魔王オーカスは、食事をしていた。
それも、もはやそのまま食べるなどと言うのも面倒くさい。そのまま、運ばれて来た食事を吸い込んでいた。
吸い込まれるのが嫌なのか、ベルトコンベアに食糧を置くと、地霊達はそそくさと去って行く。
オーカスは気にしない。食糧なら何でも良いからだ。運ばれてくる雑多なありとあらゆるものを、丸ごと吸い込んでいく。
全長三百メートルを超えるほどに巨大化しているオーカスは、六本足の豚のような姿をした悪魔だ。
魔王の名にふさわしく、豪華な冠をつけ。美しい貴族のような服を着ているが。今ではあまりにも巨体になりすぎて、うつぶせになって食事をただ続けている。
だが、作り物のエサでは飽き始めていた所だ。
オーカスは他の魔王達と並んで、人間について学習した。
そうして分かった事は。
人間は無駄に喰らっている、と言う事だった。
無意味にひたすら消費物を作り、消費しきれもしない分までひたすら食い尽くしている。
それが人間の強さだとオーカスは判断した。
オーカスは元から食べるのが大好きだったから、更に強くなれるこの方法は良いと思った。
故に真面目に働くことだけが生き甲斐の地霊族達のいるこの世界に侵攻。
地霊族達を暴力で従えると、後はひたすら食事だけを作らせた。食事といっても、人間世界にある情報から適当に作り上げた文字通り「なんでも」だが。
食物である必要さえない。
人間世界の情報をひたすら無作為に集めまくればそれでいいのである。
やがて、充分に機が熟したら、そのまま人間世界に攻めこみ。人間も、その文明も、全て喰らい尽くしてやる。
それが、貶められてこのような姿にされたオーカスの復讐だった。
不意に、眼前に映像が出る。
「オーカスよ、相変わらず貪欲な事よな」
「ブオーノ! アスラか」
「モラクスに続いてミトラスがやられたぞ。 お前の世界にも既にミトラスを破った連中が来ている」
「ブオーノ! 気付いているともよ。 天使共と一緒に何かしているようだが、くだらぬわ」
ブホホホホと笑うオーカス。映像の向こうで、三面六臂の雄々しい武神であるアスラは、苦笑した。
アスラは強さだけに価値を求める存在で、その強さは戦いによってのみ得られると考えている節がある。
だから、オーカスとは思考が違うが。一方でオーカスが急激に強くなっていることを認めてもいる。
何より、アスラは持っているある能力を、他の魔王達に結構気前よく提供してくれた。
勿論力の虫干しの意味もあるのだろうが。貪欲なオーカスからすれば、相手の手の内が分かるのはありがたい話だ。
「今のワシは無敵よ。 天使が多少小細工したところで、それが変わるものか」
「果たしてそうかな。 天使は、人間共に何か力を渡したようだったが」
「ふん、どの道この土地では秩序の勢力は力が落ちる状態だからなあ。 ワシの手で罠ごとひねり潰してくれる」
「……忠告はした。 くれぐれも、油断だけはするな」
アスラの映像が途切れる。
それにしても便利な能力だなと思いつつ、オーカスは食事を再開。とにかく見境無く何もかも吸い込んでいく。
咀嚼さえしない。
必要ないからである。
満腹も無い。
際限なく強くなるからである。
自分の強みを、オーカスは良く知っていた。
そして、オーカスはこの能力で、新しい支配者になれるとも思っていた。
下品に笑うと、更に運ばれてくる食事を吸い込む。
適当な所で、攻めてきた人間共も丸ごと食い尽くしてやるとしよう。多少の小細工など、この体の前には無意味だ。
圧倒的な暴力の凄まじさを見せつけてやる。
オーカスはひたすら食事を続けながら、目を野心にぎらつかせていた。
(続)
ミトラスとの戦いが終わっても予断はまったく許さない状況が続きます。
英雄達が手を貸しても、むしろシュバルツバースの状況は更に悪化の一途を辿っているかのように……
なお、本作でもオーカスは原作同様に楽しい豚さんです。