Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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ついに上位空間に突入する方舟。

そこは、神々の女王たる存在が座する、今までとは次元が違う世界なのです。


2、第五の世界

休憩を充分に取ってから、嘆きの胎三層に、サクナヒメとストーム1の合同チーム。更に唯野仁成に加えてヒメネスとブレアがいる事実上最良と思われるチームで降りる。そして、降りてみて分かったのは、無理、と言う事だった。

 

巨人が歩いている。

 

ヘカトンケイレスだ。

 

ギリシャ神話については調べたから分かる。あれは膠着していたオリンポス神族とティターン神族の戦争を、三体だけでひっくり返すような怪物だ。要するに生半可なオリンポス神族の神よりも遙かに強い。

 

あいつは何かを探しているようだが、幸いあまり感覚は鋭くはないらしい。或いは、強い相手でもないなら、別に相手にするまでもない、という判断なのかも知れない。

 

電波中継器を撒くと、さっさと撤退する。

 

まだアレを相手に出来る手持ちはいない。アリスですら、絶対に戦いたくないと即座に断言した。

 

要するに今まで戦闘した看守悪魔、キュベレやイシスよりも遙かに強い相手だという事である。

 

多分だが、あれが六層の看守だろう。それが何かしらの間違いで、此処まで出てきているのだ。

 

どうしてかは分からないが。そもそも看守は囚人を見張る存在の筈。

 

逆に、何故こんな所にいるのかが分からない。

 

入り口付近に電波中継器を撒くしか出来なかった。

 

なお、イシュタルはまだ作れなかったが。どういうわけか三層の階段にあった壁は消えていた。

 

これもよく分からない。

 

二層の時は、アナーヒターを作るまでは壁は消えなかったのに。

 

いずれにしても、二層に撤退すると、ヒメネスが何度も深呼吸していた。強い奴ほど強い相手には敏感だ。

 

冷や汗をびっしり掻いているのが、デモニカ越しにも分かる。

 

「とんでもねえバケモノじゃねーか。 あれ多分アスラの比じゃねーぞ」

 

「今戦いを挑んで消耗するのは自殺行為だな。 それに三層の階段もどうやら安定していないらしい」

 

ストーム1が顎をしゃくる。

 

そうすると、どうしてか壁が出来はじめている。

 

何なんだこれは一体。

 

頭に来るが、兎も角次に来る時はイシュタルを呼び出せるくらいの実力が必要になってくるだろう。

 

ストーム1を一瞥。

 

この人やライドウ氏、ケンシロウなら余裕で呼び出せると思うのだが。

 

おそらく、全体の戦力向上を図る為なのだろう。

 

すぐにでも浅層にある方舟に戻りたい所だったが、真田さんから直接通信が来た。

 

「ストーム1、姫様。 それと精鋭クルーの皆」

 

「真田か。 如何した」

 

「申し訳ないのだが、まだもう少しアスラのロゼッタを解析したい。 そこで、嘆きの胎にて皆の戦力強化を図る。 二層はまだ悪魔を駆逐も出来ていないし、この間の階段の戦闘での物資も回収は完全では無い。 申し訳ないが、周囲の悪魔の駆逐と、調査班の護衛を頼みたい」

 

「仕方が無いのう……」

 

ぼやくサクナヒメ。

 

サクナヒメも、流石にあのヘカトンケイレスを見て、先に進みたいとは思わなかったらしい。

 

勝てない、とは口にしなかった。

 

だが、勝つにしても相当な死闘になるだろうし。

 

そんな死闘をしてまで、今勝つ意味のある相手では無いと判断しているのだろう。

 

サクナヒメの戦闘力は更に更に上がって来ている。ストーム1やケンシロウ、ライドウ氏も同じようだが。

 

皆まだ伸びしろがある状態だ。

 

そんな状態で、無駄に命を捨てるような真似をするのは確かに阿呆の行動だ。

 

サクナヒメの判断は正しいだろう。

 

ケンシロウが、調査班を連れて降りてくる。サクナヒメとストーム1は話し合った後、ストーム1が単独で階段を見張ることにした様子だ。また、ライドウ氏は浅い層での演習を再開。

 

これは恐らくだが、イシュタルの壁がある事や。三層の看守悪魔が、前に比べて落ち着いていることが原因なのだろう。ヘカトンケイレスが相手でも、ストーム1一人で時間稼ぎくらいは出来るという判断なのかも知れない。

 

「こんな所でワンオペか。 申し訳ないが、あの人にしか頼めないだろうな、こんな事はよ」

 

「ああ、申し訳ない話だ」

 

「そなたら、行くぞ。 可能な限り強くなっておく必要がある」

 

サクナヒメに促されて行く。

 

途中、かなり強い悪魔がまだまだ彷徨いている。それらは、サクナヒメが見ている中、クルーだけで対処する。

 

サクナヒメは最後まで手を出さない。

 

そうすることで、クルーの戦闘経験を稼ぐためだ。デモニカは戦闘経験を蓄積するほど強くなる。

 

更に戦闘経験は並列化され、全てのデモニカに行き渡る。

 

皆で訓練を積めば積むほど加速度的に皆が強くなる。

 

それがデモニカの特性というものだ。

 

ケンシロウ班の方も戦闘をたまにしているようだが、此方は調査班を連れていることもある。

 

ケンシロウが時々直接戦っている様子である。

 

北斗神拳だかいう拳法を繰り出すときの、鋭い叫び声が時々デモニカ越しに聞こえる。攻撃を叩き込まれている悪魔は気の毒である。戦闘ログを見たが、ケンシロウとのインファイトはアレックスさえ圧倒されていた。

 

それにあの巨大なアスラも、瞬時に頭を一つ爆砕したほどだった。

 

まあ、絶対に怒らせてはいけない相手だなと、唯野仁成は思う。

 

改良に改良を重ねているアサルトで、悪魔の群れを足止めしながら、皆の悪魔で敵にとどめを刺していく。

 

アサルトをショットガンに切り替えると、弾幕を抜けてきた大きな鳥の悪魔を蜂の巣にする。即座にヒメネスのモラクスが、地面に叩き付けて粉々に打ち砕いた。流石はアントリアの支配者。だが、戦争狂になっていたアントリアのモラクスと違って、このモラクスは寡黙で戦いにストイックな雰囲気だ。

 

二層を隅から隅まで回る。

 

調査班はその間、色々と調べていた様子だが。それも経験を積むためでもあるのだろう。何よりも、ロゼッタの解析がまだ必要だと言う話もある。スキップドライブに何か難しい技術的要因があるのだろう。

 

真田さんなら何とかしてくれるのだ。

 

黙って、その行動の成果を待つのみである。

 

二層でほぼ半日戦い、強めの悪魔をあらかた駆逐した頃に、帰還命令が出る。

 

流石に散々だった。

 

看守と遭遇する事はないだろうと思ったが。一瞬の油断で至近まで迫られ、二度サクナヒメが介入した。

 

その度に平謝りするしか無かった。

 

サクナヒメも、奇襲に対する対応力を上げておきたいと思っているらしいが。奇襲を防ぐ度にまだ力が足りないと、くどくど言う。

 

まあこれについてはその通りなので、素直に聞くしか無い。

 

サクナヒメ自身も、デルファイナスでの出来事を気に病んでいるのだろう。

 

だいたい、唯野仁成達がもっと強ければ。アレックスを自力で撃退出来るし。そうなれば、どの空間でも攻略難易度は劇的に下がるのだから。

 

ともかく、半日ほど嘆きの胎で戦い抜いた後、戻る。

 

演習から戻った機動班クルーは、皆ヘトヘトになっていた様子だ。

 

殆どが真っ青な顔のままベッドに直行していくが。

 

正直、棺桶に直行するよりもなんぼかマシだろう。

 

唯野仁成もベッドに直行したい気分だったが、かなり任務時間が長引いていたこともある。シャワーを浴びてから、ゆっくりと甘いものをとって、リラックスした。

 

ヒメネスは疲れきったのか、それとも悪魔合体を色々試したいのか、自室に戻っていったので。

 

唯野仁成も、自室でゆっくりコーヒーを飲みながら、悪魔達の話を聞く。

 

今回、裏方として朱雀が回復の魔術で皆を随分助けてくれたので、礼を言っておく。アリスは自分しか基本的に回復しないので、助かるのだ。

 

朱雀はきちんと人間の言葉を理解出来るし、話す事も出来る。それに、面白い事も言う。

 

「我等方角神は、四神などと言われているが、実際には五神だ」

 

「東西南北以外にもいるのか」

 

「ああ。 中央の守護者黄龍が存在している。 この黄龍は皇帝の象徴だ。 中華の皇帝が黄色い服を着るのは、中央の支配者という意味があってな」

 

勉強になる。

 

博識な朱雀に色々な話を聞いた後。悪魔合体について、また目撃した悪魔についても調べておく。

 

恐らく次の空間から、敵悪魔の戦闘力も跳ね上がるだろうというアナウンスはされている。

 

皆の調整をしっかりしておかなければ、苦戦は必須だろう。

 

欲しがる悪魔にはマッカを渡すが、やはりアリスとアナーヒターが相当に大食いである。呆れる程消耗する。

 

今回の、嘆きの胎攻略作戦と。

 

アスラ撃破の作戦の関係で、相当にマッカは支給されているのに。言われるまま渡していたら殆ど食われてしまった。

 

三体目のエース悪魔がほしい所だが。

 

マッカを使って呼び出せそうな悪魔を閲覧するも、スペシャル達が使っている悪魔はまだ唯野仁成の手が届く相手では無い。

 

かといって、唯野仁成が使えそうな悪魔は。他のクルー達が使っている悪魔よりも一段階レベルが上だ。ヒメネスの使っている悪魔もそうだが、いずれにしても都合が良い悪魔はいなさそうである。

 

看守悪魔についても調べておくが、キュベレにしてもイシスにしても、今まで遭遇した奴はスペシャルでも使えるか怪しい程強い。

 

ただ、今度ライドウ氏が作るつもりでいるらしい。

 

確認をすることがあるとか。

 

この辺りは、悪魔合体プログラムについての意見交換wikiが艦内のPCで構成されたネットワークに有志で作られていて。

 

様々な情報が書き込まれていた。

 

こういうものは、誰が作るのかは分からないが。あると有り難い。真田さんも目を通しているらしく、確定情報以外は書き込まないようにと厳しいお達しがあった。

 

流石に一通り調査を終えると、眠くなってきたので、ベッドで横になる。

 

その間にも、ライドウ氏は演習を続けている様子だ。一線級で戦える機動班クルーを、更に増やしておきたいのだろう。

 

浅層は、戦闘が苦手な機動班クルーでももうどうにでもなるようなので、既に演習の場を一層に移したらしい。これがやがて二層になるのだろう。

 

一眠りする。

 

ふと、夢を見た。

 

何かに追われているアレックスの夢だ。何度も涙を拭い、転んで泥だらけになりながら、必死に逃げている。

 

見た感じ、現在のアレックスよりも二歳から三歳ほど若いように思える。

 

今のアレックスは、丁度肉体の全盛期に見える十代後半だが。泣きながら逃げているアレックスは、十代半ばに思えた。

 

アレックスを追っているのは、戦車などを有する近代軍隊と。

 

それに悪魔達。

 

天使も混じっている。

 

それらがよってたかってアレックスを追い回している。何度も涙を拭いながら、必死に逃げるアレックス。

 

隙を見て、敵を斬り伏せ。

 

文字通り血泥に塗れながら、必死に歯を食いしばって悪夢のような追跡から逃れ回っている。

 

そして、その敵を指揮しているのは。歪みきった笑みを浮かべた、唯野仁成だ。

 

目が覚める。

 

頭を振って、何だ今の夢はと自問自答する。分からないが、無視して良い夢にも思えなかった。

 

デモニカを確認すると、二時間ほど後に真田さんが話をするという。また、演習をしていた機動班クルーも戻ってきている。

 

そうか、一旦嘆きの胎からは撤退か。

 

ただ、気になる情報もあった。

 

巨大な嘆きの胎を外側の空中から監視するように展開しているドローンが、妙な映像を捕らえたという。

 

電波などでは探知出来なく、光学情報しか得られなかったようなのだが。

 

何かが三層に、空中から高速で忍び込んでいるようなのだ。

 

画像を解析したが、ただの悪魔なのか違うのか、どうにも判断が出来ないという。どうにも、嫌な予感がした。

 

クルーの点呼が始まる。

 

全員生きている。

 

こんな環境で、まだ一人も死者を出していないのは奇蹟に等しいと唯野仁成は思う。それもスペシャル達の助力が合っての事だ。本当に感謝しなければならない。

 

点呼が終わると同時に、プラズマバリアを展開した方舟が上昇を開始する。

 

これで、今回の探索は一旦終わりか。

 

真田さんが、予定通りの時間に話を始めた。

 

「これより、次の空間にスキップドライブを行う。 遅れてしまったのは、このスキップドライブに今までに無い技術を必要としたからだ」

 

春香が原稿を渡されたのだろう。

 

彼女が以降の解説を行う。

 

「現在、ロゼッタの情報を確認する限り、次の空間に行こうとしてもアントリアに戻ってしまうことが分かっています。 要するに円環状に空間がつながっていて、堂々巡りになってしまうのです。 しかしながら、デルファイナスに撒いてきたドローン等の情報、それにロゼッタの徹底的な解析により、これを打ち破る情報が確認されました」

 

スキップドライブを行うときに入る量子トンネルの内部で、更にスキップドライブを行う。

 

この座標などの割り出し。

 

安全性の確保に、相当な時間が掛かった、と言う事だった。

 

実際には後者が殆どであるらしい。

 

技術だけだったら即座に可能だったらしいのだが。そもそも安全性をシミュレーションし。それが確定するまでが大変だったそうだ。

 

「悪魔達の話からも、アントリアからデルファイナスの支配者達の上位に、「大母」と呼ばれる存在がいることが分かっています。 これらの戦闘力は未知数です。 それほど危険な状態にもかかわらず、更に危険を増やしては意味がありません。 時間を掛けたのは、それが理由です」

 

まあ、それならば仕方が無い。

 

春香の話し方は、兎に角相手を納得させる説得力を知り尽くしているものだ。これならば、聞いていて反発は覚えない。

 

此処にわざわざ招かれて来てくれているだけの事はある。

 

いずれにしても、クルーから不満の声は無かった。

 

「これよりスキップドライブを行います。 未知の空間に、今までに試していない方法でスキップドライブを行います。 それを考慮して、皆体を近くに固定してください。 不時着の可能性を排除できません」

 

「おっと、固定固定、と」

 

部屋の他のクルーが、体の固定を始める。唯野仁成も、壁の近くにあるベルトに体を固定し、壁に体を密着させた。

 

これで仮に不時着しても、戦闘力は残るだろう。

 

全員の点呼が行われる。そして、体の固定が終わった後、スキップドライブの開始が宣言された。

 

まず、空間の穴に方舟が入り込む。

 

加速していくのはいつもと同じだ。そこからが違う。更に加速を早めて、恐らく第一宇宙速度にまで達した。

 

流石に初回と言う事もある。

 

揺れが凄まじい。真田さんでも、こればかりはどうにも出来なかったのだろう。以降は改良してくれるだろうとは思うが。

 

程なくして、相当な速度に達した方舟レインボウノアが。更にもう一段階、ぐんと加速する。

 

同時に、何か覚えのある感触があった。

 

そうだ、これは確か、突入の時の。

 

物資搬入口で感じた、体が浮くような感触だ。

 

ぐっと、息を飲み込む。

 

舌を噛まないように、奥歯を噛みしめた。ほどなく、何かを方舟が抜けたのが分かった。

 

速度が落ち始める。

 

減速も、どんどん緩やかになっていき。やがて、方舟は制止していた。

 

不時着はしていない。冷や汗が流れる。流石に何度も不時着はしたくない。アントリアでも、方舟の復旧は本当に大変だったのだ。

 

ほどなく、真田さんが技術班と共に、彼方此方を確認しているとのアナウンスが入る。

 

もう体の固定は解除して良いそうだ。

 

船外カメラの様子はまだ出ない。恐らく、スキップドライブに相当なエネルギーを消耗したのと。

 

フルパワーでプラズマバリアを展開しているのが要因だろう。

 

既に艦橋では状況を得ているのだろうが。まだまだ末端の隊員には情報が来ない。そういう事だと判断して良い筈だ。

 

しばらく、待つ。

 

やがて、ゴア隊長から通信があった。

 

「皆、スキップドライブは成功した様子だ。 安心してほしい。 まだ体を固定している者がいたら、解除し、戦闘に備えてくれ」

 

「そ、そうだな……」

 

同室のクルー達が、緊張した様子で戦闘態勢を取り始める。唯野仁成は、既に銃を確認済み。剣についても、確認済みだ。

 

銃のアップデートはデルファイナスでアスラを倒した後に行われた。

 

そのうちストーム1が使っているAS100Fにアップデートする予定らしいのだが。機動班の一線級メンバーから優先で。恐らくまだまだ先だろう、という話だった。

 

唯野仁成も、現状AS25というアサルトライフルを渡されているが。これにしても、外に持っていけばセスナ機くらい買える値段らしい。

 

というのも、シュバルツバースでは極めて貴重な物資が山のように採れるため。本来外では採算が合わないような強力な武器を幾らでも時間さえあれば作れるらしい。

 

これに、ライサンダーの強化型もそれぞれ渡されている。

 

このライサンダーは、まだストーム1が使っている「ライサンダー2」ではないが。あれは常人の身体能力で使えるものではない。

 

まだまだ、流石に唯野仁成には扱えないだろう。

 

剣についても、手入れはしている。

 

現在渡されている剣は、日本刀に形状が似ているが。何でも、鑑賞用の用途が強いものではなく、いわゆる「人斬り包丁」に構造が近いと言う。

 

だから刃紋とかはなく、ただ単純に相手を殺す事に特化している。

 

刀の基本素材である鋳鉄を使っているわけでもなく。チタン合金などの最新鋭の技術力で作られた刀であり。

 

悪魔などから得られた情報により、魔法も付加して火力と切れ味を上げているという。

 

サクナヒメが切り札として使う必殺剣ほどではないにしても。

 

大量に襲いかかってくる雑魚悪魔の頭くらいなら、唐竹にたたき割れる切れ味である。

 

やがて、方舟が高度を下げ始めるのが分かり。

 

着地する。

 

ようやくか、と思ったが。其所から先が、だいぶ普段とは違っていた。

 

マクリアリーが、通信を入れてくる。

 

「船外カメラの様子、皆に共有します」

 

「!?」

 

今度はどんなおぞましい世界なのだろう。それを皆、覚悟していたのは間違いないだろう。

 

だが、船外に拡がっていたのは、むしろ穏やかそうな庭園だった。

 

洋風の庭園だろうか。

 

どこまでも、複雑に立体的に拡がっている庭園である。既にカメラには、そんな庭園を彷徨く、大柄な悪魔の姿が映し出されていた。要するに、我が物顔に巨大な悪魔が闊歩していると言う事だ。

 

「何だこれ、庭園か!?」

 

「今までと随分雰囲気が違うな……」

 

「此方アーサー。 情報を解析したところ、嘆きの胎二層と同等の悪魔が闊歩している模様」

 

「ちょ、冗談じゃ無いぞ……」

 

誰かがぼやく。

 

演習を念のためにしておいたが、それでも厳しいという現実が突きつけられたのだ。アーサーが、やがて更に追加で言った。

 

「この空間を、アルファベットのEにちなんでエリダヌスと命名します。 恐らくですが、この空間に外へ出るための出口、バニシングポイントが存在しています。 これよりバニシングポイントの探索及び、恐らく高確率で攻撃を仕掛けてくるだろう敵性勢力、今までの悪魔の情報によると「大母」なる存在の撃破及びロゼッタの回収が任務となります」

 

「任務が多い事だな……」

 

「此処を突破すれば、一旦の目的であるシュバルツバースからの脱出が可能となる可能性があります。 もっとも、シュバルツバースの拡大を放置したまま脱出する事は、好ましいとは思えませんが」

 

アーサーが、脱出を望むだろうクルー達に釘を刺す。

 

唯野仁成は、既に何時でも、外に出られるように準備をしていた。

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