FGO ~ Loopback Against the Order ~   作:アルタナ

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終焉/開始 - I

……それから、どのくらい雑談をしただろうか。

突如。

 

 

『ロマニ、あと少しでレイシフト開始だ。万が一に備えてこちらに来てくれ』

 

 

通信か何かだろうか、Dr.ロマンとは別の男性の声が聞こえる。

 

 

『Aチームの状態は万全だが、Bチーム以下、若干名に変調が見られる』

 

 

おそらく不安によるものだろう、と男性は補足しながら協力依頼をする。

とにかく来てほしい、医務室からなら二分くらいのはずだ、と付け加えて。

 

 

「…参ったな、ここからじゃどう頑張っても5分はかかる」

「……」

 

 

困った目で見られたので、視線を逸らす。

俺は知らない、という意思を込めて。

それが伝わったのか、うぅ、と呻きながら。

 

 

「ちなみに今の声がさっき話したレフ・ライノールだよ」

「…とりあえず、凄い魔術師、という認識だけはしていますが」

 

 

細かいことは良く分からなかったので、とりあえずそういう認識だったが。

 

 

「ま、それでも間違いじゃないからいいかもね」

 

 

特に言及するでもなく、Dr.ロマンは立ち上がる。

 

 

「…さて、行きますか。お喋りに付き合ってくれてありがとう。これでキミもボクのサボりと同罪だ」

「では今度は、こちらから医務室にお邪魔しますよ」

「あぁ、その時は美味しいケーキの用意でもしておくよ」

 

 

じゃ、また後で。

そう言い残し、部屋の扉へ向かおうとした瞬間。

 

 

「っ…?」

「なんだ?」

 

 

突如、部屋の明かりが消える。

Dr.ロマンが明かりを消したのかと思ったが、様子を見る限りでは違うようだ。

どうしたものかと考えていると。

 

 

「っ!?」

 

 

―突如、爆発音が響く。

 

 

それとほぼ同時に、アナウンスが流れ始める。

 

 

 

――緊急事態発生。

 

――中央発電所、および中央管制室で火災発生。

 

――中央区角の隔壁は90秒後に閉鎖。職員は速やかに第2ゲートから退避してください。繰り返します…

 

 

「モニター、管制室を映してくれ!」

 

 

Dr.ロマンが指示を出すと、音声認識かモニターが表示される。

そこに映し出されたのは。

 

 

「これは…!」

 

 

地球儀のようなものが中央に映し出されている。

その周りは完全に火の手が上がっていた。

 

 

「っボクは管制室に向かう。キミはすぐに避難するんだ!」

 

 

Dr.ロマンの言葉に立ち上がり。

 

 

「……いや、すまないが同行させてもらいたい」

「何を…!?」

 

 

そう、言葉にすればDr.ロマンは驚いたように尋ね返す。

 

 

「…ここからどう行けば出口なのか分からない。だとすれば隔壁が下りるまでに出口に辿り着ける可能性は低い…なら、詳しい者の傍にいた方が生存の可能性は高いのでは?」

「しかしっ…あぁもう!言い争う時間も惜しい!」

「心配せずとも、可能な範囲で手伝いはさせてもらう」

 

 

そんな会話を交わしながら、中央管制室へ。

 

 

 

……そこから、約5分。

中央管制室。

 

 

「………生存者、なし」

 

 

辺りを調べ、Dr.ロマンがそう結論付ける。

医療部門のトップが言うのだから、間違いではないのだろう。

 

 

「…そしておそらく、ここが爆発の起点だろう」

 

 

これは事故でなく、人為的なものだと付け加えて。

 

 

「…君は」

「?」

「君は、どう思う?」

 

 

Dr.ロマンが尋ねてくる。

その視線は先ほどまでの雑談とは打って変わっての真剣なもの。

ならこちらも。

 

 

「…気になる点は、2つ」

「拝聴しよう」

「まずは…人為的であるとするなら、その主犯」

 

 

人差し指を立て、一つ目、と強調しながら。

 

 

「……ここに入ってくるときの認証システム。それと外界からの隔離状況。そこから考えれば、態々外から来てこの事故を起こす理由がない」

「内部犯、と?」

「あぁ」

 

 

それと、と続けながら中指を立て、二つ目。

 

 

「目的。ここにいたのは、マスター候補、なのだろう。そこに爆弾を仕掛けたのなら…」

「…マスター候補を殺すこと」

「だが…それに何の意味がある。主犯にとって、それが何の利益なのか…それが分からないな」

 

 

ちなみに、下調べはするといっても、物語の根幹となる部分まで調べたりはしない。

ゲームをプレイする楽しみが減る。

だから、目的なんて分かるわけがない。

 

 

「……」

 

 

ふと、思う。

ベッドの上でスマホにゲームをインストールし、起動していたはずだった。

だが今はどうだ。

ベッドのある自室どころか、火の手が上がり、死人が大量に出ている施設の一室。

当然ながら、VRゲームを起動した記憶などあるわけもない。

だとすれば、今眼前に広がるこの状況は…何だ?

ゲームでないというのなら、これは。

 

 

「?…どうしたんだい?」

「……いや」

 

 

こっちの思考を悟られることはないだろうが、何かしら気にさせてしまったらしい。

とはいえ、それを話すわけにはいかない。

しかし、これがゲームだというなら、どのように中断すれば。

そんなことを考えていると。

 

 

「っドクター!」

 

 

突然ドアが開き、二人の人物が駆け込んでくる。

 

 

「マシュ!」

 

 

そのうち一人の名を、Dr.ロマンは呼ぶ。

ピンクに近い薄紫色のボブカットの髪の女性。

もう一人の女性は確か、このゲームの主人公の、藤丸立香。

彼女らが入ってきた瞬間。

 

 

 

――動力部の停止を確認。発電量が不足しています。

 

――予備電源への切り替えに異常があります。職員は手動で切り替えてください。

 

――隔壁閉鎖まで、後40秒。

 

――中央区画に残っている職員は速やかに退避してください。

 

 

 

そのアナウンスを聞き。

 

 

「…ボクは地下の発電所に行く。君達はすぐに避難するんだ。マシュ、すまないが彼らを外まで案内してあげてくれ!」

 

 

言い終わるよりも早く、Dr.ロマンは外に駆け出す。

おそらく地下へと向かったのだろう。

 

 

「私たちも行きましょう、先輩!…そこの貴方も、早く!」

 

 

マシュに呼び掛けられる。

普通なら慌て、彼女についていくだろう。

燃え盛り、温度が上昇する中で、何故か、落ち着いていた。

 

 

「……?」

 

 

燃え盛る炎を見ていると、何かぼんやりと情景が浮かぶ。

頭に浮かぶ、靄がかかり、はっきりしない情景。

目を閉じ、その情景に意識を集中しようとするが。

 

 

「っちょっと!」

「っ!?」

 

 

突然腕を引っ張られ、思考は中断される。

見れば、亜麻色の髪の少女に腕を引っ張られていた。

 

 

「何ボーっとしてるの!?早く逃げないと…!」

 

 

彼女の言うことも間違いではない。

考えるのなら後でも。

それこそ、このゲームを終わらせた後でもできる。

 

 

…そうして、部屋を出ようとした瞬間。

 

 

 

――システム、レイシフト最終段階に移行します。

 

――座標、西暦2004年1月30日、日本、冬木。

 

――ラプラスによる転移保護、成立。特異点への因子追加枠、確保。

 

――アンサモンプログラムセット。マスターは最終調整に入ってください。

 

 

 

理解できない言葉でアナウンスが続いている。

このままここにいるのは、火災以外の意味でもまずいのかもしれない。

だとしても、どうすべきかの判断がつかない。

 

 

 

――レイシフト対象マスターを検索中

 

――2名、該当。

 

――適応番号47、48 両名をマスターとして再設定します。

 

――アンサモンプログラムスタート。

 

――霊子変換を開始します。

 

 

 

アナウンスの瞬間。

 

 

「え…?」

 

 

俺の腕を掴んでいた彼女の腕が光に包まれ始める。

それは彼女だけでなく、マシュもである。

 

 

「な、なに…!?」

 

 

掴まれていない方の手を見ると、自分の手が光に包まれていた。

 

 

 

――レイシフト開始まで残り3秒。

 

 

「先輩!」

 

 

マシュが女性の腕を掴む。

その瞬間。

 

 

――全行程クリア。ファーストオーダー実証を開始します。

 

 

そのアナウンスを最後に、意識が遠のき。

抵抗する余裕もないまま、どこかに引っ張られていく。

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