Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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4、到着

三日が掛かった。信じられないほど長い坂を、何度も人員を入れ替えつつ、必死に降り続け。途中に出る強大な悪魔も、総力戦で排除し続けた。

 

そうして、ようやく底に辿りついた。

 

そこは、静かな場所だった。溶岩の滝もない。ただ、溶岩の河はある。そして、奥にはおぼろげに見えていた。

 

間違いない。此処こそが、メムアレフの寝所だ。

 

凄まじい寝息が聞こえる。涅槃の姿勢を取っているあれは、間違いなくメムアレフだと考えて良いだろう。

 

そして、気配を感じなかった理由が近くに来て分かった。

 

メムアレフの周囲に、古い時代の装置らしいものが幾つも置かれている。恐らくだが、数万年前のものだ。アレがどうやら、メムアレフの存在を中和しているらしい。

 

前に来た者達は、メムアレフを封じてしまおうと判断したのだろうか。

 

しかしながら、それはあくまで気配を遮断するだけに終わってしまった。故にシュバルツバースの拡大はとまらず、世界は一度初期化されてしまったのだろう。あくまで仮説だ。ただ、メムアレフの気配をある程度遮断していることからして、この仮説が正解である可能性は高いだろう。

 

ヒメネスとストーム1が追いついてきた。

 

冷や汗が流れるのが分かる。

 

気配を遮断する装置がまだ動いていると言っても。それでも、この至近距離に来れば嫌でも分かる。

 

冗談抜きに、とんでもない怪物なのだと。

 

明けの明星に見せられたのは、脅しでも何でも無い。間違いなくこのシュバルツバース最強にて。

 

地球そのものの意思。そして地球の力そのもの。

 

それがこのメムアレフだ。

 

この存在を倒すには、それこそ星を砕くほどの力が必要になるはずだ。星間文明級の力がないと不可能だろう。

 

平行世界の唯野仁成は、それを実力でやってしまった、と言う事か。

 

今の唯野仁成は。或いは出来るかもしれないが。やれば平行世界同様、大事なものをあらかた失ってしまうだろう。

 

「此方、唯野仁成。 目標を確認……」

 

「此方アーサー。 ターゲット、メムアレフを此方でも確認。 すぐに作戦の準備に取りかかります。 クルーはその場から離れてください」

 

「了解……」

 

頷くと、すぐにジープに乗って戻る。メムアレフが目覚めるまで、恐らくあまり時間がない。

 

長引かせると、大変な事になるのは確定だ。

 

幸い、途中にいた大物はあらかた駆除した。ライドウ氏も、遊撃しながら背後を突いてきそうな大型悪魔をあらかた退治してくれていたらしい。ケンシロウは、物資を方舟に収束させていた調査班を助けて、悪魔を片っ端から処理していたそうだ。

 

方舟に二時間ほど掛けて戻る。

 

まずは宇宙卵のセッティング。これに関しては、実は既に始めているという。すぐに現地に護衛に行ってほしいという事なので、それぞれのチームを率いて現地に向かう。現地と言っても、既に安全圏になっている場所だ。念のための処置、である。

 

宇宙卵の周囲には、何やら厳重な装置が仕掛けられている。

 

これは、見覚えがある。

 

マーヤーを隠れていた空間から引っ張り出すのに使った、十六の装置。その恐らく強化改造版だ。

 

更に周囲には野戦陣地も作られている。中にはライサンダーZFの小型野戦砲もある様子である。

 

ストーム1が使う所を見たから、此奴の超火力はよく分かっている。多分だが、原子力空母も当たり所によっては一撃撃沈だろう。

 

調査班の護衛に当たる。たまに小物の悪魔が寄ってくるが、すぐに排除する。此処には近寄らせない。

 

メムアレフの方は、ドローンを使って監視を継続。

 

誰かが残って監視するのは危険すぎるからだ。

 

精神を病む可能性もある。これ以上今も眠っているノリスのような犠牲者を出してはいけない。

 

「此方ストーム1班。 第三宇宙卵、処置完了」

 

「此方ヒメネス班。 第二宇宙卵、処理終わったぜ」

 

他は着々と終わってきている。姫様の方は大丈夫だろうかと思ったが、雑念を追い払って警戒を続ける。

 

アレックスには、物資を方舟に回収している調査班とインフラ班の支援をして貰っている。

 

今はこの宇宙卵と関連装置を、がっつり守るのが第一だ。

 

ただ、それにしても遅いと思う。

 

調査班に話しかけてみる。

 

「手間取っているな」

 

「地盤が良くないんです。 今コンクリを打つための装甲車を呼んでいます」

 

「分かった。 護衛はするから急いでくれ」

 

「はい」

 

間もなくアタッチメントをつけた装甲車が来て、超強化コンクリートを打ち込み始める。地盤がよろしくないという地点を重点的に固め。更に地面そのものにも手を入れている様子である。

 

装置の調整を徹底的に行っている調査班。

 

失敗は許されないのだから、まあ当然だろう。宇宙卵は余程強大な力を放っているらしく。まだ野良の悪魔が寄ってくる。それらは、全て唯野仁成がライサンダーで近寄る前に叩き落とした。

 

ほどなくして、装置のチェックを開始する。

 

姫様の方でも手こずっていたようだが、間もなく完了の連絡が来た。艦橋の方では此方の地盤が良くない事は把握している様子で、急かすようなことは言ってこなかった。

 

黙って、調査班を信じて待つ。

 

今までも、ずっと機動班とは違う戦いを続けてくれたクルーだ。無能なわけがない。此処で感情にまかせて罵るようではチームを預かる身としては失格だ。

 

「よし、調整完了! 動作テスト開始!」

 

「全班動作テスト開始!」

 

流石にぶっつけ本番をするつもりはないのか、動作テストも開始する。

 

まあ単体試験も結合試験もやるのが当たり前か。

 

唯野仁成は、無言で様子を見守る。

 

これは調査班の戦いだ。以前は十六の装置を使ってマーヤーを隠れ家から引きずり出したが。今回は、更に強化したらしい装置を六つ円状に配置し、その真ん中に一回り大きい同型装置を置き。その中央の装置の中に宇宙卵を配置するらしい。

 

「エラー検出! 微調整開始!」

 

「了解! 調整実施!」

 

初見で上手く行くはずがない。無言で様子を見守る。時間は流れていくが、それでも待つ。

 

それが今の唯野仁成の仕事だ。

 

そして、三回目の実験が失敗した後。四回目の実験が開始される。途中寄ってくる悪魔は、もれなく射殺して近づけさせない。

 

「よし、リンク確認! 宇宙卵の防衛システムも作動を確認した!」

 

「全クルー、方舟に帰還してください。 八時間の休憩後、メムアレフとの対決に挑みます。 休憩を充分に取ってください。 大規模戦闘が予想されます」

 

今回は、野戦陣地を敷く余裕も無いだろう。

 

ただ、戦う場合は、方舟の全火力を投入し、更に全クルーも出ての大決戦となるのは確定だ。

 

仮に弱体化してもメムアレフはあのプレッシャーである。

 

戦闘力を十分の一に落としたところで、それでも苦戦は免れまい。勝てるには勝てるだろうが。

 

弱気にはなるな。

 

自分に言い聞かせる。精神論は敵だ。だが、此処での弱気は一種の悲観論だ。理論的には勝てる。いつも通りにやれば勝てる。それが事実としてあるのだ。何より真田さんがこんな時にミスをする筈が無い。圧倒的な信頼がある。

 

方舟に戻ると、恐らく最後の休憩を開始する。

 

決戦は、もう間近だ。

 

 

 

(続)




ついに全ての元凶たる大母メムアレフとの接触。

そして解決を図るべく動く英雄達。

メムアレフとの戦いがどうなるか。

その結末は、方舟クルーも当然含む英雄達の手にゆだねられました。
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