ここはかねてから開発していた。であまりにも有名すぎる人です。
数多あるパラレルワールドですが、この真田さんは「さらば宇宙戦艦ヤマト」の真田さん。
白色彗星帝国の動力炉を爆破して亡くなられた真田さんです。
本作では爆破の時に過去の平行世界である本作世界に到来。そこを正太郎長官に拾われています。
流石の真田さんでも、そこで一気に科学技術を進めきる事は出来ませんでしたが。
核融合炉や優れたAIの開発などで、ある程度技術を持ち込む事には成功したのです。
機動班クルーが、三班に分けられて物資搬入口に集合する。いずれも一線級のメンバーばかりだが、その数が増えている。嘆きの胎で過酷な演習をした結果だ。またメイビーなどのように、自身で志願し。努力を重ねた結果、一線級と認められたクルーも増えてきているようだ。
今回は、ライドウ氏、ストーム1、サクナヒメで出る。その代わり、ケンシロウが方舟に残るようだ。
唯野仁成はライドウ氏と組む。
実は組んだ回数は殆ど無い。もの凄く強力な悪魔を複数所持している事からも、かなりの使い手であることは知っているが。
お手並み拝見と行きたいところである。
ゴア隊長が来たので、敬礼。
ゴア隊長は咳払いすると、デモニカを操作して、映像を送ってくれた。
「ドローンによる空撮、それに野戦陣地に展開したレーダー群から、現在敵の根拠地についてはこのようになっていると分かっている。 君達はまずは前線に出て、状況を確認する威力偵察を行って貰う」
「調査班は連れていかないので?」
ヒメネスが挙手し、聞く。
声に揶揄が籠もっているのは気のせいではあるまい。ただ、ヒメネスの言う通り。今回はいつも護衛対象になる調査班の姿がない。
ゴア隊長は頷くと、ヒメネスのもっともな質問にきちんと答えてくれた。
「現在真田技術長官が開発した、人間の精神に入り込む悪魔を追い払うフィールドを展開しているが。 この機能はデモニカにも装着している。 その機能を、明らかに機能が働いている地点で活用出来るか確認したい」
「要は人身御供と」
「そういう事になる。 勿論最悪の事態に備えて、強力な耐性を持っているスペシャル達の同行も頼む」
ヒメネスが分かりやすくため息をつくが、こればかりは誰かがやらなければならない事である。
また、活動範囲、活動時間についてもそれほど広く長くはない。
唯野仁成としては、異存ない任務だった。
すぐに三班に別れて活動開始。ゴミ山に近付くにつれて、地面がぬかるみになっていくのが分かった。
異常な高熱。
それに、非常に危険な物質の数々が検知されている。
触っただけで指がなくなるような物質も垂れ流されているようだ。また放射性物質もある様子である。
人間社会にある、危険な廃棄物をまとめて集めた。
そういう風情だ。
ライドウ氏は率先して進んでいる。展開している悪魔はどれも大物ばかりで、周囲を油断無く睥睨している。アリスに聞いてみると、知っている顔ばかりだという。なるほど、そういうものか。
やがて、ゴミ山の麓に到着。見ると、廃棄物で、河が出来ている。河の先には沼があり、とてもではないが足を踏み入れて生きていられるとは思えなかった。
ビーコンを撒いて、危険地帯として認識して貰うようにする。
それにしても、これは。
ボーティーズにも危険物質をぶちまけているような廊下はあったけれども。これは桁外れの汚染だ。
ここの土から、物資は補給できるだろうか。見ていて不安になってくる。
周囲を指定された範囲内で巡回。帰投命令が間もなく出る。どうやら、精神に入り込んでくる悪魔は排除できていると判断されたらしい。頷いて、戻ろうとしたその瞬間だった。
ドカンと、凄い音がした。
サクナヒメ班の方だ。嫌な予感がするが。予感より先に、ライドウ氏が走り出していた。機動班全員が続くが、速い。デモニカの補助で、皆車より速く走れるようになってはいるが、ライドウ氏はそれとも段違いだ。元の身体能力が桁外れなのだろう。
まさに疾風だ。
ライドウ氏が飛び込んだ先では、アレックスがサクナヒメと対峙していた。パラスアテナもいるが、それは他の機動班クルーの悪魔と、更にはヒメネスのモラクスが押さえ込んでいる。
アレックスは流石に形勢不利と判断したのだろう。パラスアテナも戻して即時撤退を選ぶが。ヒメネスはゴミ山に叩き込まれ、意識が無い様子だった。バガブーが、ヒメネスを揺すって悲痛な声を上げている。
サクナヒメが、じっとぽんぽんと跳んで逃げるアレックスの背中を見つめていた。
「ヒメネス、無事か!」
「……」
「すぐに戻るぞ。 医療班に予約を」
「分かりました!」
ライドウ氏が先導して、撤退を支援。指揮をする一方、しんがりはライドウ氏が務めてくれるようだった。
それにしても、戦闘が起きるやいなやのしなやかな動き。今は落ち着いた雰囲気だが、まるで剽悍な猫科の猛獣を思わせた。若い頃はこの人、血気盛んな青年だったのではないのだろうか。
方舟に戻る。ヒメネスは即座に医療室に運ばれて行ったが、いずれにしても大した怪我はないらしい。
予定通りの見回りは終わったのだ。得に問題は無いと考えて良いだろう。
全クルーの収容を確認して、物資搬入口が閉じる。サクナヒメとライドウ氏が話をしていた。
「アレックスがためらった!?」
「ああ。 まずアレックスの奴、わし相手にパラスアテナというあの女神と、同格の悪魔をけしかけてきよってな。 もうパラスアテナに負ける事はないが、もう一体の同時攻撃もあってわしの反応が遅れた瞬間、ヒメネスを狙って一直線に殺しに来よった。 だが、そこでヒメネスのバガブーが、ヒメネスを庇った。 そうしたら、明らかに躊躇いよってな、わずかに一撃がずれた」
そうでなければ、光の剣がヒメネスの胸を貫いていただろうと、サクナヒメは悔しげに言う。
かなり責任を感じている様子である。
「わしも焼きが回ったな。 アレックスの奇襲は何度も見ているというに」
「姫様の責任ではありません。 お気になさらず」
「ああ、そう言ってくれるとありがたいが。 唯野仁成、そなたも気を付けよ。 先回りして来たアレックスの殺意は今まで以上じゃ」
「はい」
聞こえてしまっていたので、聞いてしまったが。まあ聞かせるつもりでもあったのだろう。
サクナヒメは注意を促すと、風呂に入ると言い残して物資搬入口を去る。
考え込んでいたライドウ氏。熟考している様子は、何というか堂に入っている。
唯野仁成は、敬礼すると話をしておくべきだと思った。
「アレックスについてなのですが……」
「うん、何か知っているのか」
「以前ケンシロウ氏と交戦したときのログは確認しましたか?」
「いや、忙しくて見れていない」
頷くと、データを共有する。ざっと見た後、ライドウ氏は更に考え込む。既にデモニカの頭部部分は脱いでいるが。余計に考え込んでいると、憂いの色が強かった。
この人は悪魔対策の専門家として、国際再建機構に来たと言う。
何でも世界の危機がある場所に「呼ばれる」らしく。今回はその縁でこの世界に来て。国際再建機構に協力を申し出たとか。
何処まで本当かは分からないが、サクナヒメなどの存在もある。信じては良いのだろうと唯野仁成も思う。
そして悪魔対策の専門家だというのなら。それこそ心の隙間に入り込んでくる精神生命体と、年がら年中接していると言う事でもある。
苦悩はそれこそ、常人では思いもよらない場所にあるだろう。
「どうにもおかしいと思っていた事がある。 君の意見を聞かせてほしい」
「はい、俺で良ければ」
「アレックスはどうして君達にこうも執着するのかだが。 どうにも君達自身を知っているとしか思えない」
「それは俺も思いました。 俺は外道とまで呼ばれたこともあります」
確かに紛争地帯で殺し合いをした事はある唯野仁成だ。唯野仁成を個人的に恨んでいる者もいても不思議ではない。
だが、国際再建機構といえば、ストーム1が所属している。
下手に敵対を表明すれば、もって一月、である。国際再建機構に対しては、何処の武装勢力もマフィアもアンタッチャブル扱いしていて。もしも目をつけられたら、即座に離散するような状態になっている。
そんな状況で、唯野仁成が余計に強い憎悪を集めるとも思えないのだ。
「君の戦歴を見たが、ダーティーワークはやっていないな」
「普通の作戦任務だけです。 暗殺などはしていないですし、民間人に対する攻撃などもってのほかですが」
「そうか。 アレックスのは、逆恨みにしては反応がおかしい。 特に今回の一件は、明らかにバガブーの献身的なヒメネスへの行動を見て手を鈍らせている。 絶好の好機だったというのに。 逆恨みをするような人間は、基本的に自己中心的で、己の正義を信じて疑わない。 アレックスという娘は、何かもっと大きな目的があって此処に来ているのではないのだろうか」
「本人と話を持つ機会があれば良いのですが……」
これについては、嘘偽りない本音だ。アレックスには、どうにもシンパシィを感じるのである。
咳払いすると、周囲を見回して。そしてライドウ氏は言う。
「俺の経験則ですまないのだが。 人間は、身内にこそ最も強い憎悪を向ける傾向があってな」
「身内……。 俺の家は母子家庭で、母はもういません。 縁者はいませんし、俺の家族は少し年が離れた妹とその夫である義理の弟だけで、仲だってそれほど悪い訳では」
「……ふむ、なるほど。 妹さんは妊娠が発覚して居残り組になった国際再建機構の学者なのか」
「ええ。 頭が良い、自慢の妹です」
だとすると違うかと、独りごちるライドウ氏。
そして、妙なことを言った。
「アレックスというあの娘なのだがな。 どうにも君に目の辺りが似ているような印象を受けたのだ」
「しかし俺には子供はいませんし、仮にいてもあんな年齢では……」
「分かっている。 ともかく、もう少し情報を精査するべきだな」
一度戻るように指示される。
今回は、いきなりアレックスが更に戦力を増やして仕掛けて来ている。
作戦に不備があったとは思わないが。
更に念には念を入れて、作戦を構築するべきだ。そう、唯野仁成は思った。
レクリエーションルームで休憩していると、ヒメネスが来る。今、首脳部が作戦を練り直しているらしい。
アレックスが今までに無い殺意で来ている事もある。
恐らく、編成などを見直すつもりなのだろう。
「危なかったな」
「ああ。 マジで三途の川だったかが見えた気がしたぜ」
「バガブーが庇ってくれたんだって?」
「そうだ。 守るつもりが守られちまった。 バガブーは良い奴だぜ、俺に似ずにな」
若干ヒメネスの顔に影が差すが。だが、バガブーは弱いだけの悪魔ではなく。ヒメネスを本当に信頼してくれている事も分かって微笑ましい。
コーヒーを淹れて渡す。周囲でも、不安そうに会話をしていた。
何でも調べれば調べるほど、このゴミ山は難攻不落の要塞も良い所であることが分かってきているらしい。
彼方此方に有害廃棄物らしい物質の河や池が出来ていて、足場も不安定。
戦闘なんて無理だという声まで上がり始めているとか。
その上、悪魔同士が戦闘をしていて。彼方此方で崩落まで起きていると言う。ゴミ山が不安定なのだ。
「あの赤黒、何を考えていやがるんだろうな。 冷酷な殺人マシーンかと思ったら、両手を拡げて俺を庇ったバガブーを見て、明らかに手を鈍らせやがった。 お前は一体どう思う?」
「分からないが、冷徹な殺人マシーンという前提がそもそも間違っているのかも知れない」
「一度殺されたのにな」
「殺意は本物だが……ケンシロウ氏の言う所によると、あの怒りは哀しみより来ていると言う事だ」
そういえばそんな事を言っていたなと、ヒメネスはコーヒーを飲み干す。
意外にヒメネスは砂糖を入れる方だ。雰囲気的にはブラックを好みそうなのだが。
「酒をいれてえが、流石にこんな任務中じゃなあ」
「娯楽については彼方此方のPCにあるデータベースから楽しむしかないな」
「分かってる。 嗜好品は殆ど積む余裕が無かったそうだしな」
「……今回も厳しい攻略戦になりそうだ」
ため息をつくと、通信が丁度入った。二人揃って、物資搬入口に。
スペシャルは前回と同じ三人。そしてゴア隊長が、既に指揮のために来ていた。
調査班がいる。と言う事は、この間の威力偵察はハプニングはあったとはいえ。精神に入り込んでくる悪魔に関しては、問題をクリア出来たと考えたのだろう。
「これより第二次威力偵察を行う。 今回はアレックスが相当に旺盛な戦意を抱えている様子だ。 故に三班が一つになって、奇襲を警戒しながら行動する」
「それは頼もしいッスね」
「ヒメネス!」
「へいへい」
たしなめるゼレーニンに、ヒメネスが明らかに挑発的に返すが。ゴア隊長はやれやれと呟くだけだ。
唯野仁成から見ても、ヒメネスとゼレーニンは殺し合いに発展するほど仲が悪いようには見えないし。むしろ息があっているようにすら見える。
だから、放っておいて良いと思うのだが。
いずれにしても、三班合同で調査をするという事は、皆である程度固まって行動すると言う事だ。
アレックスも流石に簡単には仕掛けられないだろう。
「今回の目的は、ゴミ山の状態の調査だ。 ゴミ山のどこにこの世界の首魁が潜んでいるか分からないので、まずはゴミ山そのものを崩す事を考えている。 ゴミ山を平らにしてしまえば、崩落どころでは無いからな」
「それはまた、随分と力業ですね……」
「ゴミ山がもしも何かしらの秩序を持ってくみ上げられているのなら、登り道を探したい所でもある。 いずれにしても調査には非常に大きな危険が伴う。 また調査班は、電波中継器を撒いて貰いたい。 今回の電波中継器は改良型で、パラボナから発せられる電波を増幅し拡散する」
要するに精神に入り込んでくる悪魔を排除し、撃退出来ると言う事だ。
それは有り難い話である。デモニカにも似たような機能がついているが、それでも悪魔を撃退する能力は強力な方が良い。
すぐに物資搬入口から出て、三隊で一部隊を作る。通常編成の一個小隊と同人数くらいだ。
全部隊の支援を受けながら動いている訳だし、周囲を見ると一線級の機動班クルーと、調査班のみの構成だ。
更にストーム1とサクナヒメ、ライドウ氏もいる。
生半可な悪魔では、即座に返り討ちである。
だが、それでも油断は絶対に厳禁だ。それぞれが注意しながら、移動を開始。ゴミ山に到着すると、すぐに調査班が運んできた機器を使って測定を開始。更に電波中継器を撒きはじめる。
上空に行っていたアリスが降りてくる。
「アレックスいないよー」
「ありがとう」
「どういたしまして。 また偵察に行く?」
「頼む」
アリスがすいーと飛んで行く。力を順調に取り戻しているようで何よりだ。周囲を油断無く警戒しつつ、調査班を守る。サクナヒメが、ゴミ山にひょいひょいと登るが。眉をひそめる。
「この有様では翼でもない限り戦どころではないのう」
「姫様、足場は悪いようですか?」
「悪いもなにも、ちょっと力を入れるだけで崩れるわこんなもの。 それに、みてみい」
サクナヒメが示した先にあるのは、ダンプカーらしい大きなゴミだ。
オーカスの所と同じようなレプリカなのだろうけれども。それにしても、あれが崩れてきたらどうなるか、ぞっとしない。
「ショッピングモールと似ていやがるな」
「……確かに似ているが、ちょっと何というか。 作った奴が、興味も無く積んでるように見えるな」
「そういえば積まれているゴミに秩序が感じられないな」
口々に話しているのが聞こえる。
やがて調査班が手を振って来たので、移動を開始。わっと喚声が上がったのは直後だった。
移動先で、数十対数十で悪魔が殺し合いをしている。ゴミ山で視線を遮るように、ストーム1がハンドサイン。機動班がすぐに動き、調査班もそれに続いて移動する。
ライドウ氏が小首をかしげる。
「おかしい。 種族同士で別れて殺し合っている様子は無い。 正気を失ってそれぞれ滅茶苦茶に殺し合っているような様子だ」
「つまり軍勢同士で殺し合っているわけでは無いと」
「そうなるな」
何だそれは。此処のボスは、それを止める気すらない、ということか。
オーカスは呼び出した軍勢をそのまま喰らってしまった。
此処の奴は、呼び出した軍勢に殺し合いをさせている。悪魔らしいと言うか何というか、よく分からない。
ともかく、殺し合いが収まるまでしばらく身を隠し。
戦闘が終わった後、その場に行く。
大量のマッカが散らばっている以外、数体の悪魔が瀕死で倒れていた。何体かの悪魔に声を掛ける。殆どはそのまま死んでしまうが、一体まだ比較的無事なのがいた。
調べて見ると、マント姿の影がある青年だ。幻魔クルースニクとある。
デモニカのデータによると、クルースニクというのは吸血鬼退治に特化した存在であるらしい。
クドラクと呼ばれる邪悪な吸血鬼と、殺し合いを延々続ける運命にある存在であるのだとか。
いずれにしても、会話は出来る。唯野仁成は、悪魔召喚プログラムを起動。何とか、仲魔には出来そうだ。
話をして、契約を成立させる。といっても瀕死で、相手はうわごとのようにブツブツ答えるだけで。契約はすぐに終わったが。
PCに吸い込まれるクルースニク。まずはマッカを与えて回復させ、それから証言を得たい。
他にも数人が、生存している悪魔を見つけて、契約に成功したらしい。
その場を離れた方が良いとストーム1が提案。すぐに戦闘の跡地を離れて、作戦行動を継続する。
アレックスは仕掛けてくる様子は無いが、やはりゴミ山の彼方此方で戦闘が行われているらしい。
瀕死の悪魔も時々見かけた。
モラクスとミトラスは、軍勢を使って身を守っていたが。
オーカスは己を最強にし、要塞を作ることで身を守る工夫をしていた。
此処の奴は何がしたいのかよく分からない。
ともかく、捕獲した悪魔から聴取を続行するするしかないだろう。戦いに勝つために必要なのは、いつも正しい情報だ。敵は或いは、其所まで把握しているのかも知れない。
しばらく調査班を護衛しながら移動を続ける。
少し休みたいとゼレーニンが言い出したが、ヒメネスが歩けと一喝。それに対して、サクナヒメが苦言を呈そうとした瞬間。
ライドウ氏とストーム1が、同時に動いていた。
飛来した二体の悪魔。パラスアテナと、後一体は何だ。半魚人みたいな姿をした、何とも言えない強力そうな悪魔だ。
「うえ、あいつ邪神ダゴンだよ」
「総員警戒!」
アリスの言葉に、サクナヒメが跳躍し、そして一気に加速。
パラスアテナとダゴンと戦いはじめたストーム1とライドウ氏の間を縫うようにして、完璧なタイミングでアレックスが突貫してきたのだ。
間に合う。アレックスの一撃を、完璧にサクナヒメが防ぎ抜く。だが、アレックスが悔しそうにしている様子は無い。
ということは。狙いは別と言う事だ。
ヒメネスは、モラクスによって守られている。だが、戦い慣れしていないゼレーニンは、周囲を雑に天使で守っているだけだ。
そこに、矢が飛来する。殆ど完璧な一矢で、天使達の間を縫うようにして、ゼレーニンの頭に迫る。まずい。唯野仁成は気付けた。だが、とても間に合わない。
誰も対応出来ないその時。
ふわりと降り経った見覚えのある奴が。その矢を受け止めていた。
「おっと、やらせませんよ」
「マンセマット!」
アレックスが、今度こそ舌打ちする。サクナヒメとも、既に接近戦で互角の状況。パラスアテナもダゴンも押されている様子だ。
形勢不利を判断したのだろう。アレックスが叫ぶ。
「魔神インドラ、引きなさい! 撤退よ!」
「クソ、逃がすか!」
「止せ」
ヒメネスがライサンダーを構えるが、サクナヒメが止める。パラスアテナもダゴンも消滅し、その場から消えていた。
ヒメネスも、サクナヒメの言葉は素直に聞く。武神としての判断力、戦闘力に敬意を表しているからだろう。
ただ、どうして止めたかは聞いていた。対するサクナヒメの言葉は理路整然としていた。
「こんな訳の分からない場所で深追いなんぞしたら死ぬだけじゃ。 それくらい分からぬそなたではあるまい、ヒメネス」
「確かに姫様の言う通りだな。 何度もすまねえ」
「いい。 そなたはどんどん腕を上げている。 もっと腕を上げよ」
「ふふ、素晴らしい連携ですね。 何よりも、邪悪の矢よりも敬虔なる神の使徒を守れたようで何よりです」
何も反論を許さないように、いきなり場に割り込んできたマンセマットが、その場を離れていく。
ゼレーニンは感謝して、何やら祈りの言葉を唱えていたが。
唯野仁成は、その行動を止めたくなった。
仮にゼレーニンが信じるような神がいたとしても。あのペ天使は恐らく自分の目的で行動している。
あいつに祈りや感謝の言葉を捧げるのは無駄だ。
ともかく、これでデルファイナスに入ってから二度の襲撃だ。調査はかなり進めた。ライドウ氏がゴア隊長に話をしている。少し悩んだ後、ゴア隊長は。
一旦の撤退を決定したようだった。
例の奇病を事前に防いだとしても、アスラが手強いことには代わりはありません。
この辺りから、スペシャルであっても一方的な戦いは無理になっていきます。
同時に、唯野仁成達エース級のクルーが、実力的にスペシャル達に追いついていくのです。