FGO ~ Loopback Against the Order ~ 作:アルタナ
……キュウ、キュウ…
…フー…フォウ…
「っ……」
左の頬を舐められる感覚。
似たようなことがつい最近あった気がするが。
「ぅ…」
眉間を押さえながら、軽く息を吐く。
「…ぃ丈夫ですか、先輩?」
話しかけてくる女性の声。
俺を先輩と呼んでくる女性などいなかったはずだが。
「…?…あぁ」
目を開き、自力で立ち上がる。
それと同時に目に入る彼女の容姿、Dr.ロマンが呼んだ名前、そして事前知識が彼女の名前を思い出させる。
「…マシュ、か」
「はい。無事目が覚めたようで何よりです、先輩」
適度な距離を保ったマシュとは対照的に。
「ちょっと!」
彼女の背後からずかずかと近づいてきて、至近距離から指さされ。
「なんで逃げようって時に、いつ爆発するかもわからない方に近づくのさ。また爆発したら死んじゃってたかもしれないんだよ!?」
「あ…あぁ、すまない」
「…まぁ、無事だったからいいけど」
割と引きずらない性格なのか、謝罪をするとそれ以上は責めなかった。
「…そういえば、名乗ってなかったよね。私は藤丸立香っていうの。よろしくね」
気を取り直してか、名乗り、握手を求めてくる。
差し出された手を一瞥し。
「…よろしく」
とだけ返し、握手には応じずに視線を逸らす。
ここまで女性に距離を詰められたことがなかったので少し慌てた、というのが正直な理由。
かといって、それを悟られるのも気恥ずかしいというのもある。
しかし。
「んー?どしたのかな?」
げに恐ろしきは女の直感、というべきか。
背中から聞こえてくる彼女の声が徐々に近づき。
「なんか顔真っ赤にしちゃって。ドキドキしちゃった感じ?」
何が楽しいのか、と思うほどに背中を指先でつつく。
「…ふ、藤丸……やめ、っ…」
「やだなぁ。そんな他人行儀じゃなくて、立香って呼んでくれていいよ?」
「っ…その議論はとりあえず、後にしろ…」
藤丸から距離を取り、つつき攻撃を回避しながら。
「…マシュ。とりあえずこの状況は」
「あ、はい…」
少し呆れ顔に見えたマシュに声をかけると、ハッとして返事をする。
漸く真面目な話に戻れると思ったのだが。
『Gi…GAAAAaaaa!』
「っ!」
突然聞こえた第三者の声に皆が反応する。
「……言語による意思の疎通不可、敵性生物と判断します」
言いながら、いつの間に着替えたか大きな盾を構えながら。
「マスター、指示を。私とマスターの二人で切り抜けます!」
「あ、うん!」
マシュの呼びかけに藤丸が答える。
まぁ主人公だし、そりゃそうか、とは思う。
「先輩はマスターと一緒に私の後ろへ!」
「…あぁ」
とはいえ、そうなると自分はなぜここにいるのかとは思うが。
………
……
…
それから、マシュは一人、盾を武器に…というといろいろおかしいようにも見えるが、比較的あっさりと敵を討伐。
「…ふぅ」
大きな盾を地面に突き立てながら。
「不安でしたが…何とかなりました。お二人とも、無事ですか?」
「大丈夫…キミは?」
「…問題ない」
「安心しました…」
こちらの答えにマシュはホッとしたよう胸をなでおろす。
そんな風にしていると。
『あぁ、やっと繋がった!』
どこからか聞き覚えのある声。
声のした方を見れば、空中に映像が浮かび上がっており、そこには。
「Dr.ロマンか…」
『君か。こちらはカルデア管制室、聞こえているね!?』
Dr.ロマンの言葉に対し。
「こちらAチームメンバー、マシュ・キリエライトです。特異点Fにシフト完了。同伴者2名、ともに問題ありません」
2名共にレイシフト、およびマスター適応共に良好、と続ける。
それに対し、無事でいてくれて嬉しい、と伝えてくるDr.ロマン。
下手したら死んでたのだろうか。
『それはそうとマシュ、その恰好は一体…!』
まぁ、白衣からいきなりこうなれば気になることは気になるだろう。
『っ~、ハレンチすぎるぞ!ボクはそんな風に育てた覚えはない!』
と思った俺は馬鹿なのだろうか。
そこからの会話は少し長くなったが、要点を搔い摘むと。
今のマシュは人間というより、身体能力が圧倒的に向上したサーヴァントになった事。
その理由は、ここに来る際に死んだはずだったマシュがサーヴァントと融合することで一命をとりとめた事。
ただ、その名前がわからないため、彼女自身、それが何の力なのか理解できていない事。
Dr.ロマンの解析により、藤丸がマシュのマスターとして成立している事。
言い換えれば、藤丸はマシュというサーヴァントを従えるマスターであるという事。
「え、えっと……はい…?」
突然流れ込んでくる情報量に混乱する藤丸。
まぁ、無理もない。
こっちだって事前知識がなければなんとやらだろう。
そんな会話をしていると。
「…ドクター、通信に乱れが。まもなく途絶します」
『む……応急処置だからか。いいか、二人とも。そこから2kmほど先に霊脈の強い場所がある』
まずはそこまで辿り着いてくれ。
それだけ言い残し、映像は途絶した。
「…どうする、藤丸」
「え、私?…どうしよっか、二人とも?」
「私は、まずはドクターが指定したポイントに移動するのが得策だと思いますが…先輩はいかがです?」
「…同意見だ」
「じゃあ、そうしよう」
三人、頷き次のポイントへ向かう。
燃え盛る街の景色は、しばらく変わることはなさそうだった。