Sストレンジジャーニー   作:dwwyakata@2024

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※ジャックについて

本作についてのジャックはこんな感じです。

勿論偽名。

世界最悪の傭兵の名を恣にしている、仲間内でも忌み嫌われる外道中の外道。保身の達人で、ストーム1とケンシロウから何度も逃げおおせている。

その実績を買われて麻薬王とか途上国から児童を買い集めて屋敷で虐待しているような下衆金持ちのボディガードもしているが。飼い主の命運が尽きたと判断すると即座に逃げ出す嗅覚の持ち主。

ただしそんな化け物じみた保身の達人も、今回はついに命運が尽きたのです。


1、闖入の裏で

ジャックは自覚しているほどの鬼畜外道だが。それでも、恐怖は感じる。

 

ジャックはサイコパスであることを自認しているが。それでも、生存したいと思うし。金には執着がある。

 

財団の犬として活動してきた昨今。

 

ジャックは、財団の上客のために、汚れ仕事を散々してきた。

 

金に任せて非人道的行為をやっている金持ちの護衛や、そいつが死んだ後の始末。

 

財団が表に出せない商売のマネジメントや、国際再建機構に嗅ぎつけられないようにするためのあらゆる工夫。

 

ジャックは犯罪のコンサルタントであり。暴力のプロフェッショナルだ。どんな犯罪組織でも、ジャックから見れば子供も同然である。

 

圧倒的な実績があったから、文字通り妖怪のような財団のトップ達にも信頼を得ていたし。

 

連中が秩序陣営の悪魔と関係を持っていて。加護を受けていることも知っていた。

 

だからこそ、どうしてだと思うのだ。

 

今、ジャックはライトニングの艦橋で跪かされ。

 

周囲には、天使が無数にいた。

 

特に、巨大な槍を持った鎧姿の天使は、非常に険しい目でジャックを見下ろしていて。その槍の穂は、いつでもジャックの首をたたき落とせることが確定だった。

 

頭の後ろで手を組まされて、ずっと冷や汗を掻いているジャック。

 

天使達に隙が一切無くて、手を出すどころではないのである。

 

どうしてこうなったか。

 

最初からだ。

 

南米を進んでいる頃には、既に国際再建機構に嗅ぎつけられている事をジャックは悟っていた。

 

それに、そもそも金なんか使い路がもう無いことも理解していた。

 

だから無意味な任務だと、ジャックらしい合理性から判断し、そう進言もしたのだが。

 

見てしまったのだ。財団の上層部が、既に死人となっているのを。

 

連中は、天使達に既に文字通りのマリオネットにされており。

 

天使達によって、完全に成り代わられてしまっていたのだ。

 

そして米軍から格安で買ったライトニングを改造したこの船に、ジャックは子飼いの部下達と一緒に乗せられ。

 

天使達の監視を受けながら、ここまで来たのだった。

 

シュバルツバースへと乗り込むのも、とてもとても簡単だった。

 

何しろ、プラズマバリアに加えて。天使が加護しているのだから。

 

天使が善良な連中である等という事は、ジャックは考えていなかった。そもそも天使共が善良だったら、スラムで地獄のような生活をしている子供なんていないはずだし。泥を啜りながら必死に生き、神に対する信仰も欠かさなかった人間が、テロにあってゴミのように命を落とすことだってない。

 

だが、いくら何でもこんな大胆な行動に出るとは、流石に思っていなかった。

 

シュバルツバースというのが。それほどまずいものなのだということは何となく分かっていたが。

 

それでも、ジャックが想像する以上に、世界は危険な状態であるらしかった。

 

側では、一番の部下であるライアンが、既に正気を無くしている。

 

天使が何かをしたらしい。

 

完全に白目を剥いて、ぶつぶつと呟いている。

 

元々腕っ節しか取り柄が無い頭が悪い男だったが、こうなってしまうと死んだ方がましだろう。

 

ジャックもいつこうされるかわかったものではない。

 

「大天使カマエル」

 

不意に声がする。通信装置からだった。声は、とても恐ろしくジャックには聞こえた。

 

カマエルと呼ばれた、槍を持った天使が答える。

 

「大天使マンセマット。 貴殿からの援軍要請に応じて参上した。 この通り、贄用のクズ共も引き連れてきている」

 

「大いに結構。 うむ、魂が汚れきっている者どもを良く連れて来てくれました。 これで準備を整えられるでしょう」

 

「相変わらず貴方も陰謀が好きだな。 まあ我々天界の猟犬は、不当に低い地位に貶められてきた。 気持ちはようわかるが」

 

「陰謀が好きなのではありませんよ。 私は誰よりも我等が主のためを思って働いています。 ただ、その周囲にいる気取った者達が気にくわないだけです」

 

同感だと、カマエルとか言う大天使は笑った。もう一人、大天使らしい奴も笑う。

 

天使のことなんかジャックは知らない。

 

一応、知識としては知っている。確かカマエルはモーセの逃避行に登場する天使で、他の宗教である軍神のような立場にある存在だ。天使の軍勢を統べているという記述もあった筈。

 

いずれにしても、ジャックではどうしようもならない。

 

実際問題、途中で脱走しようとした人間が、ゴミクズのように殺されるのも何度か見た。それも、人間の死に方じゃ無かった。

 

散々非道に手を染めてきたジャックだが、それでも吐きそうになる死に方を見せつけられたことで。

 

既にジャックの心は折れていた。

 

さっき、ストーム1と話させられたとき。

 

助けてくれと、叫びそうになり。それをカマエルの不思議な力で無理矢理止めさせられた。

 

もはや命はないものだと思うしか無い。

 

冷や汗を流しながら、ジャックはそう覚悟していた。

 

「それでマンセマット、これからどうする?」

 

「この者達は、このままに。 警戒しすぎる必要はありません」

 

「見張りを立てなくても良いのか?」

 

「いやいや、そういう意味ではありませんよ。 本命である方舟が、警戒するように、この船の内部の実情が分からないようにしておくのです。 それだけで、方舟は一定の戦力をこの船に割かなければなりません」

 

なるほどと、人の悪い笑い声をカマエル達は上げて。

 

マンセマットもくすくすと笑う。

 

怖くて、小便をちびりそうだ。此処まで主導権を握れない状況はいつぶりだろうか。

 

ジャックは自分がサイコ野郎だと言う事は理解している。同じ人間をどれだけ残虐に殺しても何とも思わない。

 

だが此処にいる天使共は人間ではないし。それこそ、ジャック以上に人間を残虐に殺すだろう。

 

何しろ終末には、殆ど全ての人間を殺し尽くす連中である。

 

人間が神に対する絶対的な信仰を持つことには興味はあっても。

 

人間一人一人の命になど、何の興味もあるまい。

 

「時にカマエル。 四大や七大は?」

 

「どいつもこいつもシュバルツバースに行く事は拒否したよ。 その代わり、汚れ仕事を専門としているパワーをそれなりの数連れてきている。 いずれもが、悪魔との戦闘経験豊富な実力者だ。 その気になれば追加で更に呼べるぞ」

 

「結構。 此方でも、現地で戦力を相当数調達しています。 しばらくは、貴方はそのままでいてください。 ああ、利用価値はあるので、ゴミ共は殺さないように……」

 

「分かっている。 まあ逃げようとしたら容赦はできないがな」

 

けらけら。ははは。笑い声が重なる。

 

笑う天使どもは、やがてそれにも飽きたらしく、通信を切った。

 

いきなり何の前触れも無くカマエルに蹴り倒され、更に顔面を踏まれるジャック。周囲には正気を残しているクルーはいない。ライアンは、よだれを垂れ流しながら、繰り言をずっと呟いている有様だ。

 

「聞いての通りだ。 お前達は案山子として此処に呼んでいる。 ついでだから、奴らの目を引くべく行動して貰うとするかな」

 

「こ、こんな状態では、組織的行動など出来ん!」

 

「お前達人間が組織的行動? 笑わせるな。 最初からそのようなもの、一切期待していない。 お前達を集めたのは、その魂が汚れきっていて、存在そのものが世界に不要だからだ。 神の国に不要な穢れた魂だから此処に集めた。 後の用途は分かろう」

 

死んだ。それを悟ったジャックに。とどめの宣告が行われる。

 

ジャックの目の前で、見る間にライアンが異形の怪物へと変化していく。たまに悪魔狩りはダーティーワークの一環として行ったが。そんな事が出来る状況では既にない。

 

次は、お前だ。

 

そう言われて、ジャックは己の運命を悟っていた。

 

 

 

ストーム1は無言で、クーフーリンとジャンヌダルクを連れて疾走していた。かたや神話の英雄。かたや歴史の英雄。どちらの実力も優れており、ストーム1の背中を充分に預けられる。

 

庭園を迂回してぐっと外側に回り込む。上空に行くとドローンは不調になる様子で、ライトニングの写真そのものはまだ確保出来ていない。

 

あらゆるデータを取り、状況を確認する。不測の事態を避けるためのデータを取る。

 

それが今回出て来た理由だ。

 

黙々と伏せながら進む。途中現れる悪魔は、出来るだけ静かに音を立てずに消す。どっちみち、庭園の方では殆ど絶え間なく戦闘音がしているのだ。

 

サクナヒメとライドウには悪いなと思うが、戦力は向こうに押しつけさせて貰う。

 

今回の一件は、あのジャックの変貌ぶりといい、嫌な予感しかしない。手段を選んでいられないのだ。

 

数㎞を無言のままひたすら進み。その途中で遭遇した悪魔はいずれも瞬殺した。たまに降伏を申し出る者もいたので、配下に加えていく。合体材料くらいにはなるだろう。もう一人くらい、背中を守る英雄がほしい所だ。

 

数時間を掛けて、道を踏破。

 

殆ど遮蔽物が無いから、却ってひやひやだ。途中電波中継器は撒いてきているが、さてどこまで活用出来るか。

 

通信がライトニングに傍受されては意味がない。

 

ストーム1は、安全を確保した後方に、丁度このエリダヌスで捕獲したタクヒを飛ばす。

 

伝書鳩の役割である。

 

妖鳥タクヒは中華の伝承にある妖怪で、恐らくはただのフクロウを見間違えたものである。一本足で人間の顔をしたフクロウのような姿をした妖怪であるが、恐らく夜道などで見間違えたものを勘違いした結果生じた妖怪だろう。

 

一応悪魔化した事で喋る事は出来るが、あまり知能は高くない。

 

伝書鳩がいるかも知れないと思っていたストーム1は、他に捕まえた悪魔に頼んで伝書鳩の仕事についてタクヒに仕込んで貰い。

 

今、丁度手紙を渡して方舟に飛ばした所だ。

 

庭園の外縁に隠れながら、様子を伺う。

 

いる。ライトニングだ。方舟に似ているが、ぐっと小さい。

 

デモニカで視認するだけで、データは取得することが出来る。もとのライトニングよりも、相当に武装を増やしている。アーサーの言った通りだ。

 

速射砲をはじめとする主力兵装も近代改修されているが。

 

はて。何か違和感がある。

 

ざっと見た感じでは、方舟のような真田技術長官の手が加わったレベルの艦船には見えない。

 

頑強そうではあるが、それだけだ。

 

見張りについている人員はデモニカを着ているが。

 

そもそもデモニカは米軍が次世代極地活動用のスーツとして開発したものであって。それを真田技術長官が実用的に改良したものが、今の方舟クルーが着ているものである。

 

あのデモニカは、恐らくだが一世代前の、真田技術長官が改良する前のものと見て良いだろう。

 

あんなものを着ていて、良く無事でいられるな。

 

しかもここに来たばかりと言う事は、ロクに戦闘経験も積んでいないだろう。それこそ、悪魔にエサにしてくださいと言っているようなものだ。

 

その割りには、プラズマバリアも展開せずに、脳天気なものである。

 

身を伏せる。クーフーリンとジャンヌダルクにもハンドサインで気配を消すよう促す。

 

ジャックだ。物資搬入口から出て来た。

 

即座に頭を撃ち抜きたくなる衝動を抑えて、観察する。やはり妙だ。奴は得体が知れない大物を装うのが得意で、少なくとも部下の掌握はきちんとやっていた。それなのに今は、見ているとふらふらと歩いているだけで。指示も何だか要領を得ていない。それなのに、まるで操り人形のように部下は動いている。

 

一度引くのが得策だな。

 

そう判断したストーム1は、即座に距離を取る。

 

様々な違和感が、アラートとなっていた。アレは何かある。此処シュバルツバースでは何が起きてもおかしくない。

 

だから一旦距離を取る。正しい情報を持ち帰れなければ意味がない。

 

ジャックと手下だけなら制圧するのは余裕。申告したとおり三分もあれば充分である。あの船ごとぶっ潰してやれる。

 

だが、どうにも妙に強い力を感じた。

 

ひょっとして、何か強い悪魔が裏側から介入しているのでは無いのか。だとすれば、危険である。

 

充分に距離を取ったところで、方舟に通信を入れる。

 

方舟は、丁度ケンシロウ以外の戦闘要員が出払っていて。プラントで物資を生産しては、今後の戦いに備えている状態のようだった。

 

ゴア隊長は、異常な様子のジャックについては、同じ見解を示す。

 

「確かにあのサイコ野郎とは思えない言動だったな。 何か異常が起きていると見て良いだろう」

 

「更に踏み込んで調査するか」

 

「いや、流石に如何に君がスペシャルでも、それは危険だ。 今第三勢力として動いている悪魔達の実力は、君に匹敵するかそれ以上だろう。 もしも彼らが背後にいたら、君でも不覚を取る可能性がある。 今、君を失う訳にはいかない」

 

「……分かった。 一度得た情報を整理して、それで対策を練ろう」

 

すぐに方舟に戻る。

 

手持ちの戦力に不足を感じてはいない。だが、踏み込むには少しばかり無謀な気がした。

 

それだけで理由は充分である。

 

数限りない戦場を見て来たストーム1である。

 

その勘は、もはや「何となく」ではなく。多数の経験に裏打ちされた、生き延びるための武器に昇華している。

 

ストーム1の勘が危険だと告げている。それだけで、一旦後退するには、充分すぎる理由だった。

 

方舟の入り口で、ケンシロウが待っていた。いつも厳しい目つきの男だが、ずっとライトニングの方を見ている。

 

「何か感じるのか」

 

「おぞましい邪悪な気だ」

 

「そういえば気を操ることもできるのだったか」

 

「北斗神拳の分家である北斗孫家拳が得意としている分野だ。 勿論俺も体得はしている、が」

 

ケンシロウは言葉を切ると、しばらく黙り込む。

 

マイペースな男である。そのまま、しゃべり出すまで待つ。

 

「あの気は、マンセマットのものとにている」

 

「ふむ……」

 

「近付くのは危険だ。 少なくとも、次は俺か……姫様と一緒に行って欲しい」

 

「分かった。 そうしよう」

 

ケンシロウの言葉も、また信用できる。

 

ケンシロウはある程度死を予知できるらしく、「死兆星が輝く」とそれを表現する。実際には北斗七星の側にある暗めの星の事らしいのだが。何かしら、北斗神拳と関係するなんやかやの力が働いているのだろう。

 

ただ、ケンシロウは圧倒的な実績を持つ。様々な戦場で悪党共を打ち破ってきたのだ。

 

ストーム1も安心して背中を預けられると判断している戦士であり。

 

その言葉は信頼出来る。オカルトであっても、何かしらの過去の経験で信用できる事なのだろう。

 

艦橋に出向くと、アーサーがゴア隊長と正太郎長官、それに真田技術長官も交えてシミュレーションをしていた。

 

「最悪のタイミングでライトニングに仕掛けられた場合はどう対応する」

 

「あれを使うしか無いでしょう。 ライトニングは撃墜、乗組員は全滅しますが、他に手がありませんな」

 

「シュバルツバースで、人間同士で殺し合うなどあってはならないことだが」

 

「彼らにはどうにも主体的意思が欠けているように判断します。 やむを得ない場合は、容赦の無い殲滅が必要でしょう」

 

一番過激なのはアーサーか。

 

真田さんが言っているのは、この間アスラの足を止めたあの武器だろう。ライサンダーの最終型のプロトタイプである。プラズマバリアすら貫通可能な、文字通り神殺しの光の槍だ。現在は人間では、デモニカを着たストーム1も含めて持ち運びが不可能な大きさだが。

 

いずれ真田さんが必ず持ち運べるサイズにまで軽量化小型化してくれるという。

 

真田さんの言葉なら、信頼出来る。

 

ストーム1が踏み出すと、皆が此方を見る。得てきた情報をそのまま共有。ライトニングの武装について。近くで見る事が出来たのは大きい。

 

「解析しました。 ライトニングの火力をより正確に把握できました。 やはり核武装はしていないと思われます」

 

「そうなるとプラズマバリアを貫通する手段は敵にはない、と見て良さそうだな」

 

「最悪の事態を想定してもそうなります」

 

「……」

 

最悪の事態。

 

国際再建機構から流出した技術を、更に財団の科学者達が高めていた場合である。

 

真田さんには絶対の信頼があるが。

 

何が起きても不思議では無いのがこの世の中である。

 

まさかとは思うが。常に最悪の事態を想定しておくのが軍人だ。楽観は敵だと、ストーム1も初心に返るときは常に自身に言い聞かせる。

 

「プラズマバリアを纏ったままライトニングが特攻してきた場合は」

 

「その場合は、出力が上回る此方が押し返せますし、何かしらの理由でプラズマバリアを展開出来ない場合は、ライサンダーZFの試作品を用います」

 

「ふむ……」

 

「もう一つ気になったのが敵の動きだ。 どうも人形のような動きでな……」

 

黒いデモニカを着た兵士達の動きをアーサーに解析させる。

 

アーサーはしばらく兵士達の動きを解析していたが。やがて、結論していた。

 

「通常の状態ではないと思われます」

 

「どのような状態が予想できる?」

 

「薬物の投与などで精神が混濁しているか、もしくは悪魔に操られているか。 いずれにしても、脳が正常に機能して、主体的に動いている人間の動きではありません」

 

「なんということだ」

 

ゴア隊長が首を横に振る。

 

ジャックもこのような動きをしているという事は、ケンシロウの言葉が更に重みを増す事になる。

 

あの船をマンセマットが動かしているとは流石に思わないが。

 

似たような、野心的で悪意に満ちた悪魔が掌握していても、何ら不思議では無いだろう。

 

そもそもこの方舟の二世代前の船である。

 

データがあるとはいえ、易々とシュバルツバースに侵入できたのがおかしいのである。

 

しばらく腕組みして考え込んだ後、ゴア隊長は結論していた。

 

「邪魔をされると厄介だ。 だが、それ以上に一体何が起きているか、分からないと言うことだ」

 

「命じて貰えればすぐにでも潰してきますが」

 

「いや、それはまずい。 戦力を増やして、近くに行くべき……」

 

「ライトニングが動き始めました」

 

いきなり、アーサーが会話に割り込んでくる。

 

ライトニングは上空で制止。じっと此方の様子を窺っている構えだという。

 

気付かれたのか。可能性はある。

 

人間が相手だったら、気付かれなかった。だが、中身が人間とは言い難いものになっていたら。痕跡に気付かれたかも知れない。

 

「武器を展開しつつ即座に撃墜する構えを崩すな」

 

「了解しました」

 

「これで接近は不可能になったか」

 

ストーム1はぼやく。

 

敵側には、ジャックがいる。それだけで、あの船を叩き潰すのには充分な理由があったはずなのに。

 

どうにも、それが揺らぎ始めていた。

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