば、俺が倒れて一悶着あったせいで、有耶無耶になってしまっているらしい。

後で改めて召喚は行うとのこと。

 

 

「…何というか、世話をかけたな」

「私はいいよ。それより…大丈夫なの?」

「問題ない」

 

 

ダ・ヴィンチの話では問題ありなのだが、馬鹿正直に言うことでもないだろう。

倒れただけで一悶着あったくらいだ。

あの時の話をそのまま伝えたらどうなるかなど容易に想像がつく。

 

 

「そっか。なら良かった……あ、そうだ。もう一つ…聞いていいかな」

「?」

「私…キミのサーヴァントに嫌われるようなこと…何かしたかな?」

 

 

ジャンヌのこと、モルガンのこと、彦斎のこと。

リリスについては…何とも言えない。

強く嫌っているようには見えなかったが…さて、どうだろう、といったところ。

 

 

「あの和風の剣士みたいな人が言ってたじゃない。『マスターの命を脅かす最大の障害』って」

「…あぁ」

「私が、貴方の命を脅かすって…どういうことなのかな、って」

「……」

 

 

サーヴァントと繋がりを深める中で、彼女らが持つ記録、記憶が少しずつ伝わってきている。

だからこそ、全部とは言わずとも、ある程度は言わんとする事を分かっている。

けれどそれは、今目の前の藤丸に伝えるべきだろうか。

ジャンヌ達は、藤丸が直接的な脅威ではないから踏み止まっているが、この均衡が崩れれば彼女らは藤丸を手にかけるだろう。

 

 

「……」

 

 

今俺が知っていることを伝えるべきかもしれない。

しかし、その上で藤丸が俺に相対する動きを見せれば。

今はそこを信頼する段階ではないだろう。

だからこそ。

 

 

「…それは、俺の口から言うことでもあるまい。だからといってお前が直接ジャンヌ達に何を言っても…おそらくは届かないだろう」

「そっか…キミがそう言うなら、そうなのかもね」

「多分な」

 

 

本気でぶつかれば、何かが変わるかもしれない。

けれど、藤丸にとってあまりにハイリスク。

一歩間違えればどうなるか、など想像するまでもない。

 

 

「……うん。できれば…会話ができるくらいには打ち解けられたらな、って思ってたんだけど」

「そうだな」

 

 

いつか、俺が消滅したその後に、ジャンヌ達がマスターとして頼ることになるのは、おそらく藤丸だろう。

おそらく彼女らはそれを拒否するだろうが、カルデアの責務を達成するには彼女らの力を失うのはあまりに惜しい。

ならば、今のうちから少しでも打ち解けられればとは思う。

とはいえそれは、藤丸とこちらのサーヴァントとのコミュニケーションの問題。

口出しをするつもりはない。

 

 

「…マスター」

「っ…」

 

 

突然背後から声がかかり一瞬飲み物が喉に詰まりそうになる。

振り返れば。

 

 

「…彦斎か」

「ん」

 

 

召喚したばかりのサーヴァント、河上彦斎。

他にはいないのか、一人だった。

 

 

「どうかしたのか?」

「…迎え。他の皆も待ってる」

 

 

彦斎が言う皆、とはジャンヌ達のことだろう。

そういう事であれば、今日はこのくらいか。

 

 

「構わないか?」

「…うん、ありがとね。付き合ってくれて」

 

 

藤丸に確認すると、笑顔で見送ってくれた。

決して悪い奴ではないとは思うのだが。

 

 

「…早く行こう。いつまでも藤丸と同じ場所にいると肺が汚れる」

 

 

袖を掴み、引っ張る彦斎に慌ててついていく。

 

 

「あ、あの…!」

 

 

藤丸が何かを言おうとするが、喉元に鞘に入った状態の刀を突き付けられ黙る。

 

 

「あまり私の手をかけさせないで。本当の事を言えばお前などすぐにでも刀の錆にしたい。けど…マスターが止めてるからやらないだけ」

「……うん」

 

 

彦斎の視線は、あまりに冷たい。

親交を深める気など、まったくない、と言わんばかり。

 

 

「…ふん」

 

 

刀を引き、袖を掴んでいた手を離し、腕に抱き着いて歩きだす彦斎に引っ張られてこちらも歩き出す。

なんというかいろいろと、前途多難な気がしたが、時間をかけて何とかするしかあるまい。

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