Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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全ての計画を掌にのせ

そして今全てを手に入れた豊穣神デメテル。

その圧倒的実力が。

方舟が下すべき最後の壁として、立ちふさがります。


3、最大最後の激突

堕天使さいふぁーは、ぐったりしているメムアレフの側で、十天への至で行われている死闘を見物していた。

 

勿論メムアレフも疲れ果てているが同じく見物を続けている。

 

むしろ楽しんでいるのはメムアレフのようだった。

 

「あの英雄達にしてやられた時は流石に頭に来たが、これは面白い。 あのデメテルめの奸計を見抜くとはやるではないか」

 

「……私は想定外だ。 だが、だからこそ面白い」

 

「流石にシェキナーを超える力をデメテルが入手するとは思わなかったのだろう?」

 

「その通り。 これでは結界を張らせた意味がない。 それに今のデメテルの力、あれは宇宙卵込みのものだ。 しかしあの英雄達であれば……」

 

想定外の事は、幾つもあった。

 

あのアレックスが、平行世界から来た事は分かっていた。それについては調査もしていたからだ。

 

だが、同レベルの調査をデメテルが出来たのは何故だ。

 

ひょっとして、平行世界に残った残留思念が、デメテルに流れ込み。その命運を知らせたのか。

 

それならば、可能性は確かにある。

 

元々デメテルはオリンポス神族の頂点、オリンポス十二神の一席に座する強力な神格である。シェキナーが所詮四文字たる神の残りカスである事は、他の平行世界でも同じだっただろう。それに従う事がアホらしくなり、独自の画策を始めたとしてもおかしくない。

 

また、デメテルが宇宙卵を持っていたのはどうしてか。

 

しばし考えた後、結論が出る。

 

そういうことか。

 

この世界は所詮外から流れ込んでいる人間の思念を元に構成されたのだ。それを知っていたのだとすれば。

 

思念を向けてみる。

 

案の定だ。表層部分にある万の世界の内、半数ほどが空になっている。

 

それらの力がシュバルツバース内側に向かうように、デメテルはかなり早い段階から細工をしていたのだろう。

 

結果それらの世界にいた魔王と配下の悪魔達は消え去り。

 

嘆きの胎に力だけが集まった。

 

結果として起きたのは、嘆きの胎に実る「宇宙卵」の増加。

 

そう、デメテルは。嘆きの胎の囚人達が分割して持っていた宇宙卵の他に。嘆きの胎最深部である六層で。

 

あの英雄達が戦う余波を利用して力を集め。収穫をしていたのだ。

 

文字通りの豊穣神としての力を利用して。

 

恐らくだが、その結果。平行世界の神格達よりも。大母達が強くなっているのではあるまいか。

 

まあ、それでもデメテルにはあまり関係が無かったのだろう。元々豊穣神は弱い神ではないのだから。

 

もう一つ気になる事がある。今更だが、あの英雄達だ。

 

あの英雄達は何故呼ばれた。ライドウについては分かる。あれは世界の危機に応じて来る者だからだ。実際に以前交戦したときも、世界の危機が起きていて。それに対して肉体年齢が今より十年くらい若いライドウが呼ばれたのだ。

 

いや待てそれすらおかしい。

 

シュバルツバースの場合は、世界の危機によって生じるものであり。この場合世界の危機を引き起こしたのは人間だ。だから本来はライドウは来ないはずなのだ。

 

そんなライドウが来た事で、サクナヒメも来た。これも分からない。あの姫は、こんな世界にはもったいなさ過ぎる本当に出来た神だからである。

 

それよりも不可解なのはケンシロウとストーム1である。

 

あの二人ほどの英雄、そうそういるものでもない。春香や正太郎にしても同じである。

 

それに、未来の平行世界からの漂着者であるらしい真田もそうだ。

 

都合良くこれほどの英雄が集まったのは何故だ。

 

仮説を立てるとしたらこうか。

 

アレックスが平行世界の転移を繰り返し続けた結果、平行世界に情報が共有された。その結果、シュバルツバースを単に作り出すだけでは、何の解決にもならない事が分かった。故に、このシュバルツバース以外の何かの機能が、英雄達を集めた。それも、シュバルツバースが出現する何十年も前から。

 

それならば、納得がいく。

 

だがそんな機能は存在するのか。勿論四文字たる神は違う。恐らく、此処にいるメムアレフも違うだろう。

 

だとすれば、誰だ。

 

「誰も関与していない」という可能性がさいふぁーの脳裏に浮かぶ。

 

そうか、そういうことか。アレックスが彼方此方の平行世界を渡り、その危機的状況が平行世界を渡る度に集約された結果。恐らくは、シュバルツバースを発生させるのと同じ、だがメムアレフとは別の地球の意思が。準備を始めたのだ。

 

それは恐らく意思さえ持たないシュバルツバースの構造体か、或いは……。

 

いずれにしても、面白くなってきた。

 

もしもデメテルが勝てば、何もかもが台無しだ。メムアレフもさいふぁーも殺されるだろう。勿論アレックスも殺されるから、以降の世界での平行世界に変化は生じないだろう。地球はシュバルツバースによって初期化されるか。シュバルツバースが無理矢理押し返されて、また人類が資源の浪費を始めるか。その二択だ。

 

だが、それでも面白いと思う。

 

四文字たる神に狂信を誓った連中では、絶対に思いつかないだろう「神以外の可能性」によって。

 

何もかもがひっくり返される。そんな愉快なことは、そうそう無いのだから。

 

 

 

唯野仁成は、デメテルと激戦を繰り広げる姫様を横目に、最前線で戦い続けていた。

 

凄まじい強さの悪魔だらけだ。

 

方舟の速射砲が連射され、既に戦えるクルーは全て出て来ている。装甲車三両も出て来て、ライサンダーZFに換装した主砲で敵を薙ぎ払っているが。

 

恐らく、信仰を失い。

 

勝手に世界からいない事にされた憎悪からなのだろう。

 

悪魔達の戦意は高く、倒されても倒されても湧いてくる。

 

本来、そういった失われた悪魔は。この間見たアンリマンユ或いはアーリマンのように、限定的な存在で人格も失われてしまうのだろうが。

 

此処にいる連中は、明確な憎悪によって動いていて。

 

更にデメテルに洗脳でもされているのか、凄まじい勢いで襲いかかってくる。

 

一体一体も強い。

 

野戦陣地を苦労しながら構築したゴア隊長は、自身も装甲車から身を乗り出してアサルトを連射しながら、指示を出し続ける。

 

「野戦陣地に近づけさせるな! それだけでスペシャル達への援護になる!」

 

「方舟に着弾!」

 

悪魔の群れが、方舟に魔術を多数ぶっ放す。

 

だが、ちょっとやそっとの極大魔術ではびくともしない。

 

それはそうだ。

 

あの方舟は、今までとんでも無い数の悪魔とやりあってきたのである。その装甲は極限まで強化され、宇宙での戦闘にも耐えうるほどだ。

 

本来なら星間文明が運用するような船。

 

それがあの方舟だ。

 

だが、近付かれると厄介だろう。そう思っていたら、ライドウ氏が召喚していたテューポーンが方舟の側に立ち、唸り声を上げて悪魔達を挑発する。なるほど、ある程度は引き受けてくれると言う事か。

 

唯野仁成は、目の前にいる敵に集中する事にする。目の前にいる、巨大な人型。昔の神はシンプルなものばかりだ。人型である事が殆ど。それは、昔の人間の想像力に限界があり。

 

なんでも自分達の似姿にしていたから、という事情もあるのだろう。

 

唯野仁成の剣も、一太刀は確実に受け止めてくる。二合、三合と渡り合い。気合いと共に首を刎ね飛ばすが、それでもしなない。

 

アリスが焼き尽くして、ようやく消し飛ぶ。

 

一体一体がそんな調子だ。他のスペシャル達も苦戦を余儀なくされている。

 

サクナヒメと苛烈な戦いをしているデメテルの周囲は、文字通り空中に生じた巨大なハンドミキサーも同じ。

 

近付くだけで、何もかもが木っ端みじんにされている。

 

サクナヒメもどうやら力を一切合切全部使うつもりのようだ。最後の最後。イレギュラーであるサクナヒメは、ライドウ氏が別世界に戻るときに、同じように戻るしかない。

 

だったら、此処で全てを出し切り。

 

自分が守ってきた人間達のために、最後まで先陣を務める。

 

そのつもりなのであろう。

 

更に襲いかかってくる。今度は二体同時。ゼウスに一体を引き受けて貰い、一体は唯野仁成が巨大なハンマーを振るって襲いかかってくる大柄な男の相手をする。こいつとは切り結ぶ訳にはいかないか。

 

アサルトを浴びせるが、皮膚で弾いて接近して来る巨人。

 

ハンマーの間合いに入られる。

 

大型武器は、初速こそ遅いが。勢いが乗ると鈍重とは程遠い速度を出す。火力も凄まじく、回避も難しい。

 

勝ったと巨人は思ったのだろう。

 

だが。その瞬間、巨人の首が真後ろにへし折られていた。

 

ライサンダーZの至近距離射撃だ。

 

更に足下を、アナーヒターの冷気魔術が凍らせる。

 

とどめとばかりに、唯野仁成が突貫し、首を刎ね飛ばしていた。

 

首が飛んでも、まだ生きている巨人だが。イシュタルが勢いをつけて空中から首を踏みつぶすと、流石に消滅する。

 

呼吸を整えながら、次。

 

苦戦している味方への支援狙撃を何発か入れ、また寄ってきた大型の相手をする。アリスが流石に辛そうにぼやく。

 

「強いよ! 多いよ!」

 

「一神教が存在する前よりいるような信仰の者達だろう。 もう悪魔も神も関係無いし、デメテルが弄くってるだろうから強いのは仕方が無い」

 

「ヒトナリおじさん、本当にすごいなー。 この状況でも淡々としてる。 焦るとかないの?」

 

「俺だって焦る。 だが今はそんな場合では無い」

 

突撃してきた槍使い。槍を投擲しようと踏み込むが、即座に反応する。

 

投げ槍というのは、弓矢が発達する前にもっとも強大だった飛び道具だ。クロマニヨン人が最強だったのは投げ槍が原因だったという説がある。とはいっても、現在の人類とクロマニヨン人に実際の血縁は無いという説もあるので、何とも言えない。いずれにしても、古代では投げ槍が使われ、それが大きな威力を持っていたことは事実。古い神話には、投げ槍を使う神格や英雄が多いのもそれが理由だ。

 

あれはメイビーを狙っている。回復に全力で集中しているメイビーも、マリアも間に合わない。

 

唯野仁成は瞬歩で接近すると、槍を投擲しようとしていた大男の眼前に。

 

思いっきり頭突きを叩き込む。

 

槍を投げ込むときにどうしても頭が動作の一部に入る事は、クーフーリンを見ていて理解していた。

 

だから、その動作を邪魔してやればいい。

 

流石に互いに弾き会ったが、こんな程度で引くわけには行かない。

 

相手も殆ど同時に立ち直るが、一瞬だけ唯野仁成が早い。

 

顎から跳ね上げるようにして、頭を逆唐竹にたたき割る。

 

槍を投げようとしていた奴は、それで蹈鞴を踏み。アリスの火焔魔術で全身を焼かれたが。

 

それでも死なず、全身を膨れあがらせて形態を変えようとする。

 

だが、形態変化する前に、唯野仁成は剣を鞘に収め。踏み込むと同時に剣を抜きはなっていた。

 

初撃で動きを止め。

 

その後、百十四の斬撃を秒で叩き込む。

 

流石にこれではひとたまりもなく。やり投げの悪魔は消えていった。

 

次。

 

前線で苦戦しているブレアを支援狙撃で援護。アンソニーを支援狙撃で援護。歩きながら、更に援護。徐々に姫様に近付いていく。

 

ヒメネスがいつの間にか近くにいた。

 

インドラジットが腕の半数ほどを失っていて、スルトもかなり傷ついている。だが、ヒメネスは苛烈に笑っていた。

 

「くっそ、楽しいな畜生!」

 

「姫様を支援する」

 

「ああ、分かってる! ……て、また変なのが来やがったな!」

 

見れば分かる事を敢えて言うのは、恐らくヒメネスなりに鼓舞しているからなのだろう。

 

何だか巨大な蜥蜴のようだが、大きさが尋常では無い。まるで恐竜だ。

 

そういえば、オーストラリアには過去いわゆるコモドドラゴンよりも更に大型の蜥蜴が存在していて。

 

今でも目撃例が絶えないという話が聞いている。

 

オーストラリアに最初に上陸した人類が目撃したかは分からないが。

 

目撃したのだとしたら、とんでも無い脅威に映っただろう。

 

雄叫びを上げると、突貫してくる超大型蜥蜴。

 

恐竜のように足が下に出ているが。これはもう、伝承が失われた上に。現在の恐竜に対する人類の知識が混ざっているからなのだろう。そして恐竜と同じ体型だから、動きがとにかく速い。

 

鋭いのこぎりのような牙をむき出しに、突貫してきて。

 

そして、前に出たインドラジットにかぶりついた。

 

インドラジットが押される。

 

「かまわん! 余ごと討ち滅ぼせ!」

 

「すまんインドラジット!」

 

大剣を振るうヒメネスと、同時に恐竜もどきに斬りかかるが、表皮が硬すぎる。

 

今まで多数の悪魔を切り裂いてきた実績のある剣も、更に火力が出る筈のヒメネスの大剣も通らない。

 

インドラジットが片膝を突く。えげつない顎の力が、ぎりぎりとインドラジットの体を潰して行く。

 

ティラノサウルスの顎の力は、どれだけ弱く見積もっても地上の生物では歴史上最強クラスだった事が分かっている。それと同格だとしたら、インドラジットでも危ない。

 

「スルト!」

 

「……やむを得んっ!」

 

スルトが、炎の剣を天に掲げる。更に、アリスもそれを見て、詠唱を放棄。現時点でぶっ放せる最大火力の魔術を展開。

 

其所に、対戦相手をねじ伏せたゼウスも加勢。

 

最大火力のケラウノスを叩き込んでいた。

 

インドラジットごと、文字通り世界を焼き滅ぼす炎が二連続叩き込まれ。更に神々をも焼き殺す稲妻が走る。

 

蜥蜴がインドラジットから口を離し、絶叫。

 

そこに、至近距離から息を合わせて、ヒメネスと同時にライサンダーZを叩き込む。勿論狙いは口の中。

 

口の中から、脳をぶち抜かれた恐竜もどきは悲鳴を上げながら、後ろに下がるが。其所に、ストーム1からの援護らしいライサンダーZFの狙撃が更に追加。恐竜もどきはもはや声さえ上げず、横倒しになって倒れた。

 

同時に、インドラジットをPCにヒメネスが戻す。呼吸を整えながら、ヒメネスは凄惨に笑った。

 

「これ以上は前線は無理だな。 少し下がって支援に徹する」

 

「ああ、後は任せろ」

 

「任せるぜ」

 

ヒメネスはライサンダーZをぶっ放しながら下がる。

 

ずっとマリアの広域回復魔術が作用しているはずなのに、既に味方は満身創痍の者ばかりである。

 

ストーム1はクーフーリンとジャンヌダルクを盾に、殆ど単独で一方向の敵に対する壁になってくれている。これで支援までしてくれているのだから凄まじい。

 

ケンシロウは瞬歩でやられそうな味方の所に行っては救援を続け。

 

ライドウ氏は、次々に悪魔を繰り出しては、前線の確保に必死だ。

 

他の一線級クルー達も、それぞれ大型の悪魔と必死に戦い、それぞれ敵を引きつけてくれている。

 

唯野仁成は深呼吸すると、更に前に進む。もう少しで、姫様とデメテルの戦線に突入する。

 

不意に、危険を察知して下がる。

 

地面から、突然巨大な顔が飛び出してきて。唯野仁成がいた地点をばくりと喰らっていた。

 

そのまま、横顔にライサンダーZのゼロ距離射撃を浴びせるが。ゆっくり地面から這い出てきたそれは、此方を向く。

 

顔が口だけという、凄まじい異形だ。

 

デメテルと一瞬だけ目があった。笑っている。

 

近づいて来た奴を喰らうように仕掛けておいたトラップと言う事か。引っ掛からなくて残念と、それでも視線には余裕があった。

 

奮起。

 

此奴も、もう伝承は存在しない悪魔だろう。弱点なんか分かりっこない。とにかく、突破するしかない。

 

方舟は。フュージョンブラスターの第三射はまだ撃てない。というよりも、恐らくあれは。

 

頷くと、顔に口しかない悪魔に、一斉攻撃を浴びせる。炎、氷、雷撃、風。現在一通り撃てる悪魔が手元にいる。

 

どれも効き目が薄く、顔が口だけの悪魔はわめき散らしながら、手を振るって周囲を薙ぎ払う。

 

その時、天より極太の雷が叩き込まれる。

 

ライドウ氏が召喚したバアルによる支援射撃だ。流石にそれには、顔が口だけの悪魔も竿立ちになった。

 

一瞬とまる。それだけで、今の唯野仁成には、相手を何度も殺せる手札が揃ってきている。

 

瞬時に百を超える斬撃を叩き込んでやる。手足が抉り取られ、巨人が絶叫。なるほど此奴、皮膚は硬いが突破さえされれば再生は出来ないのか。

 

何が神格化された存在なのだろう。

 

何となくだが、誰かが作ったただの落とし穴が。間違って人を死なせてしまい。大慌てした人間達が、地面が人を喰らったのだとかいう情報が頭に流れてきた。まあ、古代には、とてもではないがあり得ないような出来事から神格化が起きる事があったらしいという話だし。

 

断末魔の此奴が垂れ流した情報は、あながち嘘では無いのかも知れない。

 

踏み込むと、ゼウスがアダマスの鎌を振るう。

 

そして、斜めに切り裂かれた顔が口だけの巨人は、光になって消えていった。

 

呼吸を整える。あと少しだ。あんな罠を仕掛けていたと言う事は、デメテルにももう手札がないことを意味する。

 

アリスが側に来ると、イシュタルと共に頷いて、唯野仁成に全力での回復魔術を掛け始める。

 

「まてアリス。 もう力が残り少ないだろう」

 

「ヒトナリおじさん気付いていない?」

 

「今、もう戦えるのはゼウスと貴方だけよ。 私達、これですっからかん」

 

アナーヒターも来て、回復魔術を掛け始める。

 

ゼウスはじっと黙り込んだまま、側に歩いて来た。

 

ゼウスは多少傷ついているが、まだやれそうだ。イシュタルとアナーヒターは、PCに引っ込む。

 

そして、アリスは満足そうに頷いていた。

 

「しばらくは私、ヒトナリおじさんと一緒にいるよ。 全盛期のライドウお兄ちゃんと一緒に戦っているときと同じくらい今回の奇妙な旅は面白かった」

 

「アリス!」

 

「大丈夫。 ただちょっと力使いすぎたかな。 数日は起きてこられないと思う。 起きて来たら、うんとアイスと飴食べたい」

 

「ああ、約束だ」

 

アリスがPCに引っ込む。

 

全快とはいかない。だが、今あのサクナヒメとデメテルの周囲に発生している凄まじい戦闘の中に入っていって支援が出来るのは、もう唯野仁成とゼウスだけ。そして、ゼウスは頷いた。

 

捨て石になってくれる、ということである。

 

ここで、決める。

 

唯野仁成は、決意をすると、前に踏み出す。勝負は恐らく一瞬になる。

 

ゼウスとサクナヒメなら、絶対に決めてくれる。

 

いや、まだ一手足りない。そう思った瞬間、側に降り立ったのはアレックスだった。

 

アレックスも、手持ちの悪魔全てを失っている。

 

だが、これで恐らく、手札は揃った。

 

「私も行くわ」

 

「……よし。 勝負は一瞬で決まる。 仕掛けるぞ!」

 

皆で切り開いた道だ。

 

最後の壁となったデメテルに向け、突貫を開始。最後の、最強の敵が。まだ無事でそこにいる。




唯野仁成とアレックスが。

絶対に相容れなかった二つの可能性が。

今、二人で。

最後の可能性を掴むため、跳びます。
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