Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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穴熊を決め込むアスラ。なかなか勝負に持ち込めそうにありません。

確実に外堀を埋めながらも、どうにか勝負を挑むべく、方舟の英雄達は画策します。


闇からの呼び声
序、飽食の後


アスラは考えを切り替えると、ひたすら戦いだけが起きるように状況を誘導し直した。今まで蓄えた力の一部を使い、無作為に大量の悪魔を召喚。それら全てを狂わせて、人間共に向かわせたのだ。

 

狂った悪魔達の苦しみ。

 

それを迎撃する人間の恐怖。

 

全てが美味だ。

 

戦いは、元々狂気と恐怖からなり立つ。それを乗り越えたものが美しい魂を持つ神霊へと変化していく。

 

それが古くは世界のルールだった。

 

それなのに、アスラが知らないうちに勝手にそれが書き換えられていた。唯一絶対。法は一つ。そう決めつけている輩のせいで、世界はどんどんおかしくなっていき。やがてアスラが好む原初の死闘は無くなっていった。

 

アスラは決めている。

 

方針転換をしたのだ。そろそろ、やり方を変えるべきだと。

 

元々最終的には形を得て、それで人間の世界に降り立つつもりだったのだ。多少前倒しになるが。それをただ少し早く行うだけである。

 

ふと、気がつくと。

 

知らない奴が、アスラの精神の中核にアクセスしてきていた。

 

どうにも覚えがあるような気もするが、分からない。いずれにしても、アスラにアクセスしてくると言う事は、生半可な相手ではないだろう。

 

「何者か」

 

「あわわ、やっとつながりましたぁ。 今回はとっても慎重に事を進めているんですね、アスラさん」

 

「……何だ貴様は」

 

「うふふ、さいふぁーとお呼びください」

 

何だそれ。聞いた事がない。かといってこの反応。明らかに混沌勢力の、それも重鎮クラスの実力者の者だ。

 

大母の世界ならともかく、どうして此処に降りて来ている。それがよく分からないが、ともかく話は聞かなければなるまい。

 

「さいふぁーとやらが何用だ。 我はこれから戦に備えて、準備を幾つかこなさなければならないのだが」

 

「その戦が面白くなくなるかもしれないのだよ」

 

不意に口調が変わる。アスラは今実体がないが、何となく嫌な予感を覚えていた。此奴は何者だ。

 

少なくとも、アスラより上の実力者なのではあるまいか。

 

いずれにしても、意思の疎通は続ける。

 

「この世界に天使が入り込んでいる事は知っているだろう」

 

「ああ。 だがどうせ何もできぬわ。 だから放置しておいた」

 

「それがな、やってのけたのだよ」

 

「!?」

 

そういえば、人間共が端末の位置を探し出せたのは。妙に探し出すのが早いとは思ってはいた。

 

天使共の差し金だったか。なる程、それなら合点がいく。少しばかり調子に乗っているようだが。まあいずれ報いはくれてやる。

 

今、大母の精神は混沌に傾いている。

 

人間共がシュバルツバースと呼んでいるこの世界が拡がりきれば、到来するのは混沌の世界だ。

 

そうなれば、天使共は終わりなのだから。

 

「それで貴様は何が目的か。 天使共を排除したいのか」

 

「違う。 天使は女神と手を組んで、人間共の内輪もめを止めた。 このまま工夫無しに動くと貴様は負ける」

 

「!」

 

「そういうことです。 では、頑張ってください。 失礼します」

 

また口調を変えると、さいふぁーとやらの気配は消える。

 

アスラは苛立ちながらも、その言葉が正しい事を知った。ならば、確かに幾つかの手を打っておく必要があるだろう。

 

悪魔を無意味に大量に呼び出すのは論外だ。

 

毎回かなり力を消耗する。もし人間が対策を練ってきた場合、力だけ消耗するばかりか、人間共が持ってきている悪魔を従えるからくりが猛威を振るう可能性がある。

 

その場合はアスラが損だけをする。

 

戦は損得で考えて進めるものだ。勝つのは、最終的に相手より得をしたもの。これについては、原始的な戦闘の時代から変わっていない。

 

ならば、精神攻撃を続けてやるか。

 

奴らは恐らくだが、そろそろゴミ山を整地して、攻め上がってくるはずである。そこにつけ込む隙がある。

 

しばし考え込んだ後、アスラは決める。

 

敵の出鼻を、続いて挫いていくと。

 

それに、思うようにはさせない。天使共が暗躍しているなら、その鼻っ面を打ち砕いてやる。

 

幾つかの手を順番に打つ。

 

アスラは、戦いを楽しむために。どんどん手段を選ばなくなってきている自分に気付きつつも。

 

それを何処かで楽しんでいた。

 

 

 

さいふぁーがため息をつきながら、アスラとの精神リンクを切る。今腰掛けている岩からは、人間達の鉄船が見える。鉄船は大戦をした後だというのに意気盛ん。まるで挫ける様子も無い。アスラは小手先の策で挑んでいるが、基本的に戦は兵を揃えて正面から押し潰すのが一番勝率が上がることを忘れてしまっているように、さいふぁーには思えていた。

 

用兵家にはありがちなことだ。高度な戦術を使って華麗に勝つ誘惑に捕らわれ、結局作戦を混乱させてしまう。

 

人間の悪い影響をモロに受けたアスラだ。

 

そういった、悪い意味での用兵家としてのあり方も、影響を受けてしまっているのだろう。

 

恐らくアスラは勝てないだろう。それは分かっている。だが、可能性はアスラにも生じさせた。

 

可能性を可能な限り増やしたい。それがさいふぁーの考えである。だから、これでいいのだ。

 

可能性がない世界など、死んでいるも同じ。シュバルツバースが出た時点で、この世界は実の所どの勢力にとっても破滅的な状態になったのだ。それはさいふぁーも理解している。部下達にも周知している。

 

だが、愚かな一部は。今こそが好機と先走ってしまった。

 

さいふぁーは混沌陣営の重鎮だが、別に無秩序な混沌が絶対的に正しいとは考えていない。可能性が生じ、それによって無数の選択肢が生じる事を混沌と考えている。だから別に、あんな独善的な奴で無ければ、神に従う選択肢だってあったのだ。本性を見たから、その袂から離れただけだ。

 

さて、と。

 

腰を上げると、側に降り経った者がいる。髭を豊富に蓄え、法律家として重そうな服を着ている老悪魔だ。手には分厚い本を持っている。

 

「ここにおいででしたか、閣下」

 

「ルキフグスさん、今はさいふぁーですよぉ」

 

「そうでしたな。 それで、この世界にはもう干渉をしない方針ですか?」

 

「いいえ、まだまだ」

 

埃を払ってスカートの皺を伸ばすさいふぁー。メイド服は手入れが色々大変である。そしてこの形を借りた人間は、不器用な分慎重に手入れをするようにしていた。故にこう言うとき癖が出る。

 

それはそうとして。これから先にあるのは、文字通り次元が違う世界だ。あの鉄船に如何に驚天の英雄達が乗っているとしても。この先に待ち構えているのは、最古の神々である。

 

正確には……いや、それはまあいい。

 

それはともかくとして、今後もまだまだ活躍はしなければならないし。何より可能性を見たい。

 

唯野仁成という人間の可能性は、今だ方向性が定まっていないようにも思える。

 

昔さいふぁーと刃を交えた人間もいるし。

 

そのものの魂だって、汚れても鈍ってもいない。

 

ただ、此処はそれをもってしてもなお、油断出来ぬ魔郷だと言うだけの事だ。

 

「ベリアルとネビロスは?」

 

「現在、結界を作る準備に取りかかっております。 閣下の仰った通りの場所に、「あの存在」が封じられておりましたので」

 

「アリスがいたことを教えてやったか?」

 

「ええ。 それは喜んでおりました」

 

アリスはベリアルとネビロスが作り上げた人工悪魔だ。不幸な死を遂げた女の子の死体をベースに作り上げたものだが。作り手が余りにも強大すぎる悪魔だった事もあって、自我を持ち力を持ち、今ではすっかり独立して行動している。

 

最初は、ベリアルとネビロスは自分の力を誇示するためにアリスを作った様子だが。今はすっかり情が湧いており。オーカスに食われたと知ったときは、オーカスを八つ裂きにしかねない勢いだったので、慌てて止めたほどだ。

 

復活に成功し人間の手元にいると聞けば、心底安心しただろう。

 

アリスは決して性格が良いわけではないが。

 

人間なんてそんなものだ。

 

悪魔が人間を娘として育てるのはおかしい事だろうか。さいふぁーは、そうだとは思わない。

 

「ベルゼバブはどうしている?」

 

「これより例の地点に向かい、結界の構築に参加します。 勿論、私めもこれからそれに加わります」

 

「予定通りにしてください」

 

「ええ、分かっておりますよ。 これほどの錚々たる面子、それも閣下に特別に力をいただき己を強化した状態。 かならずやかの者も封じることが出来るでしょう。 例え……」

 

その先は不要と告げる。

 

実際問題、この世界にいる存在は。

 

まあ、それはいい。咳払いすると、さいふぁーは部下を行かせる。そして自身は、これからどうするか考えた。

 

興味が出て来ているのはアレックスという人間だ。

 

少し前から身を潜め、また嘆きの胎に向かうつもりの様子である。

 

唯野仁成にただならぬ憎悪を抱き。

 

ゼレーニンやヒメネスと言った人間も、抹殺しようとしている。

 

それは困る。

 

だから、場合によっては止めようと思っていたのだが。第三勢力も含め、今あの鉄船の人間に死なれると困るものは珍しく無い。

 

アレックスはそういった存在と対立し。今は窮地にある。

 

今度はアレックスの可能性を見てみたい。

 

それがさいふぁーの結論だ。

 

アレックスが、空間転移した。人間のからくりだが、本来ではとても出来る筈が無い事である。

 

人間に使える魔術の類ではとうてい出力不足。

 

からくりは現在魔術を超える火力を有しているけれども。それでも無理だ。

 

だとすると、一体あのアレックスとやらは何者だ。

 

いずれにしても、嘆きの胎とデメテルが呼んでいる特殊な空間に移動した様子なので、後で見に行くとする。

 

凄まじい気迫で戦っているが。

 

孤立無援であるが故に、そのままでは追い詰められて負けるのが目に見えてしまっている。

 

それではさいふぁーとしても面白くない。

 

単身、こんな地獄も真っ青の土地に来ているのだ。余程の強い心があるのだろう。また、魂も黒く濁ってはいるが。その黒さは、まさに漆黒の底とも言える輝きだ。哀しみによって鍛錬され、怒りによって鋳造された魂。

 

さいふぁーとしては、面白いと思う。

 

本来全知全能を気取る四文字の神が、手をさしのべ救うべき存在であるはずなのに。

 

奴は己を信仰させることにだけ興味を持ち、弱き者も。救われるべき者も救おうとしない。

 

ならばさいふぁーが手を貸す。

 

それだけだ。

 

いずれにしても、当面はこのアスラの世界からは離れられない。人間はデルファイナスとか言っていたが。まあ呼び方はどうでもいい。

 

人間の業、過剰なる排泄。

 

それがそのままこの世界になった。アスラにしてみれば色々と不本意だろう。こんな場所に己が配置されるなんて。

 

大母とやらも無情なことをする。

 

くつくつと笑った後、活発に動いている第三勢力を見に行く。

 

大天使マンセマットと女神デメテルはどうやら利害が一致した事もあって、協力して行動を開始した様子だ。

 

邪魔をしない程度に動くのなら、それでいい。

 

もしも邪魔をするようなら、多少羽根をむしってやるくらいの事は必要になってくるだろう。

 

色々と計算を巡らせながら、さいふぁーは可能性を探す。

 

四文字たる自称絶対神と違い。

 

さいふぁーは己の手を動かす。そうして、可能性を探すのだ。

 

さいふぁーは傲慢の権化とされるが、別にそう考えるのならそれでいい。ただ世界の可能性を模索していることは。

 

紛れもない、本当の事だ。

 

 

 

唯野仁成は、デモニカに身を包んで方舟を出る。

 

会戦の直後だ。負傷者も多く、味方の戦力は半減している。死者は出ていないが、行動不能になった機動班クルーは多い。

 

だから、必然的に唯野仁成やヒメネスなど、怪我をしていないクルーの負担は大きくなる事になる。

 

側にいるのはライドウ氏。

 

この人の実力は、今まで作戦を共にすることが殆ど無かったから、最近まで具体的には知らなかったが。

 

今ではストーム1やサクナヒメ、ケンシロウにまるで劣らない凄まじいものだと認識している。

 

ヒメネスが後方を警戒しながら降りて来て。後はブレアとメイビーが続く。

 

皆、この間の会戦で負傷を免れた、一線級の機動班クルーだ。

 

デモニカに通信が来る。ゴア隊長からだった。

 

「野戦陣地とプラントは、自動修復機能が走っているので問題はない。 君達は剥き出しになった山に電波中継器を撒いて、山の全容を暴くために威力偵察をしてほしい」

 

「地下からあの気色の悪い繭がぱっくんちょ、てことは無いッスよね」

 

「あの繭については、存在している位置を全て確認済みだ。 また、仮に隠れていても近づけば探知出来るようにもしてある」

 

「真田さんに感謝か……」

 

ヒメネスが口悪く色々言うが。

 

ゴア隊長も、もうそれを咎める気は無い様子だった。

 

ゼレーニンが散々精神攻撃を食らった上に。今出せる機動班が負傷して減っている状況だから。

 

ともかく、威力偵察だけでも済ませなければならない。

 

ライドウ氏が無言で顎をしゃくる。

 

アレックスによる襲撃も警戒しなければならないが。ライドウ氏は、むしろこれくらいの人数の方が守りやすいと言った。アレックスはパラスアテナとそれに比肩する悪魔を二体も連れていたが。

 

ライドウ氏から見れば、その程度は大した相手では無いのだろう。

 

ライドウ氏自身の武勇は、他の三人と比べるとどうしても劣るが。

 

それでもライドウ氏が連れている悪魔の戦力を加味すると、互角かそれ以上という所に落ち着く。

 

それについては、唯野仁成も側で見て確認した。

 

山に入る。

 

周囲はいつ崩れてもおかしくないゴミの山だ。中には、元が何か分からないようなものも多い。

 

生ゴミの類はないが。

 

この辺りは150℃も気温がある。

 

仮に生ゴミがあっても、こんがり焼けてしまっているだろう。しかも気圧も尋常ではないから、腐るという現象が起こるまい。

 

踏んでみると、地面は案外しっかりしている。

 

それでも周囲を徹底的に警戒しながら、少しずつ山を登っていく。これではいつ何が起きても不思議では無い。

 

ゴミの山はかなり崩落が激しく、道として通れそうな場所と、そうでない場所がはっきり分かれる。

 

ユルングを召喚して、橋にして沼を越える。ユルングはとても巨大な蛇なので、背中を通って行く事が出来るが。

 

落ちたらぞっとしないので、アリスにも控えていて貰う。

 

小柄なアリスだが、脆いといってもあくまで大物悪魔に比べての話。

 

人間の一人二人抱えて浮くぐらい何でも無い。

 

ある程度進んだところで、ムッチーノから通信が入った。

 

「近くに生命反応があるよ。 調べてほしい」

 

「例の繭じゃねえだろうな」

 

「違うよヒメネス。 良いから調べて見て」

 

ちょっとまて。ヒメネスがムッチーノと会話した。驚いたのは唯野仁成だけだろうか。他は気付いていないらしい。

 

或いは、この間バガブーに助けられて少し考えが変わったのか。

 

そうかもしれない。

 

だとしたら、良い変化だと思う。ただ、ぶっきらぼうな言動に関しては、あまり代わりがないようだが。

 

ゴミの山に慎重に近付く。皆、手持ちの悪魔を出して、周囲を警戒。更に、銃も構える。

 

生命反応とは言っても、友好的なものとは限らないのだから。

 

オルトロスを出して、ゴミを避けさせる。

 

面倒くさそうにゴミを払いのけるオルトロスだが。

 

程なくして、生命反応の正体が分かった。

 

何だか分からないが、その場に存在している四角い物体だ。これが生命反応を出している様子である。

 

ただ、見た感じ機械にしか見えない。

 

触ってみても、同じ感想しか抱けなかった。

 

「かなり奥までいっているみたいだし、それを野戦基地まで運んで戻って来てくれるかな」

 

「分かった。 それでは一旦帰還する」

 

「頼むよ。 後、真田技術長官が、出来るだけ乱暴に扱わないように、だってさ」

 

付属装備のワイヤーを使って、オルトロスの背中にくくりつける。

 

まあ可能な限り丁寧に運ぶが、戦闘で誰かの命が脅かされるようだったら。命を優先する。

 

此処では悪魔が連日連夜殺し合いをしているのだ。

 

あまり人命以外を重視している余裕は無い。

 

さっさと下山すると、既にサクナヒメと調査班が待っていた。珍しく、真田さんがデモニカを着て出て来ている。

 

野戦陣地の内部に、簡易の研究所を作ると、さっき持ち帰った生体反応を出している機械っぽいものを調べるつもりになったようだ。

 

サクナヒメは側で見張り。ライドウ氏も此処に残るという。

 

唯野仁成達は帰還、休憩である。物資搬入口で解散。レクリエーション室に向かう途中、ヒメネスがぼやく。

 

「此処のボスは一体何を考えていやがるんだろうな」

 

「遅滞戦術だろう」

 

「恐らくはそうだろうが……だとしても、戦うつもりがないようにさえ思えるぜ」

 

「或いはそうかも知れない。 戦闘をさせず、此処で俺たちをずっと引きつけるつもりなのかもな」

 

ヒメネスが見ている所で、悪魔合体を試す。

 

この間仲魔にしたクルースニクだが、すっかり参ってしまっているらしく、他の仲魔と合体して強い存在になりたいと希望を申し出てきた。ハトホルも同じような事を言っていたので。良い機会である。

 

悪魔合体プログラムを走らせる。かなりのパワーを食うので、艦内でデモニカに充電しながらやるように。最近では、そういうお達しも出ていた。彼方此方の部屋で、最近ではクルーが悪魔合体をやっているのが見られる。

 

程なくして、出現する悪魔。

 

燃え上がる、いかにも神々しい鳥だった。

 

「我は霊鳥朱雀。 南方の守護者にして、炎を司る鳳凰とも同一視されし存在。 我を使いこなして見せよ……」

 

朱雀、か。

 

神々に近しい神話の鳥を霊鳥。逆に邪悪をばらまく神話の鳥を妖鳥と分類するらしいが、ライトサイドの神の鳥か。

 

朱雀というのは何処かで聞いた事がある。調べて見ると、方角の守護神だそうで、日本でもそこそこに知名度が高い神格であるらしい。

 

ヒメネスが、嘆息した。

 

「良いのをまた捕まえたな。 俺の方はどうにもな。 全部合体させてモラクスを作って以降、どうにも良いのがつかまらねえ」

 

「マッカを使って、今まで使っていた悪魔を再度呼び出してはどうだ」

 

「いや、マッカが足りねえんだよ。 モラクスが其方のお嬢さん同様にどか食いするもんでな」

 

「……この様子だと、強い悪魔ほど大量のマッカを喰らい続けるのだろうな」

 

地獄の沙汰も金次第と言うが、これほど露骨だと流石にげんなりする。

 

ともかく、今後生き延びるためにも。強い悪魔を作るのは必至だし。何よりも、魔王アスラをどうにかして、戦闘の場に引っ張り出さなければならない。

 

やる事は、多かった。

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