Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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サクナヒメ、アスラの妄言を一刀両断。

此処までサクナヒメが言えるのも、サクナヒメが原作終了後のすがただからです。

そして残念ながらアスラは、人間とともにある神にはなれなかったのです。


2、錯乱狂乱

唯野仁成が方舟に戻り、一旦外に展開しているクルー達も戻り始める。ゴア隊長による指示によるものだ。

 

アスラが明らかにおかしくなった。

 

故に、何を仕掛けてくるか分からない。

 

一旦方舟に入って、様子見をする。それは最善手である。唯野仁成が指揮官であっても、同じ判断をしただろう。

 

サクナヒメに促されて、唯野仁成はヒメネス、ゼレーニンとともに艦橋に出向く。船内で悪魔を出す事を嫌がっていたゼレーニンだが、今回は天使によって支えられることを止めず。

 

誰もそれを咎めなかった。

 

ただ、艦橋に入った後は、流石に天使を引っ込める。

 

青い顔をしていたが、それでもしっかり立とうとするゼレーニンを。唯野仁成は止めるつもりは無かった。

 

まずはゴア隊長が咳払い。

 

「アスラに対して、痛烈な反撃、見ていて心地よかった。 そしてアスラが、明らかに感情にまかせて暴走を開始したのを此方でも確認した」

 

「何、あやつは本来は誇り高き神格だったのだろうよ。 だが、それが墜ちた。 それだけの事だ。 決定打は人間に対する学習であろうがな」

 

「……姫様、それについても交えて、幾つかの仮説について真田技術長官と、ライドウ氏から説明があるそうです。 これについては、船内放送で流します。 クルーが全員戻り次第始めましょう」

 

「うむ……」

 

サクナヒメは壁に背中を預けると、目を閉じる。

 

色々と考えているのだろう。

 

戦いを司る部分もある神であることは、アスラもサクナヒメと共通しているのだ。何が両者を別ったか。

 

それは恐らくだが。サクナヒメに以前聞かされた話だ。

 

サクナヒメは、人間と一緒に辺境にて苦労した。互いに力と知恵を分け合い、収穫の喜びを感じ。人間を守って戦い。人間はサクナヒメを支えた。

 

その経験があるからこそ、サクナヒメは人間にとって厳しくも優しい神となってくれている。

 

理想的な神のありかたとも言えるが。

 

それは、人間の現実を間近で、嫌と言うほどみてきたからなのだろう。多分人間と喧嘩もしたし。

 

逆に、人間に驚かされもした。

 

それらの経験が、サクナヒメを変えた。昔はどうしようもないお馬鹿なボンボンだったと、サクナヒメが自嘲していたが。

 

それは掛け値無しの実話だろう。

 

だが、それに対してアスラはどうなのか。

 

信仰は地域を渡る度に代わる。理由は、隣国、或いは別集団の信仰は敵だからだ。故に守護者だったり悪魔だったり、戦神だったりあらゆる信仰がまぜこぜになった。とどめに来たのが全否定。

 

一神教による、唯一絶対の神以外は全て悪魔と言う思想である。

 

それらを見てくれば、アスラ……単一神格の呼び名ではないから、きっとあれは阿修羅なのだろうけれども。阿修羅が歪みに歪むのは無理もない。

 

ましてやその上で、現在の地上の惨状を研究すればどうなるか。

 

唯野仁成は、同情はしない。ただ、アスラがああなってしまうのについては、分かる気がした。

 

ムッチーノが全体に通信を入れる。

 

「クルーの全員収容を確認! 念のために点呼を!」

 

「点呼開始!」

 

唯野仁成も点呼に応じる。程なくして点呼が終わると、サクナヒメは目を空け、唯野仁成の側に歩いて来た。

 

艦橋にいる面子だけではない。

 

これは、今クルー全員が聞くべき話だと、ライドウ氏は判断したのだろう。真田技術長官もである。

 

「アスラの狂乱ぶりは、クルーの皆も通信で見たかも知れない。 いずれにしても、この空間、デルファイナスの支配者がアスラである事は確定した。 そして、幾つかの仮説が裏付けられたことになる」

 

真田さんがPCを操作。

 

そうすると、皆のデモニカに、画像が入り込む。

 

分かりやすく作り上げた図だ。

 

「悪魔と言うのは精神生命体だ。 精神生命体というのは、基本的に何かしらの存在の精神を栄養にして活動する。 つまり物質生命体の後に誕生した存在だと言う事だ。 恐らくだが、今まで倒して来たモラクス、ミトラス、オーカスもそうだし、アスラもそうなのだろう」

 

精神生命体は、肉体を持つ通常の生命体の精神を、何かしらで栄養にする。

 

物質化出来るタイプは、肉そのものを食べる事もある。

 

そして、物質化には幾つかのプロセスが必要で。

 

外の世界ではマグネタイトと呼ばれる物質を必要とし。

 

そしてシュバルツバースでは、主にエネルギーが通貨化したものであるマッカを媒介にしている。

 

マッカを使ってダメージを受けた悪魔を修復したり。

 

更に、マッカを喰らった悪魔が更に強くなるのは、その辺りが理由だ。倒した悪魔から、マッカが落ちるのも、である。

 

サクナヒメは、マグネタイト方式で実体化しているらしい。

 

これはそもそもシュバルツバースに突入する前にいたのだから、まあそうだと判断は出来るのだが。

 

問題は此処からだ。

 

「シュバルツバースの悪魔の大半はこのマッカ方式だが、一部の悪魔は違うと言う結論が出ている。 具体的にはそれぞれの空間の王達だ」

 

「? どういうことだ」

 

「まず彼らは、情報集積体を核にして出現している。 更に倒した時に零れるマッカがあまりにも少なすぎる。 これらは戦闘の結果を確認して、既に事実だと判明している」

 

また図が代わる。

 

要するに、シュバルツバースではマッカを主にして実体化する悪魔と、別の方法を使う実体化悪魔がいる。

 

そういうことだ。

 

その別の方法というのが、どうやら外の世界から思念を取り込むこと、であるらしいのである。

 

だから、どの魔王も人間の最悪の部分を学習していた。

 

なるほど、それは納得がいく説明である。唯野仁成は魔王達と会話したが、いずれもが人間の最悪の部分を学習し、その結果あのような存在になっていた。

 

モラクスも状況証拠になっているだろう。

 

実際問題、ヒメネスの行使しているモラクスはマッカ方式で実体化したものだが。

 

唯野仁成が交戦したモラクスは、恐らく外の世界の人間達の思念によって実体化したものなのだ。

 

シュバルツバースは文字通りの思念を吸い込むブラックホールであり。

 

その行き着く先には、思念をエサに実体化する悪魔の王達が控えていた、と判断して良いのだろう。

 

「これでもまだ説明できない事があり、検証中なのだがそれについては割愛する。 さてアスラだが、執拗な精神攻撃や、我々に寄生しての観察などの搦め手を使用してきていた事は覚えていると思う。 これについては戦術という点もあるが、恐らくアスラは、実体化を敢えてしない方針を採ったのだろう」

 

「実体化を、敢えてしない!?」

 

「ちょっと待って、それって……」

 

「推察だが……」

 

真田さんが話を代わる。

 

ライドウ氏はあまり長話が得意ではないようだし。解説に関しては、真田さんの方が本職だからだ。

 

咳払いすると、真田さんが順番に説明していく。

 

「アスラは恐らくだが、同格の三体の魔王のやり方が、いずれも失敗すると判断していたのだ。 これについては、交易に関わっていた悪魔達の証言からも、裏が取れている」

 

「……」

 

「その上で、アスラは策を練っていた。 人間という存在を如何に効率よく滅ぼすか、冷静に調べるべきだと。 そして恐らくアスラは、あのゴミ山を見ても、先の会話を見ても、こう判断したと見て良い。 人間は相争わせ、自滅させるのが一番だと」

 

一切自分は手を汚さず。

 

勝手に全てを排泄しきった人間が、ゴミ山に埋もれて自滅するのを高みの見物か。

 

効率的とは言えるが、流石にあまりにもムシが良すぎる話にも唯野仁成は思えてきた。

 

いずれにしても神がやる事でも悪魔がやる事でもないだろう。

 

人間は放っておけば勝手に自滅する。

 

だから、自滅した後のゴミ山に降臨して、その後世界を浄化すればいいと。

 

互いに相争わせようとした理由については、良く分からないが。

 

アスラなりの意趣返しだったのだろうか。

 

いずれにしても、戦いが美しいだとか抜かしていたから、変質していく内に精神に異常をきたしたのかも知れない。

 

原始的な宗教は、基本的に神と人間のギブアンドテイクで成立する。

 

戦いが美しいから戦うなんて思想は、元々のアスラが持っていたものだとは思えない。

 

或いは、際限なく消費して排泄する人間があまりにも醜いと判断したから、戦い続ける古き時代の人間に却って美を見いだしたのか。

 

いずれにしても、狂ってしまったのだなと言う感想しか出てこなかった。

 

「さて、此処からだ。 アスラは先ほど完全に激高した。 恐らくだが、これから実体化を始めて、此方を潰しに掛かってくるだろう」

 

「上等だ」

 

ヒメネスが拳をあわせるが。

 

真田さんは、更にろくでもない予想を口にするのだった。

 

「もしも今の段階から実体化するとなると、今までと同じ方式を使ってくる可能性が高い」

 

「それは……」

 

「精神エネルギーを吸収して、それによって実体化する。 恐らく、今までとは比べものにならないほどの悪魔を召喚して、それを殺し合わせる筈だ。 その余波は、当然方舟にも及ぶだろう。 戦いによって生じる負のエネルギー。 恐怖、絶望、痛み等を糧にして、アスラは実体化を図るはずだ」

 

「オイオイ、冗談じゃねえぞ……」

 

「これより、プラズマバリアを全開にし、状況の推移を見守る。 またプラント類や野戦陣地は、即座に撤収開始。 悪魔の召喚が開始されるのを確認し次第、それらは放棄してしまってかまわない。 アスラを撃ち倒して、その後物資は再度回収すればいいのだから」

 

ゴア隊長が、咳払いすると。

 

総力戦態勢で、プラントなどの回収を任務として出した。

 

すぐに調査班を中心に、回収作業が始まる。

 

これは会戦よりも大変かもしれない。悪魔も総出で、物資を回収に取りかかる。倉庫はまだ余裕があるにはあるのだが。

 

それでも今後の展開が厳しいのは、容易に想像がつく。

 

動力炉の方で、クルーが話をしている。

 

「プラズマバリアを全開って。 如何にこっちに来てから何度か弄って強化しているとは言え、嘆きの胎の深部にいるような悪魔の攻撃には耐えられないって話が……」

 

「それに、想像を絶する数の悪魔が出てくるんだろ。 前の会戦で、まだ数十人動けない人間がいるんだぞ。 本当に大丈夫なのか?」

 

そういう不安が、奴に力を与えるのに。

 

唯野仁成は諭したくなったが、それについては止めておく。真田さんが来て、ゼレーニンやアーヴィン、チェンらと一緒に、動力炉を弄り始める。かなり本気で作業をしているようだし、邪魔をしては悪い。

 

ゴア隊長は冷や汗を流しながら、指揮をしている。

 

時々正太郎長官に指示を仰いでは、指揮に工夫をしているようだが、かなりの負担だろう。

 

唯野仁成は外に出て見張りをすることを申し出たが、駄目だと言われた。

 

アレックスが仕掛けてくる可能性があるからだという。

 

アレックスは一旦スキップドライブして、この世界を離れた形跡があるらしいが。

 

この狂騒は少し続く。

 

もしも撤退作業の間に仕掛けて来たら、とんでもないカオスが生じる事になる。アレックスが相当に戦意旺盛なことは唯野仁成も確認している。確かに、敢えてその戦意を刺激する事はない。

 

取り押さえられれば言う事は無いのだが。

 

そんな事が出来る甘い相手でもない。

 

やむを得ないか。悪魔達を総動員して、貴重な物資などを含め、プラントを根こそぎ回収していく。

 

最後にトラックなどが回収され、クルーも全員が船に乗り込み終わると。

 

物資搬入口が閉じた。

 

プラズマバリアが機動する。今までに無い色だ。動力炉が大丈夫なのか、少し不安になったが。

 

どうやら間に合ったらしい。

 

真田さんとライドウ氏の予見したとおりになった。ゴミ山の上空に穴が開くと、信じられない数の悪魔が姿を見せたのである。

 

下手をすると万単位ではないのか。

 

いずれもが質が低い悪魔ばかりのようだが、早速見境無しに殺し合い始める。同時に、山からあの繭が現れると、口を開いて凄まじい勢いで負の思念を吸収し始めていた。

 

どうやら、サクナヒメに言われた事で、本気で頭に来たらしい。

 

だが、それは好機だ。

 

戦場では、冷静さを欠いた方が負ける。現在、此方はそういう意味で優位にある。ヒメネスが、ライサンダーのメンテナンスをしている。もう戦闘を出来るように、心身を調整している訳だ。

 

この辺りは流石である。歴戦の傭兵であるヒメネスは、この辺りで極めてストイックだ。

 

唯野仁成は、悪魔達を召喚すると、話を聞く。此処は物資搬入口。今は機動班が殆どで、同じように悪魔を召喚してミーティングをしている者が目立つ。

 

朱雀とオルトロス、ユルングを主力に。

 

切り札としてアリスを有する現在の唯野仁成の手持ちは。ライドウ氏を別格とすると、機動班クルーではヒメネスと並んでトップだ。

 

ヒメネスが有しているモラクスは、単体で悪魔の群れを蹴散らす実力を持つが、それはアリスも同じ。

 

要するに他の悪魔の分、唯野仁成の手持ちの方が有利、という事になる。

 

軽く悪魔達と話をするが。

 

外の状況を見て、皆あまり表情は良くない。面白がっているのはアリスだけである。

 

「人間の事貪欲だのたくさん排泄するだのいっといて、自分で全く同じ事してるじゃんアスラのやつ」

 

「そうだな、その通りだ。 人間の一番悪い所を完全に取り込んでしまったんだな」

 

「その上高みの見物を決め込むってのは、ずるいねー」

 

「……そうだな」

 

アリスは挑発的に言っているが、これは恐らくだが、周囲の人間に対しても言っている皮肉だろう。

 

とはいっても、アリスは唯野仁成を気に入ってくれている。

 

時々服を繕ってだの靴を直してだの言われるのだが。それを黙々とこなすところがいいらしい。

 

アリスは話を聞く限り、サクナヒメほどでは無いにしても結構なお嬢様だ。

 

この辺りは、ごく自然に身についている動作であって、悪気は無いのだろう。別に唯野仁成も気にしていない。

 

「それで実体化したアスラとどう戦うの? 多分だけれど、オーカスなんかの比じゃないよ」

 

「それについても切り札があるそうだ」

 

「へえ?」

 

アスラは無作為に負の感情を固めた肉体を作ろうとしている。

 

それだったら、対策がある。元々精神生命体は、信仰というものを利用して形を作る。マグネタイトを利用しないなら、それでしか実体化は不可能だと言う事もある。

 

だが、アスラの場合は、信仰ではない上に。きわめて偏った精神をエサにして実体化を果たそうとしている。

 

それならば、充分に勝ち目はある。

 

今回はライドウ氏が先頭に出る。唯野仁成、ヒメネスの二人が後ろを固め。他の班はアスラが繰り出してくるだろう攻撃の対策だ。

 

これに方舟からの支援砲撃を加えて、アスラを屠る。

 

切り札については渡されているが。これが本当に効くかは、ちょっと不安ではある。ただ、真田さんが検証したものだ。効くだろう。

 

ある意味これも信仰かも知れないと思って。唯野仁成は、苦笑いしていた。

 

プラズマバリアの負荷が上がっている。無作為にゴミ山の上で戦っている悪魔達。万にも達するそれらが、無作為に戦闘を繰り広げている内に、一部がこっちに来たのである。

 

プラズマバリアにぶつかって焼け死んでいく様子は、集蛾灯で感電死していく虫のようである。

 

気の毒ではあるが、仕方が無い。呼び出したアスラも、もう無茶苦茶に殺し合わせる事しか考えていないのだろう。

 

死んで行く悪魔には悪いが。

 

もう、来た場所が悪いと思って、諦めてもらうしかない。

 

やがて、悪魔の召喚が止まる。

 

充分だと、アスラが判断したと見て良い。ゴミ山が揺れ、其所から伸びていた繭が朽ちていく。

 

役目を終えたのだ。

 

だから、もう必要ない。そういう事か。

 

自分の体の一部ですら斬り捨てる。無茶苦茶にも程があるが、アスラとはそういう風に人間の影響を受けたと言う事だ。

 

アーサーから通信が入る。

 

「今までに無い強大な悪魔の気配です。 注意してください」

 

デモニカも、警告音を慣らしっぱなしだ。

 

あの山が、丸ごとアスラとなろうとしているのが、唯野仁成にも分かった。周囲にあからさまな動揺の声が走る。

 

レインボウノアが。

 

方舟が、全力で後退を開始。プラズマバリアを解除。

 

今まで搦め手で如何に此方の力を削ぐかに徹していたアスラは、最後の最後で感情にまかせた。

 

この時点で、此方が優位に立っている。後は、優位を如何に維持するか、だ。

 

此処で感情にまかせていきり立っているアスラに力勝負を挑むのは愚の骨頂。下がりながら、更に挑発する。

 

プラズマバリアを解除すると同時に、無数の弾丸を、実体化しつつあるアスラに向けぶっ放す方舟。

 

とても効くとは思えないが、それでも大量の弾丸が速射砲から撃ち込まれる。霧状の巨大な人影になっているアスラの全身で、それが炸裂し続ける。

 

まずは切り札一。効果が出てくるのはまだ時間が掛かる。バックを続けるが、アスラはもはや此方を完全に捕捉していた。

 

霧が消し飛ぶ。

 

其所には、赤黒い肌を持つ、野性的な刺青をした、巨大な人型がいた。

 

腕は四本。顔も三つ。その巨体は、最大級にまで肥大化していたオーカスを思わせる。流石に彼処までではないだろうが、身長は百メートル近い。

 

なるほど、確かにこれならば、他の魔王達に対して余裕綽々の行動を取れる筈だ。

 

いざとなったら、これだけの戦闘力を得られるのであれば。モラクスやミトラスなんか、ゴミにしか思えなかっただろう。

 

雄叫びを上げるアスラ。

 

その巨体が、ゆっくりとゴミ山から踏み出し始める。四本ある腕には、それぞれ違う武器が握られている。

 

「機動班、出撃。 作戦通りに」

 

「おいおい、あれと真正面からやりあうのかよ……」

 

「真田さんの立てた作戦だぞ。 勝てるだろ」

 

「そうだよなあ……」

 

ぼやいている面子がいるが、やるしかない。

 

走っている最中の方舟の物資搬入口が開き、ジープで三班に分かれた機動班が乱暴に降り立つ。

 

方舟自体が時速六十キロほどで後退しているから、かなり着地と同時に揺れたが。

 

それでも、流石国際再建機構のジープである。ちゃんと着地し、横転するようなことも無かった。

 

ライドウ氏は、それどころか。

 

ジープのボンネットに腕組みして立っている有様だ。

 

サクナヒメ班とケンシロウ班と、更に別れる。

 

二つの班には、それぞれ八人ずつの人員を配備。作戦の進展に応じて、それぞれ動いて貰う。

 

アスラが、目を光らせる。三つの頭、六つの目だから、その迫力は凄まじい。

 

山のような巨人が雄叫びを上げると、走り始める。一歩ずつ、地面が吹っ飛ぶような地響きが起きる。

 

狙っているのはサクナヒメ班だ。まあそれはそうだろう。あれだけの屈辱を浴びせられたのである。

 

プライドばかり肥大化した、災害の権化みたいな存在になってしまったアスラにとっては。真っ先のデリート対象の筈である。サクナヒメも、流石にあの巨体が相手では分が悪いだろう。

 

その時。

 

アスラが、ぐらりと揺れた。

 

方舟の、空いたままの物資搬入口から、恐らく自力では持てないだろう巨大な対物ライフルを手に、ストーム1が狙撃したのである。狙撃した先は足下。

 

あの対物ライフルは何だ。開発中の新兵器か。野戦砲として使っているレールガン以上の火力だ。

 

方舟に残ったストーム1の狙撃でアスラの意識を逸らせることは作戦にあった。だが、あの兵器は知らされていない。いずれにしても、艦砲以上の火力となると、あまりにもとんでもない。

 

更に言えば、それでもアスラは転倒していない。踏み込むと、無理矢理体勢を立て直す。傷も塞がっていく。

 

だが、その過程で、明らかにサクナヒメ以外の地点からは、視界がそれた。

 

それはそうだろう。殺意を全力で向けている相手。更にはこの無敵状態に等しいアスラに有効打を与えてきた相手。それ以外に、注意を向ける余力があったら、搦め手なんか使ってこない。

 

完全に注意がそれたアスラの至近に、ライドウ氏を乗せたジープが突貫する。

 

勝負は、此処からだ。

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