和解すべきものとは和解し。
そして英雄達の奇妙な旅が終わろうとしています。
序、約束を果たす
全ての作業が終わった。唯野仁成はそれを見届けると、方舟に戻る。
そして外装を多少やられていても、航行には全く問題ない方舟が動き出す。
浮き上がり、空間の穴へ。
ホロロジウム最深部へのスキップドライブである。
スキップドライブを終え、ホロロジウム最深部。つまりメムアレフの元に戻る。明けの明星も一緒にいる。油断だけはするなと、正太郎長官に言われた。
一応動力炉は無事。メインもサブもである。
更にフュージョンブラスターの主砲もまだ撃てる。一回撃つだけで融解していた初回から、随分改良を重ねているらしい。
流石は真田さんである。この短時間に、よくも此処まで強化したものだ。
物資搬入口を開くと降りる。
また拍手をする明けの明星。
お前がもう少ししっかり処置をしておけば、あんな苦労はしなかったんだが。そう唯野仁成は思ったが。
その言葉は敢えて飲み込む。此処で、明けの明星に文句を言っても仕方が無いと判断したからである。
「お見事英雄達。 私が見てきた中でも、アルゴー号の英雄達を超える英雄部隊は貴方たちしかいません」
「それはまた、大げさな話だな」
「いえいえ、本当ですよ」
ライドウ氏の言葉に、肩をすくめる明けの明星。
アルゴー号の現物を明けの明星が見たとは思えないから、多分その伝承に出てくる人間や半神の情報を確認しての言葉なのだろう。
サクナヒメが戦闘力を残していないことも見越しているようだが。
それでも、明けの明星は顎をしゃくり。そして、胡座を掻きなおしたメムアレフが咳払いをした。
「それでは、契約通り動こう」
「……かまわないのだな」
唯野仁成が前に出て聞くと、メムアレフは頷く。
この巨神は地球の意思だ。大母などと言う括りでもなく。神と言う存在をも超越している。
だからこそ、なのだろう。
人間の影響で混沌に傾いたとしても。
嘘をつく気はない、と言う事だ。
「宇宙卵……デメテルが実りと呼んでいたあれがまだ残っているな。 それらはどうするつもりだ」
「……真田さん?」
「これほどの高エネルギー体、回収し此方で厳重に保管させてもらう。 それに其方が約束を違えた場合の切り札にもなる」
「なるほど、確かにその通りですね。 ということだ、申し訳ないが……」
真田さんの言葉を、唯野仁成はそのまま伝える。
メムアレフは苦笑していた。
「確かにそれもその通りだ。 ただ、人間の邪悪さはそなた達が知っての通りだ。 くれぐれも油断はするな。 もしもそなたらが失敗した場合は……シェキナーやその力すら取り込んだデメテルすらも打倒したそなたらなら大丈夫だとは思うが、それでも努々気を抜くでないぞ」
「分かっている。 偉大なる大母。 それでは、ホロロジウムに残した物資を全て回収した後撤収する」
「うむ……既にシュバルツバースは収縮を開始させている。 急ぐように」
メムアレフが、宇宙卵の装置を回収した途端に反撃に出てくる可能性もあるが。
はっきりいって、宇宙卵の装置を残したまま残る方が危険だ。
そのまま回収作業を開始する。
既にホロロジウムに悪魔の姿はない。
明けの明星が、にこりと微笑んだ。多分だが、ホロロジウムに面白がって寄ってきた悪魔を。明けの明星と配下の精鋭が片付けてしまったのだろう。
それだけは、感謝しなければならない。
急いだので、数時間で回収作業は終わる。
その間確認したが、シュバルツバースの縮小はどんどん進んでいるそうだ。メムアレフは恐らくだが、もたついていたら方舟ごとシュバルツバースを消滅させる気かも知れない。まあ、そういう不思議な考えの持ち主だ。
唯野仁成も、回収作業に立ち会う。
相手が翻意した場合のリスクを考えると、どうしてもそれはやらざるを得ないからだ。
野戦陣地やプラントも全て回収して、そしてようやく作業は終わった。
クルー全員も回収し。点呼後、物資搬入口を閉じる。
メムアレフが、方舟の艦橋に通信を送ってきた。
方舟を見た事によって、それくらいは可能になったと言うことなのだろう。技術に即座に適応するのは流石である。
「それではさらばだ英雄達。 お前達がバニシングポイントと呼ぶ穴につけた蓋は外しておいた。 私はずっと地上を見ている。 場合によっては相応の措置をする。 くれぐれも、二度とシュバルツバースとそなたらが呼ぶこの深淵を発生させるでないぞ」
「分かっているメムアレフ、いや地球そのもの」
「ああ。 それでは征くが良い」
スキップドライブを開始。
まず転移する先は、エリダヌスである。此処にバニシングポイントがあるからだ。
エリダヌスでウロボロスと戦ったのが、つい先日に思える。エリダヌスからは、秩序陣営の悪魔も混沌陣営の悪魔も撤退を開始していた。それはそうだろう。シュバルツバースが終わる事は、理解したのだろうから。
皆、一斉にバニシングポイントに向かっている。それぞれ天界やら魔界やらに帰るのだろう。
兵士である唯野仁成だが。無駄な殺し合いを肯定するような思考は持っていない。無駄に来て、無駄に戦っただけだったなと、唯野仁成はぼやく。
そういえばマンセマットはともかく、カマエルやサリエルはまた天界で復活するのだろうか。だとしたら、更に席が狭くなるのだろうなとも思う。
残しておいたライトニングと接続。牽引しながら、浮上を開始する。ライトニングを牽引するくらい、方舟には難しく無い。吊すように牽引することになるが、まあ中には物資が詰め込まれているくらいだ。
人がいないのだから、別にそれはかまわないだろう。
シュバルツバースに来る前にジャック部隊は全滅していたようだし、此処で死んだのはジャックだけだった。或いはあのジャックも、既にここに来た時には死んでいたのかも知れない。
そう唯野仁成は思うと、やりきれないと感じた。
ライトニングもすっかり旧式船だが、これだけの物資は再利用のしようもあろう。
持ち帰る事に損は無い。
更に、過剰積載気味だった物資の一部はライトニングに移した。これらの物資を運ぶキャリアとしての役割だけはある。
乗り込んだ人間が全部マグネタイト化されてマンセマット達のエサにされてしまった呪われた船だが。
船そのものに罪はないのだ。
こうして最後まできちんと利用してやるのが、船のためでもあるだろう。
スキップドライブの直前、最後にもう一回春香による点呼が行われる。ノリスの分は、医療室にいたゼレーニンが読み上げた。
ノリスは、まだ目覚めない。
ただゾイによると、状況が悪化している様子もないという。恐らく、数年以内には目覚めるだろう、と言う事だった。
最後にサクナヒメが呼ばれた。
これも、最初と同じだ。
少なくとも、シュバルツバースを出るまではいてくれる。
この過酷な世界で。最初から最後まで、武神としての誇りを胸に、なおかつ人間と生きる事を考え。常に最前線で、神域の武を振るってくれた文字通りの守護神。
サクナヒメは最初嫌疑の目で見られていた。
だが今では、サクナヒメの名前が呼ばれたときに、敬礼するクルーが多かった。
まあ、当然だろう。
その後、ゲストとしてアレックスが呼ばれた。アレックスも顔を上げて、はいとだけ点呼に応じていた。ぶっきらぼうに、ではあるが。
そして、全ての準備が終わって。
スキップドライブが開始される。
もはやすっからかんになったエリダヌスから、バニシングポイントに浮き上がりながら入り込む。
加速。
量子のゆらぎを完全解析した上、もはや壁も存在していない。
これについては、念のために真田さんが解析を終えてくれていた。大丈夫。メムアレフは約束を守ったのだ。
スキップドライブが始まる。
呪われた深淵の土地。いや、浄化をするためのロードローラー。神をも超える地球の意思が住まう闇の穴。
何でも良い。
アレックスがいた平行世界では、突入時点で戦力の八割が失われ。生還したのは二十人程度しかいなかったという地獄から。
方舟、レインボウノアは。
誰一人欠員を出すこと無く。スキップドライブで加速し。
脱出していた。
一瞬後、空の上に出る。
牽引していたライトニングをぶら下げたまま、周囲の様子を急いでマクリアリーが確認する。
ムッチーノは通信を入れている。
国際再建機構に、である。
「外部のデータ確認! シュバルツバースの急速収束を確認! 既に南極大陸の半分ほどにまで収束しています!」
「こちら通信班! 国際再建機構本部と通信がつながりました! 重力子通信でなく、通常の電波通信です!」
わっと声が上がる。
ついに、外に出た。それを、誰もが悟ったのである。そして、ライトニングをぶら下げたまま、ゆっくり方舟は南極の圏外に向かう。急ぐ必要はない。というよりも、シュバルツバースの消滅を見届けなければならないからである。
通信に入り込んで来たのは、留守居組と各国の首脳である。
各国首脳が青ざめているのは、まあ無理もないだろう。
重力子通信で、重要な話はしていたのだろうから。
メムアレフの正体や、どういう契約を済ませたのか。全ては既に知っているはずだ。既得権益層の中でも、世界の1%。世界の富の大半を掌握している一部富裕層に支持を受けて政権を維持している者もいる。
それらをこれから潰さなければならないことは、彼らも分かっているのだろうから。
「此方はレインボウノア。 総指揮官ゴア隊長」
「ゴア君、戻ったか……」
「はい。 誰一人死なせず、戻る事に成功しました。 クルーの欠員はおりません」
わっともう一度声が上がる。
文字通り、感極まって泣き出すクルーもいるようだった。それはそうだろう。何しろ、人跡未踏の地からの生還なのだ。
「残念ながら、後から入り込んだライトニングは、既に知らせているとおりシュバルツバースに入り込んだ頃には乗員は全て殺されていた様子です」
「財団については、首脳部が既に殺されていたのは既に報道済だ。 生き残った幹部達も既に身柄を抑えている」
「しかしながら、これから更に忙しくなります」
「分かっている……」
米国大統領が冷や汗を掻いている。
方舟が外に出たことで、シュバルツバースの縮小が更に加速した様子だ。マクリアリーが驚きの声を上げる。
「シュバルツバースが、加速度的に小さくなっています! もう三十分も消滅には掛からないかと思われます!」
「世界中の核を叩き込んでも破壊は無理だっただろうシュバルツバースが……」
「見てください!」
おののきの声。
南極の各地に大量に捨てられていた廃棄物が、綺麗になくなっている。
南極には、文字通りの無法地帯を良い事に好き勝手にゴミが捨てられていて。それが国際問題になっていたのだが。それも綺麗さっぱり消えていた。
それだけではない。
異常気象で数を著しく減らしていたペンギンの何種かが、数を取り戻している様子である。
これは恐らくだが、南極だけは完全に環境の白紙化が行われたと言う事だろう。
現在は、実の所地球の歴史的には「氷河期」に当たる。
時代によっては、南極にも普通に植物が生え、豊かな生態系があったのだ。
だが流石にシュバルツバースも其所まではするつもりはなかったのだろう。
また、残念ながら各国の南極基地もまた存在しなかった。
こればかりは、どうしようも無いと言う事だ。
シュバルツバースに入ってからは、方舟の英雄達が対応した。だが入る前までは、どうにも出来なかったのだから。
「南極の生態系、回復を確認。 滅亡したとされる生物も何種かいるようです」
「これが……シュバルツバースの力なのか」
米国大統領のおののきの声が聞こえる。
まさか軍事利用を目論んでいるんではあるまいなと、唯野仁成は邪推したが。あのメムアレフは、そんな事をされるほど甘い相手ではない。
シュバルツバースが消滅するまで、このまま浮遊して状況を見る。
マクリアリーの言葉通り。シュバルツバースは最後は最初に現れた時のような、空に伸びる黒い光の柱と化し。それも消えると。完全に反応は消失していた。
シュバルツバース、完全消滅を確認。
その言葉と同時に、アレックスが顔を覆っていた。
彼女の身柄は、そのまま世間に晒すわけにはいかない。何しろ未来人である。国際再建機構で身柄を預かるしかない。
だが、ジョージという偉大なAIや、未来情報の提供者でもある。
そして何より正太郎長官が睨みを利かせている国際再建機構である。
好き勝手はさせない。
「これより国際再建機構本部に凱旋します」
ゴア隊長の声と共に、国際再建機構の留守居組は立ち上がって拍手。
不嫌嫌そうに、各国の首脳部の者達も拍手をしていた。
そう、これにて。
奇妙な旅は、文字通り終わりを告げるのだ。
ただ、方舟が国際再建機構本部に辿りつくまでが旅でもある。途中で何処かの軍が仕掛けてくる可能性も、低確率ながらある。
唯野仁成は、外から入ってくる情報を、デモニカの情報端末で見る。
南米アフリカそれぞれの南端に集結していた米軍をはじめとする多国籍軍と、国際再建機構の部隊は撤退を開始。
それに対して、不審そうに様子を見ていた住民達は、胸をなで下ろしているようだった。
ただ、現地の犯罪者は容赦なく国際再建機構が取り締まるという話もして。それでかなりの数の犯罪者が捕まったらしい。
まあ、これは行きがけの駄賃と言う事だ。
同時に、今までマスコミの報道を押さえ込んでいた国際再建機構が、シュバルツバースの情報を解禁。
危うく世界が滅び掛ける所だった事を、世界の人々は知ったのである。
しかしシュバルツバースに乗り込み。
シュバルツバースを消滅させた英雄達が帰ってくると言う話については、まだ伏せられていた。
情報を流すには順番を踏む必要がある。
いきなり膨大な情報を流しても、混乱するだけだろうからだ。
ただでさえマスコミの無能さは現在世界的に普遍化している。
国際再建機構の報道官が最初に報道して、それからマスコミが追随して放送するという形になった様子だが。
こんな時でも、テレビやラジオなどの視聴率は往事に到底及ばなかった様子だ。
まあ、散々不義理を働いたのだから無理もない。
方舟は改良を重ねまくった結果、その気になれば国際再建機構本部にそのままスキップドライブすることも可能、という事だったが。
それでも凱旋は、船として海上で行く。
曳航されているライトニングは哀れ極まりない姿だったが。この中にも貴重な物資が山と搭載されているのだ。
唯野仁成が艦橋に呼ばれたので、出向く。
二日ほどで国際再建機構の本部にほど近い、出港した港の近海に着くそうだが。
それまでにも、やるべき事はあると言うことだ。
まず、サクナヒメがかなり弱っているのが一目で分かった。
もうこればかりは、どうしようもないだろう。姫様は、肩をすくめてみせる。明らかに力が落ちているのが、今の唯野仁成には分かった。
「唯野仁成。 見ての通りだ」
「姫様!」
「後三日という所だな。 国際再建機構の本部に辿りついて、皆が船を下りた頃くらいには、ヤナトに戻る」
「ありがとう、本当にありがとうございました!」
皆が敬礼する。
ライドウ氏も、同じように頷いていた。
「俺も恐らく姫様と同時に、俺の世界に戻ることになると思う。 皆、とても世話になった。 これだけの人数と世界の危機を救ったのは俺も流石に初めてだ」
苦笑いするライドウ氏。
周囲から苦笑が巻き起こった。
だが、それでも敬礼にすぐ変わる。この人の膨大な悪魔の知識と、普段は温存していたがここぞで出してくる強力な悪魔の実力には本当に助けられた。
更に、である。
辞令が言い渡される。
唯野仁成、ヒメネス。二人が最初に呼ばれた。
前に出た二人に対して、正太郎長官が言い渡す。
「君達は今回の戦いで大きな戦果をそれぞれ挙げた。 故にそれぞれ、准将に昇進し、ゴア隊長……ゴア将軍の副将として今後は活躍して貰いたい」
「イエッサ!」
「イエッサ。 へへ、良い家くださいよ」
「それは約束通りに。 今後はある程度楽な生活ができるさ。 良識の範囲内でな」
正太郎長官の言葉には揶揄も籠もっていた。
良識を超えて、限度を知らない蓄財をする連中をこれから駆除するんだから。まあ当然ではあるだろう。
続けてゴア隊長。
ずっと縁の下の力持ちとして、指揮手腕を振るった威丈夫は、力強く敬礼した。
「ゴア隊長は、国際再建機構の軍事部門を一手に担って貰う。 今は将軍だが、帰還次第元帥となって貰うつもりだ」
「イエッサ!」
「儂は今後、サイボーグ化の手術を受けて大御所に移行する。 裏方の仕事は儂に任せて、存分に手腕を振るってほしい」
「分かりました!」
ゴア隊長は裏方だったが、ずっとクルー達の主柱として存在し続けた。
その指揮手腕は高く、判断力も優れていた。
平行世界では最初に殺されてしまったというこの人が。どれだけ有能だったのか、唯野仁成は良く知っている。
更にストーム1とケンシロウが呼ばれる。
二人とも、中将待遇だが。軍を率いるのでは無く、これからも遊撃として活躍してほしいと言う。行動のグリーンライトも今まで通り渡されるそうだ。
ケンシロウは鷹揚に頷き、ぼそりと言った。
「実家の孤児院に仕送りが出来るなら、それでいい」
「北斗神拳を残すつもりはないのかね?」
「それは……ない。 伝承があまりにも非人道的な方法を用いるからだ。 俺達の代で、北斗神拳は終わらせる。 ただ、戦闘技術や経絡秘孔についてはデータとして知っている限りは渡してもいい。 悪用だけはしないでくれ」
「分かった。 勿論だ」
他の人間だったら無理、となるだろうが。正太郎長官が相手なのだ。ケンシロウも、それを認められると言う事なのだろう。
ストーム1はこれからも黙々と必殺仕事人を続ける事になりそうだ。
世界中の悪党は、ストーム1が来ると聞くだけで今後も震えあがる事になる。
中将ともなれば、更にできる事は増える。
より、世界の悪党達は枕を高くして寝る事など出来なくなるだろう。
春香も呼ばれる。
「君のおかげでクルー達は最後まで発狂することもなく、精神的な健康を保って人外の土地で戦う事が出来た。 本当に助かった」
「はい」
「約束通り、我々のした事。 失態も勿論話してかまわない。 全てを君のやり方で残してほしい。 国際再建機構は、君の活動全てをバックアップする」
「分かりました。 必ず」
実際に外で戦う事はなかった春香だが。彼女の声を聞くだけで落ち着くというクルーは相当数いたし。重要な報告を春香が行う事で、不安を相当に取り除けていたというのも事実だった。
実際問題、長旅でクルーがおかしくならなかったのは彼女のおかげだ。
唯野仁成も、今後も敬意を払いたいと思っている。
なお、春香と同期の「TOP13」(13には春香も含む)と呼ばれるアイドル達は、世界中の一線で活躍していると聞く。
恐らくだが、全ての情報公開は、その「TOP13」でユニットを組んで行われるのだろう。
今までは影響力が大きすぎる事からか、ユニットを組むことは控えていたようだが。
久々の再ユニット結成だ。
その辺りも、話題にはなりそうだ。
ゼレーニンも呼ばれた。
「君は真田技術長官の副官として、今後は活躍してほしい」
「イエッサ!」
「ヒメネスと君、それに唯野仁成は、若手の希望だ。 皆で次代の国際再建機構を頼むぞ」
正太郎長官のまなざしは優しい。
世界の地獄を見続けてきただろう人なのに。こんなに優しい目をする。
それがどれだけの精神力に裏打ちされているか、想像も出来ない程だ。
そして最後に、アレックスが呼ばれた。
「アレックス君。 君は国際再建機構で身柄を預かる。 だが、君の私物や、使役悪魔を取りあげるつもりは無い」
「……それはどういう意味?」
「抑止力が必要だからだ。 君がもしも国際再建機構が駄目だと判断したら、容赦なくもの申していい。 君は既に唯野仁成と並ぶ実力を得ている。 君は自由な立場で、国際再建機構を見て、それで判断をしてくれ」
「懐が広い人物だ、ミスター正太郎。 アレックス、言葉に甘えよう」
アレックスはしばし俯いていたが、顔を上げる。
少しだけ、複雑な気分のようだった。
「平穏でいてはいけないのかしら?」
「君の送った半生については理解している。 だから、平穏でいてかまわない。 家も此方で用意しよう。 そして君には国際再建機構の活動閲覧権も与える」
「!」
流石にクルーは驚いたようだが。
咳払いする正太郎長官。
「未来で散々人類の業を見てきた君には、それだけの事をする権利があると、儂は判断したのだ。 もしも問題があった場合は容赦なく告発してくれ。 聖域化した組織が腐敗するのは古くからの常だ。 儂はサイボーグ化してもう少し後見を続けるが、真田君と儂がいても今後はどうなるか分からないからな」
「……分かったわ。 貴方の清廉さには私でも敬意を評するしかない。 でも、しばらくは平和を甘受させて」
「もちろんだ」
後は、クルーが一人ずつ、春香に呼ばれる。そして、昇進の人事が全員に対してもれなく申し渡された。
船は進む。もう二日もしない内に。母港に辿りつくのだ。そしてその時。武神と、世界最強の悪魔使いは。この世界を離れる。
英雄は、別々の所に帰るのだ。