Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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グルースの大母マーヤーを退け。そしてかの雷神ゼウスをも退け。

辿りついたは深淵の更なる深淵でした。

其処には第三勢力も全て集います。

アレックスも、側で当事者として関わる事になります。

数多の因縁の糸が、全て此処に。


灼熱の深淵
序、最後の空間


グルースの大母マーヤーから入手したロゼッタの情報を元に、スキップドライブを開始する。

 

行き先は当然最後の世界。

 

まずはバニシングポイントに方舟で入り込み、其所から更にスキップドライブする。

 

やはり帰路には壁がある様子で、どの道最後の大母。他とは桁外れの強さを誇る存在であることが確定しているメムアレフを倒さなければならない。そうしなければ、帰ることも出来ないし。

 

シュバルツバースをどうにかすることも出来ないだろう。

 

唯野仁成は、物資搬入口で、サクナヒメとケンシロウと共に待つ。アレックスはいないが、ストーム1と一緒に船内の方で待機だ。

 

人員の配置はアーサーが行った。

 

このレインボウノアでさえ、アントリアでは不時着したのである。アレックスのいた絶望の未来では、どれほどの苦難がシュバルツバースに突入した者達に襲いかかったのか、想像も出来ない。

 

全く揺れず、スキップドライブが行われ。

 

やがて、新しい空間に出た様子だ。

 

少し、降りるのに手間取っている。あのデルファイナスのようなゴミ山なのだろうか。それとも。

 

しばし待つ。待つ事には慣れている。

 

やがて、方舟が降下し始める。殆ど同時に、サクナヒメが顔を上げていた。

 

「またか……」

 

うんざりした様子だが、唯野仁成もその気配は察知していた。

 

間違いない。

 

堕天使さいふぁーだ。

 

あいつは元々、此処で待つと言っていた。その約束を、律儀に守ったと言う事なのだろう。

 

いずれにしても、戦うつもりはないようだ。堂々と降りるだけである。

 

方舟が着地。この時にもほぼ揺れない。良い事だと唯野仁成は思う。これだけ厳しい環境で揉まれた船だ。

 

宇宙空間に出るときに、この経験は大きな役に立つのだろうから。

 

プラズマバリアはまだ展開したままだ。

 

その上で、周囲の環境を調査。ほどなく、マクリアリーが通信を入れて来た。

 

「此方観測班マクリアリー。 映像を出します」

 

「……っ」

 

サクナヒメが露骨に嫌そうに呻く。

 

周囲に拡がっているのは、文字通り原初の世界だった。

 

火山が彼方此方で噴火して、マグマが流れている。コレは確かに、原初の大母がいるのに相応しい場所だ。

 

「姫様、どうかしたのですか?」

 

「火山の噴火で、一度神田も家も何もかもが駄目になった事があってな。 それを思い出してしもうたわ」

 

「……それは」

 

「その時わしを再起させてくれたのは、共に生きていた人間達だった。 ふう、そうであったな。 今度も、きっと乗り越えられようぞ」

 

サクナヒメの言葉は、明らかに周囲のクルー達を元気づける。

 

ケンシロウも無言で頷いていた。

 

「気温は100℃ほど、気圧は11気圧。 大気成分は殆どが窒素です。 通常であれば人間が生活出来る環境ではありませんが、これならば……恐らく現状のデモニカでも活動可能でしょう」

 

「ただ、マグマの辺りがどうなっているかは調査がいる。 くれぐれも慎重に行動してほしい」

 

カメラの向こうで、さいふぁーが笑顔で手を振っている。

 

まあ意図は分かる。唯野仁成は、艦橋に通信を入れておく。まずは、さいふぁーと話をする必要があるだろう。

 

今の時点では利害は対立していない。

 

奴は可能性を見たいと言うだけの事しか口にしないし、他に求める事も無い様子だ。

 

だから、今の時点で戦闘は恐らく起きないとは思うが。

 

少しして、結論が出た。

 

接触してほしい、と言う事だった。

 

プラズマバリアが解除される。

 

唯野仁成とサクナヒメ、ケンシロウが降りる。更に、ストーム1とヒメネス、後はゼレーニンも降りて来た。ライドウ氏も、それに続く。

 

アレックスも降りて来たが。それを見て、小首をかしげるさいふぁー。

 

まあいい。ともかく、まずは話をするところからだ。

 

「予想通り来てくれましたね、英雄達。 はうう、凄い威圧感ですぅ」

 

「話とは何だ、さいふぁー」

 

「出来れば他のスペシャル達も来て貰いますか? 皆に見せておきたいものがあるのですよぉ」

 

「……相談する」

 

唯野仁成は再び通信を入れる。

 

やがて、相手が堕天使ルシファーだと言う事も考慮したか。正太郎長官、真田さん。それに春香も降りて来た。ゴア隊長も、である。

 

それらを見て、さいふぁーは目を細めていた。

 

「なるほど、気配は察知していたものの、間近で見ると納得出来る。 歴史上最大の戦争によって生じた業を見てきた古豪。 世界の知恵を集めた賢者の中の賢者。 そして人々の心を集める文字通り最高の偶像。 そして確実な手腕を発揮し続ける有能極まりない将軍。 これほどの面子が揃っていたのなら、今までの大母をはじめとする悪魔達が蹴散らされたのも納得だな」

 

「見せたいものとは何かね、堕天使さいふぁー」

 

「……」

 

指を鳴らすさいふぁー。

 

同時に、世界が切り替わっていた。

 

溶岩の沼のような場所がある。その中央部に、中州のようになった場所があり。

 

其所に、涅槃の体勢で。巨大な人影が寝そべっていた。

 

一瞬で全身が総毛立つ。

 

それは黄金に近い色合いで、髪の毛は髷のような不思議な結い方をしている。額には第三の目があり。それ以外は巨大な女体というシンプルなものだ。

 

全長は恐らくだが数十メートル程度と、今までの大母と変わらないだろう。大きくも小さくもない。

 

だが、一目で分かる。

 

確かにこの存在と比べてしまうと、今までの大母などそれこそ単なる使い走りだ。同じ「大母」という括りにあるかも知れないが、存在の次元が二つは違う。

 

これこそが、メムアレフ。

 

シュバルツバースの女帝にして、地球の意思。

 

人類が過剰に破壊した地球を元に戻すため、灼熱の深淵より来たりしものだ。

 

「これが大母メムアレフ。 この空間の地下に眠る最強の大母にて、地球の意思そのものなのですよぉ」

 

「……これが」

 

「……」

 

恐怖は勿論誰もが知っている。

 

だが、それを制御する事も、誰もが知っている。

 

それでもなお、誰もが声も出ないのが分かった。ストーム1やサクナヒメですら冷や汗を流している様子である。

 

誰もが分かっているのだ。まともにやりあったら勝てない、という事を。

 

「恐らく貴方たちが全戦力を投入すれば、勝ちを拾うことは不可能ではないですね。 でも、大きな被害が出る」

 

「何が言いたい」

 

ストーム1が苛立ちを込めて言う。

 

勿論、恐れをねじ伏せる意味もあっただろう。この場にいる全員が、地球の歴史上に残るレベルの英雄ばかり。そして最強に近い神一柱。

 

本来なら怖れる者などなし。

 

実際問題、地球に現在ある世界中の軍なら、この面子でなら正面から戦って勝てる可能性は高い。いや、恐らく勝てるだろう。勿論悪魔召喚込みで、だが。

 

「私は何度も言っているとおり、可能性が見たい。 君達ほどの可能性が、此処で摘まれてしまうのは好ましくない。 何か手助けはほしいか、星の英雄達」

 

「……そうだな。 大母が本格的に目覚めるまでの時間は分かるだろうか」

 

聞いたのは真田さんだ。

 

唯野仁成は、敵の戦力を測るので必死である。

 

はっきりいって、ゼウスでも冷や汗を流して撤退する方が良いと即答するレベルの神格だ。

 

ギリシャ神話においてずっと大御所政治を続けたガイア神と、恐らくは地母神という観点では同じ括りに入るのだろうが。

 

先の大母と同じで。はっきりいって、括りは同じでも別物過ぎる。

 

もはやこのメムアレフは、神やら悪魔やらというカテゴリに入れて良い存在ではない。

 

少なくとも、地球人類が考える神やら悪魔より次元が上の相手だ。

 

神話においては、古代の乏しい知識を元に宇宙レベルの神格が幾つも創造されたが。それはあくまで当時考えられた宇宙レベルの神格であって。結局人間の想像力の上を行っていない。

 

近年人気を博しているクトゥルフ神話などでは、近代の知識を元に宇宙レベルの神格が作られたが。

 

それも結局、「宇宙の中心に座する白痴の魔王」という存在が主神である事からも分かるように。

 

一神教の自分で醜悪だと分かって作っているパロディに過ぎず。

 

実際問題、現在では色々に創作で遊ばれている始末で。

 

信仰を受けるには至っていない。

 

真田さんは、時間稼ぎがしたいのだろうか。

 

いや、違う。真田さんには、勝算があるのかも知れない。

 

「……大母メムアレフが目覚めるまで、か。 大母は既に目覚めているが、実際に活動を開始するのは少し先。 そうさな、この空間での時間では分からないが……本来なら外の時間で考慮すれば2000時間ほど後だっただろう」

 

なる程。それは恐らくだが、唯野仁成とヒメネスだけでシュバルツバースを攻略していたも同然だった世界では、そうだったということだ。

 

つまり本来の歴史よりも、80日近く攻略が早まっている、という事になるのだろう。

 

「しかしながら、他の大母。 使い走りにすぎない三体の大母が倒れたことで、覚醒が早まっている。 恐らく、もう外の時間で考慮すると240時間も経たずに本格的に動き始めるはずだ」

 

「……10日か」

 

「勝算はあるのか、偉大なる技術の守護者」

 

「今まで集めて来た全てのデータを今収束させている。 それを使えば、或いは……」

 

皆が真田さんを見る。

 

サクナヒメすら、感心したようにして見ていた。

 

そうか、時間さえあれば、「かねてから開発していた」が炸裂しうるのか。それならば、或いは。

 

苦笑するさいふぁー。

 

元々が可愛らしい小柄なメイドの姿をしているが、やはり此奴の中身は怪物だ。

 

ただ、もとのメイドの人格も借りていると言っていた。

 

怪物と、心優しい人間の人格が混ざっているのだろう。

 

「分かった。 此方でも動こう。 デメテルが入り込んだ場合の排除と。 この世界で待ち伏せしているもはや堕天使に落ちた愚か者が愚行を働かないように見張ろう。 排除までは行わないが」

 

「堕天使に落ちた……マンセマットの事ね」

 

「ああそうとも本来は秩序の奴隷になっていただろう光の子。 だが君は自力でその運命をはねのけた。 敬意を払い、奴を撃ち倒す権利は君に譲る。 奴はもはや飢えた獣になっていて、君達の誰かを見かけた瞬間に襲いかかってくるだろう。 ……楽にしてやりたまえ」

 

さいふぁーが消える。

 

同時に、大母の凄まじい圧迫的なイメージも、その場からなくなっていた。

 

どっと冷や汗が出る。

 

あれが、越えるべき壁か。

 

真田さんが、話があるといって、ストーム1と唯野仁成、それにヒメネスを呼ぶ。

 

ストーム1に渡したのは、ついに完成したらしい。携行できるライサンダーZFだった。

 

それを見て、ストーム1は先までの緊張感を忘れたように破顔する。

 

まるで妖刀を手にした侍のようだ。

 

「これが、究極の銃か……」

 

「私が作り出せる中では、な。 これ一つで、最新鋭の戦闘機よりも値段が張る」

 

「分かった。 だが、戦闘機などの比では無い戦力を保証する」

 

ストーム1はマニュアルに目を通し始める。

 

それを見て、ヒメネスと二人で頷いていた。流石はワンマンアーミー。リアルムービーヒーロー。

 

自分に出来る事を即座に把握し。

 

破滅の大母に立ち向かおうと即座に頭を切り換えている。その他にも、開発中だった装備を幾つか準備して貰っているらしい。

 

決戦までに間に合うか、最後の勝負という所か。

 

唯野仁成とヒメネスには、ライサンダーZの量産品が渡される。

 

ストーム1が使っていたものよりも更に小型で、取り回しが良くなっている様子だ。ライサンダーFとは火力が桁外れなのは何度も目にしている。これはゼウスなどの大物神格にも致命打を与えられる文字通りの神の槍だ。

 

「後、剣にも改良を加えておこう。 後でアーヴィンとチェンに渡してきてほしい。 そこで改良をしてくれる」

 

「流石ですね。 俺でもこれの良さはわかりまさあ」

 

「……ライサンダーZは後数丁、決戦までに準備できる。 そして近接戦を得意としているクルー向けに、剣も改良を進めるつもりだ。 これらはアレックスのプラズマ剣と拳銃から技術を確認して、それを応用している」

 

「有難うございます。 助けになります」

 

敬礼をすると、満足げに真田さんは頷く。そして真田さんは、ゼレーニンと共に研究所に向かった。これから、今まで集めたロゼッタと、情報集積体を解析するのだろう。

 

ゴア隊長が声を掛けて、皆が物資搬入口に集まる。

 

アーサーが、声を掛けて来た。

 

「堕天使ルシファーと思われる存在によってビジョンを見せられたこの空間。 空間のコードとして、予定通りホロロジウムを発行します。 ホロロジウムの大母であるメムアレフの撃破をこの空間での最優先ミッションとして発行します。 ただし、もしもメムアレフを説得して行動を止められるようであれば、それもミッションとして推奨します」

 

「真田の策は信頼出来る。 だがアレを倒すのは、わしとケンシロウ、ストーム1とライドウが総力を挙げても厳しいぞ。 唯野仁成とヒメネス、それにアレックス。 皆の力が加わったとしてもな」

 

「分かっています。 このホロロジウムには、大量の強力な悪魔の反応があります。 それを倒しながら、デモニカの経験を蓄積させてください。 外部の実時間で十日ほどしかありませんから、配分については考えなければなりませんが、それについてはプランを此方で策定します」

 

アーサーには、その辺りは任せてしまってかまわないか。

 

ゴア隊長は腕組みをすると、皆を見回した。

 

一線級のクルーにしか先の話は行っていない。だがそれでも、そもそもとしてあまりにも絶望が過ぎるのだ。

 

「こう言うときに私が出来るのは、現実的な戦闘指揮しかない。 姫様、唯野仁成と共に、最前衛としてアーサーの指示を受けながら、大母への道を切り開いていただきたいのですが」

 

「まかせろゴア。 今の唯野仁成の力は、わしでも背中を預けられると判断出来るほどのものだ。 如何なる罠でも喰い破ってくれるわ」

 

「たのもしゅうございます。 ストーム1、ヒメネスと共にその補助。 此方もアーサーが支援してくれる。 兎に角、このホロロジウムの構造解析と大母の元への進路確保を優先する。 連れていく機動班クルーについても、アーサーに都度選ばせる」

 

「イエッサ!」

 

ストーム1は言葉短く応じ、ヒメネスも同じく。

 

更にゴア隊長は、指示を順番に出していく。

 

「ライドウ氏とケンシロウは、思いのままに動いてほしい。 ライドウ氏はクルーを連れて行ってくれ。 ケンシロウは、危険を判断したら即座に戻ってほしい」

 

「了解した。 確かに我々はその方が動きやすい」

 

「……任せろ」

 

ライドウ氏が敬礼し、ケンシロウは頷く。

 

ゴア隊長は、更に春香にも言った。

 

「春香君。 君はクルー達のメンタルケアだ。 君の歌を流すだけではなく、可能な限りのプログラムを組んでクルー達の心が破綻しないように支援を願いたい。 あんな怪物を見た後だからつらいだろうが、それでも頼めるだろうか」

 

「何とかしてみます。 私も何万のお客さん達が来る会場で、数え切れない程ライブをして来ました。 さきの大母メムアレフという方は……正直それら全てをあわせたよりも凄いプレッシャーでしたが。 でも、だからこそに。 私が皆の支えになります」

 

「頼む。 メンタルケアを医療班だけに任せるわけにはいかない」

 

正太郎長官が頷く。

 

後は、船からのバックアップと支援だろう。

 

それを汲み取ったらしく、ゴア隊長は言う。

 

「船からはドローンを飛ばして、機動班を支援する。 プラントは前線に出ない機動班クルーで護衛しながら、調査班とインフラ班と連携して構築。 野戦陣地は方舟周辺には敢えて構築しない。 これは勿論方舟もあの巨大な大母との戦いに参戦するからだ。 更に各地に前線基地が必要になる可能性が高いから、物資は温存する。 必ず、全員で生きて帰る。 大母メムアレフは、人類が遭遇した中でも最強最悪の存在かもしれないが、それでもどうにかして見せる」

 

「イエッサ!」

 

皆で敬礼。

 

そして、それぞれに動き出した。

 

しばし立ち尽くしていたアレックスに、ゴア隊長は声を掛ける。

 

「君は方舟のクルーでは無く協力者だ。 だから、好きに動いて良い。 君はどうしたい」

 

「……唯野仁成と一緒に行動してもかまわないかしら」

 

「もちろんだ。 最前衛のチームには、少しでも戦力がほしい」

 

「そう、ならばそうさせて貰うわ。 ……私のいた未来でも、貴方が早々に戦死しなければ、唯野仁成の負担はぐっと減っていたのでしょうね」

 

アレックスは、返して貰ったらしいプラズマ剣を振るい、此方に歩いて来る。

 

唯野仁成とは相変わらず目をあわせてはくれないが。確かにこれほどの戦士が側にいれば、心強い。

 

もしも、未来を切り開いたらどうするのか。

 

それについては聞かない。

 

いわゆるタイムパラドックスについては問題ないだろう。

 

というのも、人間の遺伝子は、同じ親から産まれても毎回違う混ざり方をして子供になる。

 

この世界で唯野仁成の妹、つまりアレックスの「おばあさま」は既に夫の子を孕んでいる。そのおなかにいる子が、アレックスの親と同じ存在になる事はないだろう。孫ならなおしかり。

 

真田さんも未来から来ているらしいし、タイムパラドックスというものは、結局の所起きえない現象だったのだろう。

 

ならば、アレックスは平和になった世界を甘受する事が出来る。

 

甘受させてやらなければならない。

 

彼女の最も大事な時代を、地獄にしてしまった償いとして、だ。

 

ただそれはそれとして、外に出たらそこからが本番だというのは実際問題としてある。

 

気を付けなければ、世界を蹂躙した未来の自分と同じになってしまう。

 

そうならないようにしつつ。

 

なおかつ、人間の文明にはしっかり手を入れないといけない。

 

難題だが、姫様やライドウ氏はいなくなっても、まだ他の皆がいる。正太郎長官もまだいてくれるようだし、真田さんもいてくれる。

 

それならば、きっとなんとかなる。

 

アレックスがいた未来の唯野仁成には、恐らく対等な存在は誰もいなかったのだ。

 

だから全てがおかしくなった。

 

今度は違う。

 

可能性も、戦闘マシーンになってしまう前に、人間性にたくさんたくさん振り分けることが出来た。

 

それに此処にいる英雄達なら、あの勝てる気がしないメムアレフだって、どうにか出来る筈だ。

 

それならばそれでかまわない。

 

唯野仁成は、絶対に成し遂げてみせる。

 

まるで原初の地球としか言えない場所に歩み出す。同時に、多数のドローンが飛んで行くのが見えた。

 

最初からフルスロットルで回していくつもりだ。恐らく休憩は殆ど取ることが出来ないだろう。

 

黙々と進む。そして、嘆きの胎六層の看守悪魔にも劣らない凶悪な悪魔の群れが姿を見せるが。

 

それらを、唯野仁成は。姫様と、仲魔達と。機動班クルーと、アレックスと一緒に。躊躇なく迎え撃ち、叩き斬った。

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