Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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第三勢力同士も交戦をしています。

交戦だけではなく、様々な駆け引きも。


4、ゴミ山の裏で

アレックスは最高の機会だと判断して、悪魔の大軍と交戦を開始した次世代揚陸艦の方に向かったのだが。

 

それに立ちふさがったものがいた。

 

即座に悪魔を展開する。油断どころか、手を抜ける相手では無いからだ。

 

大天使マンセマット。

 

未来にて、破滅を作る原因の一角。天界の重鎮で、天使の中でも相当な強者である。

 

今までアレックスがマンセマットと交戦した事は何度もあるが、「この世界」では、この間インドラの矢を防がれたときの交戦が初である。

 

いずれにしても、はっきりしているのは。

 

此奴の実力は、現時点のアレックスでは、全戦力を動員しても勝てるかどうか分からない、と言う事だ。

 

「おっと、行かせませんよ」

 

「この世界に巣くっている魔王アスラの性質は貴方も知っているでしょう。 邪魔をされる理由は無いはずだけれど」

 

「理由は二つ。 ゼレーニンを貴方の汚い手に掛けさせるわけにはいかない」

 

「どの口が言うかっ!」

 

激高するアレックスだが、マンセマットは涼しい顔である。

 

此奴のせいでゼレーニンがどんどん一神教の信仰に耽溺していき、最終的には世界を滅ぼすトリガーを引く。

 

それは既に自分の目で確認している。ゼレーニンを殺そうとしているのは、それを防ぐためなのだ。

 

マンセマットは天使かも知れないが、はっきりいってその存在は手段を選ばない野心家である。

 

天界の天使達はいずれもが心清き存在であり、唯一絶対の神に忠実な下僕である。

 

そういう話は聞いた事はあるが、とんだお笑いぐさだ。こいつが野心によってゼレーニンを傀儡化しようとしていることを、アレックスは知っているのだから。

 

それだけじゃあない。

 

「もう一つは、ゼレーニンの成長のためです。 精神に干渉する事を得意とする此処の悪魔に打ち克ったとき、ゼレーニンの心は更に美しく研磨されるでしょう。 それを邪魔されるわけにはいきません」

 

「何が……!」

 

「バディ、落ち着け。 冷静さを欠いて勝てる相手じゃあないぞ」

 

「……そうね、ジョージ。 落ち着いたわ」

 

アレックスは、展開しているパラスアテナ、ダゴン、インドラにそれぞれ周囲の天使どもを任せる。

 

マンセマットを此処で屠ってしまうと言う手もあるのだ。そうすれば、ゼレーニンをたぶらかすペ天使はいなくなる。

 

勿論簡単に倒せる相手ではないだろうが、此処にいる手持ちの悪魔達の総力を挙げれば。

 

突貫。マンセマットは、にこにこと笑ったまま、構えもとらない。

 

嫌な予感がしたので、サイドステップして全力で避ける。予感は的中。至近に、特大クラスの雷撃が直撃していた。

 

喰らっていれば、此処まで成長したデモニカでも、危なかったかも知れない。

 

マンセマットは余裕の様子。更に、魔法を使った様子も無い。

 

此奴では無い、ということだ。

 

では誰だ。

 

殺気に気づき、斬撃をかわす。髪の毛が数本散らされた。飛び退きつつ、銃弾を乱射する。

 

弾丸を防いだのは。小柄な女神だった。花の冠を被った、子供の様に幼い顔つきの女神。

 

間違いない。女神デメテル。秩序陣営の悪魔として、シュバルツバースで活動しているのを確認していたが。

 

此奴、こんな所にいたのか。

 

小さな手を振るっているデメテル。今の斬撃、まさか手刀か。こいつ、この見かけで、とんでもない武闘派だ。此奴との交戦経験は無い。今回で、解析するしかない。

 

「あらあら。 もう少しでざっくりでしたのに」

 

「助かりましたよデメテルどの。 不埒なる闖入者を撃退するべく手を貸していただけるとは、何とも光栄です」

 

「良くも動く口ですわね。 まあ収穫のためですわ。 本来なら一神教の天使など、手を貸すのも反吐が出ますのに、こうしなければならない我が身がのろわしい」

 

「そういわないでいただきたい。 何ならこの戦いが終わった後、貴方を天界の重鎮、大天使としてお迎えいたしましょう。 何なら神霊でもかまいませんよ」

 

くつくつと笑うマンセマット。まるでバケモノ同士の化かし合いだ。

 

アレックスは呼吸を整える。そして、周囲を軽く見た後、跳躍。その場を離れに掛かる。

 

見たところ、マンセマットとデメテルの実力は殆ど互角。

 

早い話。まともにやりあって、勝てる相手では無くなったという事だ。

 

ジョージに言われるまでも無い。此処は撤退の一手しか無かった。

 

「おっと、逃がしませんよ」

 

マンセマットが初めて能動的に動く。空から無数の光の矢が飛び来て、アレックスの残像を次々貫く。

 

冷や汗が流れる中、前を塞ごうとしてくる天使を片っ端から斬り伏せつつ、その場を離れに掛かる。敵は追撃をしてこないが。パラスアテナ達は既にロストしているようだった。

 

ようやく敵の反応が消えた後、悪魔達をPCに戻す。ダゴンもインドラもやられていた。どっちもそれぞれ重鎮とも言えるほどの悪魔なのに。それでも勝てないほど、あの二匹が強いと言う事だ。

 

特にデメテルには、空恐ろしいものを感じる。

 

マンセマットはまだ分かりやすい。あいつは野心のために動いている。そして、ゼレーニンを籠絡することに成功した世界では、奴は野心を達成してしまうのである。

 

だが、デメテルは。

 

此処数回のシュバルツバースへの挑戦で見かけるようになったあのオリンポス十二神の重鎮は、どうにも動きと考えが読めない。嘆きの胎にいる囚人の解放を狙っているようではあるのだが。

 

それにしてもおかしな動きが多すぎる。

 

「アレックス。 この世界からの撤退を推奨する」

 

「……まさか、マンセマットとデメテルが連携して動いているとはね」

 

「それもある。 だが、まだ不確定な動きをする第三勢力が他にもいる」

 

そうだった。毎回姿を変えている、不可思議な奴。正体は分からない。分かっているのは、混沌勢力の大物だと言う事だ。今回も恐らくだが、当然のように来ているだろう。どんな姿をしているのかは分からないが。

 

確かに、こんな状況ではもはや唯野仁成にも、ヒメネスにも、ゼレーニンにも、仕掛ける余裕は無いだろう。

 

この間、ヒメネスへの攻撃を躊躇ったり。

 

ゼレーニンを仕留め損ねたのが、本当に効いてきている。

 

どうしてヒメネスを仕留めきらなかったのかと、ジョージにも苦言を呈されたが。

 

ヒメネスを必至に守ろうとするあの弱そうな悪魔を見て、思い出してしまったのだ。

 

凶行から自分を守ろうとして、散ったあの人を。

 

私は、凶行に手を染めた、彼奴らとは一緒になりたくない。

 

非情になると決めたのに。

 

どうしてもアレックスは、非情になりきれていない。

 

やはり戦士には向いていないのだろうか。

 

極限までデモニカを磨き抜いて強くなったというのに。根本的に向いていないというのだろうか。

 

しばらく黙り込んでいると、ジョージは言う。

 

「パラスアテナ達を回復させ次第、嘆きの胎に向かおう。 恐らく奴らは、看守悪魔との苛烈な戦いを嘆きの胎で行うはずだ。 それを考えれば、其方の方がまだターゲット抹殺の好機があると言える」

 

「……」

 

「フォルナクスに奴らが到達する頃には、唯野仁成は更に強力な悪魔を手に入れる。 更に今回は、奴らには得体が知れないアンノウンが複数ついている。 いっそ、この世界は諦めるのもありだぞバディ」

 

「いや、やるだけはやりましょう。 幾ら平行世界がたくさんあるといっても、この世界に生きている人達はいるのよ」

 

アレックスはそう、絞り出すように言うと。

 

顔を覆って、しばらく一人にしてほしいと告げた。

 

ジョージは意を汲んだのか黙ってくれる。

 

どんなに世界が腐っていたとしても。たくさん、必死に生きている人はいる。そんな人達を地獄に叩き込まないためにも、アレックスがやらなければならないのだ。

 

しばしして、気分を整え直すと、アレックスはジョージに告げる。

 

嘆きの胎に向かうと。

 

力を蓄え。暗殺の好機を窺うために。

 

 

 

(続)

 




くせ者であるアスラ。武神でありながら、姑息な手を使う事を厭わない相手です。

如何にその魔の手を攻略するか。

そしてゼレーニンに転機が訪れようとしています。
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