Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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果てまでましろきその世界で。

最後の光が瞬きます。

決着です。


4、決着

見える。

 

デメテルが、サクナヒメと手刀で戦っている。シェキナーの力を完全に取り込み、地球の内部熱量に匹敵する宇宙卵の熱量をも体内に取り込んだデメテルは。どんな神話の主神をも超える力を持っている様子だ。

 

どちらも幼い姿だが、その戦闘力はもはや絶大。

 

秒間数百に達する攻防を繰り広げながら、一歩も引かない。

 

サクナヒメはそれでも何か切り札を隠しているとみた。唯野仁成は、アレックスとゼウスと突貫しながら、全てを冷静に分析していた。

 

サクナヒメが飛び下がる。

 

デメテルがぶっ放したのだ。恐らく、シェキナーが使った消滅の声を、である。

 

だがその消滅の声を、横殴りにケラウノスがデメテルを張り倒すことでかき消す。デメテルはわずかに弾かれたが、隙は見せない。

 

「ゼウス……!」

 

「行くぞ姉上!」

 

「この不肖の弟がぁ!」

 

絶叫とともに、手を上空に掲げるデメテル。サクナヒメも勿論間髪入れずに仕掛けるが、それをもう片方の手でいなしてみせる。

 

上空に出現したのは、一本の槍。

 

多数の攻撃など必要ない。傷ついたゼウスを倒すには、一本の槍で十分という事なのだろう。

 

恐らくオーディンの使うグングニルと同等だろう槍が、ゼウスに投擲される。その瞬間、その槍を横から弾いていたものがある。

 

グングニルだ。前線にまで出て来ていたオーディンが、自分が倒されることも意に介さず投擲したものだった。

 

わずかに槍がそれるが、それでもゼウスの腹を貫通し、地面に縫い止めるには充分である。

 

しかし。

 

その瞬間、ゼウスの影から、唯野仁成とアレックスが躍り出る。

 

アレックスが拳銃を乱射。舌打ちしながら、壁を作るデメテル。片手はサクナヒメの怒濤の猛攻に対応しなければならない。

 

何か呟くデメテル。

 

「バディ、避けろ!」

 

「もう遅い!」

 

デメテルの勝ち誇った声と共に、ゼウスごと周囲が灼熱の炎に包み込まれ、一瞬で焼き払われる。

 

だが、それを見越していた。

 

広域攻撃で、唯野仁成とアレックスごと潰しに来ると分かっていたのだ。

 

唯野仁成が、剣を鞘に収めていたことは。ゼウスにもアレックスにも見えていたはずだ。

 

抜き打ち一閃。

 

炎の一撃を、消し飛ばす。

 

ゼウスまでは守れない。ゼウス、ありがとう。気を引いてくれて。そう呟きながら、唯野仁成の代わりに、アレックスが至近に突貫。

 

光の剣で、デメテルに斬りかかる。もう片方の手を使って、それでも余裕でサクナヒメとアレックスを同時に相手するデメテル。

 

「貴方たちの言葉で言うと、ギアを上げていきますわよ……!」

 

両手で、サクナヒメとアレックスを同時に弾き飛ばすデメテル。

 

分かっている。シェキナーを取り込んだ以上、この程度の筈が無い。デメテルがまだ本気ではなかっただろう事くらいは理解している。

 

其所に、唯野仁成が接近。

 

大上段から、一撃を降り下ろす。

 

白刃取りするデメテル。

 

だが、その時には剣から手を離していた唯野仁成は、ライサンダーZを叩き込む。それも、ふっと息を吐くだけで、弾丸を消し飛ばすデメテル。

 

だが、側頭部を張り倒される。

 

ストーム1による狙撃が、モロに入ったのだ。戦況を見て、一瞬でライサンダーZFをぶっ放したのである。

 

すっ飛んで戻って来たアレックスと共に、気合いを入れてデメテルに蹴りを叩き込む。流石にこれは防げず、ふっとぶデメテル。

 

それをサクナヒメの羽衣が拘束、上空へと投げ上げていた。

 

「今更私を上空に投げ上げたところで……」

 

だまりこむデメテル。

 

気付いたのだろう。方舟が、完璧なタイミングで対応し。まさに、全力での主砲発射態勢に入っていたことを。

 

「エネルギー充填120%!」

 

「任せます正太郎長官!」

 

「良し! 主砲、発射!」

 

ライサンダーが神殺しの光の槍なら。

 

フュージョンブラスターは。特に方舟が主動力、補助動力をも動員して使うこのフュージョンブラスターは。

 

文字通り、星をも貫く破壊の権化だ。

 

流石に絶句したデメテルを、空間すら転移する動力をフル活用した方舟の主砲が蹂躙する。

 

極限の最大熱量に灼かれたデメテルは、恐らくシェキナーの力の全てを使って、それを防いだのだろう。

 

空中で、呼吸を必死に整えるデメテル。全身が焼け焦げ、回復している余裕すらなさそうである。

 

地球に対してぶっ放したら、文字通りマントル層まで貫くだろうあの一撃を耐え抜いただけでも凄い。

 

だが、その時には。既に動けないアレックスを地面に残し。唯野仁成が、至近にいた。

 

剣が、デメテルを貫く。

 

凄まじい絶叫を上げるデメテル。そのデメテルを蹴って、唯野仁成は離れる。巻き込まれるのを避ける為だ。

 

唯野仁成とアレックスを抱えて、瞬歩でここに来たケンシロウが飛び退く。

 

見える。

 

全ての力を解放したサクナヒメが、そこにいた。

 

「目覚めよタマ爺。 いや、ヤナト最強の神剣、星魂剣!」

 

「おひい様。 ヤナトでは無い此処では一度だけしか出来ませぬぞ!」

 

「ああ、その一度のために、此処まであのデメテルに対して力を温存したのだ!」

 

剣が喋る。

 

なるほど、人格を持つ剣、いや剣が神そのものなのか。

 

要するに召喚されたのはサクナヒメだけだったのではない。もう一柱、召喚されていたのだ。

 

サクナヒメと最も関係が深い、剣そのものの神格が。

 

サクナヒメの全身が青白く輝いている。大上段に構えを取る。もはや腹に剣を突き刺され、更にフュージョンブラスターに貫かれ。身動きが取れずにいるデメテル。だが、それもまだ宇宙卵の力が残っている。

 

慈悲を掛ける事など、ない。

 

デメテルは、静かに笑う。

 

負けを悟ったらしい。だが、その負けにも、悔いは無い様子だった。最後の最後でゼウスに報復は出来たし。

 

何より、今まで自分達を見下し、好き勝手の限りを尽くしていた四文字の神の一部に対して。

 

文字通りの、手痛いしっぺ返しをする事が出来たのだから。

 

「ふるべゆらゆらふるべゆらゆら……全てを打ち砕け、星魂剣!」

 

サクナヒメが、渾身の一撃を虚空に放つ。

 

フュージョンブラスターと同等か、それ以上の火力が解放された。

 

サクナヒメの真の切り札。それは、文字通りデメテルを宇宙卵ごと完膚無きまでに焼き払い。

 

そして、デメテルが召喚した、嘆きの胎の看守だっただろう悪魔達も一瞬にして打ち砕き。

 

全てを消し払っていた。

 

サクナヒメが片膝を突く。全ての力を使い切ったのは明白だった。熱量が凄まじすぎる。だが、唯野仁成は、駆け寄らざるを得なかった。

 

「……案ずるな。 ライドウもろとも、シュバルツバースを出るまでくらいは現界しておるだろう。 それより今のでこの世界における全ての戦闘に廻せる力を使い切った。 歩くのもつらい。 肩くらい貸せ」

 

「体格差があるから無理がありますよ」

 

「プリンセス」

 

熱をものともせず、ここに来たのはゼレーニンも同じだ。ガブリエルを駆って、ずっと守りに徹していてくれたのは見ていた。何人もゼレーニンはガブリエルと共に救い守った。平行世界の未来とは違って。

 

ゼレーニンがサクナヒメを背負う。サクナヒメは、大きくため息をついた。

 

「背負われるような年ではないのだがな」

 

「貴方は一神教の神とは違いますが、それでも本物の神です。 でも、人とともにあるというのなら、たまにはこうやって人をお頼りください」

 

「……そうするとしようか。 わしと共に暮らしていた人間達も、そうして時々わしを助けてくれたな」

 

撤収。

 

ゴア隊長が、負傷者の収容と撤退を急がせる。

 

真田さんの装置がいつまでメムアレフに効いているか分からない。それに、である。

 

ひょいと唯野仁成の側に姿を見せる霊体化したデメテル。

 

ぎょっとしたが、もう戦う力は無い様子だった。

 

「負けましたわ、唯野仁成。 ゼウスに貴方を好き勝手させるのは面白くない。 以降、私もついていきますわよ。 シェキナーの力も宇宙卵、いや実りの力も失ってしまいましたけれど」

 

「要は契約して俺の手持ちになると言うことか」

 

「そういう事」

 

「おいおい、大丈夫かよ……」

 

呆れた様子のヒメネスが側で見ているが、唯野仁成は大きくため息をついていた。

 

こいつを野放しにする方が余程危険だ。それに、此奴を御せるのは多分クルーの中ではライドウ氏と唯野仁成しかいない。

 

平行世界の事も知っている此奴が、多分明けの明星をも超えるこの世界の最大危険悪魔だ。霊体化してすぐに戻ってこられると言うことは、放置しておけば何をしでかすか分からない。

 

「分かった、契約を受け入れる。 悪魔召喚プログラムに沿って、だがな」

 

「ふふ、面白い。 これでゼウスをいつでも好きなだけしばき倒せますわね」

 

「……唯野仁成よ、多分後悔するぞ」

 

「俺も同意だ。 最悪のヤベー女を抱え込んじまったな」

 

げんなりするPC内のゼウスと、唯野仁成の側で呆れているヒメネス。周囲では、撤収の準備が着々と進んでいる。

 

アレックスは、先に医療班が医療室に運んでいた様子だ。一人にしてほしいと言われたので、そうする。

 

恐らく、気持ちを整理する時間が必要だろう。

 

戦力を確認。

 

方舟はかなり被弾したが、継戦は可能。ライドウ氏は手持ちを暴れさせる過程で、殆どマッカを使い果たしてしまった。それどころか、方舟に備蓄していたマッカもほぼ使い切ったらしい。

 

機動班クルーも、またすぐに戦わせることが出来る悪魔は半数もいない。マッカそのものは動力炉のエネルギーを利用して時間を掛けて作り出せるらしいが、すぐにはこれでは戦えない。

 

先ほど倒した悪魔の大軍のマッカも集めたが、それでも足りないらしい。

 

ストーム1とケンシロウはほぼ無事。二人は全く問題なく戦える。

 

だが主力であるサクナヒメは、切り札を使い、もう戦闘は無理と本人が明言。ライドウ氏も悪魔召喚が使えない以上、腕利きの戦士以上でも以下でもなくなった。唯野仁成とヒメネスは、何とかやれる。

 

戦力は要するに半減しているが。死者は出さなかった。それだけで充分だろう。

 

艦橋で軽くミーティングをしたあと、撤収完了。擱座した野戦砲なども全て回収。流石に鉛玉までは回収出来なかったが、それは仕方が無い。

 

スキップドライブの準備を始める。

 

後は正式に、メムアレフと契約を交わしたあと。

 

地球に戻る。

 

地球に戻った後が一番大変だが。それよりも、まずはしっかりメムアレフとの契約を見届けなければならない。

 

やることはまだまだある。

 

最後の戦いは終わったが。

 

まだ、全てが終わった訳ではないのだ。

 

 

 

(続)




英雄達の最後の戦い。
その結末の果てに何が待つのか。

次回、結末です。
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