Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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※本作におけるライドウについて

葛葉ライドウ。様々な女神転生シリーズに客演している、「あり得ない大正時代」の歴戦悪魔使いです。神道系の能力者で、襲名している14代目である事が分かっています。

戦闘に負けるとご先祖様達に怒られるんですよねえ(苦笑)

本作でのライドウは、原作アバドン王の約十年後の姿です。それも実時間で十年後なので、色々な冒険などに出る度に追加で加齢して、過酷な戦闘経験もあって実時間以上に老けています。

既にそれなりの年齢になっているため、ゴウトとは一緒に活動していません(ゴウトは十五代目候補の手伝いをしている)。

また、威厳を出すために髭を生やし始めていますが。これもまた、時代ですね。


1、ミトラスの憤怒

戦闘が終わった後。猛り狂ったミトラスの前に、ミトラスの配下達は雁首を並べて跪いていた。

 

ミトラスは美しい顔を引きつらせ、甲高い声で怒鳴り散らす。

 

「貴方たち、どれだけ無能なのかしら! これではアタシは他の魔王達の物笑いの種になりそうよ!」

 

「し、しかし。 恐れながらミトラス様。 宮殿に侵入した人間、あの外で暴れている者程では無いにしても、圧倒的なまでの力を有しており……」

 

「其所をどうにかするのがあんた達の仕事でしょう! この役立たず! せっかくの玩具が台無しだわ!」

 

玩具と言いやがったよ。一応人間を滅ぼすための研究材料だったはずなのに。本音が出ちゃったよ。

 

ミトラス配下の悪魔の一人。堕天使ウコバクはうんざりしながら頭を下げている。

 

尻尾と小さな翼を持つ以外は、大きな頭の人間の子供の様に見えるウコバクはどちらかというと力が強い堕天使ではなく、ミトラス麾下では研究を主体にやっている。

 

また、他の幹部連中が脳筋ばかりという事もあって。他の重なり会った世界とも連携する事務役をこなしているのだが。

 

他の世界に比べて、此処の状況ははっきりいって良くない。

 

もう潰れたモラクスの所はどうでもいい。負けた者に興味を持たないのが混沌勢力の基本である。今問題なのは、この世界に並ぶ他二つの世界がかなり調子が良いという事だろう。

 

「買いあさる国」では、魔王オーカスが際限なく力を増し、真っ先に地上侵略に乗り出しそうな勢いであるし。

 

「腐り果てた国」では、魔王アスラが上手く行っていないミトラスの足下を見た交渉をしてくる。

 

如何に連携しているとは言え、それぞれが独立勢力である。

 

ましてや誰が最初に人間世界を潰すかで、競い合っている者達でもあるのだ。

 

ウコバクはしばらくは腹痛から逃れられそうに無かった。

 

それに、このままミトラスを怒らせると。場合によっては、ミトラスに殺されかねなかった。要するに、下手をすると明日どころか今日すらなくなってしまう。

 

他の幹部共は何の役にも立たない。それでは、やむを得ない。負担が増えるが、ウコバクがやるしかない。

 

ウコバクは、挙手。本当に、他に方法が無い。

 

「何なのよっ!」

 

「実は、ある実験をしております」

 

「ある実験?」

 

「は……。 残念ながら生きた人間のサンプルは失ってしまいましたが、血液のデータは取得しました。 これと、腐り果てた国から提供されたデータを組み合わせたところ、色々と面白いものが作り出せるかと思います」

 

ミトラスが、興味を持った。続きを言うように、視線で促してくる。

 

周囲の幹部達が、頑張れとウコバクに視線を寄越してくる。

 

お前らがそもそも脳筋で、しかも人間にやりたい放題を許しているから私が苦労しているんだろうが。

 

そう怒鳴り散らしてやりたいが。一応幹部としては他のが格上だ。

 

それ故に強気に出ることも出来ず。

 

ウコバクは冷や汗を流しながら、プレゼンをして行くしか無かった。

 

「まず実験に使っていたものと同様のコピーについては、まだ作る事が出来ます。 ただ血液の残量が多くありませんので、数には限りが出てしまいますが」

 

「コピーのコピーは品質が劣化してしまうのよね」

 

「そうなります。 故に実験を「楽しむ」事は難しいかと……」

 

「仕方が無いわね、分かったわ。 それで」

 

頷くと、ウコバクは更に続ける。

 

アスラから提供された技術。正確には違うのだが、これを媒介することによって、此方でも悪魔を無から作る事が出来そうなのである。

 

悪魔は精神生命体であり、情報生命体だ。

 

だから情報を弄くれば、元々の悪魔と似て非なる、別の悪魔を作り出せるかも知れない。

 

「あら、素敵じゃない!」

 

「現時点では、手におえそうな者から作る予定です。 それに、人間のコピーを組み合わせれば……」

 

「面白いわ! さっそく実験に取りかかりなさい!」

 

「ははーっ」

 

幹部共が、皆良くやったとウコバクを見ている。

 

おまえらが!働け!そうその場で罵倒したくなるが、兎も角我慢するしかない。

 

堕天使と言っても最下級のウコバクでは、此奴らに力では勝てないからである。

 

ミトラスの部屋から退出すると。巨大な白い人型であるウェンディゴがぼりぼりと腹をかく。

 

類人猿に似た姿をした悪魔だが、分類は「邪鬼」。悪魔の中では、暴悪に荒れ狂う知能が低い人型のものを大体これに分類している。かといって邪鬼は弱い種族ではなく、強大なものになると神々に戦いを挑めるようなものもいる。

 

ウェンディゴは幹部の中で戦闘力が一番高く、非常に貪欲で残虐である。

 

人質が奪回された後、残っていたコピーの残骸(焼かれたもの以外にも実験の残滓が別の部屋に運び込まれてあったのだ)は、全部ウェンディゴが食べてしまった。人間美味い美味いと言いながら。

 

更にたかっていた雑魚悪魔もみんな一緒に食べてしまった。部下だろうが関係がない。

 

恐ろしい程貪欲な奴なのだ。

 

しかも此奴はこれで、魔法までそこそこに使いこなす。ミトラスのナンバーツーとしては、間違いない実力を持っているのも事実である。

 

しかしながらアホだ。

 

強大な力を持つウェンディゴの最大の欠点がアホである事で、戦闘以外はミトラスですら何一つ期待していない。他の幹部達も、此奴がナンバーツーで良いのかと陰口をいつもたたいているが。実際の所、其奴らもアホさ加減ではウェンディゴとあんまり変わりが無い。

 

更に腹が減ると部下だろうが何でも食ってしまうので、人望は文字通り0。色々と問題だらけのナンバーツーである。

 

「ウコバクー」

 

「何でしょう、ウェンディゴどの」

 

「助かったぜー。 なんでか知らないけどミトラス様すごく怒ってたからなー」

 

「はい、そうですね」

 

このアホは、なんでミトラスがキレていたかすら認識していなかったのか。もう、どうしたらいいのかよく分からない。

 

ともかく、研究をする間、敵を防いでほしい。

 

そう幹部の皆に言うが。誰も乗り気では無い。

 

「そう言われてもなあ。 あの赤黒の女、多分ミトラス様でも勝てないぞ」

 

「あとあのばかでかい鉄船だよ。 あの攻撃で城が穴だらけじゃん。 俺、逃げた方がいいと思うんだけど」

 

「……逃げようとしたらミトラス様に殺されると思いますけど」

 

「その辺はお前が説得してくれね?」

 

幹部の一人にそう言われて、ブチ切れそうになるが、必死に笑顔を保つ。

 

怒りで震えるほどだが。

 

兎も角、此処は色々飲み込んで頼むしかない。

 

「いいから、守りを固めてください。 城も修復してください。 その間、私はミトラス様のご機嫌を取ります。 私がご機嫌とりを失敗したら、私も皆様もミトラス様に殺されますよ」

 

「うっ……」

 

「分かったよ、やるよもう」

 

なんか理不尽な事に従事させられるような顔をしながら、幹部共が行く。

 

ウェンディゴはぼーっとしていたが、皆がいってしまったので。いつもウェンディゴの被害を最小限に減らすために用意されている食料庫に向かったようだった。隣にある買いあさる国から、余った食糧をたくさん貰ってため込んであるのだ。ウェンディゴは、その倉庫で好きなだけ食べて良いことになっている。

 

ため息をつきながら、ウコバクは研究室に。

 

まずは妖精か地霊あたりの扱いやすい下級の悪魔から弄ってみるか。

 

人間世界から色々な伝手で入手したコンピュータとかいう代物を色々とつなげて、ウコバクのための空間を此処に作ってある。

 

悪魔を基本的な情報まで分解し。

 

それを再構築する事で、新しい悪魔を作り出す事が出来る。

 

下級の悪魔は消耗品だ。

 

だから、別に使い捨てる事にウコバクも罪悪感を全く覚えない。悪魔の世界とはそういうものなのだ。

 

これがいいか。

 

そう思うと、部下に指示をして、悪魔を運んでこさせる。

 

ため息をつきながら、ウコバクは実験に取りかかる。

 

そして、最初の一匹が出来たが。

 

何だこれは。

 

まあ、実験は最初は上手く行かないのが当然だ。仕方が無い。

 

連れていくように部下に指示。適当に拷問でもすれば、言う事を聞くようになるだろう。

 

続けて実験をしようとした瞬間。

 

何か、嫌な音がした。

 

何だ。

 

城の内部のカメラを確認する。ほとんど異常は無いが、一つの部屋だけが砂嵐になっている。

 

しかも、よりにもよってそれはウェンディゴのエサ倉庫だ。下手に入り込めば、ウェンディゴに頭から囓られかねない。

 

あいつは、幹部の顔を覚えるのがやっとで。

 

ミトラスが軍団を組織した頃に幹部にしたとき、他の幹部をいきなり食った事があった。流石に今はそれも無くなったが。

 

下手に奴の部屋に入るほど、ウコバクも命知らずでは無い。

 

嫌だなあと思いながら、倉庫に確認に出向くが。

 

倉庫の戸を開けると。

 

其所には、ズタズタに切り刻まれて、既に消滅しようとしているウェンディゴの姿があった。

 

馬鹿な。

 

此奴の実力は、単純なパワーだけならミトラスの八割くらい、というレベルの上級悪魔だ。

 

それをこんな、短時間で一方的に。

 

背後にて、剣を振る音。

 

振り返ると、其所には。城の外で悪魔を殺しまくっていると噂の、人間の女がいた。

 

ウコバクは思わず跳び上がったが、即座に腹を剣で刺し貫かれ、壁に縫い付けられる。

 

流石に悪魔だから、刺された程度では致命傷にはならない。

 

だが、壁に縫い付けられたウコバクは。自重で、どんどん傷が上に向かって来ている事を悟った。

 

「た、たす、助けてっ!」

 

「下級の悪魔を締め上げて聞いたのだけれど、そこのウェンディゴがミトラスの第一の配下だったわね」

 

「そ、そうだよ! それは間違いの無い事実だっ!」

 

「その割りには話がまるで通じないし、力の差を見せつけても何もまともな話ができなかったのだけれど。 貴方も幹部の一人ね。 知っている事を全部話して貰うわよ」

 

だ、駄目だ。この状況、話したところで殺される。

 

体の力が抜けていく。この光の剣、悪魔を殺すための何かが仕込まれているらしい。

 

ひい、ひいと情けない悲鳴が漏れる中。

 

ウコバクは、叫んでいた。

 

「ミトラス様! 賊は此処に……」

 

次の瞬間。

 

ウコバクは、振り上げられた剣によって頭を下から真っ二つに切り割られ。死んだ。

 

 

 

剣を振るってウコバクを殺したアレックスは、そのまま城をゆっくり歩いて抜ける。

 

そもそもあの巨大な次世代揚陸艦の砲撃で穴だらけになっているミトラスの城である。

 

出口はわざわざ探さなくともそこら中にある。

 

しかもミトラスの配下の悪魔は盆暗揃い。

 

これについては、記録を見て知ってはいたが。予想以上のひどさだった。

 

城の外に出たころになって、やっと下級の悪魔が集まり始めたが。見なかったことにしようという雰囲気にして、解散していく。

 

流石のアレックスも呆れていた。

 

「ジョージ、あれは組織としての形を為していないわね」

 

「人間の真似事を中途半端にしたからだろう。 人間の駄目な部分ばかりを取り込んでしまっている」

 

「何となく唯野仁成が、絶望的な状況を切り抜けて力をつけて行けた理由が分かってきた気がするわ」

 

「アレックス、相手は悪魔だ。 油断だけはしないように。 ここに来る前の地獄を常に思い出すんだ」

 

相棒AIに分かっていると応え、髪を掻き上げると。アレックスはその場を離れる。

 

ミトラスを殺してロゼッタを奪ってやってもいいのだが。どうもあの方舟、相当に高い技術力を有しているとみた。

 

下手をすると、ロゼッタを奪った程度では止まらないかも知れない。

 

それなら錯乱したミトラスが、一矢報いるのに期待した方がまだ良いだろう。

 

「もうボーティーズは良いわね。 これではヒメネスやゼレーニンを暗殺する好機もなさそうだわ」

 

「アレックス。 ……一つ困惑すべき情報がある」

 

「何よジョージ」

 

「唯野仁成は死んでいない」

 

何ですってと、思わず大きな声を出してしまう。

 

周囲を見回すが。

 

今、アレックスを脅かせる存在はこの土地にいない。それを思い出して、嘆息してしまった。

 

今は、むしろ大丈夫だ。今は。

 

「先の乱戦時に撒いておいたマイクロドローンが映像を撮影した。 これを見て欲しい」

 

「! あの外道……っ!」

 

「我々が去った後、戦場に駆けつけた二体のアンノウンのどちらかの仕業だろう。 それが出来るだけの力は感じた」

 

「……肺で駄目なら次は心臓。 それでも駄目なら脳を潰してやるわ」

 

アレックスはぎりぎりと歯を噛む。

 

ジョージは何も言わず、支えてくれる。

 

「プランの変更を行おう。 ボーティーズにてもはや成果が上げられそうにないのは確かに事実としてある。 それならば、発見した「牢獄」に出向くべきだ」

 

「彼処の悪魔は、私達でも手に負えるか微妙だという話をしたのは貴方よジョージ」

 

「だからこそ、短期間で強くなれる。 今の時点で、あの巨大な次世代揚陸艦の戦力を潰しきるのは不可能だ。 それに唯野仁成やヒメネス、ゼレーニンはいずれ手に負えなくなるほど強くなる。 此方も強くなることを急がなければならない」

 

「……そうね」

 

それともう一つ、とジョージは言う。

 

アレックスは頷き、話を聞く。

 

ジョージはAIだが、道具では無い。アレックスが幼い頃から共にいて、狂った世界で数少ない心を許せる家族だった存在だ。

 

少なくとも、残っている三つの世界の記憶の内、二つではそうだった。

 

だから、アレックスはジョージを全面的に信じるし。

 

ジョージがアレックスに最高のプランを提供してくれることを疑わない。

 

もしもジョージのプランが上手く行かなかった場合は。

 

アレックスの力が足りなかったから、だ。

 

「「牢獄」に入るとして。 恐らく量子のゆらぎはあの次世代揚陸艦にも感知されるわよ」

 

「それなら逆に好都合だ。 牢獄はざっと観測しただけでも、ボーティーズにいる程度の悪魔など比べものにならない実力の悪魔が群れている。 ……故郷のように」

 

「それなら合体材料くらいは得られそうね」

 

「そうだ。 それに迂闊に追撃してきたら、奴らは手痛い代償を払う事になるだろう」

 

頷く。

 

そして、アレックスはしばらくデモニカの消耗を抑える事にした。

 

この最新鋭デモニカは、託されたもの。

 

しかも幾つもの世界を渡り歩きながら、強くなってきたものだ。

 

最初は平行世界に逃げ込み。

 

戦闘を重ねながら成長を促し、ついに時間を跳躍する力まで手に入れた。

 

今では、単独でスキップドライブを行うことも可能である。

 

このデモニカは、文字通り数限りない慟哭と生き血を啜ってきた。だから、それくらい出来ないと困る。

 

一旦悪趣味な歓楽街を抜けて、外に出る。

 

しばらくは潜伏する必要がある。

 

強力な自己修復機能と、エネルギー充填機能があるこのデモニカだが。

 

それでも、この間の戦いでは艦砲並みの対物ライフルの直撃を受けたし。

 

相当な戦闘巧者の悪魔との戦いで、エネルギーも消耗した。

 

現時点でもミトラスを殺すくらいは容易いが。今は、それよりも優先すべき事がある。

 

ボーティーズに来て、最初に確保した隠れ家。

 

岩陰に作った、小さなビバークポイントに入ると、膝を抱えてアレックスは休む。

 

小さな指輪を操作して、画像を見る。

 

もはや会う事が出来ない人の画像。

 

狂ってしまった世界で、唯一アレックスの側にいた、狂っていなかった「人」の映像。

 

これを見ている時だけは、普段は怒りで全身を焼いてしまいそうになるアレックスも。心が少しだけ落ち着く。

 

しばし静かにしている間に。つい、うたた寝までしてしまった。

 

「アレックス。 後三時間ほどで、スキップドライブに充分なエネルギーが溜まる」

 

「……そう」

 

「大丈夫、周囲に接近する者はいない。 私が見張っておくから、ゆっくりと休むと良いだろう」

 

頷くと、もう少し眠ることにする。

 

もはや、心を許せるのはジョージだけ。

 

アレックスにとって、シュバルツバースは別に地獄でも何でも無い。

 

そんなものは、もう何度も見てきたのだから。

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