Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

32 / 126
原作以上に凄まじいパワーアップを遂げているオーカス。

しかし此方には真田さんがいます。

オーカスバスターも、「かねてから開発していた」によって更に強化されるのです。

まあ、ぶち込まないとダメなのは元と同じですが……


1、大食漢の倒し方

二日ほど嘆きの胎の浅層を彷徨う。そうして唯野仁成が理解したことは、悪魔の数は少なく質は高く。

 

そして、知られてもいないような悪魔が多いと言う事だった。

 

今度はサクナヒメと組んで分隊を構成し、戦い終えたのだが。

 

地面に伸されて呻いている悪魔は、もはや形状すらなんと呼んで良いのか分からず。デモニカの悪魔召喚プログラムで調べて見たが、アンノウンとしか表示されていなかった。

 

ともかく、相手が屈服したので、会話を試みる。

 

サクナヒメが目を光らせているので、巨大なオオサンショウウオとでもいうべき姿が一番近いように思える悪魔は。何とか会話に応じた。

 

「貴様、最近暴れている人間の仲間か。 秩序の神々を此処から解放しようとでもしているのか」

 

「現時点でその予定はない」

 

「……ならば我等のエサになる前に去るんだな。 此処に先に入って暴れている人間も、やがて深層から出てくる強力な看守に殺されるだろう」

 

「その看守よりももっと強くなってみせるさ」

 

苛烈な戦いばかりだった。

 

だが、その分デモニカには、並行して知識蓄積が行われ。機動班だけでは無く、デモニカを着ている全員の能力が向上している。

 

どうやら浅層だけなら、危険はないとまでは言わないが。為す術無く殺される、と言う事も無さそうだ。

 

この呻いている瀕死の悪魔も、ギリギリ従えられそうだった。

 

「従ってほしい。 殺すつもりは無い」

 

「……強者に従うのが我等のさだめだ」

 

交渉を開始する。

 

根こそぎ絞られないように気を付けながら、悪魔召喚プログラムの指示に従って交渉をしていく。

 

瀕死だというのに、まだ足下を見ようとしてくるのは流石と言うべきか。

 

だが、やがて交渉はまとまった。デモニカのPCに吸い込まれる悪魔。

 

サクナヒメが自身の肩を手で掴み、腕を回していた。今の戦いも、初手以外彼女は介入していない。

 

「もうこの階層の悪魔はわしの敵ではないのう」

 

「しかし深層から看守が出てくる可能性も」

 

「ふ、それはアレックスとかいう赤黒が引きつけておろう。 まあ油断だけは絶対にするなよ」

 

「イエッサ!」

 

唯野仁成が敬礼すると、他もそれに倣う。

 

急いで方舟に戻る。戦いに余裕があったのは事実だが、欲をかける場所では無い。

 

今日で一旦浅層の探索は切りあげ。彼方此方に安全と思われる場所を見つけてあるので、それらを経由し。次回探索からは一層を調べる。

 

これについては、事前にブリーフィングが行われ、周知されている。

 

唯野仁成も、それでかまわないと思った。

 

何より、そろそろオーカスへの対抗兵器が完成する頃である。

 

あの真田さんが、約束を違えることはないだろう。

 

ケンシロウ、ストーム1とも途中で合流。

 

ヒメネスも悪魔を捕まえた、と言っていた。

 

ただ、やはりよく分からない姿の悪魔だったようだ。また、前にサクナヒメとライドウ氏が一緒に倒した悪魔のような、深層から出て来た看守悪魔でもないらしい。

 

この嘆きの胎には、看守と呼ばれる強力な見張りの悪魔と。

 

各階層に勝手に住み着いている雑魚がいて。

 

更に、面白がって見に来ている強豪も混じっているようだ。

 

さっきまで戦っていたのは、各階層に住み着いている雑魚。

 

この間遭遇したシャイターンは、たまたま遭遇した面白がって見に来た強豪、という所だろう。

 

「看守」とも、二日で何度か遭遇したが。

 

それほど深い階層からは出て来ていないらしく。

 

或いはアレックスに倒されているのか。

 

いずれもが、スペシャル達には勝てなかった。

 

スペシャル達は更に強くなっている。

 

皆、動きが更に洗練され、鋭く早くなっているし。力も上がってきている様子だ。

 

デモニカによる強化は当然スペシャル達にも適応される。

 

サクナヒメの場合は、それとは違って、力が単純に戻っているのだろうが。いずれにしても、オーカス戦を前に頼もしいことである。

 

方舟に戻る。

 

遭遇した悪魔や、交渉の末に仲魔にした悪魔を調べていく。

 

さっきのサンショウウオのような悪魔は、随分とPCの内部で姿を変えていた。

 

どういうことなのだろう。先ほどの姿は、擬態か何かなのか。

 

ライドウ氏が、四苦八苦している唯野仁成に、不意にデモニカごしにアドバイスをくれた。

 

「悪魔は本来マグネタイトという物質を媒介して実体化する精神生命体だ。 ここシュバルツバースでも、仕組みは少し違うようだが、精神生命体である状態から何かしらの仕組みを介して実体化している。 先ほどの悪魔は、それが上手く出来ていなかったようだ」

 

「あんなに強かったのに、ですか!?」

 

「強い悪魔ほど大量のマグネタイトを必要とする。 要するに、本来の姿になるのに、充分な何かしらの力を確保出来なかった、と言う事なのだろう」

 

そういうことか。

 

分かりやすい説明だ。ヒメネスも納得していた。

 

ヒメネスのPCに入っているのは、土蜘蛛という悪魔だ。

 

鬼のような顔をしたカニとでも言うべきか。

 

兎に角凶悪な面構えをした悪魔である。見るからに強そうだ。

 

何でも日本の土着豪族の総称らしく。大和朝廷に討伐されていった土着豪族は、後の時代に土蜘蛛と呼ばれて妖怪のように思われたとか。

 

そうなると、この鬼カニは元人間と言う事か。

 

ちょっと悲しい話だなと、唯野仁成は思う。

 

唯野仁成が捕まえた方の悪魔は、虹色の蚯蚓のようになっていた。

 

ユルングというらしい。

 

オーストラリアに伝わる虹の大蛇だそうである。

 

かなり強い悪魔だとライドウ氏が教えてくれたが。しかしながら、実体化は大丈夫なのだろうか。

 

見ると、マッカを相当に食っている。

 

なるほど、何となく理解出来た。

 

シュバルツバースの悪魔を殺すとマッカが落ちるし。悪魔達はマッカに貪欲な理由が、である。

 

マッカのエネルギーを使って実体を保つために、それぞれが必死なのだろう。

 

金が無いと定型さえ維持できない。

 

何とも悲しい存在だ。

 

方舟に全クルーが乗ったのを確認すると。方舟は上昇を開始した。気がつくと、サクナヒメが今回出たクルーににぎりめしを配っていた。

 

サクナヒメが手づから握ってくれたのだろう。

 

いわゆる塩むすびだが、元々の米がとても美味しいので全く問題ない。幾らでも食べられそうだ。

 

ましてや運動をした直後である。

 

「ひゅう、姫様。 このオニギリ美味いなあ。 戻ったら、正式にブランドで売ったらどうだ?」

 

「わしはこの仕事が終わったらヤナトに帰らなければならん。 その後にわしが再現した天穂をどうするかはそなたらの勝手次第だ」

 

「そっか。 じゃあ俺権利貰っても良いか?」

 

「相変わらずよのうヒメネス。 残念だが、国際再建機構で管理するそうだから、正太郎にでも相談せい」

 

苦笑いした後、サクナヒメは咳払いした。

 

二人とも、かなり力が上がってきていると。

 

サクナヒメ自身も、またかなり強くなったようだが。

 

だが、アレックスも強くなっていることを忘れてはならないとも。

 

「わしは、いずれ二人はわしと肩を並べて戦えるようになると思うておる。 だがそれはまだ先じゃな」

 

「あんたとか。 それほど俺たちは強くなれるのか」

 

「ああ、間違いなかろう。 ただ……」

 

サクナヒメは、ヒメネスの喜びに水を差すように言う。

 

ヒメネスは、危ういと。力を求める事に対して、サクナヒメは静かに言った。

 

「力を求めた修羅の先にあるのは、無だけよ。 その先には何も残らん。 わしは実例を幾らでも見て来た」

 

「……」

 

「そなたはバガブーという弱い悪魔を敢えて連れておろう。 事情は聞かぬ。 だが、そ奴を大事にしてやれ」

 

「……ああ」

 

ヒメネスに、今の言葉は色々響いたのかも知れない。

 

いずれにしても、上空で一旦停止した方舟は、これよりカリーナに戻るらしい。船内放送であった。

 

と言う事は、だ。

 

真田さんが、完成させたのだろう。

 

憮然としているヒメネスだが、一度侵入した空間である。

 

カリーナに入る事に、不安は無いのだろう。

 

それにスキップドライブはもう何度もしている。

 

今更不時着の恐れもない、と言う事だ。

 

方舟も殆ど揺れない。

 

加速も減速も、恐ろしい程スムーズだった。緩やかに船が前進し、そして止まる。やがて方舟は。

 

あの巨大なショッピングモールがある世界に、再侵入を果たしていた。

 

「真田だ。 皆に連絡しておこう」

 

「!」

 

「オーカスへの対抗兵器が完成した」

 

おおと、喚声が上がる。

 

真田技術長官への信頼感は、国際再建機構ではほとんど絶対である。この人に開発できないものは理論上無さそうだという冗談があるほどなのだ。

 

真田さんが説明を続ける。

 

「実はかねてから開発していた別の兵器があるのだが、それに派生させる形でオーカスを倒すための兵器を作り上げた。 理論と図面を組んだのは私だが、実際に作ったのはラボのアーヴィンとチェンだ。 感謝するように」

 

アーヴィンと言えば、確か最初アントリアでさらわれた一人か。

 

チェンというのは、あまり覚えが無いが。確かアーヴィンの助手をしているような人物であった筈。

 

とりあえず、具体的な理論を聞く。

 

「オーカスは外の世界から無作為に集めた情報を、情報として食べている。 我々が肉を食べるように、情報生命体が情報を無作為に取り込んでいると考えてくれれば分かりやすいだろう」

 

「それで、肉でも車でも何でも吸い込んでいたのか……」

 

納得する者がいる。技術班や調査班の者だろうか。

 

いずれにしても、唯野仁成には分からないので、話を聞いていくしか無い。

 

「その情報を、逆流させるのがオーカスバスターだ。 ものとしてはロケットランチャーに近いが、ロケットを発射するわけでは無く情報逆流を起こすための電磁波を放つものとなっている。 ただし、オーカスが体内の余剰情報を吐き出しきったらもう効かなくなるから注意してほしい」

 

トレイを押して、活発そうな短髪の女性が来る。

 

彼女がチェンだろう。

 

三つ、オーカスバスターらしい、筒状の兵器がトレイに乗せられていた。

 

「ストーム1が一つは持つとして、もう二つは……」

 

「唯野仁成、ヒメネス、二人が持つように」

 

他ならぬストーム1が言ったので、誰も反対しない。

 

現在、スペシャルが一人残り。三人が外に出る体勢が組まれている。つまり、一分隊に一つずつ、オーカスバスターがあれば良いという事だ。実際にはオーカスに攻撃するアタッカー班には二つほしい所だが。

 

更に、方舟の主砲用に弾丸も用意したという。

 

オーカスバスターと同じ、炸裂して情報を逆流させる電波をまき散らす弾丸を放つ事ができるそうだ。

 

「もしも方舟本船をオーカスが襲ってきた場合は、私が対処する」

 

正太郎長官の言葉に、皆背が伸びる。

 

戦後の混乱期に活躍したロボット、鉄人二十八号を劣悪なリモコンで操作した伝説の人物である。

 

相手が怪獣級の悪魔であっても、対抗策さえあればどうにでもしてくれる。

 

その絶対的な信頼が、誰にもあった。

 

やがて、方舟がカリーナに着地。前回と全く同じ地点に着地後、プラズマバリアを展開。まずは機動班が降り。続けて調査班が降りる。

 

周囲の安全を確認してから、オーカスに仕掛けるためだ。

 

最初の機動班はゴア隊長が率いた。だが周囲を軽く偵察したらすぐに方舟に撤退し作戦総指揮に戻る予定である。

 

これは、何か万が一があっては困るため。

 

本来なら、ゴア隊長が先頭に立って怪獣級の悪魔であるオーカスと戦うべきなのかも知れないが。

 

この船の機能不全を避ける為に。最後まで、ゴア隊長は無事で無ければならないのだ。

 

装甲車に乗って周囲を油断無く睥睨するゴア隊長の顔に油断は無い。その間に、休憩を取るように唯野仁成は指示を受けた。ヒメネスも、である。

 

プラズマバリアの守りもある。

 

一旦、これから仕掛ける本命の戦力には休憩を与える。

 

正しい判断だろう。

 

唯野仁成も、散々訓練を受けた身だ。

 

思うように眠る事も出来る。

 

食事もしたばかり。眠るには、充分な条件が整っていた。

 

六時間ほど、眠る。

 

外では今もシュバルツバースが拡大していることだろう。だが、それでも。今は、休まなければならなかった。

 

 

 

時間が来た。

 

外で三班に分かれて整列する。

 

唯野仁成は、今回はストーム1と同じチームだ。ヒメネスはサクナヒメと組む。ケンシロウがゼレーニン達調査班の面倒を見る事になる。

 

今回の作戦を通達される。

 

まず、ストーム1と共に、唯野仁成と数名のチームが突入。

 

前にオーカスがいた場所に踏み込む。

 

この間、サクナヒメ率いる班が、入り口近くを固め。ケンシロウ班と合同で、オーカスの動向を撒いておいた電波中継器より情報を収集し、確認する。

 

ストーム1班が失敗。例えばオーカスが踏み込んだ場所にいなかったり、あるいはオーカスバスターが効かなかった場合。その時は、サクナヒメ班が対応。即座にケンシロウ班は調査班を守って方舟まで撤退。また、ストーム1班も撤退に入る。

 

作戦としては、ストーム1班がメインで、サクナヒメ班がサブのポジションにはなるが。

 

結論としては、ごくオーソドックスな作戦だ。

 

作戦の総指揮はゴア隊長がとる。

 

悔しいが、オーカスバスターを増産する意味はないし、余裕も無いという事で。現時点では三つしか在庫はない。一応作る事は作れるらしいが。貴重な物資を大量に使ってしまうという。

 

最悪の場合ボーティーズやアントリアに戻る必要さえ生じると言う事で、時間の大量ロスが生じかねない。

 

もしそうなった場合。

 

シュバルツバースが、更に無作為に拡大している可能性がある。

 

外の世界では、触れるとプラズマ分解される強力な壁をもったシュバルツバースが、広がり続けているのだ。

 

このままでは、一体どうなることか。

 

南米やアフリカの南端に辿りついてしまったら、恐らくはもう情報を隠しておく事も出来なくなる。

 

国際再建機構でも、各国を抑えきれなくなり。

 

効きもしない核攻撃を、破れかぶれになった各国がシュバルツバースに行い始めかねないのだ。

 

作戦概要を理解した唯野仁成は頷く。

 

貰ったオーカスバスター。ストーム1がし損じるとは思えないから、二発同時に叩き込んでやりたい所だが。

 

さて、上手く行くか。

 

作戦開始。

 

声が掛かると同時に、皆が動き出す。

 

アントリアやボーティーズと違い、今回は「魔王」がいきなり前面に出て来ている。そういう意味では、背後で控えていたアントリアや、積極的に仕掛けて来たボーティーズともまた状況が違う。

 

オーカスの場合、絶対に勝てるという自信があるのだろう。

 

さて、真田さんの技術がそれを上回れるか。

 

早速、移動を開始する。

 

ストーム1は大股でかなり早く歩く。それでいて、殆ど無駄が行動に無く、ついてきている機動班全員に目を配っている。

 

何回か交代で嘆きの胎浅層で演習を行い、それぞれで経験を積んで平行により分けた。

 

今回も、周囲の機動班メンバーは替わっている。

 

今はウルフという血気盛んな青年と、ミアという浅黒い肌の男勝りな女性クルーが加わっている。

 

ミアは本来インフラ班なのだが、機動班の手伝いもしたいと少し前から機動班の作戦に参加している。

 

元々兵士としても豊富な経験を積んでいる人物なので、武器の扱いは見ていて安心できる。

 

悪魔召喚プログラムにも抵抗はないようだ。

 

ショッピングモール入り口まで移動。

 

ストーム1が内部を確認し、ハンドサイン。

 

さっと内部に展開。

 

悪魔は召喚するなと事前に言われている。オーカスに吸い込まれるだけだからだ。ヒメネスが連れているバガブーも、危うく食われる所だったらしい。

 

「いらっしゃいませー……??」

 

相変わらず入り口で受付嬢をしていたアプサラスは無視。アプサラスは困惑した様子で、続けて突入してきたサクナヒメ班も見ていた。

 

後方はサクナヒメ班、更にそれに続くケンシロウ班に任せ。

 

道を知っているストーム1に全員無言で続く。

 

入り組んだ道だ。クリアリングは必須だが、ストーム1のクリアリングが神がかって早い。

 

前の探索では敵に襲われることは無かったが。

 

今度はどうか分からない。

 

油断など、していいものではないのだ。ましてや、此処は敵の城の中も同じなのだから。

 

地下への入り口を発見。

 

凄い風が吹いたり出たりしている。オーカスがいるのは殆ど確定と見て良いだろうが、ストーム1はケンシロウ班の連絡を待つ。

 

「此方ゼレーニン」

 

「此方ストーム1、どうぞ」

 

「オーカスの強烈な反応が地下にあります。 以前と位置は変わっていません」

 

「舐めやがって……」

 

ミアがぼやく。

 

唯野仁成は頷くと、オーカスバスターを軽く動かしてみせる。

 

既に試運転も済んでいる。

 

いざという時に、逆方向に発射してしまうようなへまはしない。

 

突入。ストーム1のハンドサインと同時に、階段を下りる。

 

薄暗い地下。ヒメネスのデモニカ越しに映像は見て知っているが、何も変わっていない。

 

大量のベルトコンベアに乗せられ、運ばれてくる大量のもの。

 

食べ物ですらないものもたくさんある。中にはどうみても廃棄物だったり、汚物だったりするものさえあった。

 

オーカスは、更に巨大化していた。

 

たった三日ほどだが、この間映像で見たものよりも、更に一回り大きくなっている。

 

オーカスの目が闇の中光っている。

 

その威圧感は、あまりにも凄まじい。

 

豚というと、弱そうで情けない生き物を想像する人間もいるかも知れないが。

 

体重は熊とさほど変わらず、雑食性で、場合によっては人間を殺すことも普通にある。

 

豚を畜産している農家は、昔年に何人か豚に殺されていたというのは有名な話である。

 

更に犯罪組織によっては、豚を使って人間の死体を処理したりする。豚は歯が強靭でしかも雑食なので、死体は何でも骨まで残さず食べてしまうからだ。なお、この何でもは。親兄弟だろうと関係無い。

 

豚は家畜化しているものの。

 

実際には強靭な生命力を持つ、とても恐ろしい生き物なのである。

 

きれい好きで、知能も其所まで低くは無い側面を持つ生物ではあるのだが。

 

オーカスは。

 

怪獣級の大きさを持つ巨大な魔王は。

 

豚に対して人間が持っている負のイメージを、凝縮したような姿をしていた。

 

「ブオーノ! 懲りずにまた来たか! しかも数まで増やして、ご苦労な事よ! ブオーノブオーノ!」

 

「……魔王オーカス、聞きたかったのだが」

 

「何だ人間」

 

「そのブオーノというのはひょっとして笑っているのか?」

 

ストーム1は、反論を待たずにオーカスバスターをぶち込んでいた。

 

有効射程も既に確認済み、

 

更に、唯野仁成も続けてオーカスバスターをぶち込む。完全に着弾。モロに入っていた。

 

元より物理兵器では無いが。効いたと確信できる。

 

一瞬きょとんとしたオーカスだったが。

 

次の瞬間。黄色いからだが、見る間に真っ赤になっていった。

 

これは、まずい。そう唯野仁成が判断するより先に、ストーム1が叫んでいた。

 

「全員階段まで走れ!」

 

「い、イエッサ!」

 

何が起きるか、悟った全員が走り出す。

 

オーカスは真っ赤になって口を押さえていたが、やがて盛大に吐き戻し始める。

 

案の定だ。

 

情報を逆流させる。

 

それは要するに、情報を食っているオーカスに取って見れば。ゲロを吐かせるようなものなのだから。

 

文字通り、あらゆるものが濁流となって地下に怒濤のごとく溢れ始める。オーカスはどんどん縮んでいるようだが、見ている余裕が無い。

 

階段の最後尾に残った唯野仁成は、ユルングを展開。

 

ユルングは虹の大蛇だが。巨大な体を震わせて、凄まじい声を発した。蛇は基本的に音は出しても鳴くことはないのだが。まあ悪魔だし、関係無いのだろう。

 

音が、一瞬強力な壁を作って、吐瀉物の雪崩を押し戻すが。多分長くは続かない筈である。

 

階段を皆が上がりきったのを確認すると、オルトロスを召喚。

 

背中に跨がって、走って貰う。流石にオルトロスも仰天したらしく、吐瀉物の雪崩から全力で脇目もふらず逃げ出す。その間、ユルングが後ろに向けて音波を発し、吐瀉物の到来を抑えてくれてはいるが。

 

間に合うか。

 

すぐ近くまで来ているのが分かる。急げ。前から声が掛かる。あの吐瀉物に巻き込まれたら、文字通り最低の死を迎えることになるだろう。まあ死に貴賤はないが、それでも嫌なものは嫌だ。

 

階段から飛び出し、横に。

 

同時に、吐瀉物が階段から噴きだし始めていた。

 

呆然としているドワーフなどの地霊族達。

 

二階に上がれと、ストーム1が声を掛けて来る。また、サクナヒメ達も、一旦外に避難。

 

地霊達も困惑しながら、周囲に慌てて避難し。

 

アプサラスに至っては、そのまますーっと天井近くまで飛んで行った。

 

文字通り、上にまいりまーすだな。

 

そう、昔存在していたエレベーターガールという職業を、唯野仁成は思い出したのだった。

 

いずれにしても、一階の半ばほどまでを吐瀉物が埋め尽くしてしまったので、どうしたものかと思ったが。

 

地霊族達が、黙々とお片付けを始める。本当に仕事そのものが好きなんだなと、呆れた。

 

吐瀉物と言っても粘液に塗れている訳では無い。

 

外の地上世界から雑に仕入れた情報を具現化しただけのものだ。

 

要するに肉やら車やらのデッドコピーであり。

 

汚いものでは無いのかも知れない。

 

ただ、流石に吐瀉物の山に逆さにワニが突き刺さっている様子を見ると、シュール過ぎるからか。ミアが口を押さえて横を向いてブルブル震えていた。

 

「オーカスバスターは効く。 これで確定はしたな」

 

「しかし、また食べ始めるのでは……」

 

「いや、オーカスバスターは真田技術長官の話によると、長時間効果が続くらしい。 オーカスという奴のデータを調べたところ、どうも吸収に特化した体構造をしているらしく、それを逆用したそうだ。 しかも二発叩き込んだ。 あの巨大豚は、しばらくなにも食べる事はできないだろう」

 

そして吐瀉物をブチ撒け続ける訳か。

 

そのまま吐瀉物に埋もれて死んでくれれば楽なのだが。流石にそうもいかないだろう。

 

平然と吐瀉物というか、いろんながらくたの山に降りると、ついてくるように指示してくるストーム1。

 

そのまま平然と、ショッピングモールから出るのだった。

 

流石というか、何というか。

 

ウルフは最後まで躊躇していたが。唯野仁成が促して、来させる。

 

何とか一人も欠けずに、オーカスバスターを打ち込んだが。

 

ミアとウルフは、なにかを失ったような目をしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。