Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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4、胎にて待つ者

嘆きの胎第一層、最深部。サクナヒメ班に入って、ヒメネスと一緒にここまで来た唯野仁成は。既に周囲を楽しそうに見て回っているアリスに加えて、アナーヒターを召喚していた。

 

オルトロスが素材になりたがり。更にユルングも。他にも何体かの手持ちの悪魔が素材として立候補した。

 

彼らの意思を汲み。更にマッカを回して貰って作り上げたとっておきの中のとっておきである。

 

アリスと同格の力を感じる。これで、また唯野仁成は、機動班クルーで頭一つ抜けたと思う。

 

ただ、ライドウ氏は更に桁外れに強い悪魔を使うようだし。

 

ケンシロウ氏やストーム1は無言で悪魔を連れているが。その悪魔も、アナーヒター以上の実力者ばかりである。

 

サクナヒメは本人があのアレックスを既に単身で食い止めるほどであり。

 

まだまだ、かの人達には届かない。

 

更に言うと、今ヒメネスが更に強力な魔王を召喚したいと考えている様子で。悪魔召喚プログラムを色々弄って調べている。

 

うかうかしていたら、すぐに追い抜かれるだろう。

 

アナーヒターは、階段の前に張られている強い力場を見て、鼻を鳴らすと、手をかざす。

 

そして、力場が打ち砕かれていた。

 

ほんの一瞬の出来事である。

 

「この力場には見覚えがあるわねえ。 出て来なさい、デメテル」

 

「ふふ、アナーヒター。 よく分かりましたわね」

 

皆が警戒する中。

 

堂々と姿を見せるデメテル。くつくつと嗤いあっているが、この壁を作ったというのはどういうことか。

 

現在、ヒメネスの他にメイビーとアンソニーがいるが。二人は眼中に無い様子で、強豪悪魔二人は話をしている。

 

「この下の気配、イシュタルかしら? イシュタルも封じられているの?」

 

「ええ。 アスモデウスになるのを拒んだので、封じられてしまいましたわ」

 

「そう、大母は其所まで見境がなくなっているのね」

 

「完全にバランスが崩れた以上、仕方がありませんわ」

 

デメテルが唯野仁成の方を見る。

 

観察する目だ。

 

幼い見た目に騙されてはいけない。アリス以上に、強かで。残酷で。そして強い悪魔である。

 

見た目で判断するのは、人間にとって最大の悪癖ともいえるものだが。

 

だからこそ、その悪癖からは、唯野仁成だけでも無縁で無ければならない。

 

「唯野仁成、よくアナーヒターを従える事に成功しましたわね。 ハーベストですわ」

 

「苛烈な戦闘を重ねてきたからな」

 

「しかし、これから貴方たちが赴くのは、アスラなど芥子粒のようにしか思えない存在が支配する領域。 気を付けるのですのよ」

 

「ああ、気を付けさせて貰う」

 

ふふ、と笑うと。

 

デメテルは消える。そして、あくびをしながら、アナーヒタもPCに戻っていった。

 

サクナヒメがぼやく。

 

「腹黒女神が。 最後までわしと目をあわせなかったな」

 

「何だか嫌な感じだぜ。 ヒトナリ、気を付けろよ。 俺もあの子供みてーな女神には、嫌な感じしかしない」

 

「分かっている」

 

そういえば、女好きのアンソニーもまるで反応していない。メイビーに至っては、強すぎる力に当てられたからか、真っ青になっている。

 

いずれにしても、後方に連絡。一階階段を守って貰う。

 

一度戻る必要はないだろう。戦闘はしていないのだ。そのまま階段を下りて、二層に出向く。

 

二層は、更に凄まじいジャングルになっていた。

 

ケンシロウ班が来て、入り口付近で電波中継器を撒いていく。それを守りながら、看守の到来に備える。

 

いつ来てもおかしくないのである。

 

「デメテルのメスガキが、どうしてあんな壁なんか張ってたんだろうな」

 

「さあ。 だが、いずれにしても……行き来は不自由になると思う。 俺以外のクルーも、アナーヒターを召喚できるようになると良いんだが」

 

「俺はもう少しでいけるそうだが、あの女はどうも好みじゃねえ。 今までの予定通り、バロールって魔王を召喚することを目的とするつもりだ」

 

「いいんじゃないのか。 バロールはデータを見たが、中々に強そうな悪魔だ」

 

ヒメネスと話ながら、周囲を警戒する。

 

サクナヒメとケンシロウもいるから万が一はないと思うが、それでも念のためである。

 

もう少し電波探知機を撒きたいというので、ストーム1班が来るのを待ってから、調査範囲を拡げる。

 

露骨に周囲をうろついている悪魔の気配が濃い。

 

危険な悪魔ばかりがいるようだ。これは、油断をすればあっと言う間に命を刈り取られるだろう。

 

それに看守も加わるのである。

 

一秒だって、油断何て出来なかった。

 

不意に飛んできた、巨大な氷塊を、サクナヒメが羽衣で防ぎ抜く。霧が晴れてくる中、姿を見せたのは、浅黒い肌をした、鳥のように服を着込んでいる女だ。気配が段違いに強い。周囲にいる悪魔達が、さっと姿を消すのが見えた。

 

「?」

 

「どうした、アリス」

 

「んー、なんだろ。 あれ、なんかおかしいよ。 高位の地母神だと思うけど。 キュベレもそうだったけど、此処の看守になるとどっか狂うのかな?」

 

「ともかく、看守だったらやりあうしかなさそうだな。 どうせ逃がしてくれないだろうしな。 ケンシロウの旦那、看守が出た! 調査班を守って引いてくれ!」

 

ヒメネスが通信を入れ、それぞれが最強の悪魔を召喚する。

 

アナーヒターが、うふふと笑いながら声を掛ける。

 

「あらあらイシス、そんな姿になってしまって。 理性がかっとんでしまっているようだけれど、ナニカされたのかしら?」

 

「……」

 

イシスという悪魔が、周囲に氷の槍を出現させる。詠唱した気配すらない。氷の槍は一つずつが全長十メートルはあり、それが数百は同時に出現した。その上、氷の槍は鋭い風を纏っている。直撃したら即死は免れないだろうし、擦ってもズタズタだろう。

 

アリスが大きい魔法を放つとき、詠唱をするのを何度も唯野仁成は見ている。

 

つまり、イシスがどれだけ桁外れのことをしているのか、一目で分かった。

 

イシスが指さすと同時に、一斉に飛んでくる氷の槍。

 

最初から、手篤い歓迎だ。

 

手持ちの悪魔が総力で壁を作るなか、イシスが狙撃される。頭ががくんと揺れるが、全く意に介している様子が無い。

 

目に意思が宿っていないというか。

 

まるで人形だ。それも出来が悪い。出来が良い人形は、時に意思を感じるような目をしているものなのだが。

 

このイシスという悪魔には、そんな意思すら感じ取れない。

 

狙撃したのは、ストーム1で間違いないだろう。イシスは更に二発狙撃を受けるが、体にダメージを受けているだろうに気にせず、氷の槍を作り出しては飽和攻撃を続けてくる。無茶苦茶だ。

 

生命に関する執着とか、そういう当たり前の思考すら無い様子だ。

 

至近。

 

サクナヒメがもう、距離を詰めていた。

 

そして、居合いにて斬り伏せる。

 

一瞬置いて、鮮血が噴き出すが。鮮血を噴き出しながら、イシスは不気味に体をぐねぐねと動かして。更に氷の槍を産み出そうとしていたが。

 

見苦しいとばかりに、アナーヒターが放ったカミソリのような氷が首を吹き飛ばし。

 

それでやっと動かなくなった。

 

アリスが冷や汗を拭っている。

 

「サクナちゃん流石ー。 火力が危なすぎて、攻勢に出られなかったよ」

 

「姫様と呼べ。 それより一度戻るぞ。 こんなのと何度もやりあってはおれんわ」

 

サクナヒメの言う通りだ。

 

ストーム1班が合流してきたので、すぐに一緒に戻る。追撃してくる悪魔はいなかった。メイビーが要領よくイシスの残骸から情報集積体を集めていたが、マッカまで回収する余裕はなかったようだ。

 

すぐに戻る。

 

いずれにしても、今回の探索で嘆きの胎二層を突破するとなると。

 

その苦労が、今から思いやられた。

 

 

 

(続)




ついにアスラは倒れました。

しかしここから先は更なる過酷なる空間が待ち構えています。

方舟の先には幾多の苦難が連なっています。
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