Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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助っ人として異界から来てくれた英雄。

武神であり豊穣神であるサクナヒメ。この地獄を突破するための剣となってくれた存在。

別世界の最強の対魔師ライドウ。この地獄を突破するための本となってくれた存在。

別れの時です。


1、別れ

凱旋として、方舟レインボウノアが母港から上陸し。国際再建機構の地下に収まる。

 

ライトニングも勿論連れ込んだ。

 

ライトニングはキャリアとして、ジャンク化したような物資を大量に運び込んでいたが。そのジャンクですら、貴重な物資塗れである。シュバルツバースで採取できた物資は、いずれも最高ランクの品ばかり。

 

普通に採掘した場合、どれだけコストが掛かるか分からない代物が、そこら中に落ちていた。

 

ライサンダーZFのような異次元の狙撃銃を作り出せたのもそれが故。

 

今後、国際再建機構の兵器は国際水準の更に二世代先を行くだろう。それがほぼ確定していた。

 

そして、平行世界の唯野仁成は、それで暴力的に地球を制圧した。

 

同じ事は繰り返してはいけないのである。

 

まず、地下のドッグで、全員が整列する。

 

サクナヒメとライドウ氏が、現界の限界を迎えていたからだ。

 

二人に敬礼。特に姫様は、本当にどれだけのクルーを救ったか分からない。武神と呼ぶのに抵抗がある人はプリンセスと呼んでいたが。それでも本当に、船の守護を担った存在だった。

 

最初に、ライドウ氏が消える。

 

あまりにも静かに。世界からいなくなった。

 

勿論記憶からまで消える事はない。

 

豊富な悪魔に対する知識と、手持ちの強大極まりない悪魔達は。シュバルツバースでも普通に通用するものだった。

 

或いは、デモニカさえ渡せば。ライドウ氏単騎でシュバルツバースの攻略が可能だったのかも知れない。

 

可能性の話だ。

 

そしてサクナヒメも消える。

 

誰もが敬礼し、涙さえ流している者もいたが。

 

姫も軽く手を振ると。英雄達の未来に幸あれとだけ言って。その場から消えた。

 

かくして、旅は終わった。

 

旅が終われば、後は家路に向かう必要がある。

 

給料が手渡しの時代だったら、皆に手渡しされたかも知れないが。今の時代は流石に銀行振り込みだ。

 

デモニカについては、随時戦闘時支給されるという。

 

既に唯野仁成もデモニカは脱いでいたが。しかしながら、デモニカで強化された分のあらゆる全ては健在。

 

悪魔召喚プログラムも普通に使える。

 

特にデメテルの監視役も今後は務めなければならないと言う事もあって。唯野仁成は、軍人としていつでもデモニカを着込めるようにと指示が出ていた。これは方舟で一線級の機動班として活躍した面子全員がそうだ。

 

「さて、腐臭まみれの権力者共を黙らせなければならないな。 真田くん。 国際再建機構の幹部を集めてくれ。 ゴア隊長……いやゴア元帥。 君に主導は頼むぞ」

 

「分かりました。 さて、少しばかり骨が折れますな」

 

「何とかして見せましょう」

 

挙手するヒメネス。

 

早速働きたい、というのだ。

 

「俺も現場で働きやすぜ」

 

「心強いが、いいのかね」

 

「どうせ米国の大統領を筆頭に、どいつもこいつも難癖をつけるのは目に見えていますでしょう」

 

その通りだ。

 

特に米国では、パワーエリートと呼ばれる超富裕層が大統領に対して絶大な影響力を持っている。

 

1パーセントの過剰に富んだ連中の一角であり。

 

今後叩き潰す相手でもある。

 

場合によっては殺すまでする必要はないだろうが。異常な蓄財は全て回収する。それだけで、どれだけの富の不公正が是正されるか分からないのだ。

 

自由経済が暴走した結果、今の時代は富の不公正が異常過ぎる事態になっている。

 

そんな時代だからこそ。大統領達は皆青ざめるしかなかろう。

 

「彼奴らが青白い顔で必死にスポンサー様にお伺いを立てる様子が見たいんでね」

 

「流石に少し悪趣味だな」

 

呆れた唯野仁成に、ヒメネスは最初からそうだよと開き直った。

 

まあそれも良いだろう。

 

頷くと、ストーム1とケンシロウに、早速ゴア隊長が指示を出す。

 

現在もっとも駆除を急がなければならない相手を、早速消してきてほしいと言うのである。

 

まあ誰かは知らないが、宗教関係者で膨大な富を持っている者か。或いは利権を握っている連中か。或いはテロリストに資金援助しているカスか。いずれにしても、消されて当然の連中だろう。今まで消されなかったのがおかしい程の輩だ。

 

そして唯野仁成にも。

 

「君は悪いが、国際再建機構本部の外で、手持ちの悪魔達を展開しても良いからあらゆる事態に備えてほしい」

 

「イエッサ!」

 

既にアリスは回復している。

 

アイスをたくさん食べさせてあげるという約束についても忘れていない。本物の、最高のアイスを好きなだけ食べさせてあげるつもりだ。

 

だから、注文をする。

 

「済みませんが、国際再建機構本部の近くにある最高のアイス屋にデリバリーを頼めますでしょうか」

 

きょとんとした正太郎長官に、アリスとの約束を話す。

 

そうすると、緊迫した空気だったからだろう。

 

正太郎長官は、遠慮無く大笑いした。

 

「そうだったな。 あの子は、アイスが大好物だった」

 

「子供は約束を守らない大人を信用しません。 相手が悪魔でも、誠実であるべきだと俺は考えます」

 

「分かった、手配しよう。 ただ、任務自体は予定通りやってくれ」

 

この様子だと、妹と直接会うのはもう少し先か。

 

もう妹は病院である。もう産まれるのを見越して、病院で過ごした方が良いと判断しているという事だ。

 

だったらなおさら連れて行けなかった。

 

下手すると、シュバルツバース内で出産することになっていただろう。

 

アレックスについては、好きに動いて良いといきなり言い渡される。

 

悩んだ末に、アレックスは唯野仁成と行動を共にすると言った。

 

後は、クルーは解散となった。

 

流れで解散していくクルー達。真田さんがゼレーニンを連れていく。ゼレーニンはずっと何処か悲しそうだったが。色々な問題と直面して、皆に助けられて打ち破ったからだろう。

 

ずっとたくましくなっているのが分かった。

 

マンセマットがぼやいていたように。もう都合の良い人形に仕立て上げられるような事もないだろう。

 

以降は、国際再建機構を支える科学者の一人として、八面六臂の活躍を見せてくれるのは確定である。

 

唯野仁成はデモニカを早速着込む。

 

外に出る。実は、既にレインボウノアの甲板で日光浴はしたのだが。それでもやはり外は明るい。

 

レインボウノアのあった方をもう一度だけ見た。

 

ありがとう方舟。

 

これから、貴方の子孫がたくさん作られて、宇宙に人を運ぶ。宇宙での作業を行う助けになる。

 

だが、その最初の道を切り開いてくれたのは貴方だ。

 

方舟の力がなければ、とてもではないがシュバルツバースを越える事など出来なかっただろう。

 

貴方こそ、最高の英雄の一人だった。

 

虚空に敬礼すると、唯野仁成は指定された地点に向かう。デリバリーで来ていたアイス屋の少し前で、アリス達女性陣を召喚しておく。しれっとデメテルも出てくるのは正直笑うしかないが。それは堪えておく。

 

アレックスは無言で腕組みし、壁に背中を預ける。アイスには興味ありそうだが、今すぐ食べる気にはなれないのだろう。

 

アイス屋は仮装か何かと思ったのか。国際再建機構の巨大な本部ビル前に呼ばれた後、きょとんと女悪魔達の様子を見ていたが。アイスをわいわい食べ始める様子を見て安心したらしい。

 

気のよさそうな太めの男性は、数十種類用意してきたらしい最高のアイスを、無邪気に楽しんで貰えているようで自身も満足していた。多分ムッチーノと同じで、おいしく自分の作った料理を食べて貰う事を一番喜ぶタイプなのだろう。

 

「あんた国際再建機構の。 何だか大変だったんだって?」

 

「ええ。 ちょっと世界の危機と闘ってきました」

 

「はあ。 それであのお嬢さん方は」

 

「いずれ分かりますよ」

 

悪魔召喚プログラムは、今後国際再建機構の主力兵装の一つになる。シュバルツバースから連れ帰った悪魔の戦闘力は、アレックスが平行世界の未来で見たように。その気になれば、現在の文明を叩きつぶせるほどである。

 

だが、今アイスを食べている唯野仁成の手持ち達は。ああしている分にはみんな気が良いアイス好きに過ぎない。

 

ただ、悪魔はどうしても簡単に扱える存在では無い。

 

また、無闇に使ってもいけない存在でもあった。

 

すぐに報道陣が押し寄せてくる。恐らくだが、何処かの国のお偉いさんが、ある程度の情報をリークしたのだろう。

 

通常武装した国再建機構の兵士達が来て、彼らに対して威圧的な壁を作るが。だが、春香が来たのを見て。皆黙り込んで、壁を開けた。

 

報道陣を捌くのは春香が最も慣れている。

 

女性悪魔陣がアイスを無心に楽しんでいるのを横目に。

 

春香は報道陣に対して、誰もを安心させる声を投げかけた。

 

「静かに。 質問には一つずつ答えます」

 

「世界の危機を国際再建機構が隠蔽していたという情報がありますが!」

 

「現在は詳しい話は出来ませんが、世界の危機が存在していたのは事実。 そしてそれを隠蔽したのは、今内部で話をしている先進諸国を含む各国の首脳部全員です」

 

「報道の自由をどうお考えですか!」

 

春香は無視。順番に丁寧に一つずつ質問に答えていく。煽るような声が飛んでくるが、見向きもしない。

 

流石である。

 

唯野仁成は、暴徒やテロリストがいないか、確認していればいい。

 

今の感覚なら、周囲数㎞内の殺気も全て判断出来る。ドローンなどの接近も察知が可能だ。

 

デモニカを着た今の唯野仁成は。ケンシロウやストーム1、帰ってしまったライドウ氏や姫様などの超人や武神を仰ぎ見ていた頃と違う。

 

もはや並び立つ英雄だ。

 

「アイスはどれもガロン単位で持ってきているからね。 好きなだけ食べておくれ」

 

「わーい! 次それ頂戴!」

 

「OK! いい食べっぷりだ」

 

アリスがチョコクッキーのアイスを指定するので、嬉しそうにアイス屋が盛りつけている。

 

まあ太る心配はないだろう。

 

程なくして、質問を軽々と捌いた春香が、一礼するとその場を離れる。

 

多分「TOP13」と連絡を取って、これからやるべき事をやるのだろう。歌で残すのか、文学にするのかは分からない。

 

歌だと一曲であの奇妙な旅をまとめきるのは無理がある。

 

だとすると歌集だろうか。

 

元々、歌や踊りは非常に人間の心と親和性が高い。或いは、抜擢したのが彼女なのは大正解なのかも知れなかった。

 

現時点でテロリストや暗殺者、軍の接近は感知できないが。

 

ただし、此方を監視している軍関係者らしい気配は幾つも感じる。

 

満足したらしいイシュタルとアナーヒターが引っ込む。いつの間にか二人減っていることにアイス屋が驚いたが。それについては黙っておく。

 

アレックスが、冷えた声を掛けて来た。

 

「唯野仁成」

 

「ああ、分かっている。 此方を監視しているな。 現時点で十四人。 気配からしてFBIじゃなくて、軍の特務部隊だろう」

 

「いいの放っておいて」

 

「かまわない。 元々国際再建機構の本部は監視されている。 この程度の監視人数問題にもならない。 仕掛けてくるなら蹴散らすだけだ」

 

そうと答えると、納得したのかアレックスはアイス屋に自分もアイスを注文した。

 

アリスもデメテルも満足した様子で引っ込んだ後だ。またいつの間にかいなくなっているのでアイス屋は驚いたが。アレックスがシンプルなバニラアイスを注文したので、黙々と笑顔で作業を始める。

 

食べ始めると、アレックスは無言になる。

 

美味しいと相手に感謝の言葉なんて告げる器用な事は出来ないのだろう。

 

だが、辿ってきた運命を思うと仕方が無いとも言えた。

 

一応、通信で監視者の存在や、居場所については報告はしておく。

 

過半が米国関係者のようだが。

 

雰囲気からしてロシアの諜報員もいる様子だった。まあ、その辺りも全て詳しく説明しておく。

 

分かった、と対応してくれたゴア隊長。

 

わいわいと声が聞こえる。多分、相当に揉めているのだろう。

 

「此方はまだしばらく掛かりそうだ。 だが、今どんどん正太郎長官が全てをまとめて行っている。 実際問題、地球の資源が遠くない未来に尽きるのは分かりきっていた話で、宇宙には何処かしらの国が主導で出なければならなかったんだ。 出来なければ人類は滅んでいた。 シュバルツバース関係無しにな」

 

「その通りですね。 おっと、また二人追加です。 今度は……気配がまた違いますね」

 

「今中東の利権調整が始まった。 そろそろ、荒っぽい手段に出る奴が出始めるかも知れないな」

 

頷くと、アレックスに視線を送る。

 

アレックスも満足した様子を見てから、アイス屋に料金を支払った。凄い金額になったが、まああれだけみんな食べていたのだ。やむを得ないだろう。

 

さて、ここからが本番だ。

 

殺す必要もない相手を殺す事はない。

 

今の戦闘力差なら、半径1キロ以内にいる銃で武装した相手くらい、秒で眠らせることが出来る。

 

接近してきている数人が、かなり荒っぽそうな特殊部隊員だ。

 

とりあえず、これは黙らせておいた方が良いだろう。

 

居場所を連絡した後、ゼウスを召喚。相手を気絶させるにまで出力を落としたケラウノスをぶっ放して貰う。

 

兵士達は突然のゼウスの出現に驚いたが。それよりも、光の線が空を走ったことの方が驚きだった様子だ。

 

いずれにしても、一瞬で気絶した特殊部隊員達を兵士達が確保に向かう。

 

この調子で、しばらくは押さえ込みが必要になるだろう。

 

どうせ会議は数日はかかる。

 

これは確定なのだから。

 

 

 

アレックスを先に休ませて。ほぼそれから丸一日、唯野仁成は監視を続ける。その過程で、三十人以上の特殊部隊員を遠距離狙撃して黙らせた。実際にテロまでやろうとした連中はいなかったが。悪名高い特殊部隊の者もいて。それらは確保してから、じっくりと情報を引っ張り出すことになるだろう。

 

拷問なんて悪趣味なことしなくても、もう頭を直に覗くくらいは出来る悪魔が手持ちに存在している。

 

今後、隠し事など無意味だ。

 

アレックスが来たので、交代。仮眠を取る事にする。

 

アレックスが相当な手練れだと言う事は、国際再建機構の兵士達も一目で見抜いたようで、普通に敬礼する。

 

アレックスは無言で頷くと、周囲の監視を続けた。

 

唯野仁成は一眠りして、それからヒメネスに連絡を入れていた。

 

「どんな様子だ」

 

「んー、だいたい終わったかな。 正太郎長官がばっさばっさと捌いていくから、俺が誰か取り押さえたりする必要もなかったぜ。 インドラジットが暴れさせろって五月蠅かったけどな」

 

「それだけ陰湿な気が渦巻いていたのか」

 

「そりゃそうだろ。 どいつもこいつも秘書官と連絡して、ずっとこそこそやってたからな。 この様子だと、国際再建機構排除だとかを掲げて連合を組む国とかもいるかも知れねえな」

 

まあその場合は鎮圧だ。

 

いずれにしても、メムアレフは今もこの様子を見ているだろう。強引な方法でまとめる事しか手がないことも知っているだろう。

 

平行世界の唯野仁成のように、文字通りのジェノサイドを行うのは論外だが。

 

一方で、軍を動かす必要があるのも事実だった。

 

核を使うことを考える国も出てくるかも知れない。

 

既得権益層が国を完全に動かしている国なら、そう出てもおかしくは無いのだから。

 

アレックスには一応念のために伝えておく。

 

持ち場に戻ると、アレックスに話を軽くする。

 

もしもこの世界でも失敗した場合は、ノウハウを全て持って別の平行世界に行くように、と。

 

アレックスはしばし黙り込んだ後。

 

首を横に振った。

 

「これから荒事になるのは分かるわよ。 私が幼い頃から感じてたぴりぴりを何となく感じるもの」

 

「メムアレフは恐らく相当に気が短い。 もしも世界大戦にでもなれば、即座にシュバルツバースを再展開するだろう。 その時には……」

 

「それでも、よ」

 

「唯野仁成。 バディは……アレックスはもう疲れたと言いたいのだ。 この世界で駄目なら、これ以上の可能性が揃った世界などあり得ない。 だったら、この世界で確実に成功させてほしい、と」

 

そうか。その気持ちは分かる。

 

ならば、分かった。

 

アレックスの肩を叩く。アレックスは、嫌がらなかった。

 

「よし、なら俺に任せろ。 必ずやメムアレフとの公約を実行してみせる。 正太郎長官を筆頭に皆もいる。 シュバルツバースの悪魔達に比べれば、この世界で蠢いている既得権益層なんかどうにでもなる相手ばかりだ。 何とかして見せるさ」

 

「……」

 

「交代だ。 疲れも溜まっているだろうし、俺が変わる。 休憩に行くと良い」

 

「ええ、そうさせてもらうわ」

 

アレックスがその場を離れる。

 

PCの中から、デメテルがくすくすと笑った。

 

「ふふ、安請け合いしてしまって大丈夫ですの?」

 

「安請け合いじゃあないさ」

 

「へえ?」

 

「俺は今背負った。 アレックスの絶望をもう二度とみないという誓いをな。 あんたなら、分かるんじゃないのか」

 

デメテルはしばらく黙り込むと。

 

ため息をついて、会話を一方的に切った。

 

痛いところを突かれた、というのだろう。それでいい。悪魔と接する時は、これくらいでいいのだ。

 

さて、周囲に探知範囲を気合いを入れて拡げるか。

 

やはりかなり特殊部隊やスパイの類が潜んでいる。この様子だと、仕掛けられる隙が無いか探っているのだろう。

 

面倒くさそうなのは全て捕獲しておく。それだけでいい。

 

今は、これ以上。

 

無意味に事を荒立てる必要など、ないのだから。

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